転生したらいっそ清々しいほどのチートになった 作:フラグ建築したい男
そして今回、珍しく10000近い文字を書きました。
普段の私からは考えられない文量だぁ・・・。
ではでは、お楽しみくださいませ!
時間は進み、エルザはジェラールと対峙していた。
「久しぶりだな、エルザ」
「ジェラール・・・」
「その気になれば、すぐにでもこの塔から脱出できたはずだが?」
「私は、かつての仲間達を解放する。そこのアリアも・・・私たちで弔う」
ジェラールのすぐ後ろ。まるで生贄を捧げる場のような卓の上。そこにアリアはいた。
「仲間を解放するのはかまわんよ。だがコイツはダメだ。ゼレフの器・・・儀式に必要だからな」
「たとえ、あと十分で塔が破壊されるとしても、か?」
「エーテリオンか?ククッ・・・」
「その余裕・・・やはりハッタリだったか」
「いや・・・エーテリオンは落ちるよ」
そう、エーテリオンが落ちるというのにジェラールはやけに落ち着いている。エーテリオンは全てを破壊する魔法。この塔など跡形もなく消え去るはず。だというのにジェラールは落ち着いて、いや落ち着きすぎている。
「それを聞いて安心した!ここで十分!たった十分貴様を足止めすれば、全ての決着がつく!!」
「いや・・・お前はゼレフの生贄となり死んでいく・・・。もう決まっているんだよ。それが
その言葉を合図に二人は戦い始めた。お互い目的があり、それを遂行するために目の前の相手を潰すために。
だからだろう。
卓上に捧げられていた
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楽園の塔、最上階。その柱の一つが壊される。粉塵と共に何かが吹き飛ばされているのが分かる。
エルザだ。どうやら、彼女が柱にぶつかったことによって、柱が壊されたようだ。しかしこのままではエルザは落下してしまうだろう。しかしそこは
「せっかく建てた塔を自分の手で壊しては世話がないな!」
「柱の一本や二本、ただの飾りに過ぎんよ」
「その飾りを造る為に、ショウたちは8年もお前を信じていたんだ!!」
エルザが怒りと共に振り上げた刀身はジェラールが回避したため、柱の一本を横に切るだけに終わった。
「いちいち言葉の揚げ足を取るなよ。重要なのはRシステム、そのための8年なんだよ」
その隙を逃すジェラールではない。その手に魔力を集め、怨霊のような魔力を弾として放つ。その弾に纏わりつかれ、身動きが取れなくなったかに見えたエルザだったが、その手に持った刀で魔法を切り裂き、そしてジェラールに強烈な一撃を見舞う。
体勢を崩したジェラールの手を掴み、そのまま押し倒して首元に刃を当てる。
「くっ」
「・・・お前の本当の目的は何だ?本当はRシステムなど完成していないのだろう?」
「!!」
「私もRシステムについて何も知らないというわけではない。確かに、構想や原理は当時の設計通りで間違いはないだろう。だがそれ以前に一番大切なものが足りていない」
「言ったはずだ・・・生贄はお前「それ以前の問題だ」」
「足りていないものとは魔力。この大掛かりな魔法を完成させるには、27億イデアもの魔力が必要になる。これは大陸中の魔導士をかき集めても、やっと足りるかどうかというほどの魔力。人間個人では勿論、この塔にもそれほどの魔力を蓄積できるはずなどないのだ」
「・・・」
「そのうえ、お前は評議院の攻撃を知っていながら逃げようともしない。おまえは何を考えているんだ」
「・・・エーテリオンまで、残り三分だ・・・」
「ジェラール!!お前の理想はとっくに終わっているんだ!!それとも、このまま死ぬのがお前の望みか!!ならばこのまま共に逝くのみだ!私はこの手を、最後の瞬間まで放さんぞ!!」
ジェラールの腕を握る力を強め、エルザはそう言う。すると、ジェラールはこう返した
「ああ・・・お前と逝くのも・・・悪くない・・・」
ジェラールはそう言うと、神に許しを請うかのように呟き始めた。
