巨影都市オブ・ジ・エンド   作:銀色の怪獣

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どうも、作者です。

今回は・・・『怪獣モノ』で『密輸』というキーワードが絡むお話です。

ということは・・・?まさかの"あの名作"みたいなお話―――

んな訳ないです。

残念ながら、某コスモスみたいな「いい話」じゃないです。

僕がそんな話、書くわけないですよ・・・

とはいえ、内容は中々に捻りを効かせていると思う&「こんな怪獣出るの!?」って怪獣が出ますので、どうかお楽しみ下さい。

では、どうぞ~



第四十七話 密輸された『巨影』

何気ない平和で当たり前の日常。もし、その平和で当たり前の日常に異形の存在「巨影」が現れたなら・・・

 

 

「お待たせしました、"コレ"が礼のブツです」

 

「おぉ、"コレ"が例の・・・!!」

 

とある大都市の片隅にある廃業し、今は誰もいなくなっている鉄工所内に響く声があった。

見れば、鉄工所内には黒いスーツに黒いサングラスをしたいかにもマフィア的な感じの怪しい男と、白いスーツを着ているが何処か怪しい雰囲気の仲買人(ブローカー)然とした男がいた。

そんな男たちであるが、今まさに「ある物」を取引していたのだ。それは―――

 

「おぉ、"コレ"が例の・・・!古代に生息したという怪獣の卵(・・・・)か!!」

 

そう言って、ブローカーの男が差し出したクーラーボックスをマフィア風の男は開け、中にあった・・・巨大な卵を、その実は古代に生息したという"怪獣の卵"を手に取って目を輝かせていた。

 

そう、何とこの男たちは怪獣の卵を取引していたのだ!!

 

 

 

 

 

 

一体、何のために?

 

 

 

「しかし・・・意外と小さいな。怪獣の卵とは」

 

「それは・・・まぁ、そうですね。私も最初はペンギンとかの卵かと思いました・・・」

 

「ってオイ!?そんな事あってたまるか!我々がこの卵にいくら払ったと思っているんだ!!本当に古代怪獣の卵なんだろうな!!?」

 

「あ、安心して下さい!コレは間違いなく怪獣の卵です。正真正銘、怪獣の卵ですよ!!南極の氷の下にある湖から見つかったんですから!!!」

 

「そうか?ならばいいのだが・・・よし、ではこれが約束の報酬だ。受け取ってくれ」

 

「はいはい、どうもありがとうございます。では、私はこれで・・・しかし、あなた方も恐ろしい事を考えますねぇ。怪獣を使って大都市を更地にして地上げをしようなど」

 

「ふふん、それが一番手っ取り早いのさ。怪獣ほど容易く、そして早く全てを壊して更地にしてくれる存在はいない。それに、そんな恐ろしい事を考える輩に怪獣の卵を売りつけるアンタもアンタだろう?」

 

「ははは・・・それはお互い様でしょう」

 

「まぁな・・・ははは、その通りだ」

 

件の怪獣の卵を受け取ったマフィア風の男は、ブローカー風の男に数え切れない枚数の札束が詰まったアタッシュケースを手渡し、受け取ったブローカー風の男は札束を数えつつ、マフィア風の男とその組織がやろうとしている恐ろしい計画について意見を述べた。

 

そう、何とマフィア風の男もといマフィア風の男が属する"組織"は、入手した怪獣の卵から孵化した怪獣を使い、大都市を破壊して更地にした後、地上げを行って利益を得ようとしているのだ!!

 

何とも恐ろしく、何とも身勝手で、何とも・・・愚かしいのだろうか。

 

「はい、確かに指定の金額ですね。ありがとうござました。もし、また何かご入り用でしたらお声かけ下さい」

 

「あぁ、何かあったら連絡する。ボスもアンタのことは贔屓にしているからな」

 

「それはどうも・・・あぁ、そうでした。その怪獣の卵、すぐに孵さないのであれば保冷して低温に保っていて下さいよ。何せ、この陽気ではあっという間に卵は孵化してしまいますから」

 

「あぁ、分かっている。では、これで取引は終了だ。失礼する・・・巻き込まれた(・・・・・・)くなければ(・・・・・)、早く街から離れておけよ」

 

「はい、わかりました。ありがとうございます・・・ご忠告も、ありがとうございます。そうさせて頂きますよ」

 

