それではどうぞ。
ブランside
次の日
今日の午前は修行ではなく、レムによる講義を行った。学び舎の教室を思わせる部屋には二つの椅子と机が用意されており、そこにオーフィスとティアマットが座ってノートを広げている。
黒板の前にはレムギットが立っており、俺は部屋の隅で腕を組みながらその様子を眺めていた。こうして第三者からの視点で見ると俺もアイツらと同じように勉学に励んでいたころを思い出す。
懐かしいな……初めの頃は何にも分かんなくて大変だったし、俺は戦うことしか能がなかったからな……。
「さぁ、今回も始まりました!楽しい楽しい、レムギットちゃんの授業です!オーフィスさん、ティアマットさん!今日も一日頑張りましょう!」
「おー」
「お、おー……?」
オーフィスはレムの掛け声に呼応して両手を上げ、万歳のポーズ。一方、ティアマットはノリに乗れずにぎこちない感じで片手を上げた。
そして授業が始まる。因みに俺は副担任って感じの立ち位置で生徒であるコイツらのサポートをする役だ。
オーフィスはこれまで何度か宇宙の神々についての話は聞いていたが、ティアマットはこれが初めての授業である故、少し遅れがちだ。なので、奴はこれまでオーフィスの習ったことをそのまま教え、オーフィスの得た知識に追いついたら二人同時に進めることとなった。
ティアマットは自分が知らない神様である界王神や全王様などの話を聞いて度肝を抜かれたような顔をしながらノートを取っている。ここでおさらいとして、全王様は簡単に言えばこの世で一番偉い人だ。そして、『最強』。戦わないが、『最強』である。宇宙というものが存在した時から全王様はこの世で一番偉かった。それは何万、何億年も変わらず、後釜なども存在しない……宇宙の法則、まぁ、神の中では極当たり前に知られていることなのだ。
ん?何故、そのことに疑問を持たないのかだって?……そうだな、何故一番偉いのか、何故そんな力を持っているのか?様々な疑問は出てくる筈だ。
じゃあ、聞こう。何故、オーフィスは『無限』のエネルギーを秘めている?何故、生まれた時から地球の中では二番目に強かった?オーフィスだって自分が『無限』を司る本当の理由など知らない。気づいてたら生まれていて、その力を持ってたって認識なのだから。そう、お前達が聞いてるのはそういうことだ。誰も分からない……要するに、大まかなことは一般に知られているが、解き明かせない謎を質問していることに変わりないんだ。一々気にしてたらキリがない。
さて、ある程度レムがティアマットに説明する中、オーフィスは自分が先に習っていて暇だからかヨダレを垂らしながら爆睡してやがった。
このクソガキ……。
「おい、起きろバカ」
「あうっ!」
俺はオーフィスの背後にすぐさま立つと頭に軽いチョップを下す。頭にチョップを叩き込まれたオーフィスは頭部を押さえてうずくまると、垂れかかっていたヨダレを『じゅるっ』と言う音と共に口の中に戻した。
「ありがとうございますブラン様。ちょうど終わったところですから」
「フン、これくらいは手伝ってやる」
『気遣うな』という意味でのその言葉に対し、レムは『フフッ』と和やかに笑うと授業を再開する。
「ここまでで何か質問をしたい方、今なら受け付けますよ」
「はい!」
「はい、ティアマットさん」
「宇宙って個数があるって聞いたけど……本当?」
「おお、実はその質問の答えは今明かす予定だったのでナイスタイミングでの質問です。ブラン様、お手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「任せておけ」
レムは杖をトンッと床に突くと、辺りの背景が宇宙空間と同じようなものへと変わった。オーフィスとティアマットは驚くが、これは本当の宇宙空間ではなく、あくまで立体映像であるので酸素の心配はない。
すると、その立体映像の中心に全王様の住む屋敷が映り、それを囲むように13の宇宙が球体として表示され、俺は説明する。
