β Ewigkeit:Fragments   作:影次

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久しぶりだな。

私だ。

私は投稿した!!!

待たせたな、具体的には半年待たせたな!!!

……読者残ってるだろうか。


chapter11

 概ねうまく行っている、と見ていいだろう。

 クリストフを相手にするには、そもそもの話二つや三つ、或いは半分程は裏をかかれることを前提に話を進めるべきだ。

 完全を求めてはならない、完全を求める先には完全という名の無が待つのみ。

 共犯者なんていうものは結局、どちらかの破滅を前提としたものなのだから。

 

 だから、そう、僕は破滅する必要があるのだろう。

 一度破滅してようやく始まるのだ。

 その時期は見極めなければならない。

 何せ今でさえ綱渡りなのだ。

 指先一つでも滑れば、その時点で本当に僕は破滅して終わる。

 誰か一人でも、正しく合理的な行動ってやつを行おうとすれば、僕は終わりだ。

 この賭けは『誰一人正しい行動を行わない』ことを前提とした分が悪すぎる賭け。

 楽しい以外に取り柄のない、ひどい賭けもあったもの。

 しかし、これだけ大きいベッドをしなければ、必要なリターンが返ってこない。

 

 最悪は、全員が話の裏取りを行い、こちらの話を確認されてしまうこと。

 最良は、マレウスあたりが話の大半を伏せた上でクリストフに打診を行い、クリストフもまた話の大半を伏せた上で了承すること。

 バビロンにはそこのところまるで期待していない。

 口も頭も石のように固い女だ、あそこから漏れる可能性が一番低いとさえ思う。

 最悪を引けば僕は何もなせずに終わるだろう。

 だが、最良を引けば、僕は。

 

 さて、この一点張りのルーレットに、神はどう微笑むものか。

 まあ、この世界に神の手なんて期待してはいない。

 全ては役者の抱える業あってこそ、だろう?

 

 ああ、今日も時計の音が響く。

 チク・タク。

 チク・タク。

 

 

『お前は誰だ?』チク・タク、チク・タク

『どこから来た?』チク・タク、チク・タク

『今どこにいる?』チク・タク、チク・タク

『行き先は?』チク・タク、チク・タク

 

 

秘匿文書:アルフレート・レポート8

 

 

 

 

 業火が舞う。

 地を、天を、あらゆる場を埋め尽くす炎がある。

 絶対必中を体現する赤き騎士の領域で、その炎を斬り裂き飛翔する者と、それを迎え撃つ者があった。

「そらどうした。我が君の敵となるのなら、到底足りんぞツァラトゥストラ」

「ぐっ、お!?」

 美麗刹那、正に刹那を疾走する蓮の超高速攻撃、寸分違わず首を狙った一撃は、待ち構えていた爆撃によって防がれ、カウンターでその身を焼かれる。

 反応などされていない筈だった。

 だがしかし、エレオノーレの戦術眼は、そも動き出すなどという前段階にある。

「確かに。我らは超越者、人にあらざる魔人ではあるが。貴様のようにその手足で武を振るう存在であれば、忘れてはならないことがある。所詮腕は二本、足も二本、ということだ。更に覚醒するまで戦を知らぬ、武技を知らぬ身の上というのなら、狙ってくる場所も限られていようさ」