互いに報酬と卵を渡し合って"取引"を終えた後、マフィア風の男はさっさとその場からいなくなった。

 

マフィア風の男が去った直後、

 

「しかし、まぁ・・・大丈夫なのですかね?あの卵から生まれてくる怪獣は相当に凶暴な怪獣ですよ。人間に懐くどころか、コントロールなど到底不可能な気がしますが・・・あの凶暴で、肉食の古代怪獣アルゴナは」

 

そう言って、マフィア風の男たちがやろうとしている「怪獣を使った地上げ」が成功するのか、と言うことに疑問を抱くブローカー風の男。

 

そんな男は卵の中身を、卵から孵る怪獣の名を口にした。

 

「古代怪獣 アルゴナ」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ、これが怪獣・アルゴナの卵か」

 

「はい、間違いありませんボス。あのブローカーの男が南極から密輸して手に入れたそうです」

 

「ふふん、ヤツは毎回よくやるよ。前に密輸させた『キンイロパンダトカゲ』もヤツが捕まえてきたしな・・・キンイロパンダトカゲは今どうしている?」

 

「はい、あのトカゲはボスの娘さんにすっかり懐いています。『頭もいいし、大人しくて可愛い』と娘さんも大喜びですよ」

 

「そうかそうか!娘のところには全然いってやれんからな。娘に遊び相手が出来てよかったわい!!わっはっはっは!!!」

 

所変わって、ここは大都市の一角にあるオフィスビル―――その実は、違法な商売で利益を上げる不届き者たちの組織のアジトであった。

そんなアジトのビルの最上階にて、組織のトップの男がクーラーボックスに入っている卵を、あのアルゴナなる怪獣の卵を手にしつつ、部下のマフィア風の男もといトップの側近から報告を受けていた。

 

「よし、ではアルゴナを孵してこの街を壊す計画の実行は六時間後だ。それまでに手筈を整えておけ!!」

 

「はい!了解しましたボス!!」

 

アルゴナの卵を入手し終えた組織のボスは眼下の大都市を見下ろし、それを全てアルゴナに破壊させた後に地上げを行い、得られる利益など考えて―――思わずほくそ笑んでいた。

 

そんな世にも恐ろしく、世にも身勝手な計画の実行はわずか六時間後だという・・・どうやら、大都市とそこに生きる人々の命運は決まってしまったようだ。

 

そこに救いはないのだろうか・・・?

 

「うむ。では、主役のアルゴナ君にはまだ眠っていてもらおう・・・この卵、冷蔵庫に入れて保冷しておけ」

 

「分かりました」

 

六時間後に行われるアルゴナによる大都市破壊に備え、ボスや手下たちは慌ただしく行動を開始した。

 

同時に、計画の実行まではまだ六時間もあるのでアルゴナの出番はまだ無い。

だからボスはアルゴナが孵化しないように卵を冷蔵庫で保冷するように側近に命じ、側近は卵を冷蔵庫に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼らは知らなかった。

 

彼らが「古代怪獣 アルゴナ」の卵だと思っていた卵が・・・アルゴナの卵ではない(・・・・)ことに(・・・)―――どころか、アルゴナなど比較ならない「もっとヤバい怪獣の卵」だということに。

 

オマケに、その「もっとヤバい怪獣の卵」は・・・"適度に冷えれば冷えるほどに孵化が早まる"という事を彼らは知らなかったのだ。

 

これが、悲劇の幕開けとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加えて、

 

―――ゴガァアアァァッ・・・!!―――

 

とある大海原の海底にて、凄まじく巨大な、俗に言う「巨影」が蠢いていた。そんな巨影は"追っている"のだ。

 

大海原にかすかに漂う、巨影が大好物にしている"ある物"のニオイを。その驚異的な嗅覚で。

 

とある大都市の一角にあるビル、の中にある大型の冷蔵庫で保冷されている"「もっとヤバい怪獣」の卵のニオイ"を。

 

大型の冷蔵庫が下水に排出する、冷蔵庫内の物のニオイが染みついた冷却水―――の中に溶けている、この巨影が大好物にしている"「もっとヤバい怪獣」の卵のニオイ"を、巨影は大海原に排出された下水から割り出し、それを辿っているのだ。

 

