ハイスクールD×D 第0宇宙の破壊神   作:オラオラドララ

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原作では確かどこかの総督さんが、『神がいなくても世界は回る』とかなんとか言ってましたね。

……まっ、その通りっちゃその通りですな。けど、世界は知らんが宇宙は神がいないと回りませんがね。


第19話 先代様に会いに行きます

三人称side

 

「この星にいるんだ……先代様って」

 

そう呟くのはティアマット。横にはオーフィスとブランとレムギットといういつもの四人が揃っているが、今回、彼らは地球からもブランの星からも遠い星へと足を運んでいたのであった。

 

「惑星ナッツ……相変わらず緑が多い星だな……」

 

ここは『惑星ナッツ』。主に農業が発達した星であり、温厚な星人達が暮らしているのどかな星である。ブランはこの地に流れる空気がとても心地いいのか、口元が少し緩んでいた。

 

「そういえば、私達は来なくても良かったんじゃ……」

 

「いや、ついでにお前達の顔も師匠に見せておきたかったからな。まぁ、ちびっ子は以前見たことがあるようだし、一応覚えてるだろ?」

 

オーフィスはその問いにコクコクと頷く。

 

今日、ブラン達がここにやってきた理由は、先代ブランに地球で行われる三大勢力との会談に参加して欲しいが為に同行をお願いしにきたのだ。

 

「我、ドキドキしてきた……」

 

オーフィスはまたぶっ飛ばされるんじゃないかとヒヤヒヤしている。

 

「わ、私も……」

 

一方、ティアマットは初めて会う為か典型的な緊張。

 

いま現在、彼らがいるのは大きな山のふもと辺りであり、ティアマットとオーフィスはこの上に先代ブランがいると思うと緊張が高まってしょうがなかった。

 

「さて、行きましょうか」

 

レムギットは、そう言うと前方に手をかざして何やら念をこめた。すると、そこは先程まで視覚には現れていなかった紫色の結界が張っていて、レムギットはその結界を壊さず、正面に穴を開けたのだ。

 

四人はその中に入り、彼の……先代ブランの領域のスタート地点へと立った。しかし

 

「あれ?飛んでいかないの?」

 

レムギットが自ら先導して飛ばない辺り、もしかして歩いていくのかと思ったティアマットだが、その予想は外れではないようだ。

 

「この先は結界で守られているのですよ。無闇に空を飛ぼうとして侵入して進んでしまうと、不法侵入として扱われます」

 

「……因みに、そうなった場合どうなるの?」

 

ティアマットの問いに、ピクッと反応したレムギットは口角を上げて意味深な表情でこう答えた。

 

「……それは、聞かない方が良いかと……」

 

その瞬間、オーフィスとティアマットは自身の顔が青ざめ、血の気が引いて行くのを感じた。一体、どれだけ危険な破壊神なのだろうかと緊張しながらレムギットの話を聞く。

 

「ここからは、私が事前に知りうる正規のルートを辿って歩いていくのですよ」

 

「……いや、歩いていくって……」

 

「……高い……」

 

ティアマットとオーフィスはその山の山頂を見ようと顔を見上げる。しかし、いくら見ても頂上が見えないのだ。ティアマットは地球にある山で一番標高が高い山、『エベレスト』を見た事があるが、これは最早それすらを超えるものであり、飛ぶのではなく歩くとなれば相当の気力を消耗するだろうと確信した。

 

「オーフィス、アンタ無限の体力あるんだから羨ましいわよ」

 

「我の蛇、飲む?」

 

「それは死んでも嫌」

 

「ほら、無駄話してないで行くぞ。飛んではダメだが、走ってはダメとは言ってない……つまり、分かるな?」

 

そのブランの言葉にオーフィスとティアマットはハッとなると、突如、身体を伸ばしてアップを始めた。そして

 

「「なるほど……つまり……

 

 

 

 

 

 

 

競争!」」

 

「その通りだ……行くぞ!!」

 

ブランと共に、オーフィスとティアマットは全力で山登りをスタートした。そして、その背後にはレムギットがおり、笑顔を絶やさずに軽快に後をついて行くのであった。

 

