TS転生したからロールプレイを愉しむ   作:ドスコイ

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第一話(表)獅子の心

 その日、王都は数百年に一度かと言うほどの大嵐に見舞われていた。

 悲鳴のような風雨と、怒号のように轟く雷。

 こんな日は誰もが誰も、家の中に閉じこもって嵐が過ぎ去るのを待つだろう。

 だが王都の人間は少し――いやさ、かなり違っていた。

 

「ったく……どいつもこいつもはしゃいでやがらぁ」

 

 王都で一番高い時計台の天辺にその男は居た。

 逆立つ金の御髪と蓄えられた豊かな顎髭から獅子を連想させる彼の名はザイン・ジーバス。

 ザインの眼下では王都の人々が乱痴気騒ぎに興じていた。

 

「これもお国柄かねえ」

 

 中央に近付けば近付くほど、物理的にも精神的にもハードになっていくのが”スペルビア”と言う国だ。

 

 そんなスペルビアの最も熱い場所である王都に住まう人間が嵐如きで大人しくする訳がない。

 いや、普通の嵐ならば一般人も冒険者も今日は休みだなーと家や宿でダラダラしていただろう。

 しかし、これは普通の嵐ではない。数百年に一度の大嵐だ。

 テンションの上がった人々は誰が音頭を取る訳でもなく、気付けばはしゃぎ出していた。

 秋にある収穫祭にも匹敵するかと言わんばかりの熱気は壁の華を気取っているザインにまで伝わっていた。

 

「いよぉザァイン! 折角だしお前も飲もうぜぇえええええええええええええええええ!!!!」

 

 嵐の音にも人々の嬌声にもかき消されない大声がザインの耳に届く。

 時計塔の下では蒼い髪をした軽薄そうな男が酒瓶を片手に大きく手を振っていた。

 

「……ガルムか。しゃーねえな」

 

 ザインは苦笑を浮かべ時計台のへりを蹴り身を投げ出した。

 100m近い高さがあったが彼に限っては心配は無用。

 王都でも指折り、現役最強の一角と謳われるザイン・ジーバスにとってこの程度の高さは屁でもなかった。

 

「ようガルム、随分とご機嫌じゃねえか」

 

 ズン、と着地の衝撃が走り石畳が蜘蛛の巣状にひび割れる。

 普段ならば公共物破損を見咎められるだろうが今日は無礼講。

 公僕であるガードですらもすげえすげえと笑って見ているだけなので後ほど請求書を送られることもないだろう。

 

「バハハハハ! そりゃ楽しいもん! 楽しい時は全力で笑おうぜ……なあ、兄弟!?」

 

 ガルムは強引にザインの肩に腕を回し酒瓶を差し出した。

 ザインはしょうがねえと苦笑しつつ酒瓶を受け取り躊躇うことなく一気飲み。

 

「ヒュー! カッコ良い!!」

「っぷはぁ……ガハハハハハハ! 雨か酒か分かんねえなこりゃあ!!」

 

 どうやらザインにもお祭りスイッチが入ったようだ。

 壁の華を気取ることを止めて友人と肩を組み歩き始める。

 

「しかし何だ、モンスターどもも今日は大人しいと思わねえかガルムよ」

 

 屋台で買ったビショ濡れの串焼きを齧りつつザインがそう切り出した。

 

「んあ? あー……言われてみりゃあ、確かに……」

 

 モンスターと言うのは中央に近付けば近付くほど、強く賢く気性の荒い者が多くなる。

 王都内部にまで攻め込まれるのなんてしょっちゅうだ。

 今日のように人間達が緩みまくっている日であれば喜び勇んで攻めて来るはずだ。

 そして雪崩れ込んで来たモンスターもこの馬鹿騒ぎの余興に使われることだろう。

 だがザインが時計台の上から見渡していた限りではモンスターを使ったイベントなどは行われていなかった。

 

「あれじゃね? 奴さんも嵐の日ぐらいはヤサでのんびりしてえんじゃないのか?」

「嵐如きで怯むような大人しいタマじゃねえだろ、アイツらは」

 