 地を這い煙を吐き出す蓮に、エレオノーレは容赦なく次弾を装填し狙いをつける。

 背後に赤く輝く黒円卓の陣が唸りを上げ、

「ならば、これは如何です」

 そこに斜めから雷光が襲来する。

 雷を纏い、雷となりて突貫するベアトリスの聖剣。

 しかしその一撃も、エレオノーレは紙一重、しかし余裕もをって捌く。

「変わらん愚直さだなキルヒアイゼン」

「さて、それはどうで、しょう! 発雷(イグニッション)!」

 カウンターの炎が炸裂しようとする瞬間、ベアトリスも大きくその身から放電する。

「む……」

「せえっ!」

 わずかに空いた隙間、炎の狙いが逸れる。

 中央の炎でなくとも纏う爆炎、爆風は彼女を焼くに足るものではあったが、しかし。

 纏う雷、鎧のように、その炎を通さず。

「ふっ、せっ、はっ!」

「ちっ、小癪な!」

 雷を纏う機械篭手(マシンアーム)の拳、三連撃。

 超至近距離で放たれる拳をエレオノーレはその腕で受ける。

「この格闘、不快な男を思い出す。貴様奴の技を身につけるなど、気が狂ったか?」

「さて、気狂い云々に関してはお言葉そっくりお返ししますよ!」

 雷を浸透させた手応えをベアトリスは感じた。

 その一瞬の、ほんの僅かな腕の動きの鈍りを誘いと判断せず、即座に再び剣を取る。

 肩口から斬り裂くように狙いを定めた剣がエレオノーレに迫り、

「抜かせ小娘、この程度で優位を取ったつもりか!」

 しかし、その渾身の一撃も阻まれる。

 部分形成。

 エレオノーレの召喚した鉄の銃身が剣の軌道に立ち塞がり、斬撃を阻んだ。

「でしょうね、私一人であれば!」

「おおおッ!!!」

 その瞬間、逆側からもう一つの刃が襲来する。

 その瞳にカドゥケウスの紋様を輝かせるものが。

 ベアトリスの一撃に合わせる絶妙の刹那を蓮が飛翔する。

「…………!」

 戦術的死角を全て想定するエレオノーレは、同じように銃身の召喚で対応する。

 しかし、処刑刃と銃身がぶつかった瞬間、僅かに銃身の側が軋みを上げた。

「……成る程。素質は十分、か。ならば先ずは良し」

 そう呟いて、エレオノーレが指を鳴らす。

 二つの刃を阻んでいた銃身が即座に赤熱し、

「うおおッ!?」

「くっ、ああああああ!?」

 赤熱した鋼が大爆発を起こす。

 接触していた刃ごと爆発を受けた蓮とベアトリスは炎に包まれ大きく吹き飛んだ。

 二人は地面に叩きつけられながらも即座に身を立ち上げる。

 同じく爆発に巻き込まれたエレオノーレの位置には大きく煙が立ち込めているが、

「肉を切らせて骨を断つ、とはこの国の諺だったか? いかにも劣等らしい、貴様ら相手に差し出してやる肉など私には欠片もないぞ」

 エレオノーレは尚も悠然と立つ。

 その指先にゆらゆらと炎の球を灯しながら。

「私の炎は私の術理、私の食らった魂、即ち私の一部によって形成されるものだ。『私自身』が私を傷つけるはずがなかろうよ。余程の未熟者でない限り、それは魔人であるならば誰であれ同じだ」

「はは、活動したての頃を思い出しますね……」

 表面上は軽口を叩き合いながらも、双方目を細め、隙きを生み出すための刹那を伺っている。

「こいつが……」

 蓮もまた、感じていた。

 これまで敵に対して感じていたムラの多さ、独特の雰囲気。

 そういったものが一切ない、ただ純粋にレベルが違う戦士の力を。

 ヴィルヘルムやルサルカとは違う、肩にかかる異色のストラこそが幹部の証。

 そして、赤化(ルベド)を象徴する真紅のストラを纏うこの女こそが、ベアトリスが目的とする、嘗ての愛すべき上官。

「よかろう、最低限の位置は脱しているようだ。キルヒアイゼンの手を借りているとはいえ、既に戦士として戦える領分にまでは成長していると認識した。誇れツァラトゥストラ。我が君の敵としてあれることに」

「ざけんな。何も誇らしくねえよお前らみたいなのに認められたってな」

「ふ、威勢のいいことだ。まだ元気があるのなら、こちらも試し甲斐がある」

 その瞬間、二人は同時にその場から立ち退いた。

 一瞬遅れて地面が赤く染まり、炎の柱が吹き出る。

 後退する二人を追うように、二本、三本、四本。

 そしてやがて二人を囲い込むように、五本、六本、七本、八本。

「くそが、冗談じゃねえぞこの威力!」

「私も貴方も防御力に秀でているとは言えません、一発も当たらないように!」

 蓮もベアトリスも、圧倒的機動力から繰り出される必殺の一撃こそが本懐だ。

 であれば成すべきことは自ずと限られては来る。

 来る、が。

「…………」

 双方の手が止まる。

 自然と、何かを確認するかのようにベアトリスとエレオノーレが互いを見やる。

「どうした、本気を出さんのか」

「どうしました、様子見が過ぎますよ」

 重なったその言葉を聞いて、ふ、とエレオノーレが笑った。

「ああ、さもありなん、だ。途中から察してはいただろう」

 エレオノーレは指先で葉巻に火をつけ煙を吹き出す。

 ベアトリスを見て、蓮を見て、その目的を言葉にした。

「今宵は、私はただ貴様らを試しに来たに過ぎん。何より……ハイドリヒ卿から『我々の手でスワスチカを開かないように』と厳命されている。それを破るわけには行くまいよ。よって、今宵私は貴様らを殺す気はないわけだ」

 運が良かったな、小僧ども。

 そう言うエレオノーレに対し、蓮もベアトリスも怪訝な表情をする。

「ラインハルトの……?」

「命令……?」

 それは、一体いかなる意図か。

 ただの気まぐれ、遊興を気取っている、と言えばそれまでではあるが。

 この時ラインハルトを知るベアトリスも、一度顔を合わせただけの蓮も、同じことを思った。

 そこに、何かがある。

「……三騎士が動くまでもなく、全てのスワスチカが開くと?」

「さてな、好きに考えるといい。それよりも、だ。キルヒアイゼン、私もな、お前に用があった。試しのついでにとハイドリヒ卿に命を頂き、こうしてこちらから足を伸ばしに来てやったわけだが」