「俺の体は、ゼレフの亡霊にとり憑かれた・・・。何も言うことを聞かない・・・。ゼレフの肉体を蘇らすための人形なんだ。俺は・・・俺を救えなかった・・・。仲間も、誰も、俺を救える者はいなかった。楽園など・・・自由などどこにもなかったんだよ。全ては始まる前に終わっていたんだ・・・。Rシステムなど、完成するはずがないとわかっていた。しかし、ゼレフの亡霊は俺をやめさせなかった。もう・・・止められないんだよ。俺は壊れた機関車なんだ・・・」
上空に
「エルザ・・・お前の勝ちだ。俺を殺してくれ・・・そのために来たんだろう?」
そのときのジェラールの顔が、かつてのジェラールを思い出させて。そのときに殺す気が霧散してしまった。
「私が手を下すまでもない・・・。この地鳴り、すでに
「不器用な・・・やつだな・・・」
ジェラールの手を離し、その上から下りる。
「ジェラール。お前も、ゼレフの被害者だったのだな」
「これは自分の弱さに負けた俺の罪さ。理想と現実のあまりの差に、俺の心がついていけなかった」
「自分の中の弱さや、足りないものを埋めてくれるのが、仲間という存在なのではないのか?」
「エルザ・・・?」
「私も、おまえを救えなかった罪を償おう」
そう言うと、どちらからでもなく互いに抱擁をした。
「いや・・・俺は、救われたよ・・・エルザ」
そして、光が墜ちた
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エーテリオンは落とされた。確かに、死んだはずだ。だが、なぜ生きているのだ?
エルザは疑問に思った。自らの体も、意識も、この世界から離れることもなく現在存在している。
「くく・・・!」
「・・・ジェラール?」
遠くから見ると、その変化が良く分かるだろう。レンガの面影はなく、土煙が晴れると見えるその透き通る色。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
「・・・ジェラール、貴様・・・!」
「くくく・・・驚いたかエルザ。これが楽園の塔の真の姿、巨大な魔水晶なのだ。そして、評議院のエーテリオンにより、27億イデアもの魔力の吸収に成功した!!ここに、Rシステムが完成したのだァ!!」
「だ・・・騙したのか・・・」
「ジェラールの手の上で転がされるお前は可愛かったぞ、エルザ」
ジェラール以外の声が聞こえた。しかしその声は、やけにジェラールに似ていた。それもそのはずだ。
「・・・ジークレイン!?なぜ貴様がここに!?」
「ジェラールも本来の力を出せなかったんだよ。本気で危なかったから騙すしかなかった。初めて会ったときのことを思い出すよ、マカロフと共に始末書を提出しに来たときか。ジェラールと間違えて俺に襲い掛かってきた。まあ・・・同じ顔だし無理もないか。双子と聞いてやっと納得してくれたが、それでもお前は敵意をむき出しにしていたな」
「当たり前だ!貴様は兄のくせに、ジェラールのやろうとしてることを黙認していた!いや、それどころか私を監視していた!!」
「そう・・・そこが俺のミスだった。あの時は『ジェラールを必ず見つけ出して殺す』とか言っておくべきだった。しかし、せっかく評議院に入れたのにお前に出会ってしまったのが一番の計算ミスだな」
「とっさの言い訳ほど苦しいものはないよな」
「やはり・・・お前達は結託していたのだな」
ジークレイン、ジェラールが言う言葉にそう呟いたエルザだったが、予想外の返しが返ってきた。
「「結託?それは少し違うぞ、エルザ。」」
「「俺達は一人の人間だ。最初からな」」
ジークレインの体がまるでホログラフのように薄くなると重なり合った。
「そんな・・・まさか・・・思念体!?」
「そう、ジークは俺自身だよ」
「バカな!!な・・・ならば、エーテリオンを落としたのも自分自身!!そのために評議院に潜り込んだだと!?」
「仮初の自由は楽しかったか、エルザ?全てはゼレフを復活させるためのシナリオだった」
「・・・貴様は・・・貴様はどれだけのものを欺いて生きているんだ!!?」
眠る竜が目覚めるまで、もう少し。
