巨影都市オブ・ジ・エンド   作:銀色の怪獣

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どうも、銀色の怪獣です。

さて、今回は・・・超絶に短いです。加えて戦闘描写とかその他が無い回・・・ですが、中々に捻くれたというか皮肉ったというかな内容ですね。
特に昨今の「何でもお手々つないで仲良く」とか「何でもかんでも意思の疎通が出来て、価値観とか同じ」みたいな描写の多い作品群に冷水ぶっかけるような・・・ね?

ちなみに「恩返し・」の後の「鶴苦」とはそのまま読んで頂ければ何が出るのか分かりますよ。

はい、ではどうぞ~


第三十六話 『巨影』の恩返し・鶴苦

何気ない平和で当たり前の日常。もし、その平和で当たり前の日常に異形の存在「巨影」が現れたなら・・・

 

 

「危ない所を助けていただき、ありがとうございます。是非とも恩返しをさせて下さい」

 

日本のとある大都市、の近場のある工場にて、先の発言をしながら工場にて労働させてもらおうと頼み込む者がいた。

が、その人物は人では無かった・・・否、一応「人」ではあるが正確に言えば「地球人ではない人」と言うべきだろうか。

 

「そ、そんな恩返しだなんて・・・なぁ?」

 

「で、でも社長。今時『恩返しさせて下さい』って言うなんて健気で、とってもいい子じゃないですか。ここは素直に行為を受け入れて、彼にも働いてもらいましょうよ」

 

「そ、そうだな・・・分かった!よし、じゃあ今日からお前さんはウチの工場で働いていいぜ!!」

 

「本当ですか!わぁ、ありがとうございます!!では、今日からどうぞよろしくお願いしますぅ」

 

件の「地球人では無い人」、つまりは「異星人」あるいは「宇宙人」は自分の申し出を快く引き受けてくれた工場の責任者に熱い抱擁をしていた。

ちなみに、この宇宙人は宇宙を旅していた最中に乗っていた宇宙船がトラブルを起こして地球に墜落し、その際に大怪我を負って死にかけていた・・・が、それを工場の責任者や従業員たちが保護して療養させたので元気になったため、宇宙人は自分を救ってくれた人々へ「恩返しがしたい」と申し出たのだった。

 

その後、宇宙人は乗っていた宇宙船が大破したために二度と故郷の星へは帰ることが出来なくなったが、自分を救ってくれた上に快く引き受けてくれた工場の人々とともに末永く働き、彼なりに「恩返し」をしたのだった。

 

 

 

 

「う・・・うぅ・・・あ・・・?どこだ、ここは・・・?」

 

不意に目を覚ました者がいた。その者は部屋の中で布団に寝かされていた―――白目も黒目も無い紅玉(ルビー)の如く輝く目、まるで鉄製のマスクを付けたような顔、スベスベとしたウエットスーツのようにも見える黒い皮膚、そして今でこそ布団の中に隠れているが両手が指ではなく鋭利な刃物になっている明らかに人外の者だった。

 

「一体、どうして私はこんな所にいるのだ・・・?私は確か"ヤツら"に追われて、それで―――」

 

そんな人外の存在はいま自身がいる全く見覚えの無い部屋の中を首だけ動かして見回しつつ、人外の存在が気を失うまで起こし(・・・)ていた(・・・)騒動を思い出していると、

 

「よかった。気が付きましたか?」

 

「!?な、何だ貴様はっ!!」

 

不意に部屋の出入り口が空いて誰かが入って来た。それに驚いた人外の存在は布団から跳ね起きて臨戦態勢を取ろうとしたが、

 

「うっ!?ぐっ、うぅ・・・!!」

 

臨戦態勢を取ろうとした人外の存在の体に走る激痛。そのあまりの痛みに人外の存在は呻き、その場に崩れ落ちる程だった。

 

「あーあー、ホラもう・・・あなたヒドい怪我してるんですから大人しくしてて下さい。手当したのに意味がなくなっちゃいますよ」

 

そんな人外の存在に対して部屋に入ってきた誰か、もといこの部屋の(・・・)主の男性は呆れた様子で人外の存在に声をかけつつ、手にしていたお粥などが乗ったお盆を畳の上に置いていた。と、ここで―

 

「な、何だと・・・?手当をした・・・まさか、お前がか?お前が私の傷を手当てした・・・のか?」

 

それまで激痛に悶え、呻くばかりだった人外の存在が男性の何気なく放った一言につられて顔を上げた。

そんな人外の存在はいま現在は全身に絆創膏や包帯を巻かれているが、それは人外の存在がやったものではない。ならば誰がやったのか?それは当然、

 

「お前って・・・まぁいいや。はい、そうですよ。コンビニで立ち読みした帰りに、僕の家の裏通りの道に倒れていたあなたを見付けて僕の部屋に運んで手当しましたけど、何かご不満でも?」

 

そう言って、コンビニ帰りに偶然に路地裏で倒れていた人外の存在を見付け、ふうふう言いながら人外の存在を部屋に連れて来て手当てしたのに、当の人外の存在からいきなり「お前」呼ばわりされた事にイラッとした様子の男性はムスッとした感じで答えた。すると、

 

「そう・・・だったのか・・・それはすまなかった。本当に申し訳ない・・・無礼を詫びさせて欲しい。大変に失礼だった。謝らせて欲しい。この通り、すまなかった。そして同時にありがとう。貴殿のおかげで命拾いした。本当にありがとう」

 

「えっ?あ、あぁ・・・いや、別にいいですけど・・・」

 

事の成り行きを男性の口から聞いた人外の存在は少しの間キョトンとした様子だったが、自身の体に巻かれている包帯や施された手当などを見て全てを悟り、それまでの態度を改めて詫びると同時に男性にお礼を述べると、

