ハイスクールD×D 第0宇宙の破壊神   作:オラオラドララ

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第34話 ダブルドラゴンのリベンジ

ブランside

 

天界、冥界を滅ぼし、三大勢力の文明を破壊した俺は、その後の様子を見届けた。

 

天界が破壊され、神器持ちの人間がどうなったのか。

 

各神話勢力の対応や今後のことなど。

 

他にもいくつかあるが、今回はこの2つについて語ろうと思う。

 

まず神器持ちについてだが、どうやら神器の力が消えていないことが分かった。1人も例外なくだ。一度宿った物が消えることは無いらしい。都合良くはいかないものだ。

 

だが、神器を輪廻転生させるシステムを天界ごと破壊したのであれば、持ち主が死んだ場合、同時に神器も消えるだろうとレムは推測した。

 

次に神話勢だが、三大勢力の滅亡により、今後の地球の神の在り方について言及した。

 

三大勢力はやってきたことがアレだが、それでも禍の団というテロリスト相手に尽力しようとしていた組織だ。それがいなくなった今、それらに対抗できる集団といえば神々しかいない。

 

これからは見ているだけの神になるな。地球を守りたければ、戦え。そう命じた。

 

むしろこのまま傍観者になるくらいなら、この俺が殺していたところだ。それが出来ない役立たずなら、地球の神などいらん。

 

それにテロリストといっても大体の構成員は人間だろう。力を持っているとはいえ、人間相手に好き勝手に地球を荒らされているようじゃ、神としてのメンツを保てないどころか、下手すれば三大勢力以下の存在に成り下がるだけだ。

 

ここまでお膳立てしてやったんだ。しっかり働いてもらわなきゃ困る。

 

ひとまず、問題は残ってはいるものの目的は一つ達成され、一時自分の住む星へと戻った俺達は、早速持ち帰った赤いドラゴンのドライグに問い詰める。

 

コイツには、聞きたいことがいくつかあるからな。

 

「お前の持ち主が最後に見せた力はなんだ?洗いざらい吐いてもらおうか」

 

問いかけてる相手はというと……

 

「カヒュ……!!ヒュー……ヒュー……!」

 

恐怖からかまともに息出来ておらず過呼吸気味だった。怯えすぎだろ。

 

だが、そんなのは俺にとってはどうでもいいこと。さっさと吐かせるために再度問う。

 

「で、どうなんだ?お前が聞いたこと感じたこと、何でもいい。知ってることを教えろ」

 

「な、何もわかりません……あ、貴方と会う前に語りたくも無いくらい屈辱と恥辱を受けたものでして、精神を一時閉じていました……。お、思い出したくもない……!胸が……胸が怖い……!!」

 

酷い怯えようだ。何があったのかは分からないが、よほどのトラウマになっている。本当に何があったんだ。

 

……話を戻そう。俺の推測では、あの力は、茶髪のガキ自身が発したものではないと思っている。

 

理由としては、感じた気によるもの。あの姿になった途端、奴から感じられる気がまるで別物に変わった。気ってのは、どれだけ上昇しても、どれだけパワーアップしても『基本の形』というものは変わらない。人それぞれから感じられる気は千差万別。それぞれのちゃんとした形みたいなのがある。

 

しかし、あのガキの気はまるでぐちゃぐちゃに形を変えられていたようだった。まるで粘土のように。

 

……コイツの反応から察するに、外部からの精神的な攻撃でも受けたとみるべきか。その犯人は分からないが、ナメた真似してくれる。自分の手は汚さずに使い捨てのコマで俺を殺そうとするとはな。

 

俺に恨みがあるやつか、それとも正義感で俺を滅ぼそうとするやつか?まぁどっちでもいいが、そいつは直接会ってこの手で始末しよう。

 

さて、用は済んだ。コイツはもう解放してもいいかな。

 

「元々ドラゴンは別に標的では無い。このまま殺すのは可哀想だから、お前はあの白いドラゴンと同じところに送ってやるつもりだ。有り難く思えよ」

 

「ひょ?」

 

(助かる……のか?や、やった……やったぞォォォォッ!助かったァァァァッ!!九死に一生を得るとは正にこのこと!下手に出るの最高ッ!龍のプライド?知らないなァァァァッ!!?生きてりゃ人生勝ちなんだよバカがッ!!生きるって素晴らしいッ!あっ!素晴らしいィッ!!)