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魔法評議院ERA。エーテリオンを発射する基地であるこの場は現在、騒然としていた。
「楽園の塔に27億イデアの魔力蓄積!」
「そんな魔力、一箇所にとどめておいたら爆発するぞ!?」
「てかどうなってんだこれは!?」
そんな叫びがあちらこちらで飛び交う中、評議員のヤジマは一人激しい後悔や自責の念に追われていた。
「やられた!くそぉ!」
そんな中、更に事態を混乱させる出来事が起きる。建物が急速に老朽化しているのだ。
急速に老朽化が進み、評議院の建物が崩れ落ちる中でヤジマは一人の女性を見た。
それはジークレインの秘書であったウルティア。崩れ落ちる評議員の中、こちらを見てこう呟いた。
「全てはジーク様、いえ、ジェラール様のため・・・。あの方の理想は今ここに、叶えられるのです」
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「う・・・あ・・・!」
「
「体・・・が・・・動か・・・ん!」
エルザは蹂躙されていた。どれだけ果敢に攻めかかっても、ジェラールの腕の一振りで吹き飛ばされたうえに武器まで破壊される。そして今度こそ、と思ったときにジェラールの魔法が発動した。体の自由を奪う魔法だ。
「Rシステム作動のための魔力は手に入った。後は、生贄さえあればゼレフは復活する。もうお前と遊んでいる暇は無いんだよ。この27億イデアもの魔力を取り込んだ魔水晶に、お前の体とアリアを融合させる。そしてお前の体は魂に、アリアの体は器として、ゼレフを復活させる贄となるのだ」
「うあああ!」
ジェラールがエルザを突き飛ばしたことで、エルザの体は魔水晶に取り込まれ、水晶に変質したときに卓が消えたアリアの体は、そのまま床の水晶と融合していた。
「偉大なるゼレフよ!!ここに、この女達を捧げる!!」
「ジェラール・・・ジェラールゥゥゥ!!」
水晶に飲まれ始めていたその手を誰かが掴み、引っ張り出した。
「おっと」
桜色の髪に竜の鱗のようなマフラー。ナツだ。
「エルザは妖精の尻尾の魔導士だ。渡さねーぞ」
「ナツ・・・」
「なーにしてんだよエルザ。はやくしねーと今月の家賃払えないぞ」
「す、すまない。体が思うように動かなくて・・・」
「ルーシィが」と笑いながら付け足すナツはいつものように笑っており、自分がそのように返すとほほうと呟き、くすぐってきた。
「普段ヒデー目にあってるからな!これでもくらえ!」
「や・・・やめ」
「かっかっかー!!」
くすぐりが終わり、少し疲れながらもエルザはナツに伝えた。早く逃げろ、と。
「やだね。オマエが無理なら俺がやってやるさ」
「よせ・・・相手が悪い。おまえはあいつを知らなさ過ぎる」
「知らなきゃ勝てねえもんなのか?」
「頼む・・・言う事を・・・聞いてくれ」
涙ながらにナツにそう頼むと、エルザの体を起き上がらせ、寄りかからせた。
「エルザ。オレもオマエをぜんぜん知らねえ」
「けど勝てる!!」
ナツはそう言うと、エルザの腹を殴って気絶させた。
「・・・噂以上の傍若無人ぶりだな、ナツ・ドラグニル。身動きできない仲間を痛めつけて満足か」
「・・・エルザが、泣いてた」
「弱音を吐いて、声を震わせていた」
「そんなエルザは見たくねえ。エルザは強くて凶暴でいーじゃねえか」
「目が覚めたとき、いつものエルザでいてほしいから、オレが戦うんだ!」
かくして、怒れる火竜と流星の魔導士の戦いの火蓋は切って落とされた。
しかし、またも誰も気付かない。
水晶の中で眠る竜が一匹、目が覚めたことに。
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過去の自分グッジョブ。そうだよね、せっかく大好きな作品の世界に来たのに流れを知っていたら面白くないよね。だから俺の記憶を、好きな章である楽園の塔編が始まるときに思い出すようにしていたのか。そもそも俺に友達なんていないし・・・き、傷付いてねーし!!ホントだし!ゲーム仲間くらいはいたからボッチじゃないし!!