 エレオノーレが話を切り返す。

 その瞳は呆れの色を多分に含んでいた。

 本気か貴様、そう目で言っているのが、ベアトリスには分かった。

「貴様は、あー。長らく、貴様のようなものが黒円卓にいたことに疑問を持ってはいたが。よもや、先の放言が貴様の本音なわけか。この私を、取り戻すなどという」

「ええ、その通りですが、何か?」

 それを見て、ああ、やはり貴方は分かってくれないのですね、知ってましたけど。

 そうこちらもまた呆れたような色を含ませて、自信満々に言い切った。

「黒円卓に入り、戦争が終わり、数十年を過ごしました。私もまた、不変ではいられず……いえ、まあ、大分変わった自覚はあります。ですが、この胸に抱く誓いだけは、変わっていません」

 雷の切先を向ける。

 この思いを、分からず屋の身に深く深く突き立てるために。

「私はこの命にかけて、貴方をハイドリヒ卿の下から取り戻す。ヴィッテンブルグ少佐、愛してはならないものを愛してしまった貴方を、修羅道(グラズヘイム)に堕ちてしまったこの手で討つことが、貴方への最後の恩返しです」

「ほざいたなキルヒアイゼン。貴様、その言葉が何重にもこの私を侮辱したと、知っての上でのことだな?」

「ええ、ほざきますとも。私は貴方の部下ですが、いい加減愛想の貯金は尽きているんで。それに、良き部下は悪しき上官に物申すものです」

「――は。ここまで言い切られると怒りも沸かん。やはり貴様は馬鹿娘だ」

 正確には、怒ってはいるのだろう。

 自身の忠義を愛などと形容してくれたことに相応の報いを受けさせねばなるまい。

 そして同時に、これだから、貴様は手元においておかねばならん、とも思う。

「その言葉全てそちらに返そう。良き上官は跳ねっ返りの部下の面倒を見るものだ。貴様のそのおめでたすぎる勘違いを正し、あるべき場所に帰してやろう。キルヒアイゼン、貴様は我が下にあるのだ。私と共に、輝ける修羅となる栄誉を掴むがいい」

「謹んでお断り申し上げます。死者の行軍なんぞ反吐が出ますし、それにマジ顔で愛と忠義を履き違えちゃってる乙女拗らせた人をこれ以上見ているのは悲し過ぎ――」

「ふんっ」

「ああっと危なッ!?」

 ベアトリスの鼻先を炎が掠めた。

「大体貴様、愛だの恋だののうつつを抜かしているのは貴様の方だろう。軟弱な恋愛にかこつけてこの私を同類項に纏め上げようとするとはいい度胸だ。ん? 知っているぞ、将軍殿と随分良い仲になったそうではないか」

「うぇ? あー、まあ……えへへ」

「ふんっ」

「危なッ!? あつッ!?」

「かの将軍は成る程それなりではあったが。所詮揃って馴れ合う程度の器だったか」

「む。少佐が恋愛否定主義なのはともかく先輩まで一緒くたに罵らないで下さいよ」

「事実だろう」

「ほほう、彼への侮辱は私への侮辱と受け取ります。つまり二倍罵られたということでオーケーですか、オーケーですね?」

「阿呆な言葉を使うな。撤回させたいのなら力を以て示せ。だいたい……」

 雷の先端と、炎の壁がちりちりとせめぎ合う。

 そして、それが小さく弾けると同時に、

「私は認めてなどおらんぞ。貴様は私のものだと言った」

「じゃあ結婚認めて下さいよお母さん!」

 再度、激突が始まった。

 途中から一体何の話してんだこいつら、という顔でダレかけていた蓮は一瞬遅れて続いた。

「おい、お前真面目にやってるんだろうな!」

「極めて真面目ですよ失礼な! これからちょっとお母さんに先輩との婚約を認めさせないといけないんで貴方も気合い入れてください!」

「そう言う物言いが真面目さを疑うっつってんだよクソジャージ! ぶっ飛ばすぞ!」

「…………?」

「駄目だ……こいつ真顔で小首を傾げやがる」

 襲い来る炎の波を斬り裂く。

 斬り裂くことは、できる、今はまだ。

 エレオノーレの活動は他の形成、或いは創造にさえ匹敵するかも知れない。

 だが瞬間的に創造に至った蓮は、この段階であればまだなんとか対応可能だった。

 むしろ遅れを取っているのは、

「ふぅっ、やはりきついですね……」

 遅れを取っているのは、ベアトリスの方だった。

 纏う雷は明らかに炎の勢いに劣っている。

 剣先と拳に纏うことによって効率よく道を作ってはいるが、その余波からは明らかに身を守れていない。

「おいお前、大丈夫なのかよ」

「問題ありません、事前の通り遊撃を続けてください。正面からは私が行きます」

「けど」

「ええ、はい。そろそろ……『充電』分の切り時ですので」

 そう言うと、ベアトリスは腰に取り付けた筒から、何かを取り出す。

 黒い棒、針のようなそれを、機械手甲纏う左手でつまみ、

 

「――『ユピテル』」

 

