私ハリーはこの世界を知っている   作:nofloor

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閑話 S.S. の日記

7月〇日

 

 昔からスピナーズ・エンドの家で良い朝を迎えたことは少ない。

 今日もまた、何か嫌な予感を朝から感じていた。

 

 その予感を裏付けるように、朝食を食べ終わった頃にふくろうが手紙を運んできた。

 

 校長からの手紙で、どうやら新入生の買い物の付き添いに行かねばならないらしい。

 まことに偶然ながら私以外の全ての教員に予定が入ってしまった、とか。

 

 かなりの胡散臭さを感じるが、ダンブルドアのやることだ。気にしても仕様がなかろう。

 

 面倒なことは早くに済ませてしまうに限る。

 外出用のローブを着ながら、もう一枚同封されていた羊皮紙を開いた。

 

 

 

生徒の名前と住所を記しておく。 

 

サリー州リトルウィンジング プリベット通り4番地

ハリエット・ポッター

 

頑張っての。

 

アルバス・ダンブルドア

 

 

 

 あの狸……!

 

 

 

 

 

 

7月×日

 

 

 昨日あったことを記しておく

 

 ハリエット・ポッター。

 顔を隠すほどの鬱陶しい黒髪だった。父親が思い出される。

 

 しかし、別行動の後、なぜか顔が見えるようになっていて、

 

 その顔はリリーによく似ていた。

 特に目は、彼女そのものだった。

 

 

 まあ、だからなんだという話だ。

 いくらリリーに似ていようが、ジェームズ・ポッターの娘であることには変わりない。

 

 不本意ながら父親に借りがあるから今年1年は護る。

 それで終いだ。

 

 ホグワーツで命が脅かされることなどまずないだろう。

 つまり、ポッターの娘など気にする必要は無い。

 

 

 

 

 

9月△日

 

 

 入学早々、ハリエット・ポッターが飛行訓練で言いつけを守らず怪我を負ったらしい。

 

 やはり父親と同じく傲慢で、規則破りで、教師に敬意を払わないに違いない。

 箒の才は遺伝しなかったようだが。

 

 

 怪我というのは結構な大怪我だったようだ。

 聞けば、首の骨まで折ったらしい。

 大丈(消されている)

 

 こちらの都合もある故、早々に死にかけるのは止めていただきたいものだが。

 

 広間で見かけたとき、気丈に振舞っているようだったが、表情に陰りがあった。

 リリーが空元気を見せるときを思わせた。

 

 いい教訓になっただろうし、もうこのようなことは起こさないで欲しいものだ。

 

 あやつのことなど、気に留めて置くことすら煩わしい。

 

 

 

 そんなことよりもクィレルだ。校長の言う通り注意していれば、なるほど怪しい動きを見せる。

 より警戒せねばなるまい。

 

 

 

10月31日

 

 

 クィレルが実にわかりやすく不審な動きを見せていた。

 妨害しておいたが、何をするつもりだったのか……。

 

 ポッターが友人の介護を受けていたが、これは両親のどちらにも見たことがない光景だった。

 

 

 

 

11月◇日

 

 

 近ごろ、よくリリーのことを思い出す。

 

 忘れたことなど一度たりとてないが……あやつを見るにつけては、在りし日のリリーの顔が浮かんでくる。

 

 魔法薬を調合する真剣な顔。

 甘味に目を輝かせる顔。

 友と一緒に笑う顔。

 水を被って髪が膨れた間抜け面――いや、これはない。

 

 あのときは不覚にも噴き出してしまった。

 声を上げて笑ったのなど何年振りだったろうか。

 

 

 

 しかし、ブラッジャーに錯乱呪文をかけたか。

 ここまで直接的にポッターを狙うとは。

 

 予想に反して、今年のホグワーツには危険が潜んでいた。

 

 借りを返すためにも、これからは多少強引にでも守護(まも)らねばなるまい。

 

 

 

12月ж日

 

 

 ポッターが攫われたという偽の情報に踊らされた。

 ウィーズリーの双子、許さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6月★日

 

 

 

 またしても、ポッターに命を救われた。

 

 いや、父親とあやつ……ハリエットが違うことは、もうわかっている。

 似た所もあるが、やはり違う。

 

 リリーとも外見は似ていようとも、その性格はまるで違う。

 

 

 ハリエット・ポッターは、一人の人間だ。

 

 強い目だった。11歳とは思えぬほどに。

 生まれがそうさせているのか。

 

 間違いなく、あやつは周りの者が危機に陥れば自分を省みずに助けに行くのだろう。

 そしてその周りの者には、私すら入るという。

 

 愚かだ。

 愚かしい程に、優しい。

 

 しかしその周りの者からすれば、彼女ほど危うい存在もいまい。

 常に人に囲まれているのもわかるというものだ。

 

 実技の成績は良いようだが、まだ11歳。

 幼い故の無茶を見守り、補助してやるのも教師の務めだろう。

 

 不本意ながら、だが。

 

 

 

 

 

 

 

 とはいえ、今年は特別だったか。赴任してから1、2を争う危険を味わった。

 そんな年に入学するなど運がない。

 

 然るに来年度は、平和な、普通の1年となることだろう。

 

 

 

 


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