何はともかく、俺が変にフェアリーテイルについて思い出していたのはこれが原因だったのか。
謎も解けたし、特に引っかかることもなし。これからもこの作品については物語が進んでいくと思い出す形になるのか。おーけーおーけー。
・・・ところでさ。俺はいつになったらこの空間から開放されるのん?
いや、悪堕ちしてたと思われるジェラールを助けた後から記憶がないのよ。あの後すぐに気を失ったしさ。
で、今どこまで進んでるのさ。俺の身体早く目覚めてくれないかな・・・。
あー、暇だなぁ。・・・そうだ。ここには俺以外には誰もいないんだし、前世ではあまりやれなかったあの動きを再現してみよう。
突然すまないが、エヴァンゲリオン弐号機はご存知だろうか?新劇場版・破で出てきたやつの方だ。個人的に、破は名作だと思うんだ。特に初号機が暴走して第10使徒を倒すシーンは最高だと思う。だが俺は、その前のシーンが好きだ。そう、弐号機のビーストモード。あの猫のような俊敏さの中にある、暴走のようなあのカッコよさ。・・・もう、堪んないです。
俺は当時、あの動きにロマンを感じて再現しようとしていたのだ。結果?・・・察してくれ。あの人外な動き、再現できるわけなかろう。
だがここでは別だ。ここは想像した通りに動ける、まさに夢のような空間。再現しようではないか。
まず、あの身悶える所から。自らの体を掻き抱きながら蹲り、四つんばいになる。そして、肩からあの筒が出てくるあの痛み(?)を想像しながら体を動かす。そして、イメージが終わると同時に顔を上げる。瞬時に跳躍し、仮想敵に飛びかかる。おお、予想以上にヌルヌル動いてくれる。
だが敵よ。横に動くとはなかなか分かってる動きをしてくれる。
俺は体を獣のように横にずらし、右手で敵を突く。すんでのところで避けられる。むう・・・ならば右の踵で吹き飛ばしてやる。よっしゃ当たった。さて、次は飛び掛ってATフィールドを破ったあの殴りを再現しようではないか。敵に飛び掛るが、その敵が攻撃を放つ。これを空中ジャンプで避け、もう一度飛び掛る。のしかかろうとすると、敵はATフィールド(のようなもの)を出してきた。なのでそれを次々と殴って破る。 おお・・・再現できている!俺は喜びのあまり、つい「よっしゃあ!」と叫んでしまった。
おっといかんいかん。弐号機はしゃべらないぞ俺。
・・・にしても、いつになったら目覚めるのやら。
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ジェラールは、ナツがどんどんと魔水晶を壊していくのを見て激しい怒りを覚えた。ナツを、塔もろとも壊そうと。たとえ、エルザがいようが構わない。一切の躊躇いも無しに、ジェラールは天体魔法『
だが、それは途中で何かに吸収されるかのように消えた。
疑問に思わなかっただろうか?本来、Rシステムは一人の生贄の体を、生き返らせたい者の体に再構築して復活させる魔法。魔水晶の中にはアリアがいる。なぜこれで発動しないのか。