「この宇宙は個数で分かれてあって全部で13個ある。そして、それらは『第1宇宙と第2宇宙』、『第6宇宙と第7宇宙』と足して『13』になるように対の関係となっている。そしてお前ら、宇宙は元は全部で『18個』あったんだ」
「元は?」
オーフィスとティアマットは首をコテンと傾げる。ここで二人の疑問は一致する。そう、つまり
「今、お前ら二人の間には同じ疑問が頭をよぎった筈だ……そう、『13個以外の宇宙は何処にいったのか?』というものだ。答えは簡単、全王様に消滅させられたからだ」
「嘘……宇宙ごと……消滅!?」
ティアマットは背中がゾクっとするような悪寒に襲われる。幾ら何でも宇宙ごと消滅させる程の力があるのは次元が違うどころの話ではなかったからだ。
「消滅させられる理由はいくつかある。まず一つ、人間レベルが低すぎる事だ」
「人間レベル……あらゆる星の文化、人間の戦闘力、知力などをステータスとしてまとめ、平均化したものってさっき習ったわね……それって基準はあるの?」
「……俺はそこまで詳しく聞いてない。0から10まで段階での細かいとこまで評価され、確か現時点で一番低い第9宇宙は1.86だ……それより低いのが無いから1未満がアウトなのかもしれねぇ。因みに、そんなに低いレベルになるのは人間達が悪いんじゃない、破壊神と界王神に問題がある」
「……どういうこと?」
「破壊神はレベルが低い星を破壊……要するに間引きしていき、新たなスタートをさせる為に界王神は星を新たに創造する。これらの繰り返しで人間レベルを保っていくのがセオリーだ。つまり、仕事をサボりすぎるとレベルの低い星ばっかが残ってしまい、破壊しないことで界王神は星を創造も出来なくなってレベルを下げる要因と化す。そう、人間レベルは本来、人間がどうするかではなく、どちらかといえば破壊神と界王神の仕事の手早さによってレベルは左右されると言っても過言じゃないってわけだ」
平均化されるのは星と人間のステータスだが、あくまで調整役は俺と界王神ということだ。
「さて、続きだ。まだ消滅させられる理由はある……が、これはぶっちゃけかなり酷い理由だ。それは、全王様が機嫌を損ねたから……というものだ」
「「……は?」」
二人は素っ頓狂な声を上げる。それはそうだ。レムは涼しい顔をしているが、はっきり言ってこれには俺も納得はいかないしな。
「まぁ、全王様には逆らえない。逆らった時点で消滅。しかも自由奔放な方で、お前らがえげつないと思うことでもあの方は笑顔でそれをこなすだろう。この世はあの方の為に動いている……そう捉えてもいいかもな。理不尽だろ?」
二人は頷く。
「だが、理不尽なんかどこでもあるし、これが特別な事じゃねぇぞ……あくまで規模が大きすぎるだけだ。だから俺達、破壊神はその理不尽から逃れようと、機嫌を損ねないように振る舞い、仕事をこなす。人間レベルには特に気をつけないといつ破壊されるか分かったもんじゃないからな」
「つまり……破壊神の立場って……常に宇宙の命運を握ってる……てこと?」
「まっ、そういうことだ。お前らもそれを肝に命じておけ。確かに破壊神は自由で、戦いだって少ない、美味い飯を食って美味い酒に酔う……楽しい生活に見えるかもしれねぇ。だが、その裏には重いものを背負ってるってことを忘れるなよ」
俺の言葉にオーフィスとティアマットは強く頷いた。まぁ、全王様の話も絡めば流石に動揺はするだろう。怯える様子もあるが、粗相のないように接すれば何もされない。それも後で教えておくか。
「さて、俺の説明は終わりだ……レム、あとは頼む」
「かしこまりました。オーフィスさん、ティアマットさん、これが今日の最後の授業です。この宇宙はどこの宇宙とも対になっていない故に『第0宇宙』と呼ばれています。何故か、分かりますか?」
レムが質問をするが、二人は机に突っ伏しており、動かなくなった。
「無理、今日はどっと疲れた……」
「我も……凄い話聞いて頭が追いつかない……」
まぁ、流石に動揺が大きすぎたか……いつ、消滅させられるか分からないからこそ、ビクビク怯えながら生きていかないといけないと感じているのだろう。少し精神的にきたか……?
