ハイスクールD×D 第0宇宙の破壊神   作:オラオラドララ

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遅れてしまって申し訳ない。

それではどうぞ。


第18話 決別

三人称side

 

ブランがサーゼクスとアザゼルと会う数時間前の話。

 

地球で食べ物を満喫していたオーフィスとティアマットの前にカテレア・レヴィアタンが現れた。ティアマットは先程購入したと思われるココナッツミルクをストロー付きの容器で堪能している。それと同時に、目の前のカテレアの名前を覚え出そうと必死に頭を働かせて記憶を呼び起こさせる。

 

(カ……カテ……ここまでは思い出せるのよ〜!何で分からないのぉぉぉぉっ!!)

 

すると、オーフィス以外にティアマットの存在に気づいたカテレアは彼女を凝視すると、ボソッと呟くように言う。

 

「……その青い髪にドラゴンのオーラ……まさか、天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)……ティアマットですね」

 

「へっ?あっ、ま、まぁね……?そういう、貴女……悪魔よね?でも名前が思い出せないのよねぇ……誰?」

 

久し振りに異名を呼ばれたせいか、少し驚くティアマットに対し、カテレアは名前が覚えられていないことに不服なのか、声を荒げる。

 

「な!?この私が分からないとはどういうことなのですか!?いいですか!?私の名はカテレア・レヴィアタン!!今現在、最もレヴィアタンの名に相応しい悪魔の名です!!どうです!?思い出せたでしょう!!?」

 

「「あぁ……そういえばそんな名前だった」」

 

「あ、貴女達ぃ……!!」

 

何かオーフィスやティアマットにバカにされているような雰囲気を察したカテレアは拳をワナワナと震わせる。すると、ティアマットは何か気づいたのか彼女に質問をする。

 

「あっ、貴方、現時点では悪魔界に追放された旧魔王って扱いじゃない。あまりここら辺うろついてたらまずいんじゃないの?」

 

「黙れ!我々にとって、旧魔王と呼ばれることすら汚名なのですよ!闘争本能さえも消え、ゆとりに浸っている現魔王こそが腐っているだけです!!」

 

「ふーん、あっそ」

 

そうカテレアは憤慨するものの、ティアマットにとってはどうでもいいことであり、内心では『どっちもどっちね』と結論付けて、早く話が終わらないかと心の中で毒づく。ブランの元で修行を続けていたせいか、こんな面倒な話で時間を持て余して身体を鈍らせるならば、いっそ今から修行していた方が時間を潰せそうだと思うほどだ。

 

(というか、割と気づかれないものなのね。この町にいる悪魔がカテレアの存在をキャッチしているかと思ったけど、周りにはそんな気配もない……監視している様子もないことから、そもそもこの町にいることすら気づいていないようね。まぁ、所詮はその程度の実力者ってことかぁ……)

 

ティアマットが一人で周りの状況分析をしている間、カテレアはオーフィスに詰め寄ると、ヒステリックに近い感じで叫ぶ。

 

「オーフィス!何故帰ってこないのです!?貴方が禍の団(カオス・ブリゲード)のアジトから抜けて行方不明と聞いて探し回ったのですよ!?」

 

「はぁ……オーフィス、アンタそんな組織入ってたの?」

 

「うん、我、グレートレッドを倒すために色々な奴ら誘った」

 

「うわっ、迷惑だからやめなさいよ。それに、グレートレッドなんかそうそうお目にかかれるものじゃないのに(そもそも、こんな奴らと手を組むなんて良からぬことしか起こらないでしょ……)」

 

「どうして!?貴方は次元の狭間に帰るために我々に力を貸すと言った!それに対して私達も貴方に協力するという関係を結んだ!我々は貴方にとって大切な存在で、貴方は私達にとっても大切な人!貴方の望むものは禍の団にこそある!さぁ、一緒に戻りましょう!?」

 

「……」

 