―――ゴガァアアァァッ・・・!!―――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

「な、何だありゃあああぁぁぁっ!!?」

 

「ば、化け物だーーーっ!!!」

 

「に、逃げろーーー!!踏み殺されるぞーーーっ!!!」

 

本来は大勢の人々で賑わう大都市に轟く人々の悲鳴と・・・巨大な生物、俗に言う「巨影」の咆哮。

 

見れば、件の大都市のど真ん中で巨影が暴れていた。

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

「トカゲの・・・化け物だ!!」

 

誰かが言ったとおり、大都市のど真ん中で大暴れしている巨影の容姿を一言で言い表すならば「巨大な茶色いトカゲ」だった。

 

別に角や襟巻きなど生えていない。

別に背ビレも生えていない。

別に直立二足歩行が出来るわけでもく、本当に"トカゲらしく"四つん這いで這い回るのだ。

 

ただ、とにかくデカかった―――が、当然ながらただ単にデカいトカゲなハズもなく―

 

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

「ぎ、ぎぃやぁああぁぁぁ!?体が・・・動か・・・な・・・い・・・」

 

「ひ、ひぃいいっ!?ひ、人が、街が・・・凍り付いていく・・・!!?」

 

大都市のど真ん中で暴れるトカゲの巨影は持ち前の巨体でビル群をなぎ倒し、逃げ惑う人々を踏み潰す―――だけではなく、口から吐き出す万物を凍結させる光線を乱射して被害を拡大させていた。

 

それにしても・・・このトカゲの巨影はどうしてこの大都市に現れたのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

「オ、オイ・・・何だあのトカゲは!?アルゴナと全く違うじゃないか!!」

 

「そ、そう言われましても・・・あのブローカーは確かに『コレはアルゴナの卵だ』と言っていました―――」

 

「言っていました、じゃないだろうがっ!現に、生まれたのは口から冷凍光線を吐くトカゲじゃないか!!」

 

「そ、それは私に言われても・・・」

 

尚も暴虐の限りを尽くすトカゲの巨影から少しでも逃げようとする人々がいる一方で、何故か逃げずにトカゲの巨影を観察している者たちがいた。

それは―――あの、アルゴナを使って大都市を更地にして地上げを企んでいた不届き者たちであった―――が、彼らもまたパニックに陥っていた。

何故なら・・・不届きものたちがアルゴナだと思って手に入れた卵から孵化したのはご覧の通り、アルゴナではなく口から冷凍光線をぶっ放すトカゲの巨影だったからだ。

そう、不届きものたちがブローカーから買い付けた卵はアルゴナの卵ではなかった―――どころか、アルゴナなど比較にもならない「もっとヤバい怪獣」の卵だったのだ。

 

 

 

 

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

「う、うわぁああぁぁっ!?何だコイツはーーーっ!!?」

 

時は少し遡り、不届きものたちがアルゴナの卵(仮)をブローカーから買い付け、アジトの冷蔵庫にアルゴナの卵(仮)を入れてからわずか数時間後の事であった。

 

―――ゴゴゴ・・・ゴゴゴゴ・・・・ゴゴゴゴゴゴゴッ!!―――

 

「な、何だ!?」

 

「じ、地震か!!?」

 

突然、何の前触れもなく、激しい揺れが不届きものたちのアジトのビルを揺らした。

だが、揺れているのは不届きものたちのアジトだけ・・・つまり、この揺れは地震では無かった。ならば、何なのか?

 

しかも、この卵がアルゴナの卵とは違うとは、あのブローカーの男も気付いていなかった―――ブローカーの男でさえ間違う程に、アルゴナの卵と「もっとヤバい怪獣の卵」は酷似していたのだ。

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

「う、うわぁああぁぁっ!?何だコイツはーーーっ!!?」

 

突然、アジト内に悲鳴と凄まじい"咆哮"が響き渡った。それを受け、不届きものたちが悲鳴と咆哮が聞こえた階に、庫内にアルゴナの卵(仮)が入れてある大型冷蔵庫がある階に駆け付けると、そこには―

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

「な、何だコイツ!?ト、トカゲか!!?」

 

「そ、それにしちゃあデカすぎだろ!?5mぐらいあるぞ!!?」

 

「って言うか、なんでコイツ冷蔵庫から(・・・・・)出て来て(・・・・・)るんだ(・・・)!!?」

 