「……む」

 その名を唱えた瞬間、ベアトリスが全身に雷を纏う。

 先とは比較にならぬ質と量。

 取り出した黒い針を手甲に差し込むと、手甲に付けられた計器が左から右へと傾く。

 これまで必要最低限の雷のみを生み出していたそれが、今や壁に、剣に、槍になるほどの膨大な雷を生み出し前方の炎を打ち砕く。

 一歩、前に踏み込んだ。

「次いで、もう一つ――『レイゴン』!」

 踏み込みと同時に、もう一つの黒針を取り出す。

 手甲から引き抜いた一本目の針と、新たに取り出した二本目の針。

 それらを、腰の機械帯(マシンベルト)正面の差込口にセットする。

「――Totentanz」

 そして、ベアトリスは雷となった。

 鎬を削っていた炎の波を、軽々としたステップで雷が踏み越える。

 雷光の速さで、剣が、拳が振るわれる。

 ぶつかり合うのは炎と雷、しかしその刹那に鋼が砕きあうが如き音が何十も折り重なって戦場に響き渡る。

「は、なるほどな。――形成(イェツラー)

 その様を見て、エレオノーレが笑みを深くする。

 そして、背後から追撃の砲塔を生み出す。

 その巨大に過ぎる聖遺物、列車砲の持つ武装の数々。

 こちらもまた先と比して、数十倍の規模と言ってもいいほどの物量だった。

「Foyer!」

 その砲撃が、ベアトリスの前進を止める。

 一瞬でも隙あらば、喉元へと飛び込んでいくのが雷光だ。

 しかし、エレオノーレはそれを許さない。

 ベアトリスは確実な迎撃のために、その足を止めることとなる。

 そして足が止まれば照準は定まり、全ての攻撃がそこに殺到する。

「……おおおおおおおおおおおおッ!!!」

 だが、その全ては砕かれる。

 ベアトリスの意のままに滞空し振るわれる雷の聖剣は、竜巻の如く回転し、盾の如く彼女の前方を阻む。

 そしてそれを抜けて来る砲弾を、機械手甲(マシンアーム)の両腕が、その握りしめた拳で砕く、砕く、砕く!

 押し迫る砲火の嵐に、唯一人の戦乙女がその身を城塞の如く、それらを防ぎ切る。

「せえええいッ!!!」

 そして、一つの砲弾が一際大きな音と光を伴い破裂した瞬間、僅かに別の風切り音がそこに混じったのをエレオノーレは知覚した。

「Panzer」

 即座に自身の足元に顕現させた対戦車砲を起爆させ、爆風に乗る。

 大きく位置を変え、先程まで自分のいた場所を見やると、その場にあった瓦礫は断頭台の刃によって両断されていた。

「新兵がなかなか、連携まがいのことをするではないか。単純だが悪くはなかったぞツァラトゥストラ」

「……チッ!」

 獲物を仕留め損なった刃が有り余る殺意を向ける。

 ベアトリスの奮戦にエレオノーレが僅かに目を惹かれた瞬間を狙っての吶喊だった。

 事実、それは鉄壁たるエレオノーレにとって非常に数少ない、戦場にあって尚わずかに気が緩む瞬間ではあった。

 それを見極めた蓮の目は決して間違ってはおらず。

 しかしそれでも尚対応された、それだけの話だった。

「悪いが単純な速さであれば、身近に貴様らよりも遥かに速いのがいてな。アレに差し迫る何かがなければ、食らってはやれないよ」

「……バケモンが、大人しく死んどけよ。こっちはてめえらと違って、殺し合いなんざ欠片も楽しくねえんだよ」

「ならば、敵を殺すための力をつけることだな? そう、何事も全ては力あればこそ。力なきものに己の意を通す権利はない。ハイドリヒ卿はただ、世の当然の摂理を説いているに過ぎん」

「生き死にでしかものを語れない老害がっつってんだよ!」

 正しく、エレオノーレこそはラインハルトの意思を、その言葉で、行動で、最も体現する存在だった。

 どれほど騎士然としていようと、好敵手への敬意と正しい礼儀があろうとも、いや、それがあるからこそこの女の言論がヴィルヘルムやルサルカの物言いを極めきった不愉快なものであることに蓮は歯軋りする。

 だが、怒りに任せて飛び込むことはできない。

 既にこの女が、あのトバルカインを複数用意して取り囲んでも殺すことなど到底できないものであると、生半な様子見そのものが無意味であると悟っていた。

「さて……今回はツァラトゥストラの試験と、随分と様変わりしたらしい貴様の力を確かめに来たわけだが、キルヒアイゼン」

 煙を出し尽くした葉巻を消し炭にし、新たな葉巻に火をつける。

 悠々と煙を吐き出しながら、エレオノーレはこれまでの戦いを検分する。

「傍目から見た貴様は、確かに脆弱だ。ツァラトゥストラのように女神の魂を持つわけでもなく、己の魂のみでエイヴィヒカイトを動かすなど、創造位階に至る熟練度があろうと根本的に力が足りぬ。事実前半の貴様の戦いは何とも落ちぶれたものであったが」

