なので、ハイスク勢は現時点では束になってかかってきても絶対に勝ち目はありません。それをもう一度確認として言っておきます。
それではどうぞ
三人称side
ブランに殴り飛ばされ、遥か上空へと飛ばされたコカビエルは何とか体勢を立て直した。雲の上にとどまっている自分の現状を把握すると、追いついて来たブランに対し激しい怒りをぶつける。
「貴様ぁ……!!」
「どうした、俺を睨みつけて……豚カツはやらねぇぞ」
「いらんわ!!というか貴様は誰なんだ!!?なぜ俺の邪魔をする!!?」
「これだから神の気を感じ取れないやつは……まぁいい。俺の名前はブラン……『破壊神ブラン』。聞いたことあるだろ?」
「何!?俺が知っている破壊神はジジイだったぞ!!?どう見ても別人だろう!!」
ブランはため息をつく。何回この説明をしなければいけないのかと。そう思いながら腕を組み、説明を開始する。
「あぁ、もうかなりの歳いってて身体も全盛期と比べて動かなくなってたからな。早い内がいいと思って死ぬ前に俺が破壊神を継承したんだよ」
説明はするものの、コカビエルはまだ納得はできていないようである。
「……まだ破壊神かどうかは信じることはできんが、そうだとしてなぜ俺の邪魔をする?貴様は悪魔の味方だとでもいうのか?」
「あんなゴミどもと一括りされちゃうとはな。どいつもこいつも、この地球の三大勢力とやらは俺をイライラさせるやつばっかでウンザリしやがるぜ。俺はお前を破壊しにきたんだよ。これからも食う豚カツのためにな」
「……そんなことのために……!?」
「そんなことのために?……お前ら地球の人物はその気になればいつでも食えるがな、俺にとっては希少価値なんだよ。特に地球の食べ物は他の星の食べ物と比べて絶品という言葉では表現出来ないほどの美味さを秘めてる。それをお前はその一部を消し去ろうとしたんだ。ならば阻止するのは当たり前だろう」
「く、くくく……ふぅぅぅぅざけるなぁぁぁぁぁっ!!」
コカビエルは自身の戦いの執念の前に、ブランのふざけた理由を聞いて怒りが募ったのか堕天使の光の槍を手に持つと、彼に襲いかかる。
しかし、ブランは腕を組みながらそれを軽々と避けていく。コカビエルが槍を突き刺そうとすれば横に避け、なぎ払おうとしてくれば後ろに体を仰け反らせ避けていく。
すると、コカビエルは何回も何回も槍を振るっていき避けられていくだけでなく、自身の体力も極限まで擦り削られていくのであった。
「な、何故だ……!?何故こんなにも疲れる……!?」
普段は槍を振るっただけで体力など消耗するはずがないコカビエル。その理由はブランが放つ神の気にある。彼の放つ神の気による圧倒的なプレッシャーは神性がある地球の神々であろうともガクガクと震えだす程だ。
「これで終わりか?」
「バ、バカな……何だこの差は……!?こんな差があっていいのか……!?」
ただ殺してもつまらないので、ブランは何か思いついたのか、笑みを浮かべながら口を開く。
「そうだ、お前に最後の思い出作りをさせてやる。なに、旅行をさせてやるってだけだ。安心しろよ、すぐに終わるからな」
「な、なんだと……!?」
ブランは一気にコカビエルとの距離を詰めると、彼の胸あたりに掌をかざした。すると
「さぁ、飛んでけ」
「ガハァァァァァァ!!」
何やら衝撃波のようなものを放つと、コカビエルは飛行機よりも早くとある場所へと墜落した。
▽
人気のない場所でコカビエルは倒れながらも目覚める。その隣にはブランが悠然と立っており、コカビエルが目覚めたのを確認すると笑みを浮かべる。
「ここは……どこだ……?」
