陰陽師なのに魔力等も使う陰陽師(凍結)   作:中田 旬太

4 / 16
どうも、作者です。

何故かもう一つの作品より、こっちの方に力を入れたくなるんですよね~。

今回はあの男が登場!


何で陰陽頭が来た?

『ひゃひゃひゃひゃ───』

「ほい」

 

もうすぐ昼になる頃だろうか。夏希は今、紅緒と禍野でケガレ祓いをしている。夏希は軽く殴りケガレを祓っている。

 

「紅緒さん。そっちは終わった?」

 

夏希が振り返り、紅緒に問いかける。紅緒は持っていた二本の剣を地面に刺し、付けていたお面を外した。

 

「こっちも………終わった」

 

「よし。なら帰るか」

 

「ちょっと待って」

 

「ん?何?」

 

夏希が帰る為に門を開こうとするが、紅緒に待ったをかけられる。

 

「君は……何者?呪装無しでケガレを祓うのは………普通は無理」

 

「………さあ?只単(ただたん)に変な力に目覚めただけだし、自分で探ってみなよ」

 

夏希は門を開けて、(ウツツ)に帰って行った。

 

 

 

 

 

 

夏希は自分の部屋で寝転がりながら新しい技等を考えていた。しかし、夏希にはかなりのバリエーションがあるため、今必要なのがあまり思いつかない。

 

「うーん」

 

そんなときだった。下からろくろの叫び声と大きな足音が聞こえてきた。

 

「あ~。何となく分かったわ~」

 

夏希がそう呟く。ろくろは先程まで寝ていた。それが今さっき起きたのだろう。普通起きた人が向かうのは洗面所だ。しかしそこは今、紅緒がケガレ祓いで流した汗や汚れを洗う為風呂に入っていた。それで紅緒が風呂から出た所で鉢合わせでもしたんだろう、と推測を建てた。

 

「とりあえず行ってみるか」

 

夏希はベッドから起き上がり、自分の部屋の扉を開けて部屋を出るのだった。

 

 

 

 

 

 

「やっぱりか………」

 

部屋から出た夏希は庭の方が騒がしかったため向かったところ、小さな池の上でろくろが縄で簀巻きにされ、洗濯の物干しで吊されていた。夏希はその惨状に頭を抑えた。

 

「だからわざとじゃないんだって~~~っ!!」

 

ろくろが吊された状態で泣きながら弁明をする。

 

「でも見たことは見たんだろうが!!」

 

と篤が怒鳴り、

 

「死んで償えこの痴れ者がああああっ!!」

 

とお婆さんが三つ叉の槍を構えながら怒鳴り、

 

「そうじゃ!!ワシなんてそんなハプニング今まで一度もないわいっ!!」

 

とじっさまが怒鳴る。

 

「じっさま。怒るポイントが違うでしょ」

 

慎之介が冷静にツッコんでくれた。

 

そして亮悟は慌てており、紅緒はタオルを被ったまま俯いて縁側に座っている。まあ、恐らくは裸を見られたのだから当然の反応だろう。

 

「おかわいそうに紅緒様。まだ嫁入り前だというのに」

 

お婆さんが紅緒に近づいて話しかける。

 

「い……いや!でもホラっ、前の方はタオルで隠れていたんだし、嫁に行く頃には今よりもっとナイスバディになっているわけで………」

 

これがいけなかった。篤とお婆さんは石等を拾い上げ、ろくろに向かって乱雑に投げる。投げた物の中には、招き猫やラグビーのボールにやかん、バケツや靴やバナナの皮などの様々な物を投げていた。

 

「じゃあ今なら何回見てもいいのか!!!ああんっ!!?」

 

「全部見とったら今頃首と胴体は繋がっとらんわこのエロ坊主がああっ!!!」

 

怒鳴りながらもまだ物を投げ続ける二人。投げた物は大抵ろくろに当たり、もの凄く痛がっていた。

 

みんなは次々に部屋へと上がっていく。お婆さんは最後に「一生反省しておれ!!」と言い残し紅緒を連れて上がっていった。しかも、紅緒も怒り、涙目になりながらろくろを睨みつけて部屋に上がっていった。