 エレオノーレはベアトリスを見る。

 正確には、その腕と腰。

 雷を纏う機械手甲(マシンアーム)と、それに握られ雷を供給される聖剣。

 そしてそれらの大本である、雷を生み出す機械帯(マシンベルト)を。

「新たな聖遺物……ナウヨックスが器物型の聖遺物と、それに付随する融合要素を研究していたな。手甲と帯、そして剣。一連の装備を鎧と見立て接続したか」

「ご明答です。これが、私の新たな鎧です」

「そして、その聖遺物は魂の駆動無くして一定量の雷を生み出す機能があるようだ。更に、その外部装備。その黒針に数千人に匹敵する雷を事前に溜め込んでいる。それを解き放つことで、一時的に本来の貴様……いわんや、それ以上の力を得ているか。だが」

 それだけではない。

 エレオノーレは更にその先を見ている。

「貴様が今更他者の魂を使いたくないなどと軟弱な寝言をほざくとは思わん。貴様もまた、軍人であるのだから。己が糧としたものを否定することは、ない。であればその身に魂を蓄えぬのは、何か別の理由ができたからだ。そしてそれこそが」

「…………」

「貴様が、私に対して抱く勝算、というわけだな?」

「だとすれば、何だというのです?」

「決まっている」

 エレオノーレは凄絶な笑みを浮かべた。

 黒円卓の陣が、更に拡大し輝きを放つ。

 そしてその陣から、列車砲の砲塔がその暗闇を覗かせる。

 すなわち、一点への攻撃という意味では彼女が持つ最大の火力だ。

「私はスワスチカを決して開かぬ。しかし、ハイドリヒ卿は貴様らに期待をしている。私はハイドリヒ卿の爪牙であり、その意志を体現するものであれば。期待をかけた程度で、貴様らは死にやしまいな?」

「ええ。やるってんなら貴方の命が散ることになりますよ!」

「はッ!」

 本気だ。

 成る程、創造まで使うつもりはないのだろう。

 だがもとより相手の攻撃力はそもそも形成で十分なのだ。

 であれば相手の興が乗った以上、こちらも死力を振り絞らねばならないか。

 そうベアトリスは覚悟して、三本目の黒針を取り出そうとし、

「……ッ! おいちょっと待て!」

「……あ!」

「……む、時間か」

 その場の三人が、遠方のスワスチカが開いたことを知覚した。

 立ち上る魂の光、その示す場所は、タワー。

「ふむ、ベイを下したか将軍殿。であれば……万が一が起こり得てはなるまいな。やれやれ、将軍殿も気が早い」

 そう言って、夜空の向こうを見やる。

 スワスチカが開く寸前、一瞬だけ肥大化したその力が、その力を纏うものが、流星となってこちらに向かってくるのが分かる。

 そして、その漆黒の流星が列車砲の砲塔に着弾し、その砲塔を折り曲げた。

「む……」

 流星はその場に静止し、今はっきりとした人型となって見ることができる。

 霧のように立ち込める闇と無数の漆黒の茨を全身に纏い、その瞳を赤く、赤く光らせた、闇そのもののような男がそこにいた。

「ヴァルターさん!?」

「…………■■■ォォォ」

 その身を闇に染めたヴァルターは、曲がった砲塔を足場にしながら唸りを上げる。

 存在毎変質したかのような有様で、しかしベアトリスの声に確かに振り向き、その意志を感じさせた。

「大丈夫ですか、無理してないですよね!?」

「…………」

 言葉は返されない。

 しかしたしかに受け取ったと、沈黙と共に荒ぶる闇はその気性を徐々に鎮めていく。

 エレオノーレをしかと見つめながらも、ヴァルターはそれに確かに応えた。

「久しいな、将軍殿。貴方ともそれなりに積もる話はあるが。これ以上この場にいると、いよいよ本気になってしまいそうだ。故、今宵はここまでとしよう」

「逃げんのかよ。逃がすか、それはそっちの都合だろ」

「はしゃぐなよ小僧。何より、相応しい時というものがある。ツァラトゥストラ、貴様にはまだその先がある。そしてキルヒアイゼン……貴様も貴様で、今全てを出し切るのは困る、などと思っているのだろう?」