アルゴナの卵(仮)が入っている大型冷蔵庫がある階に駆け付けた不届き者たちは見た。

何故か床に倒れた大型冷蔵庫を。

そんな大型冷蔵庫が"内部から"破壊されて大穴を開けられている有様を。

そして・・・その大穴を開けた張本人であり、先程の咆哮の主である、全長が5m以上はあろうかという巨大なトカゲが、冷蔵庫に開けた穴から這い出てくる光景を。と、ここで―

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

「な、何だ!?コイツ、口の中が光ってる―――」

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

「へっ―――ぎ、ぎぃやぁああぁぁっ!?体が・・・凍・・・る・・・!!?」

 

突然、大トカゲが吠えた。そんな大トカゲは集まった不届き者たちをジロリと睨むと大き口を開けた―――その瞬間、大トカゲの口の中から青く輝く光線が放たれた・・・たったそれだけで、その場にいた不届き者たちは全員、物言わぬ氷像へと姿を変えた。すると、

 

―――ギィ!?ガア・・・アアァッ・・・!!?―――

 

突然、大トカゲが苦しむかのような声を上げた。まるで、体に何か異変が起きているかのように―――と、次の瞬間!!

 

――――ギィ・・・ギィガアアアアアアァァァァァァッ!!―――

 

―――ドォオオオォォォン!!―――

 

再び、大トカゲが突然吠えた・・・かと思えば、大トカゲの体が一気に膨張し、瞬く間に体長60m・体重2万トンの巨体に、巨影「突然変異(ミュータント)大蜥蜴怪獣 コモディスラックス」へと成長した。

 

そう、この大トカゲは歴とした「巨影」のコモディスラックスであり、同時にコモディスラックスが孵化した卵はアルゴナの卵などでは無かったのだ。

 

 

 

 

 

「オ、オイ・・・何だあのトカゲは!?アルゴナと全く違うじゃないか!!」

 

「そ、そう言われましても・・・あのブローカーは確かに『コレはアルゴナの卵だ』と言っていました―――」

 

「言っていました、じゃないだろうがっ!現に、生まれたのは口から冷凍光線を吐くトカゲじゃないか!!」

 

「そ、それは私に言われても・・・」

 

 

不届き者たちが手に入れてしまった卵から孵化した後、本能の赴くままに全てを「蹂躙」するコモディスラックス。

そんなコモディスラックスを呆然と見つめるのは・・・あの不届き者たちのボスとその側近であった。

ちなみにこの2人、ちょっと買い物に出掛けており、その結果でコモディスラックスに殺されなかった・・・が、帰ってきた直後に巨大化したコモディスラックスがアジトのビルを突き破って出てくる現場に出くわしていたのだ。

結果、

 

「オ、オイ・・・何だあのトカゲは!?アルゴナと全く違うじゃないか!!」

 

「そ、そう言われましても・・・あのブローカーは確かに『コレはアルゴナの卵だ』と言っていました―――」

 

「言っていました、じゃないだろうがっ!現に、生まれたのは口から冷凍光線を吐くトカゲじゃないか!!」

 

「そ、それは私に言われても・・・」

 

目の前で、アジトのビルを突き破って出て来た巨大トカゲ(コモディスラックス)を目の当たりにしたボスと側近はしばし呆然としていたが、ハッと我に返ると色々と悟った。

 

「あのトカゲはあの卵から孵ったんだ」と。

 

「あのトカゲはアルゴナなんかじゃない・・・というか、あの卵はアルゴナの卵じゃ無かったんだ!!」と。

 

「俺たちはブローカーのヤツに(だま)されたんだ!!」と。

 

だから2人は怒りつつも、パニックになっていたのだ―

 

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

 

「「えっ―――」」

 

怒りで周りが見えなくなり、同時にパニックを起こしていたせいで2人は冷静さを欠いていた。

 

結果、2人はコモディスラックスが自分たちのすぐ近くまで来ていた事に気付けなかった―――2人のすぐ近くに来ていたコモディスラックスは、眼下で騒いでいる虫ケラ二匹(・・・・・)の事など意に介さず、その巨体を移動させた際、意図せずに虫ケラ二匹(・・・・)を押し潰したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あれは何でしょうか!?アルゴナじゃ・・・ない!?あ、あんなトカゲの化け物、私は知りませんよ!!?し、しーらないっと!!!」