いや、その言葉には語弊があるので訂正しよう。彼女は彼らを一気に『追い抜かして』いくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

「ぜぇ、ぜぇ……何とか……ついていけた……!」

 

「そういえば我とティアマット……ルート、知らなかった。ついていけてなかったら迷ってた……危なかった」

 

「……まぁ、上出来だな」

 

山頂付近まで到着し、ブランが足を止めると二人も止まって休憩を取る。ブランは汗は少しかいているものの、まだまだ余力は残っている様子だ。

 

「というか、レムギットさんは何で私達の先にいるの!?」

 

「オホホ、まだまだスピードが足りませんねぇ」

 

ブランよりも先に走っていたレムギットは未だに余裕の表情を崩していなかった。

 

「ほらほら、あともう少しですよ〜」

 

レムギットの声に応じ、今度は四人一緒に歩きながら進んでいく。雑談を交わしながら

 

「あっ……もしかしてあの人が先代様?」

 

「ん?どれどれ……あっ!?」

 

山登り終盤、ふと目線の先を歩いている人物の姿があった。その人物は、山のてっぺん付近という気温の低い場所だというのに短パンにアロハシャツを来ており、白髪に口の周りを覆う程の髭をもっさりと生やした小さな老人であった。

 

「散歩中……なのかな、あのお爺さん」

 

「あっ……我、あの顔知ってる……」

 

「えっ!?ってことは……」

 

「そうです。ティアマットさん、あれが先代様ですよ」

 

「えぇっ……?」

 

レムギットの言葉にティアマットは、『イメージと違う』と呟いた。

 

こんな山奥に住む人など一人しかいないと分かっているブランは、その先代ブランの元へ駆け出していく。

 

「……むっ!?」

 

どうやらその人物もブランの気配に気づいたようだ。

 

「師匠〜!久し振りじゃねぇかーーーっ!!元気にしてっかーーっ!?」

 

ブランは久し振りに会ったせいか、大声を上げながら接近する。すると、先代ブランはハッとなって口を開く。

 

「おお、お前さん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……誰じゃ?」

 

「ダハーーッ!?」

 

あまりの間の抜けた反応に、その横をブランは思わずヘッドスライディングするように転ける。急いで立ち上がると、先代ブランの

 

「ブラン!ブランだっての!ほら、旧名『ヴェルドラ』!アンタの弟子の!」

 

ブランは先代にそう言うと、彼は思い出したかのようにポンと右拳を左掌に打ち付けた。

 

「おー!ヴェルドラか!ヌハハハッ、すまんすまん、この歳になるとボケてしまっての〜」

 

「お久しぶりです。先代様」

 

「むむっ、レムギットも久し振りじゃな。それにしても、相変わらず小さいのー!アッハッハ!!」

 

「それよりも先代様、私達がふもとに来る辺りから存在は感知出来ていたでしょう。忘れたフリなんて、お茶目なところは変わりませんね」

 

「ホホホ、バレておったか」

 

「チッ、結局気づいてたのかよ……」

 

(大丈夫かな……)

 

後ろからその光景を眺めていたティアマットはこの和やかな雰囲気に馴染めず、苦笑いしながらそう思う。

 

すると、先代ブランは後ろにいたティアマットとオーフィスに気づき、声をかける。

 

「お主らは誰じゃ?」

 

「我、オーフィス。地球に住む師匠の弟子。よろしくお願いします」

 

「同じく弟子のティアマットです。よろしくお願いします。先代様」

 

軽くお辞儀をして簡潔に挨拶をすると、弟子という言葉に驚く。

 

「なんと!ヴェルドラの弟子とな!?ヌハハハッ!これは面白いではないか!ヴェルドラ、しっかりと指導してやるがいい」

 

「あいよ〜」

 

ブランは軽く返事をする。すると、先代は今度はオーフィスに視線を集中させる。

 

「およっ?そちらのちびっ子の……オーフィスとやらじゃったな。お主から感じる気……何処かで……」

 