 お祭りスイッチが入ってはいるが、そこはそれ。

 ”倦んで”しまっていてもザインは根っからの冒険者だ。

 はしゃぎつつも、不透明な何かに反応する勘が働いているらしい。

 

「んなこと言われても知らねーよ! そう言う難しいことは王宮お抱えの”魔女”様にでも任せとけ!!」

「……魔女ねえ」

 

 胡散臭い顔をするザイン。

 その脳裏に浮かび上がるのは何時か見た”銀髪”の美しい熟女の姿。

 

「始原の魔女の弟子に任せときゃ大概のことはどうにかなんだろ」

「そうかねえ」

 

 確かにアレは凄まじい力を持っている。

 正攻法では勝ち目が見えないと言うのはザインも認めるところだ。

 

「……あのアマ、どうにも薄っぺらいんだよな」

 

 偽れぬ歴史が語る始原の魔女は理の外にいる正真正銘の怪物。

 それを継ぐ者としてあの魔女はあまりにも薄っぺらい。

 どう足掻いても貫けそうにない厚みがまるで感じられないのだ。

 

「難しいこと考えてんなよ! ほれ、飲め飲め!!」

「ったく……まあ良いか。今日ぁ祭りだしな!!」

 

 不透明な不安をよそへと蹴り飛ばす。

 酔い潰れていようが何だろうが、自分ならまあ大概のことは何とか出来る。

 ザインは心のどこかでそう思っているのだ。

 実際、それは決して間違いではないのだが……。

 

「ヒック……あ゛ぁ?」

 

 ガルムに浴びるほど酒を飲まされ良い具合に出来上がったのだろう。

 顔は赤く、目もすっかり据わってしまっている。

 そんなヘベレケ状態のザインの目に不可思議な光景が飛びこんで来た。

 

「どうなってんらぁ……?」

 

 中央広場の大噴水広場。

 普段から人々でごった返すその場所は何時も以上に賑わっていた。

 

 だが、妙なことに広場の中心――噴水のあたりだけポッカリと空白が出来ているのだ。

 

 こんな日だ、浮かれた馬鹿が噴水に飛び込んでひと泳ぎしていそうなものなのに。

 よしんば泳ぐのはなしにしても、噴水に腰掛ける連中が居ないのは不自然だ。

 ケツが濡れるから? そんなことを気にする人間はそもそも嵐の日に出歩かない。

 

「あれは……」

 

 気付く。

 今まで目に入っていなかったが一人だけ噴水に腰掛けている者が居た。

 純粋な闇をそのまま削り出したかのような非常識なまでに美しい女。

 娼婦か何かと見紛うような扇情的なドレスに身を包んでいるが、その手の女特有の空気はまるで感じない。

 それどころか浮世離れした品のようなものまで感じる。

 見た目通りの年齢ならば二十前半から半ばと言ったところだが、どうにもそんな気がしない。

 ザインにはどうしてか女の見た目と中身が不釣り合いに思えてならなかった。

 

「……――――」

 

 言葉を失う。

 女を認識すればするほどにその美しさに圧倒される。

 気付けばザインはガルムの腕を振り解き、ふらふらと歩き出していた

 その姿はさながら誘蛾灯に惹かれる羽虫の如く。

 

「よう姉ちゃん、楽しんでるか?」

 

 軽薄な調子で声をかけると女はゆっくりとザインに視線を向けた。

 

「……」

 

 女は無言のまま。

 ザインはそれを気にすることなく下品な笑みを浮かべ言葉を続ける。

 

「よう、一発どうだい? 何、タダとは言わねえよ。

姉ちゃんみたいな別嬪、御高い娼館でもお目にかかれやしねえからな。金ぁ弾ませてもらうぜ」

 

 酩酊に足すことの自身の力に起因する驕り。

 そして認識さえ出来ないほどにかけ離れた彼我のスケール。

 それがザインの第六感が鳴らす警鐘を気付けなくさせていた。

 