 

所変わって、ここはコモディスラックスが大暴れしている大都市、から少し離れた港町の船着き場だ。

 

そんな船着き場にて、一人の男がスマホを見ていた―――スマホの緊急速報映像で流れている、自分が今さっきまでいた大都市を、その大都市を牛耳る不届き者と取引を行った大都市を破壊する巨影・コモディスラックスの暴虐を、ブローカーの男はスマホから流れる緊急速報映像で見ていた。

 

ちなみにこの男、この船着き場で船に乗って何処かへ高飛びするつもりだったのだ。

 

「時間はあっていますね・・・あの人たちがアルゴナを使って大都市を破壊し始めるという時間に・・・ですが、暴れているのはアルゴナじゃなくて、知らないとトカゲの化け物・・・一体、何がどうなっているのでしょうか―――」

 

そんなブローカーの男であるが、自分には関係ないと思いつつも、大都市で暴れるトカゲの化け物について色々と考えていた―――その矢先、男の頭に「ある考え」が浮かんだ。それは―

 

「もしかして・・・私が密輸した卵は、アルゴナの卵じゃ無かった・・・?いや、でも・・・あの卵はアルゴナの卵でした・・・よね?だって、色も形もアルゴナの卵そのものだったハズですが・・・」

 

ブローカーの男に浮かんだ考えとは、

 

「自分がアルゴナの卵だと思って密輸した卵は、実はアルゴナの卵じゃなかったんじゃないか?」

 

 

というものだった。

 

そして、それは大当たりだった。

 

そう、実はブローカーの男が密輸した卵はアルゴナの卵、ではなく、アルゴナの卵に"偶然"酷似した卵を産む、あのコモディスラックスの卵だったのだ―――何という悲劇、何というはた迷惑な「勘違い」だろうか。

 

「ま、まぁいいでしょう。私には関係の無いことです・・・早く逃げないと。トカゲの化け物も怖いですが、あの人たちの報復というか逆恨みも怖いですし」

 

そう言って「起きてしまったことは仕方ない。でも俺は知らない」と自分を納得させつつ、ブローカーの男は逃げることを選んだ―――だが、そんな身勝手を、悪事を働いておいてのうのうと逃げ仰せようなど叶うわけが無かった―

 

―――ゴガァアアァァッ・・・―――

 

「んっ?何でしょうか今のは―――」

 

不意に、ブローカーの男は何かの"声"を聞いた―――その声は男の目の前に広がる大海原、の底から聞こえていた。と、次の瞬間!!

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

「!?な、なに―――」

 

突然、ブローカーの男の目の前の海面が大きくせり上がり、凄まじい水柱が上がると同時に、膨大な量の海水が辺り一帯に氾濫した。

結果、ブローカーの男は氾濫した海水に飲まれ、海の底へと消えていった―――男が海の藻屑と消えた直後、

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

ブローカーの男と入れ替わるようにして、海から何か巨大なものが、見上げるような巨体と、ゴツゴツとした甲羅、そして尻尾の先には棍棒のような突起のある巨大生物が、俗に言う「巨影」が海から船着き場に上陸した。

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

「か、亀の化け物だっ・・・!!」

 

船着き場に上陸した巨影を一目見て、誰かが呻くように呟いた。

 

そう、今まさに船着き場に上陸したのは巨大な亀の巨影、その名も「突然変異(ミュータント)大海亀怪獣 ジャイアントタートル」であった。

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

ジャイアントタートルは船着き場に上陸後、一直線に何処かを目指して爆進し始めた。そんなジャイアントタートルが目指す先には―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

 

本能の赴くまま、全てを破壊するコモディスラックスが吠えた。そんなコモディスラックスの視線の先には―

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

雄々しく咆哮を上げるコモディスラックスに対し、その鈍重な体を難なく動かして爆進してくるジャイアントタートルもまた雄々しく咆哮を轟かせた。

 

そう、ジャイアントタートルはコモディスラックスを目指していたのだ・・・何故?