「ここは大阪。たこ焼きやお好み焼きが有名な所だ。観光なんかにちょうどいい地域なんだと。さぁ、次行くぞ!」
「は?……がはぁぁっ!!」
ブランは再びコカビエルをはるか上空へと吹っ飛ばすと、高速で先回りした。コカビエルは訳も分からず、衝撃や勢いに身を任せ、気づいた時にはブランが先回りしており、額に手をかざされていた。
「ほらよ」
「ガッ!?」
ブランは次の目的地へと移動させるためにコカビエルに力を入れないほどの軽いデコピンをする。コカビエルはデコピンをされたと思えないほどの凄まじい衝撃を受けて、新たなる地へと墜落。
▽
コカビエルが次に墜落したのは、とある地域のよく人が通る道のど真ん中だった。周りの一般人は、翼を生やした者が落ちてきたと興奮し、コカビエルを珍しそうに見ながら写真を撮っている。
「なんだコイツ!?宇宙人か!?」
「い、いや黒い翼が生えてる!まさか、天使ではなく、堕天使!?すげぇ!!」
一般人でも、翼を生やしたコカビエルを見れば堕天使だと分かるのだろう。そして、この後これがニュースとなって堕天使総督アザゼルが一般人達からコカビエルについての記憶を消すこととなるのは言わずもがな。
ブランもそのクレーターの近くにヒュッといきなり現れて降り立つと、一般人達は今度はブランに注目し、写真を撮っていた。しかし、ブランにとっては正体がバレようとも気にしないので、構わずうつ伏せに倒れているコカビエルに対して口を開く。
「ここは京都。えっと、日本人……だっけ?その国の多くの学生が修学旅行の行き先として候補に挙げられる有名な場所。いやぁ、すげぇよな……武力がお前達に劣ってようとも、こんなに文化が発達してるなんてよ」
まるで、旅行ガイドのように感想も交えながら説明をしていくブランは『もう、いいか』と呟くと再びコカビエルを上空へと蹴り飛ばした。
「ほらよ!」
「ぐおおおおおおおおっ!!?」
またもや先回りし、今度はそこから一気に、駒王学園の校庭へと戻すように投げ飛ばした。
▽
ドォォォォォン!!
コカビエルは駒王学園の校庭へと墜落すると、リアス達はボロボロのコカビエルを見て驚愕していた。
「か、彼がやったというの……!?」
「これが……破壊神……!?」
そうリアスやソーナが呟くと、ブランはコカビエルの近くへと瞬間移動をし、倒れているコカビエルを見下す。
「ほら、立てよ」
「ふ、ふざけるな……俺は堕天使幹部のコカビエルだぞ……俺は生き残って……戦争を……!!」
「お前の意志なんてどうでもいいんだよ。俺はお前に対して俺を楽しませられるとか、ライバルになれるとかそういうもん望んでいるんじゃねぇんだ。お前がどれだけ俺の退屈を紛らわしてくれるかってだけの話だ」
「……ふぅぅざぁぁけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!ぐはぁっ!!」
叫んで身体を動かそうとするものの、その瞬間にブランはコカビエルの背後に回る。そして肩にチョンッと指を置くと、コカビエルの身体は一気に地面へと叩きつけられその真下にクレーターが出来上がる。
「な、なんだよアイツ……!?圧倒的じゃねぇか……!!」
イッセーは堕天使幹部であるコカビエルを倒すつもりでいたが、実際に戦ってはいないので彼の強さは実感していない。しかし、今のブランの動きが見えていないことに驚愕し、その強さへの恐怖に無意識にも身体を震わせていた。
「お前はもう終わりだな……さて、そこにいる奴、出てこい」
「!?」
「やれやれ、バレてしまうか。流石は今、各勢力で噂されている宇宙の破壊神だ」
