巨影都市オブ・ジ・エンド   作:銀色の怪獣

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どうも、作者です。また間が開きました・・・申し訳ないです。

ネタはあるんですが、何か書けない―――スランプですかねぇ・・・?

楽しみにして下さっている方には本当に申し訳ないです。

最近、また書けるようになり始めました。

同時に、この作品にも評価バーに色がつき、お気に入りをして下さる方も増えている・・・有り難い限りです。本当にありがとうございます。

さてさて、今回は・・・タイトルからも分かるでしょうが、一部ではカルト的な人気のある"アイツ"が出ます―――けど、普通じゃないです。

また、コイツは僕のご友人(だと僕が勝手に思っている・・・図々しい)の方から頂いたご意見を着想元にして創造しました。ありがとうございます。

何が普通じゃないのか? 是非ともご覧になってお確かめ下さい。

では、どうぞ!!



第五十二話 (おおやけ)(がい)する『巨影』

「またか・・・」

 

「また・・・ですね」

 

「一体どうなってやがるんだ・・・何をどうしたらこんな"仏さん"が出来る(・・・)んだ(・・)・・・?」

 

「ですね・・・」

 

夜の帳が降りたとある大都市、の裏路地をパトカーの赤色灯の赤色が照らし、裏路地にいる刑事や検察官たちの引きつった顔を不気味に赤く照らしていた。

 

そんな刑事たちや検察官たちが引きつった表情を浮かべている理由―――今、刑事たちの目の前で仰向けで地面に倒れているスーツ姿の中年男性・・・の"仏さん"が原因だった。

 

目をカッと見開いている・・・それも明らかな「驚愕」と「恐怖」に目を見開いている。

 

口も「あっ!」か「わっ!?」とでも言おうとした形になっている。

 

そして、喉にはかきむしったような跡がある。

 

そんなスーツ姿の中年男性の"仏さん"が大都市の路地裏に転がっていた。

 

「で、死因は?」

 

「窒息死ですね」

 

不意に、青いビニールシートを被せられた"仏さん"を横目に、そり上げた頭が特徴のベテラン風の刑事が"仏さん"の検死の結果をその場で行った検察官に尋ねれば―

 

「・・・やっぱりか。って事は今回も(・・・)詰まって(・・・・)たのか(・・・)、"アレ"が?」

 

「はい、ライトで見ただけでも分かるぐらいに鼻、口、気道に詰まってましたよ、"アレ"が」

 

「・・・そうか」

 

刑事の質問に淡々と答える検察官。そんな二人は確かに言った。

 

 

"アレ" と。

 

"アレ"が仏さんの鼻、口、気道に詰まっていた、と。

 

件の"アレ"が仏さんの死因だ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラスチックが詰まって窒息死だぁ!?」

 

警察署の一室にて、声を荒げるそり上げた頭が特徴のベテラン風刑事。

 

彼はここ最近とある大都市で連続して起きるある事件を、連続怪死事件(・・・・)を調査していた―――何故か人間の胃に、食道に、腸に、隙間なくプラスチックが詰まり、窒息死するという奇怪すぎる事件をだ。

 

ちなみに、件の怪死事件の被害者は性別も年齢も職業も、果ては国籍も全く共通点が無かった・・・無かっただが、被害者はみな共通して器官や消化器官に隙間無くプラスチックが詰まって窒息死していた。

 

「はい、被害者たちの死因は全員が窒息死です・・・鼻というか気道に、口から食道を通って腸を含めた消化器官に至るまで、隙間無くプラスチックが詰まって死亡していました」

 

そり上げた頭が特徴のベテラン風刑事、のつば交じりの大声を手にしたバインダーでガードしつつ、淡々と遺体の解剖結果および連続怪死事件の被害者たちの死因を告げる検査官。

 

「ちょっと待てよ・・・そんな・・・そんな事ってありえるのか!?って言うかプラスチックって・・・ペットボトルとかビニール袋のアレが人間の胃や腸に詰まって窒息死って・・・そんなの・・・」

 

検査官から知らされたまさか過ぎる情報を受け、頭を抱えるそり上げた頭が特徴のベテラン風刑事・・・普通、誰だってこうなるだろう。

 

事実、怪死事件の被害者の遺体を検死した検察官たちですらあまりの怪奇不明な現象に戸惑うほどだった。

 