 その言葉にベアトリスはは思わず瞠目する。

 そんなまさか、と言いたげに。

「は? いいえ、貴方を前にそのようなこと」

「思っているさ。分かるんだよ。未だ若干の迷いがある。次までに削ぎ落としてこい」

「…………!」

 そして、エレオノーレが指を鳴らすと、列車砲が炎に包まれた。

 列車砲に取り付いていたヴァルターはそこから飛び退き着地する。

 黒円卓の陣がひび割れ、空間の穴が空き、エレオノーレはその中へと帰還していく。

「貴様らを殺すのは、この私だ。精々無様を晒さぬことだ」

「……それは。それは、こちらの台詞です」

そして、その姿は影も形もなくなり、戦いは終わった。

教会は静寂に包まれ、この地に捧げられた魂はなく。

しかしその庭はどこまでも焼け果てていた。

「……ん、無事か二人とも」

 ヴァルターがようやく口を開く。

 纏う闇を消し去り、赤く輝いていた瞳の色も元に戻っていた。

「何とかな。そっちはうまくやったみたいだな」

 危難が去り、蓮が深く溜め息を吐く。

 肺の中の熱された空気が入れ替わり、芯から冷えていくようだった。

「ああ。ベイをタワーのスワスチカに沈めてやった。これで、五つだ」

 そう言うヴァルターの目は眠たげで、何処かふらついているようだった。

 何か無理でもしたのか、蓮にはそのように見えた。

「向こうは試しだったようだが、それでもザミエル相手に重傷を負うこと無く戦いきれたのなら上々だ。あれが三騎士。ラインハルトの前に叩かなければいけない相手だ」

「……あれと同じ強さのやつがもう二人か、ゾッとしないな」

「近いうちに超えなければいけない壁だ。お前が戦いたいなら残り少ない時間でもう一枚上手を行く必要があるな」

「ああ……」

 スワスチカももう五つが開き、残りは三つ。

 それまでに、なせることをなさねばならない。

 この短い激動の戦争の中、蓮は確かに成長し、しかし、それでも未だ足りない。

 仲間はいるにはいるが、それを最初から当てにしていてはどうしようもない。

 壁の向こうはまた壁、闇の向こうはまた闇。

 蓮は自身の現状を再確認させられた。

 そんな事を考える蓮を見て、頭を回す余裕はあるようだと判断し、ヴァルターはベアトリスに声を掛ける。

「ベアトリス。大丈夫か」

「…………」

「ベアトリス?」

「…………」

「おーい」

「はッ!? は、はい、私も無事です、問題ないです」

「問題あるかどうかは、話を聞いてからにするよ」

 慌てふためくベアトリスの瞳はかすかに揺れている。

 それに対し、ヴァルターもなんとなく心当たりはあった。

 あるが故にこちらからは聞かず、話すなら聞く、ということにした。

「『充電』をいくつか使って戦ったんだろう。ともども、今日はゆっくり休め」

「はい、そうします……って、ヴァルターさん? 何か自分は休まないみたいな物言いなんですが???」

「ん、向こうの戦いが終わって直ぐこっちに急行してきたからな、仕込みが終わってない。これからやって……」

「あのですね。その見るからにふらついてる状態で何をすると? ヴァルターさん、決着を急ぐために三本のトリシューラのうち一本を使いましたね!? そんな状態で行かせるわけ無いでしょ! 休むって言うなら貴方の方ですよ!」

「いやでも時間が」

「やるなら今日眠った後! 意地でも離しませんからね!」

 ベアトリスはヴァルターの腕にしがみつきてこでも離れない姿勢を示した。

こうなるとヴァルターにはどうしようもない。

「ん……分かったよ」

「えへへヴァルターさんの体暖かいなりい」

 結局、ヴァルターは色々諦めることにして。

「帰ろうかマリィ」

「レン、レン! 私、あれ、レンとやってみたいです!」

「しっ、見ちゃいけません、いいかマリィ、あれは目を逸らすべきものなんだよ」

 それを見ていた蓮は死んだ目をして視線を逸らしマリィを呼び出して先に帰った。

 この男もおおよそ大概だった。

 

 

 

 