 

夏希も部屋に上がろうとするが少し止まる。

 

「ろくろ………さっきの発言はマジで最低だと思う」

 

夏希はトドメの一言をろくろに浴びせる。そして、部屋に上がった。

 

 

 

 

 

 

「まったく、最後の一言が無ければ助けようと思ったのに」

 

夏希もまさか、ろくろがあんなことを言うのは予想外だったらしい。

 

部屋に上がってすぐ、庭からろくろの声が聞こえる。また何かあったのかと思い庭に向かう。その時、庭から夏希が知っている人の呪力を感じた。

 

「………あの人が何の用だ?」

 

そうぼやきながら庭に向かっていく夏希だった。

 

 

 

 

 

 

「何で“陰陽頭(おんみょうのかみ)”の貴方が居るんですか?」

 

庭には先程と同じく吊された状態のろくろと、先程のメンバー。そして、今は浴衣を着て、長い白髪に髪の毛の先が青い、見た感じ青年の人が立っていた。実質は四十くらいのおじさんだが。

 

陰陽頭、簡単に言うと陰陽師達のボスです。

 

「やあ夏希君!!去年の夏以来だね!!!」

 

「やあ、じゃねえよ!何であんたが此処に居るんだ!有馬さん!」

 

「おい夏希!お前この変態パンツ男と知り合いか!?」

 

「へ、変態パンツ男………」

 

ろくろが吊された状態でジタバタと暴れながら夏希に聞く。夏希は有馬をとんでもないあだ名で呼んでいた事に驚く。

 

「まあな。で、何で来たんですか?」

 

「はは、まあちょっとしたサプライズがあるんだよ………」

 

不敵な笑みを浮かべる有馬。夏希はそれが、不気味で仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 

鳴神市内・鳴神神社

 

敷地内・社殿最深部

巨大シェルター型訓練施設用地下大講堂

 

夏希達は現在そこにいる。紅緒、有馬、じっさま、お婆さんは別行動である。別行動の者達と夏希を除き、一同はその空間の広さに驚いていた。しかも、周りにはスーツや陰陽師の格好をした偉そうなおじいさんやおっさんばかりである。

 

「ところで紅緒さんは?」

 

亮悟が紅緒が居ないことに気づきみんな聞く。他の三人は別行動のことを伝えているため、心配する必要はない。

 

「あっちにいますけど……」

 

「幹部のおっさん共がペコペコしてる………!!」

 

篤の言うとおり。幹部達は紅緒を囲む用に挨拶している。しかし、紅緒は興味がなさそうに軽く対応している。

 

「何で夏希には挨拶しないんだ?」

 

亮悟が夏希に聞いてくる。亮悟は夏希が凄い陰陽師という認識しかしていないが、それでも有名だとは知っているため、疑問に思い夏希に問いかける。

 

「まあ此処に来ていることを知らせてませんし、“本土”の人達は俺の顔は知らないから当然でしょう。あと、ばれたくないんで俺の事は大講堂に居る間は名前や名字で呼ばないで下さい」

 

「わ、分かった」

 

夏希が理由を説明する。さらに、ばれたくないと言い亮悟達に名前を口にしないでほしいと言った。よほど自分が此処に居ることが他の人にばれたくないようだ。

 

「やあ諸君!!お待たせっ!!!!」

 

大講堂に大きな声が響き渡る。皆が一斉に声の聞こえた方角を見る。そこには、木で出来た柵が手前にある奥の道に続く短い階段にきちんとした陰陽師の格好をした有馬とじっさま、そしていつも通りのお婆さんがいた。

 

「陰陽頭!土御門有馬だ!!ご足労頂き感謝するよ!!」

 

「おお、有馬様」

 

「相変わらずテンションがお高い」

 

高いテンションで、大講堂の皆に挨拶する有馬。幹部達の話からすると有馬はいつもこのテンションらしい。

 

「集まって貰ったのは他でもない!今日は皆にと~~~っても嬉しい超々ビッグニュースを持って行きたんだぜイエ~~~~~イ!!!」

 

ビッグニュース?と夏希は首を傾げる。陰陽頭である有馬がわざわざ出向くほどのこととは何だろうか、そんなことを思いつつ有馬の話を聞く。

 