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

こちらに向かってくるジャイアントタートルに対し、まるで射殺さんばかりに睨み付けるコモディスラックス。

その目は憎悪に狂い、同時にまるで親の敵を見付けた復讐者のような目をしていた・・・否、「復讐者のような目」ではなく「復讐者そのものの目」をしていた―――そう、コモディスラックスにとってジャイアントタートルは生まれついての"天敵"なのだ。

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

実はジャイアントタートルはコモディスラックスの卵を大の好物としている・・・つまり、ジャイアントタートルにとってコモディスラックスは「食われる存在」なのだ。

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

だが、だからといってコモディスラックスも黙ってジャイアントタートルにされるがままでは無い。

コモディスラックスは自分たちの卵を狙うジャイアントタートルに対抗すべく大きく、強くなった・・・その過程で、コモディスラックスたちはジャイアントタートルが苦手とする"冷気"を武器として身に付けたのだ。だからコモディスラックスは冷凍光線が吐けるのだ。

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

とうとう互いに手が届く距離まで接近し、睨み合うコモディスラックスとジャイアントタートル。

その二体が睨み合い、今まさに戦いを始めようとしているのは大都市のど真ん中だ。このままでは、確実に大都市は更地になってしまうだろう・・・何の皮肉か、あの不届き者たちがやろうとしていた

 

「怪獣に大都市を破壊させて更地にして、地上げを行う」

 

が実現してしまうのだ。

 

 

 

唯一の救い(?)は、その悪だくみを行おうとした不届き者たち、及び不届き者たちに(別の怪獣のだが)怪獣の卵を売り渡したブローカーの男が"成敗"されているという点だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、できたよ。ピーちゃんたべて~」

 

―――ピーッ!!―――

 

「あっ!ほんとうにたべちゃダメだよ!どろのおだんごなんだから!!ペッして!!」

 

―――ピーッ!ピーッ!!―――

 

「あーっ!ピーちゃんのみこんじゃったの!?おなかこわしちゃうよ・・・え~ん!どうしよう!!ピーちゃんがおなかこわしちゃうよ~~~!!」

 

所変わって、ここは何処かの大都市の一角にある豪邸だ。

そんな豪邸の庭では、一人の幼い女の子が"ペット"を相手におままごとをしていた・・・が、そのペットは一見すれば大きめのトカゲに見えるが、頭部には小さい角が一本生え、全身に金色のぶち模様が存在する非常に珍しいトカゲ―――幻の爬虫類にして、重要な保護動物の「キンイロパンダトカゲ」だった。

 

そう"重要な保護動物"の「キンイロパンダトカゲ」なのだ・・・つまり、一般の家庭で飼っていい訳がない。というか、普通に考えたら一般の家庭では購入する事は困難なのだ。

 

"一般の"家庭ならば、だが・・・そう、"一般の家庭"ではなければいいのだ。

 

「"お嬢"!どうしました!?」

 

「あっ、あのね・・・ピーちゃんがどろだんごたべちゃったの!ダメっていったのに、たべちゃったんだよ!このままじゃ、ピーちゃんがおなかこわしちゃう―――」

 

「何だぁ・・・お嬢、キンイロパンダトカゲ・・・じゃなくて、ピーちゃんはもの凄く丈夫ですよ?泥団子を食べたぐらいじゃ、お腹を壊したりはしませんて」

 

「え?そーなの?」

 

「はい、ピーちゃん、というかピーちゃんたちは仮に毒を食べても平気なんですよ。殺鼠剤にホウ酸団子、除草剤に農薬・・・そんなの食べても平気らしいですよ?」

 

「そうなんだぁ・・・ピーちゃんって、スゴいんだね!」

 

「はい、だから泣かなくていいですよ、お嬢」

 

「うん!もうなかないよ!!」

 

大事なペットの「ピーちゃん」が、おままごとで作った泥団子を食べてしまった事に驚いた女の子が大声で泣き始めれば、どこからともなく・・・とにかくゴツく、まるでヤ〇ザのような風貌の男がダッシュで女の子の元へ駆け寄り、女の子をなだめた。

その際、男は女の子のことを「お嬢」と呼んだ―――そう、実はこの女の子は"ある組織"のボスの娘であり、この豪邸もその組織のボスが、女の子の父親が娘のためだけに建てた家なのだ。

 

ちなみに、例のゴツいヤ〇ザ風の男は女の子の世話係兼ボディーガードだ。

 