「あらら……仕方ありません。今日こそは教えようと思いましたが、また今度にしましょう。あとはこれだけなので、次回こそは絶対に覚えましょうね。では、今回はここまで!ありがとうございました!」
「「ありがとうございました〜」」
今日の講義はここで終わりになり、俺はレムに地球へと連れて行ってもらった。一方、レムは元の星へと帰り、オーフィスとティアマットと女の子同士の戯れをするらしいので午後は一人で地球をぶらつき回わる。
▽
地球に着き、俺は駒王町のとある店へとやってきた。そこは俺とレムのお気に入りの豚カツ屋であり、一人の婆さんが経営しているとても小さな店である。が、味は絶品だ。
俺がその店に入ると、その婆さんは愛想良く笑いながら俺を迎えてくれた。
「あら、今日も来てくれたんだねぇ、カッコイイ兄ちゃん」
「兄ちゃんはやめてくれ、もうそんな歳じゃねぇよ」
確かにサイヤ人は長き戦闘を行う為、若い時期が長い種族である。それ故に、この地球では『おっさん』と言われる歳でもまだ老けるほど見た目は変わらない。お兄さんと言われてもおかしくはないがむず痒い気持ちになるのであまり嬉しくはない。
「婆さん、特製秘伝のタレ付き豚カツを20切れくらいくれ」
「はいよ、いつもありがとねぇ」
この店には何度か来ており、店特製の秘伝のタレがかかったこの豚カツがたまらなく美味かったので偶によく買いに来ている。オーフィスとティアマットの土産にはちょうど良いだろう。
……あっ、そういえば師匠にお土産持っていくのすっかり忘れてたな。近いうちに会いにいくか、あの老いぼれ……日頃は呑気に茶でも飲んでるだろうからいきなり来たら驚くだろうな。
「嬉しいねぇ、こんな年寄りが構える店に来てくれるなんて、身寄りがない私にとってこれ以上ない喜びだよ。いつ死んでも構わないよ……」
「弱気なこと言ってんじゃねぇよ。少なくとも、こんな美味いもの作れるくらい元気ならまだ長生き出来る。アンタが生きてる内には俺もまだまだここの豚カツを食べるつもりだからよ、それまではちゃんと生きておけよ、婆さん」
「そこまで言われちゃ、まだまだ死ねないねぇ」
そんな会話を交わし、会計を済ませて品物を受け取った俺はその場を後にした。
「また来ておくれよ。あっ、レムギットちゃんにも宜しく言っておいてちょうだいな!」
「サンキュー、また来るぞ。レムには俺からバッチリ伝えておく(ぷっ、『ちゃん』付けとか子供かよ……!ククク……!)」
アイツは確かに子供と間違えられてもおかしくないくらいチビだからな。……アレで強さは俺以上とかおかしいだろ。
▽
レムが俺を迎えに来るのは夜だ。それまで暇なのでせっかくだから街を散歩してみた。
まぁ、それでもやはり暇なのに変わりないので、街に蔓延る一般人とすれ違う度にその声に耳を傾けてみた。
マジ卍?水素の音?
こういう時、レムがいないと何も分からないから、地球の流行にはついていけないな。今度自分でも調べてみるか……そういえば、レムがこの地球には『スマホ』と言われるものがあると聞いたことがある。あらゆる情報をその端末一つでゲットできるという優れものらしい……チッ、しかし今は金が足りないな。
今までこの星で買い物が出来るのは、他の星で採れた珍しいものを売って金にしていたからだ。が、それが尽きるのも時間の問題。そろそろ他の星で金に変えられそうな物を調達してこなければな。
▽
夜
「チッ、どうなってやがる……」
