巨影都市オブ・ジ・エンド   作:銀色の怪獣

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こんばんわ、銀色の怪獣です。

さて、今回の更新は・・・のっけから鬱っぽいというか刺激的な展開になっておりまして、そのような描写が苦手な方には申し訳ありません。ですが、これも物語を書く上の展開ですので何卒慈悲を・・・

また、今回出る巨影は怪獣といっていいかは謎・・・ですが少なくとも日本を代表する特撮界の重鎮ですので、出しました。

では、特撮界の重鎮が出る今回のお話をどうぞです。


第二十二話 怒る『巨影』

何気ない平和で当たり前の日常。もし、その平和で当たり前の日常に異形の存在「巨影」が現れたなら・・・

 

「あぁ・・・これでやっと自由になれるなぁ・・・もう仕事に行かなくてよくなるなぁ・・・だって私、これから死ぬんだもんなぁ・・・あはは・・・はははは・・・」

 

辺りに夜の帳が下りた頃、有数の大都市にある一番高いビルの屋上にスーツを着たOLの女性が一人いた。

この女性はこの大都市にある一流企業の社員であるが、勤め先のあまりのブラックさ、上司などから受けるモラハラ・パワハラ・セクハラなどに耐えきれなくなり、鬱を患った挙句でとうとう命を絶つ決心をしたのだった。

 

「あはは・・・明日から仕事しなくていいし、部長とかの相手しなくていいんだぁ・・・あははは・・・嬉しいなぁ」

 

今の女性の雰囲気を一言で表すならば「もう何もかもがどうでもいい」という他に無かった。

それは彼女をここまで追い詰める原因を作った職場の環境や上司たち、彼女が何とかして逃れたいと願ったものたちに対しても、これから失われることになる自分自身の命に対してもだった。

それほどに女性は追い詰められ、そして疲れて病んでいたのだ。

 

「あはは・・・ここから飛んだら・・・私、鳥さんになれるかなぁ・・・」

 

そう言って、ビルの屋上のフェンスを乗り越えた女性は靴を脱ぎ、脱いだ靴の側に遺書を供えた女性はぼんやりとビルの屋上から遙か数百メートル下の地上を見下ろすと―

 

「えいっ―――」

 

女性は何の躊躇も無く飛んだ・・・否「墜ちた」のだった。

 

 

 

「き、きゃあああぁぁぁーーーっ!人が・・・人が死んでるーーーっ!!?」

「何てこった・・・!!」

「じ、自殺か!?と、とりあえず救急車と警察を!!」

 

女性がビルの屋上から「墜ちて」から数分後、地上では大騒ぎが起きていた。その原因は当然ながらあの飛び降り自殺を図った・・・飛び降り自殺を成した(・・・)「女性だったモノ」だ。

悲しいかな、仮に数分、数秒まで命があったとしても、命が失われてしまえばそれはただの「モノ」に過ぎなくなる。それが例え人間であってもだ・・・

 

ただ、この場で死んでいるのは紛れもなく「人間」であり、追い詰められた結果で心を病んで死んでいった「女性」だった。

そんな彼女の脳裏に死ぬ間際によぎった、俗に言う「走馬灯」としてフラッシュバックしたのは・・・自分をここまで追い詰め、死に追いやる原因を"明確に"に作った勤め先と上司たちへの恨みや怨嗟の念であった。

 

「許さない・・・!アイツらだけは絶対に許さない・・・!!あんなヤツら死んでしまえばいいんだ!!!」

 

飛び降りた「女性だったモノ」の思いを、念を代弁するならこうだろう。

そんな女性の恨みと怨嗟の念が血と共に流れ出し、固いアスファルトで覆われた大都の仮初め(・・・)の地面に染み込んだ後、固いアスファルトの下に埋められた()に眠る『神』に届いたとき、大事が起こることとなる―――

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォォッ!!―――

 

 

「社長!また(・・)です!また自殺者が出たみたいですよ!!」

 

「なにぃ?また(・・)か。これで・・・何人目だっけか?」

 

「えぇっと・・・三人目です・・・」

 

「チッ、また記者会見開くハメにというかマスゴミどもがウザったくなるな・・・」

 

大都市の一番高いビルから女性が飛び降りた日から一夜明け、空に太陽が真上に登る時刻となっていた。

そんな中、大都市にあるとある一流企業、あの飛び降りた女性が務めていた企業の社長室では社長の御子柴(みこしば)が部下から社員の飛び降りの報告を受けて舌打ち(・・・)していた。

何故なら、御子柴の会社ではもう既に二人、あの女性を合わせると三人もの社員が自殺していた。三人が三人とも、御子柴の会社のブラックさや重役たちのモラハラ・パワハラ・セクハラに耐えきれずに。

その度に御子柴は記者会見を開き、遺族やマスコミに形だけ(・・・)は謝罪して、払いたくも無い賠償金だ何だを払わされるハメになっていたからだった。

 

「全く、死ぬぐらいなら最初から会社を辞めればいいじゃないか。別に退職金を出さない訳でもないし、無理矢理引き止めたりはせんというのに」

 