オーフィスはカテレアに自身の居場所を与える……という感じに言われているように感じた。ここでカテレアの言う通り、禍の団へと帰ることだって出来る。しかし、禍の団を作ったのはあくまで自身が故郷の次元の狭間へ帰るため、グレートレッドを倒す戦力を集めるためだった。

 

だが、今のオーフィスにその気持ちはあるのか?それを彼女自身は自問自答しながら考え込む。恐らく、初めてかもしれない。本能のまま、自由気ままに行動して来た時とは違い、オーフィスは生まれて初めて長い時間をかけて思考を行っただろう。

 

そして、その答えは出た。

 

「……違う」

 

「えっ?」

 

ティアマットはオーフィスの呟きに眉をピクッと動かして驚きの表情へと変わる。恐らく、以前のオーフィスなら、カテレアの口車に乗せられていたと思われる。しかし、今の彼女は誰の助言も無しに否定をして見せた。

 

「我、考えた。ししょーと一緒にいて、考えることを覚えて、答えを出すことを知った。そして考えた。お前達が欲しかったのは、我という後ろ盾。決して友達になりたいなどという親切な気持ちで引き受けたんじゃ無い」

 

「ッ!」

 

ただ、世界を混沌に導く目的があるカテレアにとって、オーフィスの願いなどただのおまけとしか思っていない。それを見透かされたように、淡々と指摘されるカテレアは思わず表情を歪ませる。

 

「それに、グレートレッドの足元どころか、鱗一つすら及ばないお前達が、どうやってグレートレッドに勝つ?」

 

「そ、それは!貴方の蛇がもっと大量にあれば!!」

 

「それは無理。もし、大量の蛇を取り込んだとして、それに耐えうる器がお前達にあるはずがない。今の強くなった我の蛇をちょっとでも取り込めば、今度は肉体どころか魂までも無限という力に喰われるだけ……それに、もう蛇を渡すつもりもない。はっきり言って、お前達じゃグレートレッドには絶対に勝てない。蛇で強くなることしか考えてないなら尚更。無駄に命を捨てたくないならやめておいた方がいい」

 

「ふ、ふざけるな……!散々、自分勝手に我々を招集しておいていざ協力しないなどと!!ならば、私達はどうすればいいのです!?そんな勝手が許されると思いですか!?」

 

その言い分は最もである。学校の部活で例えるならば、創設者である部長がいきなり、その部活を辞めるようなものだ……それはあまりにも無責任なことである。

 

オーフィスも、それは分かっているわけで、ただ一つ、謝罪をした。

 

「だから、ごめん。協力してくれようと禍の団を作って、メンバーを集めてくれたことには感謝する。でも、我にはもう……必要がなくなった」

 

オーフィスはこの瞬間、本当の意味で禍の団との決別を果たした。その言葉に、カテレアは目を丸くして驚く。

 

(……何だ、私は何を見ている?今、自分の目の前にいるのは本当にあの無限の龍神だというのですか?)

 

カテレアは困惑する。他人に謝るオーフィスなど、今まで自分が見てきた彼女とは全く違う。別人を見ているかのようだった。かといって、ここでオーフィスを手放すのははっきり言って禍の団にとっては大きな痛手となる。それを阻止するため、無理矢理にも連れていきたいのは山々だが、それを成功させるための実力は無いとカテレアは分かっているつもりだ。

 

(しかし、私達には前もって渡されたオーフィスの『蛇』がある!それに、最近、禍の団に加入した『白龍皇』もいる!これならば、後に行う三大勢力への襲撃は成功するはず……!)