「そうですね。あまりに意味不明です・・・ですが、今回の被害者たちを例えるなら―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"大好物のクラゲと間違えて、人間が捨てたビニール袋を呑み込んで死んだウミガメ"

 

とでも形容しますか。亡くなったご本人とご遺族には申し訳ないですが」

 

「ウミ・・・ガメ?」

 

「はい、ウミガメです。ご存じですか?ウミガメはクラゲが大好物でよく食べます。

しかし、その大好物のクラゲと人間がウミに捨てたビニール袋、あるいはペットボトルのようなプラスチックの類いをウミガメは間違って食べます。半透明で海の中を漂うところが相当に似ていますからね。

しかし、当然のようにプラスチックは消化できずにウミガメの体内に残ります。すると消化不良や内臓の壊死、消化物や糞が排泄できずに腸内などで腐敗して起きる細菌感染、あるいはビニール袋を呑み込む際にそのまま窒息死する事もあります。

野生のウミガメの死因の大半、今となってはウミガメの死因の8割はビニール袋の誤飲による窒息か内臓へのダメージだとか。

そして、今回の連続怪死事件はまさしくそれですね」

 

「だが、カメと人間様が同じ死に方するか?まさかとは思うが・・・被害者たちもウミガメみてぇに食いモンとプラスチック間違って喰って、そのせいで死んだってのか?」

 

「分かりません」

 

「分かりません、って・・・検察官のお前さんたちでも分からんなら、俺らがな分かるわけねぇだろう」

 

意味が分からない、とでも言いたげにそり上げた頭が特徴のベテラン風刑事は苛立ちを紛らわすため、懐からタバコを取り出して火を付けようとしたが―

 

「六平さん!ここ禁煙ですよ!!」

 

と言って検察官がタバコを取り上げ、壁に貼られた『禁煙!!』の文字が書かれた紙を指さした。

 

「うるせぇな・・・どこもかしこも禁煙禁煙、分煙分煙って・・・俺に言わせりゃ、ケータイだスマホを所構わず、メシ食うときも歩くときも運転するときもやってる連中に『ケータイ禁止』って言ってやりてぇくらいだよ。

俺はな、ケータイアレルギーなんだよ。外を見てみろよ、今や街中スマホ片手にサル(・・)が溢れてやがるぜ・・・

それに、今はタバコ絡みよりもケータイだスマホをイジりながら運転したり歩くせいで事故や事件に巻き込まれる方が多いんだよ」

 

「それとこれとは別です。タバコが吸いたいなら、喫煙所でお願いします」

 

「分かったよ。喫煙所、とは名ばかりの警察署の裏手で一人寂しく、寒空の下で吸ってくるよ・・・」

 

検察官にタバコを取り上げられたそり上げた頭が特徴のベテラン風刑事―――「六平(むさか)」は渋々と喫煙所とは名ばかりの警察署の裏手に儲けられた屋根も無い、吹きさらしの喫煙所(笑)へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~・・・ったく、ロクにタバコも吸える場所はねぇ、仮に吸ってりゃ鼻つまみモン扱いだ。

けっ、ケータイアレルギーの俺からすりゃ、何処でもここでも四六時中ケータイだスマホをイジってるだけのサルども(・・・)の方が鼻つまみモンだっての」

 

すっかり日が暮れた寒空の下で六平はタバコを吹かしつつ、火消し用に水が張られた灰皿(という名の一斗缶)しかない警察署の裏手にある喫煙所(笑)で一人で愚痴っていた。

 

そんな喫煙所(笑)のすぐ目の前には小川・・・とは名ばかりの、両岸をコンクリートで舗装されたゴミだらけの用水路前を流れるもとい「ドブ川」が流れていた。

 

「ったく、今時の連中は何でも楽しすぎなんだよ・・・何でもかんでもパソコン、データで管理して分析して"お取り寄せ"して・・・何のためにオツムには脳味噌が入ってるんだよ。何のために親からもらった立派な足が生えてるんだよ。

頭はヘルメットを被るためだけにあるんじゃねぇだろうが。足はテメーで歩いて動かすためにあるんだろうがよ・・・はぁ、俺って古くせぇ人間なのかねぇ・・・」

 

フーッと、ため息と共に紫煙を吐きつつ、色々と変わり(・・・)すぎて(・・・)しまった(・・・・)現代社会と、それについていけない自分の堅物さを嘆く六平。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・そうは言うが、礼儀も弁えない"サル"だらけの色々とオカシイ現代社会に適応するのは果たして吉と言えるだろうか、と言えなくもないが。