つまり、女の子は普通の、一般の家庭の子供ではない。だから希少動物のキンイロパンダトカゲの「ピーちゃん」を飼えているのだ・・・女の子の父親が"あるブローカー"に密輸させた(・・・・・)から。と、ここで―

 

―――ピーッ!ピーッ!!―――

 

「んっ?どうしたのピーちゃん・・・って、ピーちゃん!?どうしたの!?くるしいの!!?」

 

「えぇっ!?何で苦しんでるんだ!!?」

 

不意に、ピーちゃんが鳴いた―――直後、ピーちゃんはその場にひっくり返った。とても苦しそうな声を上げ、口からは泡を吹き、目は焦点が定まっていなかった。

 

「ピーちゃん!ピーちゃん!しっかりして!!だいじょーぶ!?」

 

「ど、どうなってやがるんだ!?キンイロパンダトカゲは毒とか食っても平気なはずなのに・・・泥団子だけでここまで苦しむのか!!?」

 

目の前でひっくり返り、悶え苦しむ大事なペットを見た女の子は泣き喚き、本来ならば猛毒すら食べても平気なキンイロパンダトカゲが泥団子ごときでひっくり返った事に動揺する世話役の男。

 

そんな彼らは知らなかった。

 

ピーちゃんが食べてしまった泥団子には、泥団子の材料になった泥には、女の子が花壇から持ってきた「泥」には・・・数日前、別の世話役が雑草の生長抑制のために撒いた「ある薬品」が染み込んでいたことに。

 

その「ある薬品」だけは、猛毒すらも平気なピーちゃんも耐性が無いことに。

 

何よりも・・・世話役の男も、女の子の父親も、その父親に言われてピーちゃんことキンイロパンダトカゲを輸入したブローカーの男すら知らなかったのだ―

 

実は、彼らがキンイロパンダトカゲだと思っていた生物が、キンイロパンダトカゲでは無いことに。

 

「幻の爬虫類・キンイロパンダトカゲ」よりも希少で、より・・・危険な存在であることを知らなかったのだ。その結果―

 

 

―――ピーッ!ピーッ!!ピーッ・・・ビィイイイィィィッ!!―――

 

―――ドォオオオォォォン!!―――

 

「きゃーーーっ!!?」

 

「う、うおおぉっ!?き、巨大化しやがった!!?」

 

突然、それまでひっくり返ったまま苦しそうに鳴くばかりだったピーちゃんが起き上がった―――かと思った次の瞬間、せいぜい体長60cmほどだったピーちゃんは一気に巨大化し、あっという間に体長59m・6万3千トンもの巨体に、俗に言う「巨影」へと変貌した。

 

―――ビィイイイィィィッ!!―――

 

「な、何だありゃああぁぁっ!!?」

 

「ば、化け物だーーーっ!!」

 

「に、逃げろーーーっ!踏み潰されるぞーーーっ!!」

 

突如として現れた巨影に驚いた人々は一瞬でパニックに陥り、逃げ惑い始めた。

そんなパニックの元凶の巨影であるが、全身の皮膚は藍色で所々に金色のぶち模様があるが、腹部は蛇腹状になった肌色の皮膚に覆われており、何よりもその顔は非常に凶暴そうで、大きく裂けた口と、頭部の鋭い一本角とが相まって、とにかく「危険」という印象を与える存在だった。事実、

 

―――ビィイイイィィィッ!!―――

 

突如として姿を現わした巨影は凄まじい咆哮を上げつつ、手当たり次第に物を壊して暴れ始めた。その暴れっぷりは文字取り「狂気」そのものだった―――事実、この巨影は「狂っているのだ」。

 

実はこの巨影は元々は大都市にある、とある豪邸で飼われていた「ピーちゃん」なるキンイロパンダトカゲだった―――否、それは大きな間違いだ。

 

この巨影の、巨影となってしまったピーちゃんの本当の名前は「バデータ」という怪獣であり、間違ってもキンイロパンダトカゲではない。

 

だが、その体にある金色のぶち模様と、トカゲ然とした姿をあるブローカーの男がキンイロパンダトカゲと"勘違い"して密輸した後、ある組織のボスに売り渡した。売り渡してしまった。

 

その後、怪獣とも知らずにバデータを購入したボスは娘にバデーダをペットとしてプレゼントした。してしまった。

 

―――ビィイイイィィィッ!!―――

 

―――ドォオオオォォォン!!―――

 

その結果がこの有様だ。

巨大化したバデータは"怪獣らしく"暴れ、全てを破壊していた・・・だが、実はバデータは元は大人しく、破壊などは好まない怪獣だ。

 

―――ビィイイイィィィッ!!―――

 

―――ドォオオオォォォン!!―――

 

しかし、このバデータは破壊の限りを尽くしている・・・何故?