そう毒づきながら椅子から立ち上がり、大都市を一望できるガラス張りの窓の方まで歩く御子柴。

実を言えば、確かに御子柴の企業はブラック企業ではあるものの、ちゃんと残業代も出すし福利厚生やその他の保証も充実している、辞めるとなったら退職金なども出す、退職しようとする社員に圧力かけて無理矢理引き止める事もしない、とった具合でブラックと言えばブラックではあるが、その辺のブラック企業よりは多少は(・・・)はマトモだった―

 

「全く、迷惑かけやがって。何で一人死んだぐらいで騒ぎになるんだ。しかも自殺じゃないか。どんな理由があろうとも、死んだら終わりだというのに・・・生きて仕返しするぐらいの度胸というか執念でも見せたらどうなんだろうか。そうは思わないか君―――」

 

『死人に口なし』という言葉がある。事実、死んでしまった人間は何も言えない。だから御子柴は自ら命を絶った女性社員に対して先程以上に毒づき、馬鹿にした。

その感性や感覚がマトモかと言えば・・・マトモでないだろう。御子柴が経営するこのブラック企業と同じで。

そんな御子柴は自分の発言に対する意見や感想を社長室に駆け込んで来た部下に求めようとした、その瞬間!!

 

―――ゴゴゴ・・・ゴゴゴゴゴ!ゴゴゴゴゴゴゴ!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!―――

 

「「な、何だこの揺れはっ!!?」」

 

突然、凄まじい揺れが都市を襲い、街にいた人々は避難することが出来ずにその場で転倒したりうずくまったりする他なかった。

また、その凄まじい揺れの影響は大都市のビル群にも及んでおり、並み居る高層ビル軍が波打つように揺れていた。

 

「ひ、ひいいぃっ!?何だよこれぇ!!?」

 

「た、立っておられんじゃないか!!」

 

そんな凄まじい揺れの影響は当然ながら御子柴の経営する企業のビル、及び社長室にいる御子柴と部下にも及んでおり、御子柴も部下も社長室の中を右に左にと右往左往するしかなかった。

 

 

 

 

「ゆ、揺れが止まった・・・?社長、大丈夫ですか?」

 

「あいたたたた・・・あぁ、怪我は無い。無いがだ、全くヒドい目に遭ったわい」

 

突如として発生した凄まじい揺れはものの数十秒で収まった。幸い、揺れがすぐ収まったために街や人々への被害は少なかった。そのため、揺れを体験した人々はホッと胸を撫で下ろした。が―

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

「「な、何だぁああああぁぁぁっ!!?」」

 

確かに揺れは収まった。だが、次の瞬間には轟音と共に都市部の中心地の地面が、大地が割れた(・・・)のだ(・・)。キレイに真っ二つ(・・・・)に。

更に、その真っ二つに割れた地面の下から「何か」が、全身から隠しきれない、否、隠す気など微塵も無い絶対的な「怒り」のオーラを放ち、その厳めしい顔を憤怒に歪めた「魔神」がアスファルトの下に眠る本当の大地(・・・・・)よりその姿を現わしたのだった。

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

「!?ば、化け物だーーーっ!!」

「た、助けてーーー!!」

「に、逃げろーーーっ!!」

 

魔神を一目見た街の人々は呆気にとられていたが、ただ歩くだけで、ただ身を捩るだけで大都市のビル群を破壊し、車を踏み潰す大魔神によって我に返り、すぐさま逃げ惑ってパニックが起きた。

しかし、魔神はそんな人々や街のことなど意にも介さずに「ある場所」を、正確には「ある者」を目指して直進もとい爆進していた。それは―

 

「し、社長!?あの化け物・・・何かこっちに来てませんか・・・?」

 

「『来てませんか?』じゃなくて、確実にこっちに来てるんだよ!!」

 

「で、ですよね!?ど、どうしましょう!!?」

 

「どうしましょうって君・・・逃げるんだよぉーーー!!」

 

件の魔神が一直線に目指す先にあるのは・・・御子柴が社長を務める企業のビル及び、企業の経営者の御子柴社長その人であった。それに気付いた御子柴と部下が慌てて逃げようとした瞬間―

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

―――ザンッ!!―――

 

「「えっ―――」」

 

御子柴と部下が逃げようとした瞬間、魔神は腰に差していた巨剣を抜刀して振るった。ただそれだけで数十メートル離れた場所の御子柴たちがいるビルが縦に真っ二つに斬れて崩れた。

 

「「「「う、うわあああぁぁぁーーーっ!!?」」」」」

 

突如として縦に真っ二つに切れて崩れるビル。そんなビルの中にはまだ大勢の従業員と御子柴が取り残されていたが、彼らは崩れ落ちるビルの瓦礫の中に消えて行った。

 

 

 

 

 

「あいたたた・・・あ、あれ?私は生きているのか・・・?助かったのか・・・?」

 