まるで覚えがあるかのように聞いたその先代の問いにはレムギットが答えた。

 

「先代様が地球へ足を運んだ時、しつこく何か要求してきた老人がいらしたでしょう?それがこのオーフィスさんですよ」

 

「おぉ、あの時のか……ふむ、前にあった時よりも相当鍛えているようじゃな。感じられる気も随分と澄んだものになっておるし、いいことじゃ」

 

「あ、ありがとう」

 

あの時とは打って変わって褒められたことに素直に嬉しくなったオーフィスは、心なしか口元が緩んでいた気がしたが、それを彼女自身は気づいていなかった。

 

先代ブランは次に初めて見るティアマットを見る。長い蒼髪、スリムなボディに目を通し、最後に目に行くのは、彼女の豊満な胸であった。

 

「ほほう……」

 

「ちょっと、目がいやらしいんですけど……」

 

やはり、男の目にはどうしても焼き付けられてしまうのか、胸をジーッと見つめてしまう先代ブラン。それを見て、ブランは彼を嗜める。

 

「はぁ〜……ジジイ、その辺にしておけ。困ってんだろ」

 

「おっとすまん、どうもこんなナイスバディな女性を見るのは稀での。思わず見とれてしまったわ。しかしこれじゃあ格好がつかんわい」

 

そう言い、ちょっとした戒めのように先代ブランは自身の後頭部を軽く叩く。先程の行動は、この星であまりにも一人で生活していた時間が長かったせいか性欲にも飢えていた……と言っていいかもしれない。

 

ティアマットはそれを見て困惑する。先代の破壊神に会うという緊張もあった為か、これからどう発言していいかも分からなくなってしまい固まってしまった。すると

 

「ほっほっほ、にしてもなかなか良いバディじゃのう……相当なべっぴんさんじゃし、お主、全宇宙ミス・コンテストに出てみんか?」

 

「ちょっ、ぺっぴんだなんてそんな……ことないわよぉ〜!」

 

「嬉しそうだなー……まっ、そんな大会ないけどな」

 

「ガーン!だ、騙された……」

 

ブランの淡々と言われた真実に口を開けて大げさに落ち込むティアマットに、先代ブランは笑いに耐えきれずに自身の片膝をバンバンと叩いて面白おかしく笑っていた。

 

「フェッフェッフェ……!軽い冗談じゃ。しかしどうじゃ、緊張は晴れたじゃろ?」

 

「あっ……えっ、ええ……ありがとう……ございます?」

 

ティアマットは彼の言葉にいつのまにか乗せられていたが、そのお陰かその緊張もどこか晴れていたことに気づく。

 

「ヌハハハハッ!別に敬語なんぞいい。何、弟子の弟子……孫弟子にあたる者が出来たんじゃ。気軽にお爺ちゃんと呼んでもええぞー」

 

「は、はぁ……」

 

ティアマットから見た印象としては、先代ブランは温厚なお爺さん……と見えたかもしれない。あまり破壊神らしい強面なイメージを予想していただけに、貫禄は今のところ感じられなかった。

 

一方、オーフィスは初めて彼に会った時に、これだけ温厚な彼を少し怒らせてしまったのかと、今自分の命があることに奇跡を感じた。

 

(我、生きてるんだ……生きてるって幸せ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、先代ブランはブラン達を自分の住む家に案内する。一人で住む為か、そこまで大きくはない小屋のような家に全員入り、テーブルを囲んだ椅子へと座る。

 

「先代様、これはお土産です。饅頭というものですよ」

 

「おお、ありがとうレムギット。ほうほう、これは美味そうじゃ……地球の食べ物も見ないうちに進化したものじゃ。まっ、これは後で食べようかの」

 

レムギットは杖からお土産用の饅頭を取り出すと、それを先代ブランへと渡す。喜ぶ先代ブランはそれを部屋の隅にあるタンスの上へと置く。

 

すると、今度は台所へと移動し、何やら作業をして数分後……湯気の出た暑い液体が入ったコップを持ってテーブルへと持っていき、それをオーフィスとティアマットの前に差し出す。

