TS転生したからロールプレイを愉しむ   作:ドスコイ

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あらすじ書くとこにも書きましたが気付かない方も居るかもなので
此処でも紹介させて頂きます。

海鷹さんから主人公ルークスのとても素敵なイラストを頂きました。
是非、ご覧になってください。
https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=66176435


第四話(裏)そうさ、今の俺はタバサだ!

「マスターマスター! 今日は天気も良いしお散歩に行こうよ!!」

「(懐 か れ た)」

 

 ソファーに寝転がって酒を呷っている俺の下にやって来て散歩の誘いをかけるバハたん改めポチ。

 その名に違わぬ犬っぷりだ。

 だってもう、何か尻尾見えるもの。尻尾めちゃブンブン振ってるもの。

 

「(……存外メンタルつええなこのドラゴン)」

 

 ポチが王都に進撃して来た日から既に二週間が経過していた。

 最初の一週間はイジメられっ子もかくやと言うほどのビビりっぷりで常時俺を警戒していたのに今じゃこの有様である。

 最初は恐怖の方が勝っていたようだが、よくよく考えればコイツは力の信望者だ。

 落ち着いて振りかえった時、圧倒的な力と自分を倒した際の大物ムーブにコロっと行ってしまったらしい。

 

 チョロ過ぎて将来が心配になるわ――ポチのが年上だけど。

 

「オラァ! ルークス様の邪魔してんじゃねえぞ馬鹿蜥蜴ェ!!」

 

 俺に対する馴れ馴れしい態度が気に食わないシンちゃんが喰ってかかる。

 ここ数日ですっかり見慣れてしまった光景だ。

 

「うるさいよヒューマン。雑魚が僕に意見するな」

 

 ポチはポチでシンちゃんを毛嫌いしている。

 俺の(押し掛け)奴隷ゆえ直接手を出すようなことはないが、言うても相手は人間だ。

 基本的に自分以外を見下すスタンスはまるで変わっていない。

 そのスタンスに加え自分より弱いのに俺がシンちゃんを傍に置いていることが気に入らないものだから態度が刺々しいものに。

 

「(そういや……)」

 

 先のじゃれ合いにおいて俺は超越の黄金について言及した。

 しかし、よくよく考えれば竜の場合はどうなのだろう?

 師匠も黄金の竜については語ってくれたけど、思い返してみれば超越の黄金だとは言ってなかった。

 

「(件の黄金の竜が俺達と同じ領域に立っていたなら師匠も説明してくれただろうし)

 

 竜と言う種族の成り立ちや祖を鑑みるに頂に至った場合は――――

 

「(赤、かな?)」

 

 本質的には超越の黄金と同じなんだろうけど色が異なる可能性は高い。

 完全を意味する黄金だが、竜に限っては別の極点があるはずだし。

 だとすればポチ――むしろ遠ざかってないか?

 

「(いや、黄金を経て赤に至るのかな?)」

 

 興味深いな。

 別段魔女だから知識に貪欲、と言う訳ではない。

 これはそう……あれだ、育成ゲームをプレイしている時の心境に似ていると思う

 

「(学校にまでデジモンを持ち込んでた小学生時代を思い出すぜ)」

 

 当時はネットとかもよく分かってなかったからな、完全に手探りだった。

 手探りで強くカッコ良いデジモンになるよう自分なりに最善だと思う育成をしていた。

 ああ、この子はどんな進化をするのだろう? カッコ良いデジモンになってくれるのかな?

 胸をドキドキさせながら餌をやりプロテインを与えウンコの掃除をしていた。

 

「(まあ、だからと言ってポチを使ってリアル育成ゲームをするつもりはないが)」

 

 自分を殺せる可能性を持つ者を育て上げたくはない……なーんてことは別にない。

 エレイシアは最強だが、別段その強さに固執している訳ではないからな。

 仮に同格の相手が現れたとしても平然としているだろう。

 ポチを育てないのは単純に面倒だから、そして俺に指導者としての資質がないからだ。

 

「雑魚」

「負け犬」

「チビ」

「小便漏らし」

「ブス」

 

 子供か! いや、片方はガチロリでもう片方も見た目は子供だけどさ。

 デコをくっつけメンチを切り合いながら雑な罵倒を繰り返す様は小学生のそれである。

 

「……やかましいぞ」

「「ごめんなさい!!」」

 

 そして俺に対しては微塵もブレない忠犬ぶり――結構!(児玉清風)。

 

「そんなに元気が有り余っているのなら遊びにでも行け、金はくれてやる」

「遊びに行くならマスターと一緒が良いな!」

「邪魔なら外に行きますが、あたしはなるべくルークス様のお傍に……」

 

 可愛いなコイツら!