理由は、アリアの魔法にある。
彼女の魔法は魔竜の滅竜魔法。あらゆる魔を吸収し、自らの力と化す
彼女の魔力量にも理由があるだろう。その総魔力量、アクノロギアの元にいたときは子供であったのに関わらず、既に1億イデアを超えていた。今となっては計るのも馬鹿馬鹿しい。
つまり、ジェラールの魔法を吸収したのは。
「・・・アリア!?」
「・・・どういう・・・ことだ!?お前はあの時、確かに俺の魔法で眠らせたはず・・・!」
理由は単純だろう。アクノロギアは、確かに魔力制御は教えていた。だが、体内の魔力が尽きたときのことなど教えていない。というか、アクノロギアのことだから考えたことすらないだろう。
アリアは自分の魔力がどれほどの量かを確認しないで、消費魔力が格段に大きい魔法を連発していたため、気付かぬうちに大きい魔力切れを起こしたうえに、魔力が回復するまでの休息を取らせようと体が眠っただけだったのだ。
しかしアリアの様子が変だ。まるで、今吸収した魔法が体に悪影響を及ぼしたかのように体を震わせている。挙句、自分の体を掻き抱いて蹲った。
アリアが魔法を吸収したとは思っていないエルザはアリアの名を呼んで、今にも駆け寄りたい気持ちに駆られた。そのときだった。アリアの体に異変が起こったのは。
四つんばいになり、まるで体の中の異物が発する痛みに耐えるように体を震わせ始めた。そして、その肩口から、黒い翼が生えた。変化は更にある。アリアの体が、まるで竜のように変化していくのだ。手が、足が、腰から尾が伸び、そして、アリアが顔を上げるとそこには、顔の半分が鱗に覆われた、ドス黒い魔力を放つ竜(アリア)の顔があった。
飛び跳ねたアリアはジェラールを切り裂こうとその爪を振るう。
「なんだ、貴様は!?」
横に飛び跳ねることで飛び掛りを避けたジェラールは、思わずアリアにそう叫んだ。瞬間、気付けばすぐ横にアリアがいた。
「!?」
なんとか体を捻ることで突き出されるその手を避けるが、代わりと繰り出された右足は避けることが出来なかった。
圧倒的だ。先ほどまで自分達が苦戦していたジェラールを、まるで赤子を捻るようにあしらうとは。アリアは、一体どういう力を持つのだ。そもそも、その竜のような風貌は?
そんな中、アリアから声が聞こえた。
『我の愛娘を目覚めさせたことは感謝するぞ、羽虫』
「その声・・・ゼレフ!?」
今、ジェラールは何と言ったか?アリアから聞こえるこの声をゼレフと?どういうことだ?
『我はゼレフではない。そも、羽虫に名を明かすほど酔狂ではないのでな』
「どういうことだ・・・俺は、お前が伝えたことが真実だと・・・!」
『我の手の上で転がり、一所懸命に羽ばたくその姿は滑稽であったぞ?』
どうやら、この声は名を明かす気はないらしい。しかし、ジェラールに伝えたこと・・・?もしやRシステムのことか?
