瑠璃色の嵐   作:夢想イヴ
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3話 入部試験



「俺を倒してみろ」


真田が出したのはかなり厳しい条件だ。

彼は皇帝と呼ばれるほどの、圧倒的な力を持つ。
あの青学の手塚と肩を並べるほどに…

その場にいる全員が、流石にそれは無理だろうと思うしかなかった。


「OK」



華宮はそれでも、嬉しそうにラケットを握った。


「負けないよ」

二人はコートへと入った。
ピリピリと周りまで痺れてしまうほどの、二人の気迫。

サーブは真田からだった。


「いくぞ!!」


真田は容赦の無いパワーでサーブを打ち込んだ。

「なるほど…!見た目通りのパワーだね…!!」

華宮はなんとかそのサーブを打ち返した。


「侵掠すること、火の如し!!!」


真田の得意技、風林火山の火を出した。

「弦一郎がこんな早くから風林火山を出すとは…!」

柳もデータを取りながら驚いていた。
そのパワーは凄まじく、まるで本物の火の玉のように激しい打球だった。


「ーーっ!?」


さすがの華宮も受け切れず、ラケットを弾き飛ばされてしまった。

「…この馬鹿力が」


そう言うと華宮は、ラケットを拾ってニヤリと笑う。


「そうだよ、こういうのを求めていたんだ!女子テニス界では、力強くでラケットを弾き飛ばされるなんてこと無いからね!!ボクの体験したこと無い世界!ここでボクはNo. 1になりたいんだ!!」


すると青色の瞳がギラリと光って、只ならぬオーラを纏いだした。
対峙する真田でさえも、気圧されるようなオーラ。


『なんだこのオーラは…無我の境地、とは違う。似て非なるもの…!?』


真田は構えた。


「きなよ、今度はその馬鹿力受け止めてあげる」


真田はサーブを打つ、先程よりも力強く。
華宮はそれをあっさりと返してきた、そこで真田はあの構えをする。

「侵掠すること、火の如し!!!」

本気の“火”
容赦の無い、弱者を焼き尽くすような力。


「君みたいに真っ直ぐなテニスをする人、好きだよ!!」


華宮はオーラを腕に集中させて、その打球を打ち返した。
真田は驚きのあまり反応することができなかった。

あの技は男子でさえも、手塚くらいの細さの奴ならばラケットを弾き飛ばされるほどの威力だ。
なのに、彼女は、その手塚よりも何倍も華奢な腕であれを打ち返してきた。

『あのオーラは一体なんだ…こいつは……!』

真田は華宮にただならぬ才能を感じた。
そう、それはあの神の子と呼ばれるほどの天才、幸村に通じる程の…並々ならぬ才能。


『…こいつなら、男子に混じっても充分すぎるほど戦える』


真田は確信した。
華宮は立海三連覇に必要な存在だ。



「…華宮 翼。お前の入部を認めよう」



まだ試合は終わっていなかったが、真田は華宮にそう言い渡した。
充分なほどの実力、それは試合を見ていたレギュラー陣達も納得せざるを得ないほどのもので、誰も華宮の入部を反対するものはいなかった。


「え!?いいの!?まだ試合終わってないけど!」

「お前の実力は分かった。レギュラー陣達も納得しているようだ。…それに、お前も先程赤也と試合をしたばかりで疲労もあるだろう」


華宮は大袈裟に万歳ジャンプをして喜んだ。


「うわーい!!やったーー!みんな、これからよろしくねー!!」


あんな試合をしていたのが嘘のように、まるで幼い子供がはしゃぎ回るようなギャップに誰もが驚きを隠せていないようだ。
おそらく、彼女はずっと緊張していたのだろう。
これが素の彼女の性格である。陽気で少し子供っぽい…まさにおてんば娘。


「あー…帰国してからすぐ飛んできたから疲れちゃったなー…緊張がなくなったら…なんだか……眠く………」


そう言い残して、なんとその場で寝てしまった。


「こいつ、もしかして帰国してから休まずに俺と真田副部長と試合してたのかよ…!?」


なんということだ。もしそれが事実なら、彼女の本当の実力は一体…その場にいる全員が息を飲んだ。

「…とりあえず、どうするんじゃ?しばらく起きそうにないぜよ」

「女性ですし、この場に残しておくわけにはいきません!家まで送り届けるべきでは」

「待てよ、誰かこいつの家知ってるのか?」


「……………」


もちろん、今会ったばかりの華宮の家を知る者など誰もいなかった。
ましてや帰国したばかりと聞いた、家はあるのか?両親は?

しかしもう日が沈みかけていた。
この場に放置するわけにもいかないし、いつ起きるかも分からないのでここで付き添うわけにもいかない…


「副部長、ここは責任取ってお持ち帰りするべきじゃないッスか…?」


切原の意味深な言い方に思わず仁王と丸井がブフッと吹き出してしまった。
もちろん切原に深い意味はないが、言い方が不味すぎる。

「赤也の言い方はともかく、確かに部の責任者である弦一郎が連れて帰り介抱するのが無難ではないか?」

「…致し方あるまい。とりあえず家に連れて行こう」

真田は柳に促され、渋々了承するしかなかった。


「真田が…!金髪美少女をお持ち帰り…っブフッ!!」

「仁王…殴られたいのか…?」

「冗談ぜよジョーダン…!」


とりあえず華宮を背負う事にした真田。
背負ってみると、驚くほど軽くて、こんな華奢な体で本当にあの風林火山を打ち返したのが信じられなかった。

……あと、男子とは違う、何か…良い匂いがする。



「顔が真っ赤だぞ。弦一郎」

「き、気のせいだ…っ!」