レムはまだ来ない。が、それよりも気になることがあった。気まぐれとして辺りの気を探ってみると、この町にいつのまにか堕天使が入ってきてたのが分かった。人数は二人……だな。しかも、そいつらの気がこの前破壊した奴らよりもよっぽど大きい。……が、俺にとってはゴミレベルだし、もう一人の奴は気の隠し方が下手っぴも良いとこだ。これで隠れてるつもりだったらお笑い草だぜ。まずはコイツと接触を図ってみるか。もしかしたら親玉かもしれねぇからな。
俺は瞬間移動で隠れてるつもりの堕天使の元へと向かった。
▽
「おい、お前誰だ?」
「うおおっ!?ビックリしたぁぁっ!!お前こそ誰だ!?てかどうやって入ってきた!!?」
瞬間移動した場所にいたのは金髪のオヤジだった。呑気に酒なんか飲んでるし、更にはコイツがこの町に侵入してるのに気づいていないのかあの管理者(笑)。まぁ、別にアイツに期待も何もしてないが。
いや、よくよく気を探ってみるとあの管理者やその他大勢が戦ってるような気配がした。ゴミのような気だが同じ場所にもう一人のカラスがいる……そっちの対処に向かっててコイツを放置してるのか、それともただ単に気づいてないのか……まぁ、どうでもいいか。
「おい、まさかお前がカラスの親玉か」
「……まさかそういうお前さんが、最近この町にちょくちょく現れる破壊神様ですかな?」
ブランは自分が質問してるのに相手が質問で返したことで軽くキレて、金髪の中年男性が持ってる酒の入ったグラスを視線による気の圧力だけで割った。
「!?」
金髪の中年男性は何をされたか分からないという顔をしているがそんなことはブランにとってどうでもよかった。
「質問を質問で返すな。質問には答えで返す……そんな事も分からないトリ頭か?」
「ッ!……申し訳ありま……せん……」
ブランの殺気に耐えられず、軽い口調から一気に敬語に直った彼は堕天使総督『アザゼル』。彼は以前、彼を危険視していたサーゼクスからの話を聞いて、ブランが本当に破壊神かを疑っていた。そして、確信ではないが、放たれた殺気に気圧され、今自分の目の前にいるのは本物の破壊神である可能性が充分にあることを理解した。
「おい、この町で暴れてるカラスと二人の一般人は何をしようとしてる?それくらい知ってんだろ」
ブランの問いにアザゼルはあっさりと事の経緯を吐いた。話を聞くところによるとまず、天界側が所持している聖剣がコカビエルという堕天使の幹部に奪われた。しかし、その天界側のトップであるミカエルは二人だけ聖剣使いを町に寄越して対処をしようとしたらしいが、成り行きでグレモリー眷属とも共同戦線を張ることになり一緒に対処に向かったがコカビエルには全く勝ち目が無いらしい。
戦う前でもアザゼルはこの問題をグレモリー眷属と聖剣使いでは対処出来ないことを分かっていたので、その対処の役を自身の勢力に引き入れた今代の白龍皇に任せたのことだ。今はまだ到着はしていないが、間も無く来るようだ。
「もうすぐ、今代の白龍皇のヴァーリが到着し、コカビエルを止めてくれるはず……です……」
「ふーん……んで、お前は何してんだ?お前は堕天使総督という立場のせいで軽くは動けないという理由は100歩譲って認めてやる。だがな、それはお前がこの町にいる理由には全く関係がないだろ」
「せ、赤龍帝の神器が気になっーーーぶほぉっ!?」
全部言う前にブランはアザゼルを殴り飛ばし、アザゼルはその勢いで部屋の壁を破壊しながらふっとばされる。
「フン、全く危機感がないようだな。そもそも幹部一人すら言うこと聞かせられない、対処がギリギリの時点でお前には呆れるしかないな。そのお前が言う白龍皇なんか待ってられるか……ホンット使えねぇ」
唾を吐き捨てるように冷たく言い放つと、ブランは瞬間移動でコカビエルの元へと移動していった。因みに、ぶっとばされた先でアザゼルは一日中気絶していたそうな。
▽
駒王学園にて