 だが慕ってくれるのは嬉しいけど、俺は俺で考えなきゃいけない事があるのだ。

 特にポチ、コイツのせいで色々と予定が狂ってしまった。

 

「(まさか出兵計画が白紙になるとはな……)」

 

 スペルビアはシンケールスと言う国への侵略を計画していたのだ。

 ちょっと本気を出せば軽く踏み潰せるような小国ゆえ今までは見逃されていた。

 しかし、近年シンケールス領内で発掘された資源がスペルビアの領土的野心を煽ったのである。

 シンケールスから資源を買う、なんて発想は無い。

 大国ならばまだしも小国ならば滅ぼし領土諸共に奪うのがこの国のやり方だ。

 いや、大国であろうとも本気で欲しいのなら平気で喧嘩を振り掛けるだろう。国際的な非難なぞお構いなしに。

 

 まあそこらについての是非はさておこう。俺に戦争云々を真面目に語れなんてのはどだい無理な話だから。

 

 問題はその出兵計画が白紙になったことだ。

 俺は今回の侵略を利用して銀髪のババア(年下)をその座から引き摺り下ろすつもりでいた。

 だが王都にポチが出現したことでスペルビアは侵略やってる暇はねえ! とばかりに自国の防備の充実を進め始めたのだ。

 勿論、落ち着けば派兵を行うのだろうが今のところその見通しは立っていない。

 

「(ポチめ、何てことをしてくれんだ……いや、元を正せば俺が悪いんだけどさー)」

 

 折角無い頭であれこれ考えて、これならいけるやん!

 って演出を思い付いたのに行動に移せないとか……。

 いや、待てば良いだけの話なんだけどさ。

 それでも気分的にはもう、バリバリやるぞー! ってなってただけに脱力感が酷い。

 

「(もういっそ直接……)」

 

 いやいや、それは駄目だ。

 ロールプレイやってんだから魅せ方にこだわらないでどうするよ。

 

「(熱くなれよ俺ェ!!)」

 

 現世にやって来てもう一月近く経ってんだぞ。

 ザイン、シンちゃん、リーンくんと面白い人間には出会えたけど本筋から逸れまくってんじゃねえか。

 

「(長く生きるってのも考えものだな……)」

 

 ついつい気が長くなってしまう。

 前世を思い出せ、追われるように日々を過ごしてたじゃねえか。

 趣味を充実させるための金を稼ぐために馬車馬の如く仕事をこなす。

 稼いだ金で充実させたオタ趣味を存分に楽しむ。

 時間は幾らあっても足りなかった、寝る時間さえ惜しいと思うぐらいだ。

 

 俺は今、あの頃の情熱を忘れている。

 

「どうかされましたか?」

「散歩? 散歩に行ってくれるの?」

 

 突然立ち上がった俺に驚くシンちゃんと期待し始めるポチ。

 

「……王都に居るのも飽きた」

「「え」」

 

 積極的に動こうじゃないか。

 出兵計画が白紙になったのだとしても、いずれ再開することは目に見えている。

 ならば今の俺にだって出来ることはあるはずだ。

 シンケールスに味方をする口実となるような人間を探しに行こう。

 

「ポチ、足になれ」

 

 ポチの首根っこを引っ掴んで持ち上げる。

 

「へ?」

 

 封印を緩めると同時にガッチガチの認識阻害を施し開かれた窓から空目掛けて放り投げる。

 

「うええええええええええええええええええええええ!?」

 

 ある程度の高さまで上昇したところでポチが竜の姿に変わった。

 と言っても王都を覆い尽くすほどの馬鹿デカさではない。

 人が数人、余裕を持って乗れる程度の常識的なサイズだ。

 

「行くぞ」

「は、はい!!」

「(……?)」

 