 

「勘違いするな」

 

「へ?」

 

全く、考えていることが丸わかりだ。

 

「俺はお前を生かすつもり……といっただけで、コイツは何て言うか分からんぞ」

 

「コ、コイツ……?」

 

ぽかーんとしているドライグを横目に部屋のドアを見る。そこから入ってきたのは……

 

「テ、ティアマット!?」

 

「久しぶりねぇ、ドライグ」

 

同じドラゴンとしての再会。ティアマットを見た瞬間、声の震えが一層増したドライグ。

 

今回、ドライグを生かしたのには、ティアマットからのお願いがあったのも理由の一つである。何やら因縁があるらしく、必ず生かして持ってこいという物凄い形相で頼まれたのは記憶に新しいくらい衝撃的だった。

 

「ドライグ、アンタ私が手に入れたお宝持ってるんでしょ。どこに隠したの?言いなさい。さもないと殺すわ」

 

中々ドスがきいた声だ。相当の恨みが溜まっているのが分かる。

 

お宝の量が気になるところだが、問い詰められているドライグは何やら困った様子で言い訳をしだした。

 

「ま、待て。それには訳があって……たとえ今復活できたとしてもすぐには返せないというか……」

 

「そう。師匠、殺しなさい」

 

「あいよ」

 

「待ってェェェェェェェェ!!頼む!!チャンスをくれ!!頼むからァァァァァァァァッ!!」

 

うるさいな。宝返せないならもう用済みだろ。俺はさっさと終わらせたいんだ。

 

「喧しいな。そんなに叫ばなくても、死に方なら選ばせてやるから安心しろ」

 

「そうじゃなぁぁぁぁぁいッ!!テ、ティアマット!宝なら全力で探してお前に返すッ!一生を懸けてお前に尽くしてちゃんと倍にして返すからッ!!」

 

「要はどこに隠したのか忘れたってことね。師匠、気功波で塵にしなさい!破壊光線!」

 

「俺はお前の使い魔か!」

 

「いや、ざっけんなぁっ!!死に方は選ばせてくれるって言ったじゃん!!?いや、ていうか殺さないでェェェェェェェェッ!!」

 

結局、お宝を返すまではティアマットの言いなりになるということで話は決まった。もし返さなければ地獄の果てまで追いかけて何百回、何千回半殺しにしてやると念を押されて、赤龍帝はビクビク怯えながら了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブランが星へと帰還する前に、何やらオーフィスとティアマットは宇宙旅行で何処かへ出かけていたらしい。

 

ブランはどこに行ったかは深く聞いてはいない。ただ、充実したものだと聞いているだけでそれ以上を聞くつもりはなかった。

 

(妙だな……)

 

宮殿で雑用をしているオーフィスの顔を遠くから拝見しているブランは不思議に思うことがあった。数日間しか経っていないというのに、感じる気や見た目に違和感を覚えていたのだ。

 

極めつけはその表情。今日の修行はブランとの手合わせだと聞くと、何故か嬉しそうにしていた。普段感情がはっきり表れないオーフィスでさえ、妙に自信ありげなことが分かるくらいに。

 

(なんだ?こっちを見たぞ)

 

遠くから見ているオーフィスに気づかれ、ジッと自分を見てくるオーフィスに対して眉間に皺を寄せる。すると

 

「フッ」

 

「……は?」

 

オーフィスはブランを見ると、目を細め、口端を広げ三日月のような形にして笑う。

 

よく分からない上に気味が悪く、もしかして何処かおかしくなったのでは無いかと心配になり、近づいてオーフィスの肩に手を置いた。

 

「ちびっこ……そ、掃除はもういい。休め……」

 

「ありがとうございます」

 

即答だった。礼儀がなっているのもそうだが、ペコリと頭を下げて敬語まで流暢なのが気味の悪さを増していた。

 

お次はティアマット。

 

休憩がてらに飲み物でも口にしようとしていたところ、ティアマットがティーカップを持ってニコニコしながら近づいてきた。

 

「師匠、お紅茶を淹れましたわ。どうぞお召し上がりくださいませ」

 

「あ、あぁ……。何か、今日はきもいな……」

 

「フフ、ありがとうございます♪」

 

「頭がおかしくなってる……」

 

何を返しても笑顔なティアマットに、思わずティーカップを落としそうになるブラン。明らかにおかしいとレムギットに相談する。

 

「お、おいレム……コイツらの頭治してやれよ。重症だぞ……」

 

「オホホ、そうでしょうか?私は愉快で良いと思いますよ」

 

「いいわけないだろ!」

 

呑気なレムギットはいつも通り過ごしている。

 

2人が何を考えているかは読めないが、とりあえず様子を見ようと決めた。

 

そして、昼からは2人が待ち望んでいたと思われる組み手。

 

「お前らの態度はよく分からんが、修行は真面目にやってもらうぞ。さぁ、かかってこい」

 

腕を組み、いつでも来ていいと待ち構えるブラン。

 

「「……」」

 

オーフィスとティアマットは、互いを見てアイコンタクトを取ると、構えると同時に、一気に気を上昇させた。

 

「「はぁっ!!」」

 

「ッ!?なん……だと……?」

 

(コイツら、一体この数日間で何をした!?)