 

故に、カテレアは諦めることにした。オーフィスという後ろ盾があることを隠し通す気でいるようだ。

 

「……分かりました。これ以上は何も言いません。しかし、この事は口外しないことをお願いします。……それだけでいいです」

 

カテレアはオーフィス達に背を向ける。その背中はどこか憤怒を感じさせるものはあったが、決して爆発させないように堪えているような感じであった。

 

(……コイツ、向かってくるだけの単細胞じゃないだけまだマシね。引き際はわきまえてるってところかしら)

 

ティアマットはそれを見てカテレアをそう評価すると、持っているココナッツミルクが入った容器のストローを咥えて再び飲み始める。

 

カテレアは渋々、魔法陣を展開してこの場を去り、オーフィスとティアマットは再び歩き始める。

 

「いいの?これで」

 

ティアマットは歩きながらそう聞き、オーフィスは答える。

 

「……うん、善意ではないとはいっても、カテレア達は我の為に集まってくれた……だから、我は何もしない。それに、ししょーとティアマットともっと一緒に居たいから。我の知らないこと、もっと知って見たいから」

 

またもやオーフィスの言葉に驚愕するティアマット。オーフィスはこの世界で孤独だった身で、その孤独を紛らわせてくれたのが、破壊神であるブランだった。

 

「……まっ、他人に流されずに自分の意見を言えただけでも、進歩してるんじゃないの?はっきり言って、昔とは大違い……いつか、『無意識に歩く破壊兵器』となるんじゃないかと心配だったけど、そうならなくて良かったわ」

 

ここでオーフィスは気づく。ティアマットはオーフィスの意思を尊重しようとし、敢えて何も助言をしてくれなかったということに。それに対してオーフィスはお礼の意味も込めて、ティアマットの手をそっと握った。

 

「……ありがとう、ティアマット」

 

「ちょっ、やめなさいよバカ……アンタからお礼を言われるなんて恥ずかしいのにも程があるわよ……」

 

以前は関わることなど殆ど無かった二人ではあるが、ブランの元で一緒に過ごして来たお陰か、二人の間には一つの繋がりが出来ていたようで、特にオーフィスはその『繋がり』を大切にしているかのようだった。

 

オーフィスとティアマットはまた食べ物を満喫しようとしたが、ここで二人は『ある存在』が自分達を見ていることに気づく。その方向にチラッと視線を動かしたティアマットは、歩きながらその存在の中にいる白龍皇のドラゴンのオーラも感じ取った。

 

(あれで気を完全に隠していると思っているとは……まだまだね。それに、アルビオンも堕ちたものね……ドライグとのくだらない喧嘩に拘って、神器に封じられようともそれを未だに成し遂げようとしてるなんて見苦して見てられないわよ。アンタが別にどうしようと勝手だけど、恐らく……早く、その宿主から抜け出さないと……本当に死ぬわよ)

 

誰かに見られていることに気づいたティアマットとオーフィスだが、彼女達は敢えて気づいていないフリをしてそこから立ち去る。その相手が最早、自分達の脅威にならないほどに力の差があることを戦う前から察したからである。

 

その一方で–––––。

 

(アザゼルに破壊神を会談に呼ぶと言ったが、この事をカテレアに言ってしまうとビビって襲撃が中止になってしまう可能性もあるから黙っておこうか)

 

白龍皇であるヴァーリは、先程のオーフィスとティアマット、カテレアの様子を遠くから見つめていたのだ。以前、コカビエルが死ぬ直前、ブランに触れられることもなく一方的にふっとばされた彼ではあるが、その闘志は衰える事などなく、寧ろリベンジを果たそうと思っており、カテレアと同じく禍の団へと加入。ブランのリベンジも視野の一つにいれているが、彼の本当の目的は『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』、『真龍』、『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』と称されるグレートレッドを倒し、自身が白龍神皇の称号を得るためである。

 

ここで彼のフルネームを明かそう。彼の名は『ヴァーリ・ルシファー』。先代ルシファーという、悪魔界においても圧倒的な魔力を身体に内包している者の血を引いている。故に、その才能、神滅具の強さ……正に、偶然の奇跡というものが重なったと言える彼の強さは、『歴代最強の白龍皇』と呼ばれるほどである。

 

勿論、だからといって、誰相手でも必ずしも勝てると思うほど彼は自信過剰ではない。上には上がいることを自覚しており、いつかブランさえも追い抜かそうという気になっている。

 