 ポカーンとしているシンちゃんに声をかけたところ、何やら期待の籠った眼差しが返って来た。

 

「(はて? 一体何を……いや、まさか、でも……)」

 

 幾ら何でもそれはないだろうと思いつつ他に思い当たることがない。

 なので試しにとシンちゃんを荷物の如く小脇に抱えてみると、

 

「えへ、えへへ♪」

「(うせやん……)」

 

 SAG●WAでも、もうちょっと丁寧だろって雑な運び方だぞ。

 怒ロリの闇にちょっと引きつつ、俺も窓の外に出て滞空しているポチの背へ飛び乗った。

 その際にシンちゃんをポイっと雑に放り投げたのだが……やっぱり嬉しそうだった。

 

「もう、酷いよマスター……まあでも、一緒にお出かけ出来るなら良いか! ねえ、どこに行くんだい?」

「とりあえずは、東だな。あまり急がなくて良い、ゆっくり飛べ」

「はーい!!」

 

 こうして空の旅が始まった。

 ワープ出来んだろ? ああん? と言われたらその通りだが、転移ではい到着じゃ味気ないからな。

 

「そう言えばルークス様、お屋敷はどうするんです?」

「知らん」

「そ、そうですか」

 

 演技でも何でもない、本気でどうでも良いと思っている。

 だってとりあえずの拠点ってことで奪い取っただけで思い入れなんか無いし。

 じゃあ返してやれよっと言われるかもしれないが、それはそれでな。

 あの屋敷は糞みてえなお貴族様から奪ったものだ。

 で、そんな奴にわざわざ返してやるのも面倒臭い。

 かと言って何が何でも手元に置いておきたいって訳でもないので放置安定だ。

 

「(王都に戻った時、屋敷が使えなくなっててもまた奪えば良いだけだし)」

 

 全員がそうとは言わないが貴族街を見るに腐った連中はうじゃうじゃ居たからな。

 奪う家に事欠かないのはありがたいこった。

 いや、善人ぶるつもりはない。

 ただどうせ奪うなら気持ち良く奪いたいというのが人情だろう?

 善良だったり中庸な人間から搾取するより屑から搾取した方が気持ち良いではないか。

 

 わざわざ糞をターゲットにするのは気持ちが良いから、それ以外の理由は皆無だ。

 

「(我ながらロクでもねえな)」

 

 やっぱこんな大人に子供の教育なんて無理ですよ、はい。

 これから向かうシンケールスで真っ当な大人に出会えれば良いのだが……。

 

「(未来ちゃんクラスのぐう聖じゃなきゃ根本的な解決は無理だろうけど)」

 

 それでも多少は考える切っ掛け、心のしこりになるような何かをくれる大人との出会いを期待したい。

 狂信と憤怒、それだけで心を埋め尽くされた現状はあまりに不憫だから。

 憤怒だけよりかは良い。狂信を通して喜びや楽しみを感じられるのならばまだマシ。

 そう捉えることも出来るかもしれないが、この子はまだ十二歳かそこらだ。

 

「(他の道があっても良いじゃん)」

 

 シンちゃんは人生の半分を屈辱と痛みに塗れて過ごして来た。

 無条件の愛情を受け取ることが許される子供だと言うのに、だ。

 これから先も続いていく人生を憤怒と盲信に捧げることはあるまいよ。

 

「ルークス様?」

 

 不思議そうな顔で俺を見上げるシンちゃん。

 こうして見ればただの子供にしか見えないのが性質の悪いところだ。

 俺とて特別な眼を持っていなければ感違いしていただろう。

 

「……いや、何でもない」

 

 ドラゴンの背に乗って空を飛ぶとか地味にファンタジーっぽいことやってるんだ。

 そうさ、今の俺はタバサだ! シルフィードに乗って空を往く魔女っ娘!