 酔っていなければ、倦んでおらず謙虚であったのならば直ぐに気付けていただろう。

 

 まあ、その途方もないスケールゆえ力の全容どころか一端すら掴めまいが。

 それでもヤバイと認識出来るだけの実力をザイン・ジーバスはギリギリ備えている。

 しかし悲しいかな、所詮は”もしも”の話。

 酔っているし驕っている、そんな今のザインに女の危険性が理解出来ようはずもない。

 

「――――現実逃避なら他所でやれよ小僧」

 

 忘我するほど美しい声だった。

 王都の歌劇場で主演を張るトップスターの歌声すら雑音に成り下がるほどの。

 それは声なのか? 声と形容して良いのか?

 そう自問を繰り返したくなるほどに女の声は魔性を帯びていた。

 

「あ、あんだと……?」

 

 酔いが急速に醒めていく。

 ザインはここに来てようやく、本来の己を取り戻し始めていた。

 

「そんなにつまらぬか? 笑えるな、頂点に立った訳でもないのにこんなものかと見切りをつけて」

 

 皮肉げな笑みをたたえ、女はザインの心の奥深くにある”澱み”を射抜いた。

 

「ッ!」

 

 自身の裡側を言い当てられたから動揺した――訳ではない。

 黄金に輝く女の瞳に宿る感情を見て心を掻き乱されたのだ。

 ありとあらゆる事柄に対する失望、それがゆえの諦観。

 その深さは千年も生きていない小僧程度ではとても測り知れるものではない。

 ザインは今、底の無い深淵を覗き込んでいるかのような錯覚に囚われていた。

 

「世界の広さを知らぬがゆえに根拠のない万能感に痴れる幼子のようだ」

 

 恥ずかしい恥ずかしい、ああ恥ずかしい。

 その齢で未だ幼き頃の愚かさに耽溺するなぞ厚顔無恥にもほどがある。

 

「テメェ……!」

 

 恐怖を認識するよりも早くに自負を傷付けられたことによる怒りが顔を出してしまった。

 だがその怒りも、即座に圧し折られることになる。

 

「蒙昧な野良犬風情が跳ねっ返るなよ、万年早いわ」

 

 瞬間、世界が闇に閉ざされた。

 

「え……あ……へあう?」

 

 嵐が消え去った。

 人々が消え去った。

 空が消え去った。

 地面が消え去った。

 光が消え去った。

 音が消え去った。

 

 世界の終わりがあるとすれば、それはきっとこんな光景なのだろう。

 

「(何だ、これ、は……いったい、なにが……)」

 

 蟻のように全身を這いまわる恐怖。

 息が苦しい、視界が明滅する。

 自分は、世界は、一体どうなってしまったんだ?

 ぐるぐると混乱する頭では――いや、例え冷静であったとしても現状に対する答えは導き出せないだろう。

 

「う、ぐぅ……ひぃ……ッッ」

 

 膝から崩れ落ちた。

 だと言うのに地面の感触も何もなく、それがどうしようもなく恐ろしい。

 自分の声も聞こえない。

 頭を抱えて丸まっているつもりだが、それが出来ているかどうかも分からない。

 

 獅子の如き益荒男が子猫の如き有様だ。

 

 このまま放置していれば秒と経たずに心が壊れていただろう。

 だが、ザインの心が砕け散るよりも早くに闇が祓われた。

 

「ッ~~~!!」

 

 五感が復活し、変わらぬ世界が戻ったことで安堵するザイン。

 ぜーはーと短いスパンで何度も呼吸を繰り返しているのは生きている実感が欲しいからか。

 

「あ、あんたは……一体……」

 

 先程の闇。

 アレは幻覚魔法の類か? いいや、違う。

 そんな生易しいものではなかった。

 馬鹿馬鹿しいと思うかもしれないがザインは一瞬、本気で世界が終わったのだと思っている。

 

「フン、先程よりは”見えるツラ”になったようだが……まあ、私には関係のないことだ」

 