リアス達グレモリー眷属、そして聖剣使いのゼノヴィアはコカビエルが連れてきた『ケルベロス』という魔獣を倒したところだ。
しかし、まだ他に三人の人物が残っており、ここからが本番の戦いであった。その一人であり、首謀者のコカビエルはリアス達の戦いを上空から優雅に眺めていた。
「ついに完成したァァ!!4つのエクスカリバーが1つになったぞ!!フリード!!」
「あいよぉ!」
『バルパー・ガリレイ』……今回の事件の犯人の一人であり、現在、奪った三つの聖剣と聖剣使いであるイリナからは奪った聖剣、合わせて四つの聖剣を融合させたものをこの場で作り上げた。完成すると、それを同じく共犯者であり、白髪の男、『フリー・セルゼン』という者に投げ渡した。
「フハハハ!!これでこの町は20分後に崩壊するぞ!!さぁ、俺達を止められるかな?」
「何ですって!?」
巨大な魔法陣が駒王学園の中心に展開され、嘲笑うように
言うコカビエルにリアスは激昂して叫ぶと歯軋りする。するとそれとは別に
「バルパー・ガリレイィィィィッ!!」
過去に『聖剣計画』と言われるによってモルモット扱いされた自身と同志達の無念を晴らす為、その計画の首謀者である男の名前を叫ぶ木場は魔剣を構えて突っ走る。しかし
「がはぁぁっ!?」
「うし、到着」
「「「「「!?」」」」」
バルパーと言われた中年オヤジは瞬間移動で現れたブランに両脚で踏みつけられてうつ伏せになって倒れた。いきなりブランが現れたことにリアス達や、ゼノヴィアも驚愕と困惑の表情を浮かべる。
「ア、アイツ!!」
「嘘!?ソーナ達が結界を張ってる筈よ!?一体どうやって……!?」
イッセーはブランを見ると表情を険しくさせるが、そんなことは御構い無しでこの場に現れたブランはあたりを見回していく。
「今回の首謀者ってのはどのカラスだ!?……何だ、このおっさん?」
彼が下を見ると、はぐれ悪魔バイサーと同じように誰かを足で踏みつけていた。するとその人物は顔だけを起き上がらせてブランに対し怒号を上げる。
「貴様ぁぁぁぁっ!!このバルパー・ガリレイに何をすーーー」
「五月蝿ぇ」
ドォォォン!!
「バルパーのおっさん!?」
ブランは自身が踏んでいた中年の司教っぽい人物が突然大声を出したので耳障りだと思い、エネルギー波を放った。司教の彼は断末魔も上げることすら出来ず、チリも残らずに消滅した。そして、今度は聖なるオーラを放つ剣を持ったフリードがブランに近づいてきた。
「なんなんですかぁ?なに急に現れて喧嘩売っちゃってんの〜?ぶっ殺されたいんですかぁぁっ!?アンタみたいな筋肉モリモリ野郎の出番はーーー」
「邪魔だ」
品性のかけらもない、礼儀も知らない、更には見たこともない人物であり、共犯者だとすぐにわかったブランは、その男に見向きもせず、冷たく放たれたその一言と共にフリードに人差し指を向ける。すると
「ギャアァァァァァァァァァァッ!!」
白髪の彼の身体は粒子状となって破壊された。すると、持っていた剣らしき物も一緒に破壊された事で金髪の少年、リアスの眷属の一人である木場がブランの背後から襲ってきた。
「ふざけるなぁぁぁっ!それは僕が破壊するものだったんだ!!それをぉぉぉぉぉっ!!」
「ッ!待ちなさい祐斗!!」
リアスの制止を無視し、木場は憎悪に塗れたその顔で魔剣を握り締め、ブランへと突っ込んでいく。そして、背後からブランに斬りかかる。しかし
バキン!
「な!?」
返り討ちにするかと思いきや、ブランはそこから動かずコカビエルを下から見上げていた。木場の魔剣はブランの身体に当たると逆に折れて使い物にならなくなる。しかし、それでも彼は折れた剣を今度は突き刺そうとする。
バキン!