 

「ということで、是非とも恩返しをさせて欲しいのだが・・・いいだろうか?」

 

「えっ?恩返し、ですか?」

 

「そう、恩返しだ。私の命を貴殿が救ってくれた。こんな地球人離れした私を手当てして命を救ってくれた貴殿の優しさに感動した。だから是が非でも、何がなんでも恩返しをさせてくれまいか?」

 

「そ、そこまで言ってもらえるなら・・・お願いしちゃっていいですかね?恩返し」

 

そう言って人外の存在は居住まいを正しつつ、男性に向き直ると「恩返しをさせて欲しい」と申しで、男性は最初こそ戸惑ったが即座に人外の存在の申し出を受け入れた―――

 

これが大事件の発端になるとも知らずに。

 

そもそもが人外の言う「恩返し」が本当に恩返しと言って(・・・)いいもの(・・・・)なのかも知らずに。

 

「そうか。では早速―――貴殿は殺して欲しい輩はいないから?あるいは首を取ってきて欲しい輩はいないか?」

 

「・・・はい?」

 

「む、聞こえなかったか?貴殿は私に殺して欲しい輩がいないか?あるいは私に首を取ってきて欲しいと思っている輩はいないのか、と尋ねたのだが?なぁに、私にかかれば地球人の首を取るなど容易いことだ。胴を真っ二つにするより簡単だからな」

 

「え?えぇ・・・?あ、あの・・・どういう意味・・・ですか・・・!?首を・・・取ってくるって・・・?」

 

「?そのままの意味だが?我らの星では『恩返し』とは恩を与えてくれた者に害をなす者を始末する、というのが常識(・・)なのだが(・・・・)

 

「えっ?ええぇっ!?恩返しが人殺しって・・・い、いいです!結構です!!そんな事しなくていいです、ハイ!!!」

 

自分を助けてくれた男性に対し、人外の存在が申し出た「恩返し」の内容は・・・何と「恩人である男性が殺して欲しいと思っている人物を殺してくる」という信じがたいものであった。

当然、そのとてもじゃないが「恩返し」とは思えないような"恩返し"の内容を聞いた男性は震え上がり、人外の存在の申し出を断ろうとしたが―

 

「それは出来ない。我らの星では恩返しをしないことは大罪だ。だから是が非でも恩返しをさせて欲しい。でなければ、私の気が済まない。さあ、私に貴殿が邪魔だと、殺したいと思ってる欲しい輩を教えてくれ!教えてくれれば私がソイツを華麗に始末し、手土産に首を持ってこようぞ」

 

「そ、そんな・・・」

 

どれだけ男性が断っても人外の存在は譲らず、頑なに「恩返しさせて欲しい」の一点張りだった。

その"ありがた迷惑な"義理堅さもとい頑固さは人外の存在の申し出を断ろうとしている男性以上だった。と、ここで―

 

「オイ!うるさいぞタケシ!!いま何時だと思っるんだ!?全く、働きもしないクセに!!」

 

「お、お父さん・・・言い過ぎですよ・・・」

 

「げっ、オヤジが怒った・・・!!」

 

不意に聞こえた壮年の男性の怒鳴り声とそれを鎮めようとする女性の声。そんな声は男性が住んでいる家の家主である男性の両親のものだった。

そんな父親の怒鳴り声を聞いた男性はビクッとしつつも、不快そうな表情をした。と、ここで―

 

「なるほどそうか。いまの声の主どもを始末すればいいのか。相分かった・・・」

 

「!?えっ―――」

 

不意に立ち上がり、部屋を出て行った人外の存在。

そんな人外の存在は男性が両親の声を聞いた瞬間に不快な表情をしたのを見ていた・・・そう、人外の存在は男性に"恩返し"をするために剣になった両手「ツルクブレード」を構えて男性の両親がいる居間に向かって行ったのだ―――

 

人外の、巨影「奇怪宇宙人 ツルク星人」なりの恩返しのために。

 

 

それがありがたいのか、ありがたくないのかは別としてだが・・・と言いたいところだが、少なくともツルク星人は彼らの種族の「常識」からなる「厚意」の"恩返し"をしようとしているので、ツルク星人の"恩返し"を一概に「ありがたくない」と言ってしまうのは、我々地球人の「常識」をツルク星人に押しつけている(・・・・・・)だけでよくない・・・のかも知れない。

 

 

 

 




如何でしたか?

今回はあの外道ツルク星人を"あえて"登場させた上に人間と意思の疎通を行わせました。

何故か?昨今の特撮、特にウルトラシリーズはとにかく考え方とか発想が「地球人よりすぎる」輩が多くて嫌ですね。しかもすぐ和解したり仲良くなったり・・・つまらねぇ!!

いや、別に仲良くなったり平和的に終わるのも悪くはないが・・・文化や考え方の違いに驚き、その違いなどに悩み苦悩し、時にそれが軋轢を生む、などの展開があってもいいじゃないか、と思うんですよね・・・

だからあえて原作(レオ)では一言も言葉を発せず、淡々と殺人を犯すツルク星人をあえて喋らせ、義理堅くて恩返しまでしたがるようなキャラにしたんですよ。
その義理堅さと恩返しの方法が
「ツルク星人には当然だが、地球人にとっては超迷惑。だって価値観が違うから」
を演出するために。

それこそ故・成田亨氏が言った「地球人にとっては悪でも、彼の星では勇者であり正義なのだから、『不思議な格好よさ』がなければいけない」に通じると思うんですよね・・・流石に恩返し、お礼の方法が殺人というか首取ってくるのはドエライ迷惑ですが。

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