が、彼は大きな勘違いをしている。そもそも、彼は今まで、神器の扱いについて学んできただけであり、本格的な訓練や修行などはあまりしたことはない。それでも、才能がありすぎたせいか、この地球ではそこそこの実力者といえるほどに値する。

 

彼の勘違いしていることは、『ブラン相手にその内時間をかければ実力が追いつく』と思っていることである。神器、才能、それらをもっと磨けばブランに追いつけるだろうと思っているのだろうが、それだけでは到底彼の足元にも及ばない。ブランは、破壊神になるまでも数十年、先代ブランの元で強さを磨いてきた。戦闘センスもある。それらを極限を超えるほどに伸ばし、磨き、今の強さに至ったのだ。そんな彼に、今のヴァーリが修行をしたとはいえ、簡単に追いつけるものなのだろうか?いや、当然の如く追いつけるわけもない。

 

これはヴァーリ以外の神器所有者、神々、悪魔、堕天使の実力者にもいえることだが、彼らは『鍛える』、『特訓』、『修行』などという類のことをするのは非常に稀なのである。

 

理由は、『元々、自身にある強い力を持ってしまっていた』から。その分、心に油断を持ってしまいがちになる。

 

ここで、現魔王である『サーゼクス・ルシファー』を例として挙げてみる。彼もこの世界では『超越者』と言われる神々も恐れるほどの力を身に秘めている。しかし、それは決して修行などと言った類で生まれたわけではなく、『自然にそんな力を持っていた』だけに過ぎない。しかし、サーゼクスはそれ以上の絶対的な力を得ようとはせず、自身の妹の成長を楽しみにしているだけで、今もその眷属であるイッセーを筆頭に強くなってくれることを願っているだけだ。

 

確かに、圧倒的な才能があれば多くの凡人を上回ることなど、そう珍しくはない。サーゼクスも、自身の強さに自信を持っていたからこそ、鍛錬など必要無いと判断したのだろう。

 

しかし、ある人は言った。

 

『落ちこぼれだって、必死に努力すればエリートを超えることもあるかもよ』

 

そう、実際にその人物の言う通りだった。圧倒的な力を誇っていたエリートをその人物は絶え間ない努力で抜いたのだ。

 

努力は決して裏切らない……と言う言葉は、第三者から見ると、何かと嘘に感じられるかもしれない。だが、それでもその人物は可能性を証明することは出来たのだ。そして、鍛錬という概念は、この地球の実力者の心に最も欠けているものであり、弱点。

 

結論的に何が言いたいのかと言うと、『生半可な気持ちと修行では破壊神に追いつくことなど不可能』……もう少し砕いて言うと、『自惚れるな怠惰な者達』。神の気を読み取れる神々ならばともかく、三大勢力やドラゴンなどは、まず、破壊神との本当の実力差を理解することに専念するべきなのだ。

 

そして、今のヴァーリがブランに追いつく可能性があるとするならば、それはもっと未来のことになるだろう。それは勿論、絶え間ない修行をしたという前提があれば……そして、それまでに()()()()()()()()()()であるのだが。

 

後に、彼らは……三大勢力は知ることになるだろう。

 

自分達がどれだけ狭い世界で『強者』と名乗っていたのかということを。




ハイスクールD×Dの超越者の実力ってジャンプ作品と比べたらどれくらいの順位にいるんでしょうかね。他の作品にもワンピースやナルトの作品とクロスオーバーしているのもありますが、やはりというか何というかD×D勢は何故かそれらよりもレベルが低く感じられる。

しかし、ホント何故だろうって思えるのはハイスクールD×Dの三大勢力のアンチは何故、そこまで人気があるのか。私自身、他の原作(IS以外)で主人公勢アンチされるものは嫌ですが、何故かD×D勢なら『いいぞ、もっとやれ』って気持ちになってしまう時がある。だからか、そういうアンチ要素が沢山あるからこそ、原作イッセーの性格をそのまま残しておく小説が少なく、リアスを有能化、土地の管理に対して反省する作品も増えているんだろうなって最近思いました。


次回はブランが先代様に会いに行く話になります。お楽しみに。

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