 

戦闘力が一気に上昇し、その気を感じたブランは驚く。明らかに、今までの2人とは比べ物にならないくらいの飛躍だった。

 

驚いたものの、どういう修行をしたのかは、聞くつもりはなかった。

 

今、彼の心にあるのは、目の前の2人と戦ってみたいという戦闘意欲しか存在しなかったからだ。

 

「嬉しいぜ。久々に心が躍ってきた……。ハァァ……ダァァッ!!」

 

ブランも気を上昇させると、超サイヤ人に変身する。

 

だが、その姿はいつもとは少し違っていた。髪は更にきめ細かく逆立ち、周りにはスパークしたオーラが迸っている。

 

「なんか、いつもと違う……」

 

「きっと、ただの超サイヤ人じゃないわ……!今までで1番、凄いパワーを感じる……!!」

 

「よく分かったな。コイツが超サイヤ人を越えた力……超サイヤ人2だ。正直、この姿になるつもりはなかったんだがな。お前らのめざましいパワーアップの褒美だと思え」

 

「そんな隠し玉あったなんてね……でも、今度は負けないわよ」

 

「ししょー、勝負」

 

開始早々、2人は突進してブランとの距離を詰め、怒涛のラッシュを仕掛ける。

 

以前と比べてコンビネーションに無駄が無く、息を合わせることでブランに反撃の隙を与えないほどの攻撃を叩き込んだ。

 

(パワーとスピードも桁違いにアップしてる。やるな)

 

思ったより防戦一方になってしまっているブラン。だが、それでもいつもの冷静さを崩すことはなかった。超サイヤ人2になった彼にとって、この程度は不利に入らない。

 

(趣向を変えるか)

 

ブランは防御から回避へと戦い方を移行し、2人の攻撃を躱し続ける。相手の動きではなく、気の流れを掴むという戦いの基本を用いて翻弄し始めた。

 

2人の攻撃の最中、ブランは一度後退して距離を取った。ジッと佇むように身構えて、相手を観察しながら攻撃を待った。

 

しかし

 

「ッ!?」

 

(なに?引いただと……?)

 

オーフィスが前に出て攻撃を仕掛けようとしたものの、彼女は何かを察知し、急に踏みとどまったのだ。

 

「危なかった……」

 

ふいー、と一息つくオーフィス。今の行動や判断は、以前のオーフィスでは考えられないもの故、ブランは驚いた。

 

(突っ込んできたら容赦無くカウンターを叩き込もうと思ったんだが、僅かな動作や視線の動きで読まれたのか。いや、それだけじゃないな。俺の殺気に反応して身体を引かせた……ちゃんと相手の気の流れを読めている証拠だ。気のコントロールも格段に上達してやがる)

 

「「フッ!」」

 

オーフィスとティアマットは気弾を放った瞬間に左右に展開し、挟み撃ちをしながら近接攻撃を仕掛ける。それぞれの攻撃を片手で捌き受け流すブランに、いつもの余裕は感じられなかった。

 

「ここ!」

 

「グハッ!?」

 

ティアマットはラッシュの際、僅かな隙間を見つけ、そこに拳を叩き込む。怯んだところで今度はオーフィスが連発で拳を入れ、蹴り上げて宙へと飛ばす。

 

すかさずティアマットは宙に飛んだブランの位置へと先回りし、蹴り落とす。

 

「フッ!」

 

最後は地面に墜落する前に、オーフィスが手のひらで溜めた気弾をゼロ距離でぶつけた。見事なコンビネーションにより、衝撃で遠くの岩山まで飛ばされたブラン。が、激突と同時に体勢を立て直し、岩を蹴って2人の元へと猛スピードで接近する。

 

「フンッ!」

 

「ガッ!?」

 

一瞬でティアマットとの距離を詰め、頭突き。後頭部を回し蹴りしてティアマットに向けて気弾を放つ。

 

「こんのっ!」

 

飛ばされながら、負けじとティアマットも気弾を放ち、ブランの気弾を相殺。

 

潜影蛇手(せんえいじゃしゅ)

 

「何ッ!?」

 

すかさずヘルプに入ったオーフィスは、右腕を幾多の蛇へと変えると、ギュイーンッと伸ばしつつブランの手足を絡めとる。

 

「オラァッ!」

 

「ぐはっ!」

 

動きを止めた隙に、女性とは思えない程の猛々しい声を張り上げ、腹部に重い一撃を叩き込んだティアマット。

 

「今だ!ハァッ!」

 

「ハァッ!!」

 

2人で同時に気功波で追い討ちの一撃を放った。

 

「スピリッツキャノンッ!」

 

当然の如く、それにはブランも反応をして同じように気功波を放ち、2人の気功波に衝突させた。

 

衝突し合うエネルギーは中心で爆発し、爆煙を巻き起こす。

 

すると、次の瞬間

 

ドゴォッ!