 

それはさて置き、六平は体が冷えてきたのでそろそろ署内に戻ろうとしていた―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――キョロロロロロ・・・!フォフォフォフォフォ・・・!!―――

 

そんな六平を見ている存在がいた・・・喫煙所(笑)の前を流れるドブ川の中に潜む"ソイツ"は、縦に開いた赤い両目で六平を嫌らしくジロリと見た後―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――キョロロロロロ・・・!フォフォフォフォフォ・・・!!―――

 

「んっ?何だ―――」

 

ふと、警察署に戻る前に、とまたタバコを一本吸っていた六平は奇妙な音を聞いた―――その瞬間!!

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「!?な、何だコイツ(・・・)は!!?」

 

突然、六平のすぐ目と鼻の先の地面にあったマンホールの蓋が吹っ飛んで何かが汚水と共に現れた―――それこそが、

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

奇怪な鳴き声を上げつつ、縦に開いた赤い両目を持つソイツはマンホールの中から這い出てきた。

 

全長は3mほどで中腰の直立二足歩行形態で、その体は異様なほどに滑らかで艶やか・・・というかツルツルテカテカスベスベだった―――汚水の中にいたのにだ。

 

同時に、そんなツルツルテカテカスベスベのソイツはまるでボロ雑巾を何枚も重ねたかのような不気味な姿をしていた・・・それでもその体は異様なほどに滑らかで艶やか・・・というかツルツルテカテカスベスベだった。

 

そして、極めつけが―

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

―――キィイ・・・キィイッ・・・!―――

 

「何だ、この気持ち悪い音は!?寒イボが立つじゃねぇか・・・!!」

 

六平の前に現れたツルツルテカテカスベスベ体を持つボロ雑巾を何枚も重ねたかのような怪物が一歩踏み出す度、辺りには不協和音が、まるで何かを擦り合わせるような不快な音が奏でられていた。

 

ただし、その不快な音はまるで硬いが軽い物体を擦り合わせたかのような―――例えるならば、

 

「プラスチックを擦り合わせたかのような音」

 

だった―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか・・・!プラスチックだ!!コイツはプラスチックの化けモンだ・・・!!」

 

不意に六平が口を開いて、目の前にいる化け物の正体を、その体を構成している物質を言い当てた。

 

そう、この化け物は「生きたプラスチックの怪物」なのだ。

 

同時に、

 

「ってことは、今までの怪死事件の犯人はコイツか!?でも、何で人間を襲ってやがったんだ!!?」

 

見事に目の前の化け物の正体を言い当てた六平はまたしても真実を言い当てた。

 

事実、六平の目の前にいる化け物はその右手からボタボタと半透明な液体を、液体状のプラスチックを垂れ流しつつ、その右手を六平に向けて伸ばしていた―――今まで襲った犠牲者たちと同じく、手から垂れ流す液体状のプラスチックを気道や消化器官に流し込んで窒息させるために―

 

「プラスチックなら・・・"コレ"が弱点だろうがよっ!!!」

 

―――キョロロロロロ!?フォフォフォフォフォ!!?―――

 

目の前の化け物がプラスチックで出来ており、人を襲い、自分を狙っていると分かった六平の動きは速く、六平は愛用のライターで、常に常備している愛用のタバコ(5箱分)のタバコに火を付け、それを化け物に投げつけた。

 

するとどうだろうか、化け物はヒドく怯え、慌ててマンホールの中に飛び込んでそのまま下水道へと逃げていった。

 

「やっぱりだ。火だ、アイツは火が苦手なんだ―――プラスチックだから、火で燃えちまうから火を怖がるんだ!!」

 

化け物の魔の手から逃れた六平は思わずその場にへたり込んだ。

 

そんな六平の周りには六平の命の恩人、世の嫌われ者(タバコ)の空き箱が無数に転がっていた。

 

そう、六平は世の嫌われ者(タバコ)(の火)に助けられたのだ―――きっと、世の嫌われ者(タバコ)を愛し続けた六平をタバコの神様が救ってくれたのだろう。

 

「って、こうしちゃいられねぇ・・・!早くアイツをどうにかしねぇと!対抗策も考えねぇと!!」

 