 女はゆっくりと立ち上がった。

 よくよく見れば彼女はまるで嵐の影響を受けていない。

 雨に濡れてもいなければ暴風でその長く美しい髪が揺れてもいない。

 

「ま、待ってくれ! 名前……せめて、名前だけでも教えちゃあくれないか!?」

 

 背を向けて去って行く女を必死に呼び止める。

 あんな理外の、万度生まれ変わっても足元にさえ届きそうもない正真正銘の怪物。

 このまま黙って見送るのが最善だと理性が囁いている。

 だが、ザインには心の叫びを無視することが出来なかった。

 

「……」

 

 女はぴたりと立ち止まり首だけを動かしザインを一瞥する。

 だが直ぐに興味が失せたのか女は二度と振り返ることもなく去って行った。

 別段、何か言葉をかけた訳でもない。

 瞳に宿る失望と諦観もそのまま。

 

 だがザインにとっては――――

 

「お、おいザイン! 大丈夫かお前!? 急にどうしたんだよ」

「……ガルム?」

 

 ガルムが心配そうに膝を突くザインの下まで駆け寄って来る。

 

「もしかして……飲ませ過ぎちまったか? わ、悪い……そんなつもりじゃなかったんだ……」

「(……どう言うことだ?)」

「家まで送るか? 肩貸すぜ?」

「いや、大丈夫だ。それより、さっきとんでもねえ別嬪が居たよな?」

「は? 何言ってんだ?」

「(あの女を認識出来ていたのは俺だけ……?)」

 

 怪訝な顔をする友人を見て思考に耽るが幾ら頭を捻っても理屈は分からなかった。

 

「(いや、考えることすらおこがましいな。あの女はそう言う存在だ)」

 

 心配そうに差し出された手を掴み立ち上がったザインは一度大きく深呼吸をする。

 未だ心臓はうるさいぐらいに鼓動を刻んでいて、少しでも落ち着きたかったのだ。

 

「……悪い、今日はもう帰るわ」

「お、おう?」

 

 そうしてザインは嵐の中、わき目も振らずに駆け出した。

 女を追う――訳ではない。

 追い付けるとは思えないし、仮に発見したところで今度は一瞥もしてくれないだろう。

 

「あぁ……気持ち良いな」

 

 吹き付ける風、突き刺さる雨。

 倦んでいた心から澱が洗い流されているような感覚を今、彼は味わっていた。

 

「……ここに来るのも久しぶりだな」

 

 十年前に購入した自宅に戻ると濡れた身体を拭くこともなく一直線で地下へと向かう。

 地下には錠前で硬く閉ざされた扉があり、少し躊躇うも迷いを振り切るように扉を蹴り破った。

 鞘に収められた剣が壁に立て掛けてある以外、部屋の中には何もない。

 

「久しぶりだな”レオン”」

 

 そう語り掛けゆっくりと剣を取る。

 懐かしさと、そして後ろめたさが混じった声だった。

 

「……」

 

 獅子の意匠が取り入れられた剣。

 正式な銘はレオン・ハート、獅子の心と名付けられたこの剣は主観的にも客観的にも特別な代物だった。

 十年振りに握ったと言うのに愛剣は驚くほど手に馴染む。

 ザインはそのことを嬉しく思いつつ静かに剣を引き抜く。

 

「綺麗だな」

 

 幻想的なまでに蒼く透明な刀身に感嘆の吐息が漏れる。

 久しぶりに抜いたから――ではない。

 何度見たか数えるのも馬鹿らしいぐらいなのに、何度見ても見惚れてしまうのだ。

 

 ザインがレオン・ハートと運命の出会いを果たしたのは十五年ほど前のこと。

 