 

「ごはっ!?」

 

鈍い音がしたと思えば、一瞬で爆煙を突っ切ってきたブランがティアマットの腹部に膝蹴りを叩き込んでいた。攻撃が止まった一瞬の隙を見逃さなかったブランは、そのままティアマットを顔面に拳を叩きこむことで彼女を遠くの岩山まで飛ばした。岩山に激突と同時に岩が崩れ落ち、瓦礫の山の下敷きとなる。

 

「ティアマット!」

 

「相方より自分の心配しろ」

 

「ッ!ガハッ!」

 

今度はオーフィスの前に手のひらを翳すように構えると、衝撃波を発生させてティアマットと同じ瓦礫の山へとふっとばした。

 

「気を緩めてるんじゃねぇよ。俺に本気で勝ちたいなら、殺す気でこい」

 

攻撃を与えても、ブランは心身共に余裕である。全くダメージを受けている様子が見られなかった。

 

超サイヤ人2相手に、一方的ではなくても劣勢状態のティアマットとオーフィスは瓦礫を退けて、ブランの前まで戻ってきた。

 

「これで終わりじゃねぇだろうな。俺はまだまだ物足りないぜ」

 

戻ってきた2人は傷ついた身体に対して表情はまるで変わってない。むしろ希望に溢れていると感じた。

 

「やっぱり、この状態じゃアンタの本気は見られそうにないわね」

 

「なんだと……?」

 

先程から妙に自信ありげなのが気になってしょうがないブラン。彼女達が何を考えているのか……彼はすぐにそれを見せられることとなる。

 

「もっといけると思ってたけど、師匠はやっぱり強い。だから、我達も強くなる」

 

「何をするつもりだ……?」

 

「いくわよオーフィス!!」

 

「うん!」

 

2人は惑星アモンドで、ブランに追いつくための『秘策』を編み出すことに成功した。

 

その力を身につけるまで、かかった年数は『3年』。慣れるまで1年かかった。

 

一体、彼女達に何があったのか……時は少し前まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星アモンドにて、神の道へと進む為の修行場所を提供してもらったオーフィスとティアマットは、その世界へと入った瞬間、戦慄した。

 

(息が……しにくい……)

 

(重力は大したことないのに……物凄い重圧がのしかかっているかのように重い……)

 

ドアを開いて中に入ったと思えば、そこは人が何人か住める部屋となっており、その先は真っ白な空間が広がる世界。果てが見えない白い空間を見て、2人は息を呑んだ。

 

人が普通に生きていくには到底不可能といえるほどの環境の悪さ。本当に修行に最適と言えるのか怪しいと感じてきた。

 

「でも、この空間で流れているエネルギーは……妙に神々しくも感じる」

 

空間に漂うそれを、神の気だと理解するのにはそう時間はかからなかった。

 

「とりあえず、戦う?」

 

「……えぇ、そうね。衣食住はこの部屋でどうにかなるそうだし、壊さないように少し離れて修行しましょ」

 

この空間での最も効率の良い修行方法は知らない。まずは手当たり次第、できることをするしかないと思い、2人は組み手を行なった。

 

だが、思うように身体が動かないのをティアマットはすぐに感じた。何もしてないのに疲れていく為、オーフィスの攻撃を防御するのに精一杯だった。

 

(体力を気にしている分、動きに繊細が欠けてしまう。そろそろ力出してかないと……!)

 

何もしないのは修行にならない。そう思い、今度は攻撃に転じるティアマット。オーフィスの攻撃を受けつつも、反撃を行う。

 

(いつもの半分の時間くらいしか戦ってないのに、こんなに消耗するなんて……!)