まさか連続怪死事件の犯人に襲われた―――しかもその犯人が人間では無い"化け物"だと、同時にその弱点も分かった六平は即座に警察署へと駆け込み、化け物への対策が立てられることと相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「出たー!出たぞーーーっ!!」

 

「怯むな!迎え撃て!!」

 

「「「おぉーーーっ!!」」

 

とある大都市に轟く咆哮と辺り一帯に木霊する「プラスチックを擦り合わせたかのような」嫌な音―――あの連続怪死事件を引き起こしていたプラスチックの化け物が白昼の大都市のど真ん中に出現したのだ。

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「デ、デカい・・・!100mは下らないぞコイツ!!」

 

「一体どうしてここまでデカくなりやがったんだ!!?」

 

そんな化け物の眼下(・・)には出動した自衛隊の戦車大隊がいた―――そう、今や化け物は完全な直立二足方であり、その身長は120mにも達している。

 

山に、野に、街に、海に、川に、下水に・・・と、今や地球上のありとあらゆる場所に投棄されている数え切れないプラスチックを取り込み、化け物もとい巨影『特殊公害怪獣 ポリへドラ』は文字通りの巨影に成長したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうそう、六平さん。ご存じですか?

何も人間が捨てたプラスチックを誤飲して死ぬのはクラゲが好物のウミガメだけではありません。イルカにクジラ、魚や海鳥、あるいはシカやイノシシ、小鳥にリスに・・・と、今や多種多様な動物たちが人間が捨てたプラスチック類で命を奪われています。

それに、何も動物がプラスチック絡みで死ぬのは誤飲だけではありません。それこそ首や足にビニール袋や釣り糸が絡みついて、割れたペットボトルやプラスチックの破片が体に刺さって、などなど実に様々です。

ですが、いずれも全て人間が捨てたプラスチック類が原因です。」

 

「もしかしたらアレかもな。あの化けモンは俺たち人間に怒った動物、あるいは自然が差し向けた"報い"なのかもな・・・だとしたら、俺ら人間にあの化けモンを殺す資格ってあるのかねぇ・・・」

 

自衛隊が大都市に出現したポリへドラと交戦していた頃、市民の避難指示などに当たっていた警察官たちの中に六平や検察官もいた―――人間が好き勝手に作り出し、散々ポイ捨てしたプラスチックの化身たるポリへドラがなぜ人間を襲っていたのか、その理由を六平や検察官は分かっていた―

 

「・・・ですが、黙って怪物に殺されるのを受け入れる人間はいないでしょう―――だから六平さんはあの怪物の弱点を、特徴を自衛隊に伝えた。そうでしょう?」

 

「まぁな。俺らはか弱い一般市民を守る正義のお巡りさんだからなぁ。あんな人殺しの化けモン、放っておけるかよ・・・流石にテメーの手でムショにしょっぴけないのが残念だがな」

 

だが、だからといって六平たちはこれ以上はポリへドラの毒牙に人々をかけさせる気は当然無かった―――彼らは可余話一般市民を守る正義のお巡りさん(ヒーロー)だからだ。

 

だから六平はポリへドラの弱点を、体がプラスチックで出来ているポリへドラの最大の弱点が「火」だと自衛隊に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「がぁあぁっ!?何だ、コレは・・・!!?」

 

「目が・・・目が・・・!?鼻も、喉も痛い・・・息が・・・出来ない・・・!!」

 

「目がチカチカする・・・!鼻水にヨダレが止まらない・・・!?」

 

猛々しく吠えるポリへドラ―――とは対照的に、地にひれ伏し、目や鼻や口からは絶えず涙などを垂れ流し、呼吸が出来ずに喉をかきむしる、息を吸おうとするも喘ぐ事しか出来ずに転がる自衛隊の大隊がそこにいた。

 

 

 

 

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「よし!ヤツの弱点は火だ!!焼き尽くせ!!」

 

「「「了解っ!!」」」

 

―――キョロロロロロ!?フォフォフォフォフォ!!?―――

 

最初、自衛隊がポリへドラと対峙した際の事。

 

自衛隊は前もって仕入れていたポリへドラの弱点

 

「プラスチックだから火が弱点」

 

を参考にして、火炎放射器や可燃材を使ってポリへドラに火を放った。

 

 

 

 

その結果、

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「がぁあぁっ!?何だ、コレは・・・!!?」

 

「目が・・・目が・・・!?鼻も、喉も痛い・・・息が・・・出来ない・・・!!」

 