 

「ほれ、この地で採れた茶葉で作ったお茶じゃ。飲むがいい」

 

「あっ、ありがとうございます。いただきます」

 

「いただきます」

 

ティアマットとオーフィスは出されたお茶を一口飲む。すると、二人はカッと目を見開き、まるで突然目が覚めたかのように視界がクリアとなる。

 

「美味しい……地球のお茶とはまた別の苦味がある……それに、凄く飲みやすい」

 

「苦い、おかわりー」

 

出た感想の違いはあれど、美味しいということに変わりはない。オーフィスも気に入ったようですぐさま飲み干してしまいらお代わりを要求する。そして、それを快く茶を入れてあげる先代ブランは言う。

 

「気に入ってもらえて何よりじゃ」

 

そう言い、再び椅子へと座ると、先代と現代の破壊神二人の雑談へと入る。

 

「いやー、それにしても元気そうで良かったぜ。まだまだ身体は動かせそうだな」

 

「そうじゃな。まだまだ元気はある。破壊神の仕事だってその気になれば出来るぞい。どうじゃ、また見習いに戻ってみるのは」

 

「はっ、冗談言うなって。ちゃんと仕事はこなしてるっての。まぁ、身体が鈍って仕方ねぇがな」

 

話を聞いているティアマットとオーフィスにもはっきり分かる。年老いても、この先代ブランは自分達よりも遥かに強いということを。

 

「どいつもコイツもつまらねぇ……自分で言うのも何だが、俺は強くなりすぎた。でもよ、最近面白いと思えたのが孫悟空って奴なんだ。俺と同じサイヤ人のな」

 

「ほう……ビルスから聞いた話じゃと、第7宇宙のサイヤ人はこの宇宙のサイヤ人と同様、滅びたと聞いたんじゃが」

 

「……まっ、俺と同じ生き残りってところだろ。アイツやベジータって奴は同じ超サイヤ人ブルーになれるらしいし、その内破壊神を超えるかもしれねぇなぁ……今度やる時が楽しみだぜ」

 

「かぁ〜、サイヤ人は血の気が多いのう。破壊神の方がよっぽど生易しい心を持ってそうじゃ」

 

「どうだろうな。破壊神だって血の気が多い奴ばっかなんじゃねーかな。ビルスとシャンパだって顔を合わせる度に喧嘩しそうだろ。ハッ、全くアイツらバカだよなー、喧嘩する度にウイスとヴァドスに窘められて、学習しない奴らだぜ」

 

「ヌッハッハ、お前さんよりかはマシじゃろ単細胞が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

「ん?」

 

そこで、沈黙してから2秒。

 

(……えっ?なにこの空気……なんか、上手く言えないけどヤバい気がする……)

 

ティアマットは冷え切ったような静けさにダラダラと汗を流す。ただ、今言えることは、この空気に逆らわず、巻き込まれないように絶対に喋ってはいけないということだけだった。

 

そして、その沈黙を遂にブランが破る。

 

「……まぁ、あれだよな。アンタも元破壊神だけどさ、こうやって落ち着いて隠居生活するのも案外楽しんでんじゃないのか?」

 

今の沈黙からは考えられないほど、ケラケラと笑いながら会話を再開し、それに対して同じく笑顔で先代が返す。

 

「そうじゃな。畑耕して、時々山のふもとにいる小童達と戯れるのも楽しいぞい。前は飴ちゃんなんか授けてやったのう」

 

「へぇ、案外優しいところあるじゃん。てっきり、ここらでお山の大将気取って威張り散らしているかと思ったぜ」

 

「ヌハハ、ワシほど優しい破壊神なんぞ他にはいないじゃろ!お前さんは忘れん坊じゃなぁ!」

 

ティアマットはホッと息を吐く。『何だ、仲が良いじゃん』と思い、先程の間を置いた微妙な空気は気のせいなんだと安心感を得た。しかし

 

「あはは、何言ってんだ頭大丈夫か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あん?」

 

「あ?」

 