「数日前行った式占(ちょくせん)(占い)によって天から素晴らしいお告げが………“神託(しんたく)”が下った!!!!」

 

ここから長いので要約させて貰います。

 

簡単にすると、大陰陽師である安倍晴明(あべのせいめい)を超える呪力を持ち、全てのケガレを祓い、禍野に終焉をもたらす存在と言われる“神子(みこ)”が出現することが告げられたらしい。

 

「重要なのは“誰が”その神子なのかということだ!!………化野 紅緒君!!前へ出てきてくれるかな!?」

 

おお!、と周りから歓声が上がる。紅緒は何気ない顔で、鞄を左肩に掛けたまま前へと歩いて行く。

 

「京都の名家!本土・化野家の筆頭っ!!紅緒様が神子というのなら納得ですな!!」

 

「………」

 

おかしい、夏希はそう思った。幹部の人が声を上げて言っていたが、確かに紅緒は強い。しかし、神子と呼ばれるには実力不足どころの話ではない。

 

「…はは、孫ポジションキャラは相変わらずジジィ共に人気だね」

 

有馬は柵を飛び越え、紅緒の前に立つ。

 

「ぬるい地元でちやほやされて、トラウマは少しは克服できたのかい?」

 

「………」

 

有馬の言葉に、紅緒は顔を歪める。

 

「では、もう一人!焔魔堂 ろくろ!!ろくろ君!!君もこっちへ来てくれっ!!」

 

「何で俺が………!?」

 

「分かんないけど、とりあえず行ったほうがいいんじゃないか?」

 

急に呼ばれたことで驚いているろくろ。亮悟にも後押しされとぼとぼと歩き、階段を登っていく。周りからは、ざわつきが出始めた。

 

「彼らは共に14歳だが、陰陽師としての素質は恐らく、ここにいる誰よりも高い!!かたや東京!かたや京都!言わば……」

 

有馬が二人の肩を掴む。そして夏希達、観衆の方に体を向けさせる。

 

「東の最強!焔魔堂 ろくろと、西の最強!化野 紅緒というワケだ!!」

 

「最強って……」

 

「ろくろが~~~~~!!?」

 

その場の夏希を除いた全員が騒ぎ始める。慎之介が感嘆の声を上げ、篤は信じられないとでも言わんばかりに叫ぶ。そんな中、夏希は有馬に疑惑の目を向けていた。

 

「……」

 

分からない、夏希はただそれだけを思っていた。何故あの二人なのか。夏希は思考をフルに活用し考えていく。

 

(あの二人は確実に神子ではない。なら何故神子の話をした?……話す意味、必要があった。ということは、神子に関係してくることは?………!!!!)

 

夏希は一つの答えに行き着いた。そんなことがあるわけがないと。しかし、いくら考えてもその答えに行き着いてしまう。男性と女性、そして神子。これが夏希を一つの答えにたどり着かせてしまう。

 

「そぉら(みんな)!場所を開けた開けたぁ!!本気を出した彼らの戦いに巻き込まれたら、怪我どころじゃ済まないぞ!!?」

 

有馬の言葉にハッと顔を上げる夏希。どうやら、深く考え込みすぎて周りが見えていなかったらしい。目の前を見ると、人が退き、ろくろと紅緒が戦闘を開始していた。

 

(あの人は………!!!)

 

怒りの表情を(あら)わにし、拳を握り締める。大方、実力が見たいとでも言ったのだろう。ろくろにその気はないだろうが、紅緒はろくろの実力を知りたがっていた。一方的に戦闘を始めたに違いない。

 

ろくろは逃げてばかり、紅緒は短刀を使い一方的な戦闘になっていた。互いに呪装をしていないため、そこまでの大怪我には至っていない。しかし、ろくろは制服が少し破け、口から少し血を流しており、ボロボロである。それに対し、紅緒は無傷だった。

 

「どうしたんだいろくろ君~!やられっ放しじゃないか~っ!!君にちゃんと戦ってもらわないと神子の話が進められないんだが~!?」

 