少し遠くからブランの様子を見ていた謎の人物はそう言うと、月を背景に駒王学園に現れた。白く輝く鎧を全身に纏っており、背中から光輝く翼を展開させ、宙に浮くその姿はとても神々しいものがあった。その人物はブランに対して自己紹介をする。
「俺はヴァーリ。今代の白龍皇だ」
「白龍皇……!?」
リアス達は今代の赤龍帝であるイッセーの宿敵といえる白龍皇までもが現れたことに状況の整理が追いついていなかった。
ヴァーリはアザゼルに言われ、コカビエルを回収をしに来たのだろう。しかし、ブランにとってはそんなことはどうでもいいことであり、今更堕天使側にコカビエルを引き渡すつもりもなかった。
「その堕天使はこちらで処分を下す。悪いが、それをこちらに引き渡してくれないだろうか?」
「知るか。今更来て何かを要求するなんて図々しいにも程がある。おい、一回だけ言うぞ。その後は口よりも先に手を出す。……今すぐここから失せろ。雑魚に興味はない」
『雑魚』と言われ癇に障ったのか、ヴァーリはそれでもブランに近づこうとした。が、何やら彼の翼が点滅すると、その神器に宿っているバニシング・ドラゴンである『アルビオン』がヴァーリを止めようとする。
【おい、やめろヴァーリ!奴には手を出すな!死ぬぞ!!】
しかし、それでも止まるどころか彼は更に闘争心を燃え上がらせるだけであった。
「フッ、だからこそ面白い。それに、アザゼルに連れて帰って来いと言われてるんでな。……悪いがぶべらっ!?」
「「「「「!?」」」」」
ヴァーリは全身に鎧や兜など被っているが、それらは全てブランの拳圧だけで砕けた。そして、その衝撃は生身の身体にも伝わり、露わとなった彼のイケメンフェイスは衝撃で歪むと、鼻血を出しながら遠くまでふっとばされた。
「失せろって言ってんだ。話が分からない奴はホント面倒くさいぜ。……さてと」
ブランは飛んで行ったヴァーリのことなど無視して、倒れているコカビエルに再び視線を戻した。
「お、俺は……戦争を引き起こす……!今度こそ、堕天使の勝利のために……俺自身の……戦いへの欲を満たすために……!!」
「あぁ、戦争ね。そんなの勝手にやってればいいじゃねぇか。俺はお前らが戦争しようがしまいがどうでもいいからな。だが、せめて他所でやれ。気に入ったこの世界を荒れ地にされたら人間レベルに支障が出るんだよ」
「……うおおおおおおっ!!」
コカビエルは最後の力を振り絞ってブランに渾身の一撃を放とうと、翼をはためかせて真正面から向かっていく。しかしその刹那……。
「しかし良かったな、俺と戦争出来て。まぁ、お前の負けだがな」
「ガ……ァ………」
コカビエルにはブランの動きが見えなかった。コカビエルにはただブランが突っ立っているようにしか見えなかったのだが、気づいた時にはコカビエルの腹部には大きな風穴が空いており、ブランはその穴を覗き込むように見ている。
「ひゃーっ、綺麗に向こう側の景色見えちゃってるじゃねぇか。そうそう、因みに、今のはちょーーっとだけ強めにやってみたデコピン、いや腹ピンなんだが……かなり脆すぎねぇか?」
堕天使の幹部ごときの実力に期待をしていたわけではないが、自分にとって彼のここまで身体が脆かったせいか、逆にブランの方がコカビエルよりも驚いていた。
コカビエルはそのまま倒れると、やがてピクリとも動かなくなり堕天使としての生涯を終わらせた。
「それともう一つ、確かにお前は死んだが、その戦いへの執着、実力差は分かっても俺に立ち向かうその勇気だけは褒めてやる。だから、その褒美として跡形も無く死体は消し去ってやるよ」
ドォン!