「目がチカチカする・・・!鼻水にヨダレが止まらない・・・!?」

 

猛々しく吠えるポリへドラ―――とは対照的に、地にひれ伏し、目や鼻や口からは絶えず涙などを垂れ流し、呼吸が出来ずに喉をかきむしる、息を吸おうとするも喘ぐ事しか出来ずに転がる自衛隊の大隊がそこにいた。

 

そんな自衛隊を苦しめているのは―――燃焼したポリへドラの体を構成しているプラスチックから発生したダイオキシン・光化学スモッグ・有毒ガス。その他諸々が自衛隊を苦しめていた。

 

更に、

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「どういう事だ・・・!?なぜヤツにはメーサー砲も冷凍メーサー砲も効かないんだ!!?」

 

プラスチックだから燃やせばいい、という単純な考えだけではいけなかったどころか、ポリへドラに火を放ったら死屍累々の大惨事となった自衛隊は即座に作戦を変更し、ある秘密兵器を投入した。

それこそ、

 

「メーサー殺獣車大隊、前へーーーっ!!!」

 

「メーサー照射!!」

 

ディーゼル音を轟かせ、パラボラアンテナ型の砲身を備えた対巨大生物兵器の大隊が・凄まじいマイクロ波を対象に照射して対象の細胞などを焼き尽くす「メーサー殺獣兵器」を備えた特殊車両が出撃してポリへドラを攻撃した。

 

基本、相手が"生物"であるなら細胞を持っているため、マイクロ波で細胞を破壊するメーザー攻撃は相手を選ばずに使えるハズ・・・なのだが、

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「どういう事だ・・・!?なぜヤツにはメーサー砲も冷凍メーサー砲も効かないんだ!!?」

 

メーサー殺獣兵器を搭載した特殊車両が一斉にメーサーをポリへドラに照射した・・・が、ポリへドラは全く何ともなかった。

 

それもそのはず、だってポリへドラはプラスチックだ―――中に食材を入れたプラスチックのタッパーを、電子レンジに入れても温まるのは食材だけで、タッパーは(そこまで)加熱されることはない・・・それと同じ事だ。

 

いくらポリへドラが"生物"で、細胞を有していても・・・ポリへドラはプラスチックそのものであり、プラスチックはメーサーもといマイクロ波を通しにくい。

 

だからポリへドラはいくらメーサーを受けても平気なのだ。

 

加えて、自衛隊は万が一にメーサーよりも強力な

 

「冷凍メーサー殺獣兵器」

 

も用意しておいた―――が、体も細胞もプラスチックのポリへドラにはほぼ通用しなかった。

 

 

中にご飯やネギを入れたタッパーを冷凍庫に入れたら中のご飯やネギは凍るが、タッパーは凍らない・・・それと同じ事なのだ。

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「ダ、ダメです!目標、止まりません!!」

 

「クソッ!燃やしたら大事に、メーザーや冷凍メーザーは効かない、一体どうすればいいんだ―――」

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「!?う、うわぁあああぁぁぁーーーっ!!?」

 

人類の用意した対抗策をあざ笑うかのように暴れ、全てを蹂躙するポリへドラ―――そんなポリへドラを、ポリへドラを形作っているプラスチックを作り出したのは人間自身だ。

 

人間自身がプラスチックという、

 

分解する生物・微生物がほとんどおらず、錆びない、腐食しにくい―――故に自然界に遺棄されたら数百年から数千年は残ったまま

 

生物体内に入れば、消化できない故に直接的な害は無いが、消化器官などに詰まってしまう

 

高熱や火に弱いが、酸素や水素と結びつけば有毒な物質を次々に生み出す

 

マイクロ波や紫外線などをほとんど通さず、劣化しにくい

 

といった、一見すれば素晴しい特性を有しているが、その特性がポリへドラのような巨影という"化け物"に加わった時、最悪の事態を引き起こすことに人類は初めて気付いた―――

 

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

「!?う、うわぁあああぁぁぁーーーっ!!?」

 

人類が気付いた時には手遅れだった。

 

人類が気付いた時には、プラスチックの化身たるポリへドラが生みの親(じんるい)牙を剥いた(反抗期を迎えた)後だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、でも安心して下さい。

 

これは遠い遠い未来の話です―――マイクロ波を射出するメーサーなんてトンデモ兵器が出てくるのですから。

 