 ボトムレスピットの朝は暗い。

 時計がなければ時刻など分かりようもない。

 だからせめてめざまし程度はセットしなければ惰眠をむさぼることになるだろう。

 休むことは肝心とはいえ、時間は有限だ。

 しかし、その日蓮を起こしたのはやかましい不愉快な時計の音ではなく、ゆさゆさと優しく体を揺する手だった。

「ん……マリィ?」

「うん、そうだよ。レン、おはようございます」

「ああ……おはよう。どうしたんだ、今日は」

「んー、なんとなく。早起きして、レンを起こしてあげたかったのです」

「そっか」

 日々人らしさを増し、愛らしさを増すこの少女に対し何かと理由を突っ込むというのは野暮なことだ。

 例え、それが何処かの誰かの狙いで、掌の上で、思い通りだとしても。

 マリィは優しい少女だ、こんな血なまぐさいところにいるべきではない。

 生前は断頭台で、それからずっとギロチンの側で、今はこれだ。

 そろそろ、ハッピーエンドが訪れる時期ってもんだろう、俺にも、彼女にも。

 あの何人くたばっても誰も悲しまないどころか喜ぶだろう連中が消えることで完全無欠のハッピーエンドが訪れるというのなら、それが多少は蓮のやる気になった。

「行こうか、マリィ」

「うん、朝ご飯だね」

 マリィと一緒に部屋を出る。

 集合部屋に行く最中の道、いつものジャージ姿のベアトリスと遭遇した。

「おや藤井君、マリィちゃんも。おはようございます」

「うん、おはようベアトリス」

「おう、はよ。ヴァルターはいないのか」

「んー、部屋にはいませんでした。いけずな人です」

 朝一番に互いの調子を確認しつつ、隣り合って歩く。

 そんな中、ベアトリスがぽつりと心の内を漏らした。

「……まあ、その、先輩も多分分かってて今朝は距離をとってくれたんだと思います。私が出すべき結論だって」

「昨日のことか」

「ええ、はい。言いましたよね、あの人が、ヴィッテンブルグ少佐こそが、私の本懐だって」

 昨日の道すがら、蓮はベアトリスの戦う理由を聞いた。

 修羅道に落ちてしまった愛すべき上官。

 全ては憧れのあの人をこれ以上魔人としてこの世に残さないように。

「今でも、変わってない。それは、紛れもない本音です。けれど、私はあそこですべての力を使って少佐に勝利しようとすることを、躊躇ってしまった」

「それは、どうして?」

 マリィがそう言って、ベアトリスの顔を覗き込む。

 なんとなく彼女は感じ取ったのだろう、その女性としての心の機微を。

「私の力は、有限です。使い切ってしまえば、終わりです。だから、だから。思ってしまうんです。この力を最後まで使った後。私はあの人の……先輩の力に、なることはできない」

 ベアトリスの表情は、やるせなさとふがいなさに満ちている。

 もっと、自分に力があれば。

 そんな、ここ最近は誰もが覚えのある顔だった。

「先輩は、私がそう思ってることを薄々理解してます。だからいつも言うんです。私の本懐を果たせ、って。こうして自分が離れて、私だけで考える時間をくれる。それって、遠回しに自分のことは気にするな、って言ってるんですよね」

 ヴァルターは、何も言わない。

 自分が何か言えば、その内容が何であろうと余計なことになると思っている。

 どんな言葉であれ、自分が言葉にすることによってそれが未練になる。

 だからこそ何も言わない。

 ベアトリスはエレオノーレとの決着をつけなければならない。

 それこそが、数十年を待っていた理由なのだから。

 ただ、それだけの話。

「……ま、お前らにも色々あるんだろ。俺が言えそうなことなんざ少ないけど」

 そんな様子を見て、蓮が言うべきことは一つだった。

「ビビってんのか、今更」

「んなッ!? 言うに事欠いて失敬な!!! 誰がビビってるですって!?」

「ビビってんだろ。全力を注がないといけない相手がいるのに全力を注ぐ気がないのも、あいつのことであーだこーだ言ってんのもだよ」

 マリィが二人の顔を困惑した顔で見比べているのを背景に、蓮は容赦なく言い切る。

「俺より何十年も前に、ラインハルトと戦うって決めてたんだろ。なら無茶でもなんとかしろよ。ハッピーエンドってやつを目指してよ」

「んぐ、そ、それは……」

 数十年という年月を若いまま過ごしていく魔人にとって心に刺さる言葉だった。

 如何にも、数十年は長いものだ。

 そんだけ時間があれば何だってできるだろ、と言われる時間であり、しかし大概長すぎて怠惰に過ごしてしまうのが常である。

 そんだけ時間があったならそのへんも整理しておけよ、と言われて改めて考えると、まあできなくもなかったかな……と考えてしまうのである。

 それに、確かに、ベアトリスの目的はエレオノーレだ。

 しかし先ず大前提として、ラインハルトと戦う、ということだったはずだ。

 こうしていざエレオノーレと対峙した後だと、その根幹の部分が揺らいでしまっているのが、今のベアトリスには如実に自覚できた。

 ベアトリスは羞恥で顔が真っ赤になった。

「あー、あー、うー、その、ええ、はい、たしかにその通りと言うか、一体何余計なこと考えていたんだろうというか……はあ、嫌ですねえ、これが年を取るってことなんでしょうか……」

「何だ、耄碌して明日も同じこと言い出すってんなら二度目はゴメンだぞ」

「耄碌してません! それと私は永遠の美少女ですッ!!!」

「今自分で年取ったって言ったじゃねえか……」

 すっかり調子を取り戻し騒ぎ立てながら、集合部屋の扉を開ける。

 すると、そこにはヴァルターの姿はなく、代わりに、

「あ、おはようございます。食欲はありますか? 軽食ですが用意してあるので、食べたい方はどうぞ」

「……誰だッ!?」

 蓮にとっては見覚えのない少女が笑顔で出迎えた。

 そして、ベアトリスとマリィにとっては見覚えのある少女だ。

「あ、あの時の」

「おや、カテリナさんじゃないですか。ヴァルターさんはいないんですか?」

 そんな風に親しげに話しかける様子を見て、蓮も警戒を解く。

「……知り合いか?」

「まあ……なんというか。彼女はカテリナさん。ヴァルターさんのお母さんです」

「母です。ヴァルターがお世話になっています、藤井君」

「はあ、どうも……ん? んん?」

 蓮は目の前の、灰金の髪に青い瞳の少女を見る。

 今しがたの言葉を脳内で反復する。

「……母?」

「いやー、その反応新鮮ですねえ。私もそんな感じでしたよ」

「いやいやいや、え、アリなのかそれ」

「エイヴィヒカイトだのマリィちゃんだの知って今更じゃないですか?」

「まあそりゃ……ん?」

 非常にごまかされた気がしないでもないが、一応納得することにした。

 目の前の少女……カテリナは相変わらずニコニコ笑っている。

「まあ、気にしないでください。私は確かな存在ではなくて、かと言って幽霊でもなくて……ヴァルターに残した記憶(メモリー)によって形成された再現体でしかありませんから」