軽く気弾を放つとそれはコカビエルを飲み込んで死体を消滅させた。これにて、コカビエルが起こした聖剣強奪の事件は終わり、ブランはレムが到着するまでその場で待つことにした。
すると、ブランがコカビエルや白龍皇を倒すまでずっと呆然としていたリアスやソーナがハッとなってブランに話しかけた。
「貴方……何が目的なのかしら?私の管理する町に度々侵入してくるわ、コカビエルを殺すわと……いい加減教えてくれないかしら」
「それに、貴方がコカビエルを倒す理由が全く見当がつきません。良かったら、教えてもらえないでしょうか?」
「ん、豚カツを守るためだが」
「「……は?」」
リアスやソーナは軽く叩くように言ったブランに対し『何を言ってるんだ』と心の中で呟き、ブランは苛立ちながらリアスに質問する。
「おい、お前らだけでアイツと戦っていたのか?他にはいないのかよ。あっ、そこの黒髪ショートの女は周りでクソ弱い結界張ってたやつか。じゃあ、戦ってたのはやっぱりお前かよ、紅髮の管理者(笑)」
「……一応、魔王様に連絡して援軍は呼んであり……ます……」
本当に目の前の破壊神が相手かもしれないと念の為、リアスは仕方なく、ぎこちない敬語に直した。
そして、実際に援軍を呼んだのはリアスではなく、朱乃である。リアスはサーゼクスに迷惑はかけたくないとのことで援軍を呼ばなかったのだが、朱乃は流石に自分達ではコカビエルには勝てないだろうということを思って魔王に連絡したのだ。しかし、リアスはそれを明言はしなかった。
「にしても来るの遅いじゃねぇか。まぁ、どうせ直前で呼んだんだろ?ホント堕天使も悪魔も仕事おせぇな。部外者である俺の方がよっぽどお前らよりも仕事できてんじゃん。お前、まさか援軍呼ぶ前にこのメンツでアイツを仕留めようとしたのか?おいおいおい、バカかお前。アイツはこの地球ではそこそこの実力者なんだろ?実戦もまともに経験したことのないボンボンのお姫様とその兵隊どもが戦争から生き残った実力者に勝とうなんてよく思ったな」
「くっ……!」
リアスはボロクソに言われて悔しさに唇を噛んでいた。
戦争で生き残ったという点ではブランはコカビエルのことを多少は評価をしていた。故に、部外者でもリアス達では絶対にコカビエルに勝てないということは充分に分かっており、だからこそ、この場にリアス達グレモリー眷属、そしてゼノヴィアという聖剣使いだけしかいないことに疑問を思っていた。
リアスは魔王サーゼクスから、ブランには手を出すなと言われているので、迂闊に動くことはできなかったが、そんなリアスにブランは気遣うはずもなく続きを述べる。
「んで?どうだった?勝てる見込みはあったか?さっきの流れを側から見れば幾ら何でもお前らバカどもだって分かるはずだ。勝てるはずないよな。おいおい、管理もまともにできない……ってのは、まぁそれはお前をここに送り込んだ魔王共々が無能すぎるのもある。更には実力もゴミ以下、お前は一つでも不足を何かで補おうとしたのか?優しさか?慈愛か?プライドか?ハッ、まるで何も活かしきれてない。前にお前に言ったよな、管理はしっかりやれと。せめて、反省を活かそうとする姿勢くらい見せろゴミクズが」
すると、ズケズケと言うブランに対してイッセーがリアスの前に立ち、彼に怒りの眼差しを向けた。
「おい!部長だって町の管理やはぐれ悪魔の討伐、その他も色々頑張ってんだ!!何も知らないやつが……部長を悪くいうんじゃねぇ!!」
「イッセー……!」
リアスはイッセーに恋心を抱いているため、自分を擁護してくれた彼のことを見て感謝の目を向けていた。しかし、はっきり言ってブランから見れば、失敗を犯している人物に非を認めない奴が慰めをかけているだけの光景であり、思わずヘドが出るほどの気持ち悪さを感じていた。
「戯言もここまでくると病気だな……それにお前、誰に対してタメ口きいてんだ?いい加減に理解しただろ、俺が破壊神だということをな。お前と俺の立場は天と地の差があるんだ。優しく言ってる内にさっさと態度を改めろ」
「そんな難しいこと知るか!!神とか堕天使とか悪魔とかそんなの関係ねぇ!お前が部長を傷つけるなら、俺はお前を許さねぇ!!」