 難しいことは後回しにして景色を楽しもうじゃないか。

 

「オラァ! くたばれ化け物が!!」

「範囲魔法撃つから巻き込まれたくなければ、とっとと逃げなさい!!」

「おい、回復遅れてんぞハゲー! この、ハゲー!! 違うだろー!?」

 

 う る せ え。

 

「マスターマスター、小蠅がやかましいし地上を焼き払っても良いかな?」

 

 良 い 訳 ね え だ ろ。

 

 地上から聞こえる怒号、それは俺達に向けられたものではない。

 冒険者らがモンスターと戦っているだけである。

 

「……あたし王都から出るの初めてだけど、外はこんなんなのか」

 

 フィールドを歩いていればモンスターにエンカウントする、それはお約束だ。

 しかし、王都とその周辺のエンカウント率が尋常ではない。

 どこを見てもモンスターがうろついてて、それを狩る冒険者もうようよ蠢いている。

 母なる大地が人間とモンスターの血で真っ赤じゃねえか。

 しかも何が恐ろしいって、これ別に今日が特別とかそう言うんじゃないってことだよ。

 これが日常なのだ。こんな戦いが毎日毎日、繰り返され続けている。

 

「おいおい、王都に侵入しようとしてるのも居やがるぞ。アグレッシブ過ぎだろモンスター」

「君、王都で暮らしてたんでしょ? 何でそんな驚いてるんだよ」

「ルークス様に助けられるまでずっと地下暮らしだったんだからしゃーねーだろ」

「でもマスターのお陰で外に出られたんでしょ? だったら気付いても良さそうなものだけどね」

「それはしょうのないことだ」

 

 俺がフォローを入れると二人はどう言うこと? と首を傾げる。

 シンちゃんは良いけどポチは前見ろ前。

 前方不注意は自損事故の元だからな。

 

「王都をぐるりと囲む巨大な防壁、あれには結界の術式が刻まれていてな

物理的な防御力を上げるだけではなく、外からの騒音を遮断する効果も編み込まれているのだ」

 

 中々に優秀な結界だと思う。

 俺としては特に遮音部分を評価したいね。

 一定の音量を超えると音が遮断されるだけでなく必要な音は通す仕組みは実に見事だ。

 アレを組んだ人間はよっぽど繊細なのだろう、利点に伴うマイナスをなるたけ減らそうと言う工夫が各所に見られる。

 

「あの壁、そんな力があったんですね。知らなかったです」

「一般の市民が知らぬのも無理はなかろう」

 

 わざわざ説明するようなことでもないしな。

 一般ピーポーからすれば問題なく日々を営めればそれで良い。

 どうして日常を過ごせているのかを詳しく調べる人間なんて稀だろう。

 

「だが、そのお陰で無用な混乱を招かずに済むのだから為政者からすればありがたいことだろうて」

「無用な混乱、ですか?」

「遮音機能に問題は無いが単純な守護と言う意味であの結界は今、大幅に劣化している」

 

 眼下の地獄絵図は何時も通りなのだろうが、王都の外縁に配置されている兵の数が多い。

 表向きの理由はポチの再襲撃を警戒してとかそんなだろうが、内情は違うはずだ。

 

「(国が結界の劣化を把握していないはずがないしな)」

 

 モンスターが王都内部にまで侵入して来る事例は珍しくもないが、今は不味いだろうし。

 何時もは結界全体の被害を抑えるため意図的に作ってある穴から王都に侵入されてるから対処も容易い。

 だが結界全体が劣化した今、どこからでも結界に穴を穿ち易くなっている。

 主導権を握れていない現状でモンスターを招き入れるほど国も馬鹿じゃない。

 

「劣化って、何かあったのかい?」

「貴様のせいだろうが」

 

 ドラゴン――その中でも今の時代の最上位がポチだ。

 そんなポチが力を抑えることもなく無遠慮に垂れ流しながら王都に現れれば影響が出るに決まってるだろう。

 俺みたいに力を抑えたり、力を発露しても結界に影響を出さないように出来るなら問題ないんだがな。

 

「ただそこに在るだけで多くに影響を与えることを自覚しろ、馬鹿者め」

「いやー、ハハハ! 強いってのは罪だね!」

「糞蜥蜴、テメェはホントロクなことしねえな」

「え? 今何か言った? ごめんね、蟻の声なんて聞こえないんだ!」

「こ、この……!」

 

 また口喧嘩を始める二人。

 止めるのも面倒なのでそっと視線を外す。

 

「(上も下も大騒ぎだな……ん? 待てよ……)」

 

 地上で暴れ回る冒険者らを見て、俺はあることを思い付く。

 

「(…………シンケールスに着いたら試してみるか)」


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