「記憶……再現体……よく分からんが、まあ、そう言うなら気にしないでおく」

「ご飯、食べますか?」

「……食べる」

 こうも笑顔でご飯がどうこうと言われては、むず痒くて逆らう気が起きなかった。

 蓮に両親はおらず、香純の家が彼の家で、香純の母には世話になったものではあるが、綾瀬家の夫婦は彼にとって両親とは言えなかった。

「私もいいの?」

「ええ、勿論。どうぞ」

「あ、カテリナさん私も食べまーす」

 ひとまず三人は席に座り、食事に手を付けた。

 食事によって体に満ちる熱が、今は酷く健全に感じられる。

 食事を始めながら、各々必要な言葉を交わす。

「ヴァルターから伝言です。今朝は早くから仕込みに出ると。夜まで忙しいだろうから、残りのスワスチカの警戒はお願いする、だそうです」

「ああー、やーっぱりヴァルターさんったら……仕方ありませんねえ」

「仕方のない子でごめんなさい、ベアトリスさん」

「いえいえ、慣れっこですよカテリナさん。さて、確認しますが、残りのスワスチカは三つですね。昨日ヴァルターさんがタワーを開いたので」

「残るは病院、教会、遊園地か」

「はい。教会はクリストフの根城でしたが、昨日さんざん暴れまわって尚反応がないところ、もぬけの殻でしたね。いくつも穴が空いたことで封鎖されましたし、誘導暗示なりで意図的に人を集めない限りスワスチカは開かないと言っていいでしょう」

「逆に、病院と遊園地は今も大量の人で賑わってる。張るならそっち、か」

「そうなります。では、どちらに向かうかですが」

 その時、もくもくと食事を取っていたマリィの目が輝いた。

「レン、レン、遊園地って、タワーから見えた、あの楽しそうなところ?」

「……あー、ベアトリス。今丁度希望が決まった」

「はいはいどうぞどうぞ。末永く爆発しなさい若人たち」

「それお前だけは言っちゃならない言葉だよな??? お前らのせいでどれだけ俺が砂糖吐いてると思ってんだ???」

「お前もいずれこうなるんだよ!」

「やめろ、俺はそんなんじゃない!」

「え、違うの、レン?」

「ああいやマリィそういうことじゃなくて……」

「くすくす」

 そうして、方針が決まった所で丁度食事も終わる。

 各々は立ち上がり、カテリナはそれを見届けて、

「では、私はこれで。見ていることしかできないけれど……頑張ってください」

 そう言って、霞のようにその場から消失した。

 最初から彼女はそこにはおらず、肉も魂もなく、存在していない。

 記憶再現体、という言葉を蓮は改めて実感した。

「要するに、思い出ってわけか」

「ああして話もできるし、ものを食べるような振る舞いもできるんですけどね。ただ、そこに存在していない、というだけで。藤井君的には、どうなんでしょうか」

「……俺は甦った死体だの、やり直したいだの、そういうのは御免こうむるが。別にあいつもそういうこと思って呼び出してるわけじゃないんだろ。思い出のままなら、そうだと理解してるなら、別にいいんじゃないか」

「そうですか」

 肯定も否定もしないその対応が、蓮にとってはそれなりに近い対応の仕方であるとベアトリスも理解している。

 そろそろ戦友と言ってもいい間柄ではないか、と彼女は思った。

「じゃ、私は病院を担当しますね。さーて、今日も一日頑張ってまいりましょう! よし、ワーグナーかけるか!」

「行こうマリィ、遊園地は時間との勝負だ、アトラクションは待ってくれないぜ」

「畜生! ぞんざいにあしらいやがって! いいもん一人でワーグナーしてるから!」

「ごめんねベアトリス、ワーグナーにはまた付き合うから」

「マリィちゃんの優しさが染みる……」

 そうして、また一日が始まる。

 そして、この日の夜に、事態は動き出す。

 

 

 この夜、二つのスワスチカが開き、最後の戦いへのカウントダウンが始まる。

 

 




この展開を概ね決めていたにもかかわらずTRPGとゲームにかまけて半年執筆をサボってたやつがいるらしいですよ。

なんてふてえ野郎だ、こんなやつには大量の感想と評価をお見舞いして書かせ続けないといけませんね!!!






正直すまんかった。

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