ふと、御子柴が目を覚ました。そんな御子柴は彼の言う通りに生きていた・・・が、いま彼は「とんでもない場所」にいた。それは―

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

「えっ―――って、ひいぃぃぃぃっ!?お、お前は・・・お前は!?あの時の魔神!!?」

 

不意に、御子柴のすぐ近くで唸り声が聞こえた。その声につられた御子柴が声の方を振り向けば・・・何と、あの魔神が、御子柴たちのいたビルを縦に真っ二つに斬った魔神の顔が御子柴のすぐ目と鼻の先にあった。

実はいま御子柴がいるのは魔神の手の中であり、御子柴は文字通り「魔神の手中に収められている」状態であった。

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

「や、止めろ!止めてくれっ!!頼む、頼むから殺さないでくれっ!!!」

 

自分を手の中に収め、睨み付ける魔神に向かって必死で命乞いをする御子柴。一方の魔神はそんな御子柴をしげしげと見つめるばかりだったが、ここで―

 

『許さない・・・!お前らだけは絶対に許さない・・・!!お前らなんて死んでしまえばいいんだ!!!』

 

「!?魔神が喋った―――」

 

不意に、魔神が口を聞いたのだ。が、その声は厳めしくて巨大な魔神に似つかわしくない女性の(・・・)声だった・・・それもそのハズ、実はこの声は魔神のものでなく魔神に「お願い」をしたある女性(・・・・)のものだったのだ。一方の御子柴は魔神が急に口を聞いたのに驚いて思わず後退った、その直後―

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

「あっ―――」

 

それまで手の中の御子柴をジッと見つめていた魔神が・・・御子柴を思いっきり振りかぶって地面に「投げつけた」のだ。当然、御子柴の命の保証は・・・無い。

 

 

この日、日本のとある都市が崩壊した。そんな都市を崩壊させたのは全身が青銅で出来た巨大な魔神、否、巨影「大魔神 阿羅羯磨(あらまつま)」であった。

しかし、この大魔神は本来ならば弱き人々を護り、導く「守護神」であった。だが、時代の流れとと共に大魔神に対する人々の信仰は無くなり、とうとうその存在は忘れ去れて大都市のアスファルトの下へと埋もれてしまった。加えて、大都市の地下深くへと埋められた大魔神は365日昼夜を問わずに大勢の人々に頭を踏まれている・・・このことが大魔神を「怒らせた」ために、守護神であった大魔神は「破壊神」となったのだ。

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

そして何の因果か、そんな「怒っていた」大魔神が眠る場所へ飛び降り自殺をした女性がいた。そんな女性は自分を自殺へと追いやった勤め先と、勤め先の上司たちに「怒っていた」のだ。

 

そして何よりも、女性は怒りや怨嗟の言葉を吐きながら命を投げ出して死んだ。同じように怒る大魔神が眠る場所へ落ちて。

 

そう、実は女性は図らずして大魔神の「供物」に、俗に言う「人身御供」となっていたのだ。古来より『神』への最高の供物は人間、人身(・・)『御供』なのだ。

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

もう何百年、何千年も前に人々に忘れ去られ、暗い暗い地の底に押しやられた挙句、365日昼夜を問わずに大勢の人々に頭を踏まれる神・大魔神阿羅羯磨。そんな大魔神に自らを供物として「願掛け」した一人の女性。

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――

 

こうなっては・・・大魔神は女性の願いを聞かずにはいられなかった。だから大魔神は御子柴を殺し、更には自分への振興を忘れ、自分を足蹴にする街の人々への復讐を行ったのだ。

何百年、何千年も前に人々に忘れ去られ、暗い暗い地の底に押しやられた挙句、365日昼夜を問わずに大勢の人々に頭を踏まれる「うっぷん晴らし」も兼ねて。

 

―――オオォォ・・・オオオォォォ・・・オオオォォッ!!―――




如何でしたか・・・とは聞けない冒頭の部分。

正直言います、自殺はダメ!絶対に!!
死んだら何も出来ないし、残るのは骨だけです。生きていれば出来ることはあります。それこそやりなおすことも、あるいは仕返しだって・・・でも、死んだら本当に何も出来ません。
だから、何があっても自殺だけは絶対にしてはなりません。 

色々あった作者だから皆様に伝えたいのです。

今回はあの『大魔神シリーズ』から『大魔神』が登場です。ちなみに、大魔神の「大魔神」はあくまで肩書き、あるいはシリーズの名前であって、本名は「阿羅羯磨(あらまつま)」ですからね?まぁ、劇中とかでも「阿羅羯磨」って呼ばれたことないから仕方ないか。

ちなみに、日本のみならず世界中どこの国や文化・文明でも人を捧げ物とした「人身御供」は存在し、人間こそが最高の供物であり、最上級の神様への献上品という考えは何故か共通しています。
それもひとえに、どこの国の文化も文明も「人間が作った」からなのですよ。人間が文化や文明を作ったから、その文化などを作った人間を捧げる・・・そりゃ最高の贈り物になるさ。
だから「宇宙」や「他の世界」という概念があるクトゥルフ神話のでのみ、人身御供の考えがほぼない、というか有り難みは薄いそうです。

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