第拾話 DIVER
「オーディンと会談をおこなっただと?」
『テロリストについて意見交換をしたんだ。過激派のロキが襲撃してくるかもしれないと危惧していたが……、杞憂に終わって何よりだ』
「あ、襲ってきたから消滅させといた。オーディンに伝えといてくれ」
『マジかよ……』
アザゼルのか細い声が聞こえた。また面倒事を押し付けられたと頭を抱えているのだろう。尤もイッセーにとっては知った事では無いのだが。
後は宜しく、とだけ告げて術式を一方的に消した。
「さて、今日はどうするよ。久々に良い天気だが」
「マリカーや桃鉄も飽きたっス」
「何処かに遊びに行きたいですね」
確かに最近は雨が続いてずっとゲーム三昧の日々だった。流石に身体を動かさないと鈍ってしまう。
「どうすっかな……。今は秋だし、紅葉でも見に行きたいところだが」
「それなら京都はどうかにゃー?」
「良いですね」
「賛成!」
観光雑誌をパラパラと捲りながら呟いた黒歌の意見に満場一致で賛成の声が挙がった。京都なら観光スポットも多いし、良いかもしれない。
「よっしゃ、京都で決まりだ! 準備しろ!」
「あいあいさー!」
かくしてイッセー達は京都を旅行する事となった。
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「さあ、京都の美味しいものを食べまくるっスよ!」
「やっぱり賑わってるにゃー!」
「そう急ぐな。現地に詳しい奴に心当たりがある。先ずはそいつを訪ねるぞ」
「メルヴァゾア様!」
振り替えると焦った様子の男性が立っていた。首を傾げるイッセー。
「烏天狗か。そんなに慌ててどうした?」
「その理由も含めてご説明致します! 先ずは城へ……!!」
「またイベントか。退屈しねぇな、どうも」
彼の説明によると先日、八坂が何者かに誘拐されてしまったらしい。案内された一室にて茶を飲みながら、彼は問う。
「で、俺達が来たんで八坂を助けて貰おうって算段か?」
「無論、ご希望の金額をお支払い致します。八坂様を救出して頂けないでしょうか?」
イッセーは茶を飲み干すと瞑目した。京妖怪の総大将である八坂とは、彼女が子供の頃からの知り合いだ。このまま見捨てるのも後味が悪い。
軽く首を鳴らすと立ち上がった。
「……取り敢えず、宿の手配を頼むわ」
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「狐ババアなんざ浚って、何の役に立つんだよ!」
次元の狭間に建てられた『
ジークフリートが呆れたように諌める。
「曹操が説明していただろ? 京都にグレートレッドを呼び寄せるからその材料にするって」
「ちゃんと聞きなさいよ」
「うるせぇ! 難しい話は苦手なんだよ!!」
不機嫌そうに椅子に座るヘラクレスを眺めながら溜め息を吐くジャンヌ。曹操が猿でも解りやすく作戦を説明していたのに、筋肉馬鹿は何も聞いていなかったようだ。
「頼むから殺さないでよね。お目付け役の私達が怒られるんだから」
「……それにしても曹操の帰りが遅いね。ゲオルクと一緒に京都の下見に行くだけなのにさ」
愚痴を溢すジークフリートにジャンヌも同意した。二人が出掛けてから半日は既に経過している。幾ら何でも遅すぎだ。
或いは予期せぬ事態に陥ったか、と不安が過った直後。床に転移術式が展開された。
「おい、帰ってきたぜ」
「遅いじゃないか、二人共──」
だが現れたのは自称英雄では無く、頭にたんこぶをこさえた二人を投げ捨てながら、どす黒い笑みを浮かべている邪神様だったそうな。
「おいっす、愚かな人間共」
「──楽に死ねると思うなよ?」
Wrth of God.
神の怒り。