「コイツ……マジか……」
度胸がいいのかただのバカなのか。ブランはイッセーを見てそう思った。そして、ここでいい加減、破壊神に対しての態度が無礼だとというものを本当に分からせようと思ったブランだが、このままだと話が進まないと思い、今回もスルーをすることを決めた。
「ええっと、頑張ってる……だっけ?お前、頑張ってるって言えば何でも許されるとでも思ってるのか?はっきり言おう、この世をナメるな。努力しようが結果が伴わなければそれは本当に『頑張った』なんて言えねんだよ。それに、お前はなんも理解してない。上に立つものがどれだけの人の命を背負ってるのかということを。この世の様々な頂に立つもの、そしてリーダーという存在には『責任』というものが付き纏う上に、立場も上に行くほどその責任の重さは比例して重くなる。そして、その紅髪無能もその一人だ。町の管理者という一つの責任者という立場にありながら、力だけに特化した頭からっきしの無能の極み。はぐれ悪魔に関しても被害が出てから動き出すという後手に回るだけで、何でも力だけで解決しようとする。そしてそれに満足。それを何度も繰り返して『頑張ってます』なんて言われて納得しろという方が無理だ」
「くっ!!」
何も言えないのかイッセーは悔しそうに歯ぎしりする。が、それと同時にイッセーはブランに聞きたいことがあり叫んだ。
「じゃあ、アーシアの神器をどこにやった!?レイナーレに奪われて、そのままお前に宿ってんだろ!?返せよ!あれはアーシアの大事な力なんだぞ!!」
「アーシアって誰だ」
ブランがアーシアの名前を知るはずもなく、辺りをキョロキョロを見回す。そして、見覚えのある金髪の少女を見て察した。
「あぁ、あのシスターのことか。あれか……あんなもの破壊してやったが。何か文句あんのか?」
「ッ!!」
「ふぁぁ……何か眠くなってきやがった。そろそろ帰るかぁ」
全く悪びれる様子も無く、あくびもしていることが分かると、イッセーは先程のリアスへの罵倒の怒りも含めてブランに摑みかかろうとする。
「てめぇぇぇぇっ!!」
「やめなさいイッセー!」
「もういいんですイッセーさん!わ、私は気にしてませんから!!」
リアスとアーシアはブランに殴りかかろうとするイッセーの身体をなんとか抑えているが、イッセーの怒りは一向に静まらなかった。
「離してください部長、アーシア!!アイツはアーシアの優しさも踏みにじって、部長の努力すらもバカにした!!許せないですよそんなの!!」
「その二人は実力の差や立場はもう理解できたか。その茶髪野郎は怒りで立場なんかクソ食らえって顔してるが。はぁ、なんかコイツらと話してると疲れてくるな……おっ、やっと来たか」
上空を見ると、ブランを迎えにきたと思われるレムギットが光の速さを超えて地球に降り立ってきた。
「お待たせしましたブラン様、あら、その方はどうするのですか?」
イッセー達の存在に気づいたレムギットはブランにそう問いかける。
「俺は今日はもう無駄な労力を消費したくねぇんだよ。だから念の為……ハァッ!」
リアス達如きにこれ以上、一欠片も労力を使いたくないと思ったブランは威嚇のため、最後の労力として半分程力を込めて自身の身体に破壊のエネルギーを混ぜた濃密な神の気を纏った。
逃すかと言いだけなイッセーはまた力を込めるが、それでもリアスやアーシアに体を抑え込まれているので動けない。
「やめとけ、俺は今濃密な神の気を纏っている。近づけば、破壊のエネルギーに当てられて消滅するぞ〜」
目に見えるほどのオーラを見て、近づけばタダでは済まないということはリアス達もソーナ達も流石に理解しているのか、その場からは動く事が出来なかった。しかし
「うおおおおおっ!!」
「裕斗!?」
その中で最も冷静ではない木場がブランに対して背後から迫る。ちゃんとブランの警告はきいたはずなのにだ。
「同志の仇は僕が討つ!聖剣無き今、それを破壊したコイツを討つことで僕は復讐を果たせることになるんだ!!」
荒々しい雄叫びを上げる。そして、先程のように木場の剣が再びブランの身体に当たる。しかし、次の瞬間
フッ!