今度は刃全体が粉々になって今度こそ使い物にならなくなった。ブランは未だに微動だにしない。
その理由は簡単。そもそも、ブランは木場が背後にいることに気づいていなかった。彼にとって木場の魔剣は『強い風が当たっているのか』という認識くらいで然程気にするような衝撃ではないのだ。
『いや、気を察知できてないのでは?』と思うかもしれないが、そうではない。ブランはコカビエルを含めこの場にいる者達の気を察知するほどの価値はないと判断した。わざわざ、そんなことしなくとも蹂躙できるほどの差があるのはブランもよく分かっている故、今はコカビエルに自らの怒りをぶつけることに集中しているのだった。
また、無視されていることに対しても怒りを燃やす木場は次々と魔剣を創造していき、渾身の力を込めて何度も何度も剣を振るっていくが、それでもブランは気づかない。
『ん?何かのお笑い?』とでも言いたくなるような木場の一人演技のように見えてリアス達は困惑しながらその状況をただ見つめることしか出来なかった。
「お、おい、背後を気にした方がいいんじゃないのか……」
今回の事件の首謀者であるコカビエルですら、この状況に戸惑っており、複雑な顔をしながらブランに気づかせてあげようと声をかけてみた。しかし
「何言ってんだ?今は風なんかどうでもいい……俺はお前に用があるんだよ」
コカビエルの『あっ、そう……』のような声が呟かれたと思われる。コカビエルは咳払いをすると、先程の言葉は無かったことにしようとしたいのか意気揚々とブランを見下し、シリアスな雰囲気を取り戻した。
「ククク!誰だか知らんがまた一人虫ケラが死にに来たか!」
「黙れ」
「ヒッ!」
突如、ブランの前方に放たれた気の圧力に触れたコカビエルは怯える声を上げ、身体を震わせる。
「お前が首謀者のカラス野郎だな?コカ……コカ……まぁ、カキクケコでいいか」
「コカビエルだ!フ、フン、確かに俺が首謀者だ!そ、それがどうした!?貴様に何の関係がある!?」
その言葉が更にブランの心に火をつける。
「何の関係があるだと……!?」
拳を握り締め、静かな怒りが爆発寸前にまで達し、ついにそれは解き放たれる。そして、ブランは身体を浮き上がらせると、フッとその場に消えた。
「き、消えーーー」
コカビエルはブランが消えたと思った。しかし、それは間違いでただ単にブランがコカビエルの目の前に移動しただけであって決して消えたわけでは無い。コカビエルが気づいた時にはブランの拳が彼の頬に当たっていた。当たったことを認識するのすら遅くなるほどコカビエルにとってブランの速さは尋常ではなかった。
一方、ブランはコカビエルに拳を当てながら、思いっきり怒りをぶつけるように叫んだ。
「この町破壊されたら……
あの美味い豚カツ作る婆さんが死ぬだろうがぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ガァァァァァァァァァァッ!?」
パリィィィィン!!
怒号を上げるが、それでもかーなーり弱めに放ったブランの拳を受けたコカビエルは駒王学園に張られていた結界を突き破って空の彼方へとふっとばされる。
「あと、その邪魔な魔法陣、破壊!!」
怒りに燃えてはいるが、先程コカビエルがこの駒王町に展開した街全体を崩壊させる術式が込められた魔法陣をブランは見逃さない。完全に怪しいものだと察した彼は空中で下方に掌をかざすと、そこから放たれた見えない破壊のエネルギーによってその魔法陣は霧散して消え失せる。するとすぐさま上空の彼方へと飛ばされたコカビエルの後を追った。
そう、左片手にお婆さんから貰った豚カツの入ったレジ袋を持ちながら。
「な、何をしたの……!?」
先程までケルベロスやコカビエルと対峙していたリアスはブランの動きを捉えられていない。『ブランが何かした』ということだけは理解出来たが、あまりの動きの速さに『何をしているか』は理解が追いついていない。結果だけが脳裏に焼きつく。
その他のグレモリー眷属、そして結界を張るのに集中していた貴族悪魔、シトリー家の次期当主、『ソーナ・シトリー』率いるシトリー眷属も、先程ブランによってぶっ飛ばされたコカビエルが結界を突き破り全壊したことで異変に気付きリアス達のいる場へと駆けつけた。
しかし、その後両眷属は何が何だか分からずにその場に呆然と突っ立っていることしか出来ず、木場は自らが憎む聖剣を破壊出来なかったことを、そして最後の最後まで無視され続けたことを嘆いていた。
ドラゴンボール超の本編では18個あったうちの6個が破壊されましたが、ここではその6つのうちの1つが破壊を免れたと思っていただければいいです。
全王様はガチのキチガイだと確信。機嫌損ねて宇宙ごと破壊、更には未来トランクスの世界も破壊。はっきり言って私はイッセー並に全王のことが嫌いです。カラフルおチビちゃんやら、全カスとか言われても擁護する気なども起きない。理不尽の極みである。
あと、木場くんの覚醒スルー。都合良くいかないね、残念。