またもや沈黙が流れていく。聞こえるのは、オーフィスが茶をズズズッと飲む音くらいである。ティアマットは、こんな時でも呑気でいられるオーフィスが羨ましく、どこか尊敬の眼差しを向けていた。そして

 

「あっはっはっは!」

 

「ヌッハッハッハッ!」」

 

元破壊神と破壊神がお互いに高笑いをする姿に、和やかな雰囲気はない。二人の間にはとてつもない火花が散っていることにティアマットは気づき、レムギットも額に手を当てて『やれやれ』と呟く。そして、ブランと先代が立ち上がると、ブランは親指をグイッと玄関のドアの方へと向けて言う。

 

「表出ろよクソジジイ」

 

「よかろう」

 

その後は無言になり、ブランを先頭に二人は外へ出ていく。するとその瞬間

 

ドゴォォォォォォン!!

 

「ひいっ!」

 

家の中だというのに耳が荒むほどの轟音が響き、ティアマットは両手で耳を塞ぐ。慌てて外へ出ると、その上空でブランと先代が肉弾による戦闘を繰り広げていた。

 

「てめぇこのクソジジイ!今日こそはそのすまし顔崩してやらぁ!!」

 

「ハハハハァッ!やれるものならやってみろ小僧がァァァァッ!!」

 

まるで不規則に動く流星の如く、素早い動きで上空を駆け回り、攻撃がぶつかり合うたびに二人は徐々に上へと舞い上がっていく。

 

「ねぇ、あれって止めなくていいの?」

 

地上からその様子を見ているティアマットは未だにお茶を優雅に飲んでいるレムギットにそう聞き、レムギットは然程変わらない様子で淡々と答える。

 

「オホホ、あのお二人は再会するたびにあんな感じですから。心配はご無用ですよ」

 

「あっ、いや、それよりもこの星が保つのかなー……って」

 

「それについても大丈夫です。本来、破壊神と元破壊神の戦いなど宇宙全体が崩壊する恐れがありますが、辺りには私が張るバリアがありますし、問題はないかと」

 

「へぇ……ん?」

 

ここでティアマットは考える。レムギットはブランに仕える天使である。そして、上空で戦っているのは前に仕えていた先代ブランもいる。単純に計算しても、破壊神二人分の戦いの余波を完全に防ぐことのできるバリアを張れるなど、余程のことであると気づいた。

 

「レムギットさん……貴方、ただの使用人ってわけじゃなさそうね」

 

「あら?言ってませんでしたか?私、あの先代様の師匠なんですよ」

 

「はぁぁぁっ!?」

 

これに対してはオーフィスも驚いたようで、レムギットに問う。

 

「レムギット……師匠より強い?」

 

「オホホ、それは勿論……数字で強さを表せば、今の貴方方が1くらいだとして、ブラン様が10、先代様が12、私が15といった所でしょうか」

 

ブランが10だとすれば、単純に今のオーフィス達、二人の力を合わせた全力でブランの1割程の力を引き出せるということになる。それでもまだ1割しか到達していないことに先は長いとため息を吐く二人。

 

そして、ティアマットはそのブランよりもはるかに強いレムギットに問う。

 

「レムギットさん……貴方って何者なの……?」

 

それに対して、レムギットは思わせぶりな表情でこう答えた。

 

「フフフ、レムギット……という生命体でしょうか」

 

答えの意味がよく分からずにいたその瞬間、ついに決着がついたのか、誰かが地面へと墜落してきた。

 

ドガァァァァァン!!