「……はっ?」
イッセーの間の抜けた声が響く。剣が当たったと思えば、それらは砂が落ちるように消え、更にはその余波で木場の身体も粒子となって破壊された。そう、それは彼がこの世から消滅したということを意味していた。
それを見ていた朱乃やアーシアは両手で口を抑え、嗚咽を漏らしている。小猫はガクッと膝から崩れ落ちる。ソーナ達シトリー眷属も、まさかこんなことが起こるとは思ってなかったのか身体が固まってしまっている。そして、リアスやイッセーは心の底から怒りが湧いていたのであった。
「なにしてんだ……こいつ……?」
警告はしたはずなのに、突然自分の背後に来たと思えば、勝手に粒子となって死にゆく木場を見てブランはなんと言えばいいのか分からなくなってしまった。
「木場ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
イッセーは叫び、ついにリアスの制止を振り切って神器を出すとブランへと走り込む。
「警告はした。しかし、そいつは従わなかった。誰か無理矢理にでも止めれば良かったな」
「テメェはやる事なす事全てがクズだ……ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「あぁ、ついでにこの国以外の別れの挨拶も交わしてみるか……チャオ〜」
ブランはイッセーが近づく前にレムギットの肩を掴むと、彼等は地球を抜け出し元の星へと帰還していった。
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
イッセーはリアスの元を離れたとはいえ、仲間の一人である木場が破壊されたことでさらにブランへの怒りが増幅していくのであった。そして
「とりあえず……教会へと帰ろう。任務はあの破壊神によって解決はしてしまったが……今はっきりした。彼は私達が敵う相手じゃない、関わるだけでも避けるべきだ」
聖剣使いであるゼノヴィアはその一部始終を見ていたが、任務は一応果たし、もう一人の聖剣使いのイリナは負傷してあることもあったので、とりあえずこの場を離れてイリナを連れて教会へと帰っていった。
▽
「ししょー、おかえりなさい」
「ただいま」
イッセー達のことなど蚊ほども気にしていないブランは自分の星の宮殿へと帰還。オーフィスの出迎えを見ると、彼女の分の買ってきた豚カツをあげた。
「ほらよ」
「えっ」
まさか自分にプレゼントをしてくれるとは思わなかったのか、オーフィスは口を栗のような形に開け、彼女なりの驚きの声をあげた。
「ししょー、病気?」
「ぶっ殺すぞ」
普段、オーフィスにとって自分がどんな印象なのかがよく理解したブランであった。
その後、ブランはティアマットにも豚カツを渡すために、彼女の部屋へと向かっていった。
▽
ティアマットの部屋の前にて
「カカオ〜、豚カツ買ってきたから一緒に食おうぜ〜」
ティアマットの部屋のドアをノックしてみると、そこから彼女が眠そうに出てきた。恐らく、仮眠でもとっていたのだろう。
「ふわぁ……お帰り……今日は何してたの?」
「堕天使総督ぶっとばして、幹部一人破壊してきた。あと、なんか悪魔が一人勝手に死にに来た」
「へぇ〜」
散々、驚きの連続を体験してきたティアマットにとって、この程度では最早ドキッとするどころか流せる程の精神力となっていた。またはブランの強さをよく知っている故の反応なのかもしれない。
いつもの冷静を取り戻した木場なら踏み止まってただろうけど、今の彼は復讐心に囚われていますからね。この展開はおかしくはないかと。
リアスを殺すと後で面倒(サーゼクス)だが木場ならまぁ、大丈夫。なのですみませんが木場はここで退場です。お疲れ様でした(無慈悲)。
というか、感想欄でも言ってくれる人がいたのですが、聖剣の復讐ってどゆこと?って感じですね。剣じゃなくて、普通は首謀者に標的を絞ると思うんだが……元はと言えば聖剣がなければ自分はこんなことにならなかったって感じなのかな?まぁ、その後自分達を陥れたその聖剣を使うことになるという本末転倒なことが起こるけども。