『まったく、手のかかる娘だな・・・。さて羽虫。お前が我の娘を起こそうとこの塔を作っていたのならば我も何も手を出さなかったのだが・・・我の娘を危険に晒し、あまつさえ生贄だと?・・・その罪は重いぞ?』
底冷えする声だ。生物の本能に響く、とでも言えばいいだろうか。その言葉の対象であるジェラールは怯えに怯え始めた。だが、声は許す気はないらしい。
「く、来るなぁ!!」
ジェラールが魔法で何十にも防御を重ねた。結界の類だろうか?見たところ、十数枚はありそうだ。それにアリア(のようなナニカ)は飛び掛る。迎撃にもならないだろうが、衝撃が大きいのだろう魔法を放ったが、アリアは空中で避け、そのうえ結界に飛び掛る。拳が突き出されるたびに一枚、また一枚と数を減らしていく結界。
最後の一枚が割れると同時に、アリアは少し距離をとった。そして、何かを溜め込む動作をすると、トドメを放った。
その咆哮は魔水晶の柱を破壊し、そしてジェラールを遥か彼方へと吹き飛ばしたのだった。彼が今更、その羽虫の行方を気にするような心の持ち主ではないだろう。
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ジェラールを吹き飛した後、アリアはバタリと倒れ付す。まるで糸が切れたかのように。
「アリア!」
「アリア!」
エルザと何時の間にか辿り着いていたシモンは、倒れ付したアリアを見るとすぐさま駆け寄る。よかった、と二人同時に安堵の溜息を漏らす。息はしている。ちゃんと生きているようだ。
だが安堵したのも束の間、塔が揺れる。どうやら崩壊を始めたようだ。
エルザは死力を振り絞って駆け寄ったもので、どうにも動くことが出来ない。
「エルザ。俺が二人を担ごう」
「ああ・・・頼む」
「なんだぁ、エルザ?まぁた動けないのか?」
「冗談は後にしてくれ。今は早く脱出を・・・」
そのとき、アリアがゆっくりと目を覚ます。
「アリア、目が覚めたのか!?」
「よかった・・・早く脱出するぞ!・・・アリア?」
「・・・」
アリアはその問いに答えない。どうしたのだろうか。その視線はどうやら私たちの後ろを見ているようだ。どうしたことか。背後には魔水晶しかない。いや、そもそもこの塔自体が魔水晶だが。
フラフラとした足取りで、魔水晶に近づくと手を当てる。すると、その体が魔水晶に取り込まれた。
「アリア!?まさか・・・暴走する魔力を制御するために!?」
「やめろ!そんなことをしたらお前が死んでしまう!」
エルザの叫びもむなしく、アリアは微笑みながら手を振る。
―――逃げろ、ということだろうか。
「・・・行くぞ、エルザ!せめて、俺たちだけでも・・・!」
「・・・ああ!」
涙ぐみながら、アリアが犠牲になってでも作ってくれた道だ。生き残らなければ・・・!
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あの、ちょっと待って。なんで勝手に殺したことにしてるの・・・ワー魔力オイチー・・・違うそうじゃない。
あ、久しぶり。アリアです。結局俺って何年寝てたんねーん。知らんねーん。
ていうか、さらっと私殺していったけどさ、まだ死んでないからね?いま魔力吸収中ですんで、それ終わったころにはウォータージェットみたく飛べると思う。・・・待った、死ぬ未来しか見えない。
え、ちょっと待って、やっぱ出ます。ほら、俺の体動いて。・・・ウゴケェェェ!!イヤァァァァァ!!シィィィヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
ソラハアオカッタデス。
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爆発する魔力、衝撃で押される体。そのまま海に突っこむことになった。
「わぷ・・・だ、大丈夫か、エルザ!?」
「・・・グレイ!?」
どうやらグレイ達のようだ。相当吹き飛ばされたのだろう。ナツは「うお、ルーシィ大丈夫か!?」「何でこっちに吹き飛んでくるのよ・・・」・・・大丈夫のようだ。シモンもすぐ近くにいる。
それにしても・・・アリア・・・。
ルーシィに心配されてしまった。どうやら相当悲しそうな顔をしていたようだ。だが、今だけは許してほしい・・・。
と、グレイが上を見上げながら呟いた。
「・・・アレ、何だ?」
「うん?」
グレイが指差す先。そこには何か大きい光があった。
「まさか・・・」
上から舞い降りてきたのは、背中から魔力を制御しつつこちらに向かっているアリアだった。
楽園の塔編、これにて終結!
後日談(ギルド加入など)を一回投稿して、一段落ですね。また、次の巻を買うまでサブ小説のほうを投稿しますので、そちらのほうを見ながらお待ちください。
では、後日談のときに!