 駆け出し冒険者としてダンジョンに潜った彼は不幸にも未踏の領域に繋がる道を渡ってしまう。

 初心者向けのダンジョンから一気にMust Dieな地獄へ放り出されたザイン・ジーバス少年。

 彼は地獄に来て直ぐ剣を失った。

 一矢報いんと地獄の中では”雑魚”でしかないモンスターを切り付けた時に砕け散ったのだ。

 当然、掠り傷もつけられなかった。技術や膂力もそうだが、刃としての格が足りなかった。

 ザイン少年が身に纏っている安物の防具なんて掠っただけで全壊なのにアンフェア過ぎるだろう。

 

 そんな彼が生き延びることが出来たのは運が良かったから。

 

 秘めたる能力はあれども刃もなしに磨けるものか。

 息つく間もなく訪れる”死”を傷付きながらも生き延びられたのは運が良かったから。

 運が良かったから――――レオン・ハートと出会うことも出来た。

 ほんの十分でも良いから休息を、縋るように飛び込んだ小部屋の中に当時は銘がなかったレオン・ハートが鎮座していた。

 

 無いよりはマシと無銘の剣を手にした瞬間、栄光へと続く道が開かれたのだ。

 生命維持機能、そして何より心の輝きがそのまま刃の鋭さに変わる力が少年ザインを支えてくれた。

 ”死”を潜り抜ける度に折れて繋ぎ合わせてを繰り返し鍛えられた心。

 それがダイレクトに反映された刃は地獄の悪鬼どもにも通用する鋭さを誇っていた。

 

 そこから先は運だけではない。

 

 傷付き死にかけながらも敵を倒し、その血を啜り肉を喰らい賢明に生にしがみ付いた。

 そうして地獄を脱出する頃には、ザイン少年は獅子の心を持つ立派な益荒男になっていた。

 

 だが今はどうだ?

 

「……ハハ、そうだよな」

 

 ぼんやりと幽かな光が刀身に灯る。

 地獄を彷徨っていた時分に比べるとあまりにも小さくか弱い輝きだ。

 当時と比べるとその目に見える強さは比べ物にならない。

 だが心を映す刃を見れば中身の劣化は誤魔化しようもなかった。

 

「最初はさ、お前にばっか頼ってちゃいけないって思ったんだ」

 

 更なる高みへと至るためにレオン・ハートを封印した。

 

「だけど、心がドンドン腐り始めて……お前に合わせる顔が無くなっちまった。

でも俺は目を逸らして、気付かない振りをして……ごめん、本当にごめんよ」

 

 血沸き肉踊る苦難から遠ざかる度に心が倦んでいった。

 倦んだ心が齎したのは怠慢と驕り。

 気付いていた、気付かない振りをしていた。だってどうしようもなかったから。

 

 ――――だけど今は違う。

 

「今更って怒るかもしれねえが、久しぶりに心に火が点いたんだ」

 

 多少は見れるようになった、だが見苦しいことに変わりはない。

 そんな男にこれ以上かける言葉も、名乗る名もありはしない――そう、言われた気がした。

 

「……あの女は別にそんなつもりじゃないんだろう。ぶっちゃけ、俺の思い込みだと思う」

 

 黄金の瞳に宿る失望と諦観。

 何が切っ掛けで望みを失い、何を諦めてしまったのかは知らない。

 だがそれに比べると自分のことなんて路傍の石ころ以下。きっともう忘れてしまっているだろう。

 そう自嘲するザインだが、その碧眼は静かに燃えていた。

 

「だからこれは俺が勝手に決めたこと」

 

 この感情が何なのかは知らない。

 女を抱いたことはあっても女に惚れたことは一度もない。

 ひょっとしたらこれがそうなのかもしれないが……だとすればこの歳で初恋とはあまりに恥ずかし過ぎる。

 

 だからそれは一先ず置いておこう。

 

「あの女の胸に俺の名を刻みこめるぐれえ強くなりてえッ……心も、身体も!!」

 

 だから力を貸してくれ、そう懇願する主に応えるかのようにレオン・ハートの輝きが強くなる。

 かつての輝きにはまだ及ばない、それでも最初に握った時よりかはマシだ。

 

「……ありがとう、感謝するぜ」

 

 ザイン・ジーバス、32歳のリスタートであった。


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