 

隕石のように落下してきたその人物は、体全体が地面へと埋まっており、身動きが取れない状態にあった。

 

「ヌッハッハッハ!ワシの勝ちじゃな!!まだまだやのうヴェルドラ!!」

 

その後に地上へと降り立ったのは、先代ブランだった。要するに、先程地面へと墜落してきたのは……言うまでもなくブランであった。

 

「ち、ちくしょ〜……年老いてもこれかよ……」

 

地面に深く埋まったブランは、何とか地上へと這い上がるが、まだまだ先代の力には追いついてないことを自覚し、悔しさに唇を噛みしめる。

 

「因みにあの二人……お互いまだ3割程度の力でしか戦ってません」

 

「さ、3割……あれで……?」

 

「わー……」

 

追い討ちをかけるようなレムギットの言葉にもはや言葉が上手く出ないティアマットとオーフィス。師弟の些細な喧嘩はここで幕を閉じ、全員再び家の中へと入る。

 

落ち着いたところで、ブランは今回ここへきた目的を先代ブランに話す。多少、足を運ぶことになるが、ブランは先代にも地球の三大勢力の会談に参加して欲しいと懇願する。

 

「それで、ワシにその会談に出て欲しいとな?」

 

「あぁ、めんどくさいと思うが、ここは一緒に来てもらいたいんだよ」

 

そうブランが言うが、先代は苦い顔をするばかりであった。

 

「はー、本当にめんどくさいのう。しかも、会うのはあの時、戦争していたバカ共じゃろ?そして、その内容が和平じゃと?……くだらない。お互い多くの犠牲者が出た中で、いきなり仲良くしようなどと頭がお花畑な奴しか思いつかんわい。どうせ、それに反対するものも多いじゃろうよ。和平を成功させたとしても、瓦解するのも時間の問題じゃな」

 

「ふーん、なんだか俺よりも三大勢力に詳しいんじゃねーか?」

 

「奴らがドンパチやっていた戦争を側からつまらなそうに見ていたからのう。……クソレベルの低い戦争で思わず笑ってしまいそうじゃったが……それでも、『期待』はしていたんじゃよ。まぁ、その様子だと何にも変わっちゃいないようじゃな。期待外れもいいとこ……か」

 

「……期待?奴らの何に期待してたってんだ?」

 

ブラン自体は、三大勢力に期待することなど何もなかった。ただ人間レベルの低い彼らを、そのまま始末することしか考えていなかったが、先代は別だった。大昔、彼らが戦争をしていた頃に、彼らに何かを期待していた……しかし、先代はその真意を喋ることなく、只々会談に出ることを渋っていた。

 

(……そうだ)

 

流石に動かないかと諦めていたが、ブランはあることに気づいた。先代はここのところ地球の食べ物に飢えている筈だと。

 

先代とはそう多くない頻度で会っているので、地球の食べ物にありつけるのもそう多くない。今日渡したお土産も、その地球の食べ物のほんの一部であり、このまま地球へ連れて行き、多くの地球の食べ物に巡り合わせる……これが突破口だと確信し、誘惑を誘う言葉を先代に投げかける。

 

「なに、あとで地球の食べ物ご馳走してやるさ……レムがな!」

 

「はいはい……」

 

レムギットは分かっていたかのように軽く返事をすると、先代ブランは少し考える素振りをし、その数秒後に晴れた顔になると、一回だけ強く頷いた。

 

「……うむ、いいじゃろう。どうせ暇じゃし、これが奴らを最後に見る機会だと思えば苦にはならんわ」

 

「あぁ、サンキュー、師匠」

 

こうして、遂に三大勢力との会談の準備は整った。果たして、先代ブランを混じらせた三大勢力との会談はどう転ぶのか……?

 




こう、クロスオーバー作品を書いてると何かと設定のすれ違いによって困惑してしまう時があります(気の概念など)。

因みに惑星ナッツはオリジナルの惑星です。とりあえず、食べ物の名前をつけました。



キャラプロフィール

・先代ブラン

見た目は小柄で、もっさりとした口髭がある白髪のお爺さんという印象で、今は現ブランが住む星よりも遠くの小さな惑星で隠居生活をしている。全破壊神の中でも歳を食っており、その分、身に付けた実力も破壊神の中でもトップクラスである。

温厚に見えるが、それとは別に破壊する際には躊躇を見せない冷酷さを秘めているので、別に誰にでも優しいというわけではない。三大勢力には、戦争の際に何かを期待していたようだが、どうやら期待は外れたようで見限っている様子。ブランによる破壊の件にも賛成らしい。

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