だから、ポリへドラなんて化け物が現れる事も無いでしょう―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『海のマイクロプラスチック汚染』

 

という言葉がある。

 

このマイクロプラスチックとは、とても細かくなった数ミリ以下のサイズのプラスチックが海洋に流れ出し、プランクトンや魚を通して色んな生物の体内にプラスチックが蓄積される現象も引き起こすのだ。

 

そう、まるで大好物のクラゲと間違ってビニール袋などを食べて死ぬウミガメのように、体内にプラスチックが蓄積されるのだ。

 

そして、この地球上で一番海の生き物を捕らえて食べているのは―――人間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラスチックが詰まって窒息死だぁ!?」

 

「はい、被害者たちの死因は全員が窒息死です・・・鼻というか気道に、口から食道を通って腸を含めた消化器官に至るまで、隙間無くプラスチックが詰まって死亡していました」

 

「ちょっと待てよ・・・そんな・・・そんな事ってありえるのか!?って言うかプラスチックって・・・ペットボトルとかビニール袋のアレが人間の胃や腸に詰まって窒息死って・・・そんなの・・・」

 

この会話が遠い遠い未来の話なのか、すぐ近い将来・・・それも僅か数十年後なのかは分からない。

 

 

 

―――キョロロロロロ!フォフォフォフォフォ!!―――

 

全身をプラスチックで構成された化け物、巨影・ポリへドラが現れるのも・・・現実味をおびているかも知れない。

 

だって、これだけプラスチックが自然界に溢れているなら・・・それを利用しない生物が出現しないとは言い切れないのだから。

 

 




如何でしたか?

今回はへドラ―――を勝手に改造しつつ、現代社会ではありふれまくったプラスチックを、工業廃液の垂れ流しや重金属の不法投棄よりも何百年、何千年も残るプラスチックによる"公害"の化身たるポリへドラを登場させました。

で、ポリへドラを発想する元となるアイデアを下さったのはユーザー・西園弖虎様です。西園弖虎様、本当にありがとうございます。

また、冒頭に出て来た「そり上げた頭が特徴のベテラン風刑事」こと「六平」とは『ウルトラマンマックス』の『狙われない街』で登場した刑事・・・を演じていた俳優の六平直政さん(がモデル)のことです(台詞自体『狙われない街』のオマージュ)。

とりあえず、現代社会ではプラスチックは切っても切れない縁です―――それが牙を剥いたとき、人類はどうなるのやら・・・?

そうならないためにも、ペットボトルなどはちゃんとリサイクルして、ビニール袋はポイ捨てせずにちゃんとゴミ箱に捨てましょうね。

以下、ポリへドラのデータ↓

・特殊公害怪獣 ポリへドラ

概要:人類が投棄したプラスチックを取り込んで生まれた"第三のへドラ"or"現代文明を象徴するへドラ"。
体の色は白味がかった半透明で、体表は異様なぐらいにツルツルでスベスベ・・・なのだが、見た目そのものはへドラ(ボロ雑巾を何枚も重ねたようなあの姿)。
ちなみに、目の色は眼球の部分が赤で、光彩の部分は乳白色。
動く度にプラスチックが擦れ合うような不快な音を発生させる。
人間を見付けると襲いかかる―――液体状のプラスチックを呼吸器官、消化器官などに流し込み、窒息させる原種と同じく人殺しを楽しんでいるような性格の悪いヤツ―――人類への「しっぺ返し」かも知れない。

スペック:身長120m・体重6万トン

特徴:プラスチックで構成された体は絶縁体&冷気に強い・・・反面、火や高温に原種のへドラ以上にメチャクチャ弱い―――燃やしたりしたらダイオキシン・光化学スモッグその他諸々が出まく。

実は体を"吸水性ポリマー"に変化させたプラスチックに作り替えることも出来るので、多数の水を含んでおけば火には強くなる・・・そうしたらそうしたで冷気に弱くなったり電気が通りやすくなってしまうので一長一短である。

ついでに、体がプラスチックなので栄養などあるハズもなく、他の怪獣を捕食するような怪獣に全く見向きもされない(原種も大概だろうが・・・)

技:
・ポリヘドリューム光線
・液状プラスチック弾(多数の有害物資を付着させている=猛毒)
・液状プラスチックを相手の呼吸器官、消化器官に流し込んで窒息させる
・プラスチックを擦り合わせ、トンデモない不協和音(というか超音波)を発生させる

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