階段に座り、左手で頬杖をつきながら、たるい口調でろくろに声をかける有馬。紅緒は攻撃をやめ、仁王立ちをしている。ろくろは膝をついており、はぁはぁと肩で息をしていた。

 

「うっせえこのパンツ男!!俺は陰陽師なんてとっくにやめたんだ!!お前の言う通りにする気もないし!神子なんてのもどうでもいいんだよ!!」

 

ろくろはキッと有馬を睨みつけ、自分の意志を怒鳴りながら伝える。

 

「やれやれ、君は一体何を恐れているんだ?」

 

「!?」

 

「知っているよろくろ君。君が戦うのをやめたのも、やめた理由も」

 

ろくろと、それを遠くから観戦している夏希の表情が驚愕に染まる。

 

「……な!?お前……!!」

 

「………!!!」

 

「戦えない陰陽師、弱い陰陽師に価値はないんだよ…そう。かつての君の同胞も同じさ。弱いから死んだ……それだけだ」

 

かつてのろくろと夏希の仲間を侮辱し始めた有馬。その目は冷たく、光が宿っていない。

 

「いやまあ、死んだら死んだで構わないんだけどね。所詮その程度の素質しかない連中だったというだけだ。陰陽師としてなにひとつ貢献できなかったカスが、大人になった所でカスはカスのままだっただろうからね」

 

有馬の言葉に、夏希とろくろは憤怒の表情を浮かべ、顔を歪める。その時、二人には仲間達との日々が頭の中をよぎっていた。共に笑い、共に泣き、共に最高の陰陽師を目指し精進していたろくろ。そんなみんなに、陰陽師としての技術を教えるため、清弦に連れてこられた夏希。二人にとってはかけがえのない日々だった。

 

「あ、あんた!!なんてこと言うんだっ!!」

 

亮悟が有馬に向かって叫ぶ。その時だった。

 

「「おい……」」

 

ろくろが顔を下に向けたままヨロヨロと立ち上がり、夏希が顔を下に向けた状態でろくろの隣まで歩く。その手の握り締めた拳からは、血が垂れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「アンタ(お前)…………殺すよ?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を上げ、有馬に殺意を込めた言葉を浴びせる。その目は見開かれており、今にでも人を殺せそうな表情だった。二人から放たれた殺気に周りからは少し悲鳴が聞こえた。

 

「………は、おお(こわ)ぁあ♡」

 

有馬はその言葉に、目を細め不気味な笑みを浮かべる。

 

「お前が昔のことをどこまで知ってるか分かんないけど、そこまで言うなら………見せてやる」

 

ろくろが言葉を紡ぎながら、右腕の袖を(まく)る。

 

「でも………俺がそいつに勝ったら、みんなのことを悪く言ったこと!お墓の前で手をついて謝れ!!」

 

「その前に俺がぶん殴る!」

 

ろくろは紅緒に体を向ける。そして、ろくろは()()()()を左手で持ち、右腕を自分の前に持ってきて構える。夏希は両手に手袋を()け、一枚の霊符を構える。

 

「祓へ給へ!清め給へ!」

 

ろくろから呪力が溢れる。そして、右腕から紋様が浮かび上がってくる。

 

「急急如律令!!」

 

ろくろの腕の紋様は、黒い霊符に映され、ろくろの腕は劇的な変化を見せた。その腕には鬼の顔を思わせるような模様になっており、(あか)く、先程よりも強く逞しく、そして禍々しいオーラを放つ腕へと変化した。

 

砕竜符(さいりゅうふ)

 

霊符が光を放ち両腕に纏わり付く。

 

拳竜爆発(けんりゅうばくはつ)!急急如律令!」

 

その両腕は光沢をもつ群青色で竜の皮膚を彷彿(ほうふつ)とさせる装甲になっており、拳に先端が楕円形のハンマーが纏わり付く感じになっている。しかも、そのハンマーの先端には緑色の粘液がついている。

 

「さあ……!!覚悟しろよ……!!!」




分かる人には分かると思いますが、一応言っときます。

夏希が最後に使った呪装、あれは『モンスターハンター』のブラキディオスです。

こんな感じの呪装も出るかもですので、期待しておいて下さい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。