 

―――ビィイイイィィィッ!!―――

 

実は、このバデータは巨大化する前に、飼い主であった(・・・・・)女の子と遊んでいる最中、女の子が花壇の泥で作った泥団子を食べた・・・その泥団子の材料の、花壇の泥に含まれていた雑草の生長を抑制する薬剤『HKP』、の主成分『ハビルニアル毒素』を摂取していた。してしまった。

 

そんな『ハビルニアル毒素』こそ、あらゆる猛毒などを食べても平気なバデータですら耐性が無く、万が一に摂取すれば・・・ご覧の有様となってしまうのだ。

 

―――ビィイイイィィィッ!!―――

 

あれだけ大人しく、小さかったバデータは今や・・・巨大化する際にバデータを可愛がっていた者たちを踏み潰しても意に介さず、巨大化した後は全てを破壊する身も心も怪獣へと変貌してしまったいたのだ。

 

その様は、その所業は正しく「怪獣的」だった―――だが待って欲しい。

 

バデータはそもそもが人間の身勝手&勘違いで密輸され、無理矢理連れてこられた、むしろ「被害者」なのだ。

 

そんな「被害者」たるバデータを攻めることが人間に出来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

もっと言えば、

 

 

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

 

バデータが暴れる大都市とは別の大都市にして、壮絶な戦いを繰り広げるコモディスラックスとジャイアントタートル。

 

そんな彼ら彼女らもまた、人間の身勝手&勘違いで密輸され、無理矢理連れてこられたり、人間の都合に巻き込まれた、むしろ「被害者」なのだ。

 

そんな「被害者」たるコモディスラックスとジャイアントタートルを攻めることが人間に出来るのだろうか?

 

 

 

 

―――ビィイイイィィィッ!!―――

 

――――ギィガアアアァァァッ!!―――

 

―――ゴガァアアァァッ!!―――

 

 

・・・まぁ、目の前で巨大な怪獣が暴れて全てを壊している時に、そんな悠長なことを言ったり考えている余裕など無いだろうが。




如何でしたか?

『怪獣』で『密輸』というキーワードが絡んだから、あの『ウルトラマンコスモス』の名作回『怪獣密輸!?』を連想した方もいたでしょうが・・・そんな訳はなかった!

(まぁ、バデータは最終的に出たけど)

かといって、ネタに使ったアルゴナが絡んだ『怪獣の身代金』みたいな爆笑回でもないというね・・・

ちなみに、今回登場した「コモディスラックス」と「ジャイアントタートル」は、アメリカの怪獣アニメにして、あの1998年の『GODZILLA(エメリッヒ版)』の(一応)続編『ゴジラ ザ・シリーズ』に出てくる怪獣です。

あのアニメ、本当に面白いんですよね。是非ともDVDとかにして欲しいです。

実を言えば、今回のお話は何年か前に現実に起きた

『とある爬虫類マニアの男が、珍しい外国のヘビを密売人から買った・・・はよかったが、その買ったヘビが実は男が欲しがっていたヘビによく似た猛毒のヘビで、マニアの男は届いたヘビを水槽に移そうとしてヘビに噛まれ、死にかけながら救急車を呼び、一命は取り留めたが後遺症に悩まされる&取引が禁止されている爬虫類を密売&飼育していた事が発覚する→男は逮捕された』

という事件を元にしました。

何というか、ヘビだったからよかった。被害に遭ったのが個人だからよかった。

でももし・・・もしも、密売されていたのが怪獣だったら?

それこそ、バデータやアルゴナなどと比較にならないヤバい怪獣だったら?

いや、バデータやアルゴナだって十分すぎるほどに危険だ・・・だって怪獣だもん。

そんな感じで「怪獣の危険性」をテーマにお話を作りました。

如何でしたでしょうか?

お楽しみ頂けたなら、何か感じるものがあったなら、それ以上の喜びはありませんです。はい。


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