 

反撃に転じたのはいいものの、身体はみるみる疲弊していき動きが鈍くなってしまうのが自分でも分かる。それほどの消耗を感じたのをきっかけに、一度後退するティアマット。

 

引いた彼女に対し、オーフィスは動きの止まったティアマットに攻撃を仕掛けようとする。だが

 

「あ……れ?」

 

「オ、オーフィス……!?」

 

「我、いつもならまだまだいけるはずなのに……身体が……」

 

ティアマットとオーフィスにとって、今までの経験であり得ない事態が起こる。体力に限界がないと思われていたオーフィスが、先に膝をついたのだ。

 

息を整えようとするオーフィスの姿すら見るのは稀故、ティアマットは驚きながら考察する。

 

(もしかして、この空間全てが襲う圧倒的なプレッシャーに気圧されて、思考に対して身体が追いつかなくなってる……!?)

 

ティアマットはある程度ペース配分を考えて戦っていたが、オーフィスは自らの体力の自信から、初っ端で全力を出し切るつもりで戦っていたのだ。

 

この空間で流れる気は、触れることで、その者の体力をごっそりと削るほどのプレッシャーが放たれていたらしい。

 

その中でいきなり全力で戦ってしまえば、いくら無限に近い体力を持つオーフィスも消耗で倒れてしまう。

 

「神への道は険しいってことかぁ。なんとなく、この世界のことを理解したわ。まずは、この環境に慣れるしかないわね」

 

「お腹空いた……」

 

「……ご飯にしましょうか」

 

最初のステップは決まった。まずは基本の修行でこの空間に身体を慣らす。その後に応用といったところだろう。

 

それからは修行しては休んで、食べて、寝て、また修行の繰り返しを何日もした。

 

最初にこの世界へと入ってから半年は経っただろうか。ここでの半年では、元の世界だと半日しか経っていない。

 

ティアマットはその計算をした後に、向こうの世界に帰ったら時間の感覚が狂いそうになるのではないかと心配した。

 

それはそうと、ドラゴンは寿命が長い。人間の何千倍以上にも及ぶ為、ここで何年か修行したところで見た目に変化はないだろう。

 

見た目は変わっていなくとも、半年修行しただけで2人の気は以前よりも格段に上がった。環境にも慣れ始めた時期は、気温50からマイナス40度まで変化する環境にも対応しなければならなかったので、更に過酷に感じた。長寿ゆえに、様々な時代を生き抜いてきた彼女達であったが、ここまで短期間でめまぐるしく環境が変化していくことには身体が慣れていなかったからだ。

 

「オーフィス、アンタ自分の本当の姿ってないの?」

 

休憩時間、ティアマットはふと思ったことをオーフィスに問う。オーフィスは首を傾げながら答える。

 

「……?我は我。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「それはおかしいわ。龍として生まれたなら、ちゃんと最初は龍の姿をしていたはず。イメージ的には蛇っぽい感じがするけど、まぁアンタはコロコロと姿を変えてきたから忘れただけでしょうね」

 

「なんで、今その話を?」

 

「龍化について考えていたのよ。私達は人の姿でいると、龍としての力はガクッと落ちてしまう。今の私達が龍の姿になれば、相当のパワーアップが出来ると思うの。でも、あの図体じゃスピードが殺されて肝心のパワーが無意味になる。どんな攻撃も当たらなければ意味無いわ」

 

「うんうん」

 

「で、思いついたのよ。姿を変えても自在に龍としての力を存分に扱うことが出来れば、今より大きなパワーアップが出来るんじゃないかって!それならスピードが落ちないかつ、師匠の超サイヤ人みたいにグーンッ!と強くなれるわ!」

 

「おー!」

 

自分では考えもしなかった名案に、オーフィスは手を叩いてティアマットを褒める。

 

「あっ、オーフィス!確かアンタ、その姿でも腕を蛇みたいに変えることが出来たわよね?どうやってやるの!?」

 

ティアマットの質問に対し、オーフィスは考える素振りとして首をうねらせた後、すぐに腕を黒い蛇へと変えた。

 

「こんな感じ」

 

「いや、もっと説明をさ……」

 

若干キメ顔っぽいのが癪に障るとティアマットは感じた。

 

「昔から感覚でやってきたから。説明、難しい」

 

(オーフィスって元は蛇みたいなドラゴンなのかしら……北欧のミドガルズオルムとかがこんな感じだし、別に有り得なくもないけど)

 

「……もしかしたらオーフィスは私の言った事がある程度出来ている……?元より私達普通のドラゴンと大きな差があったのは、どんな姿でも龍としての力を無意識にコントロール出来ていたからってのも理由の一つなのかしら……」

 

また少し日にちが経ち、いつも通りの組み手を行なう。環境にも慣れて、目指すべきパワーアップへの道を考えたのはいいものの、明確なゴールというものが見えてこない日が続いていた。

 

もう一つ問題もある。体力の配分を考えながら戦うティアマットは、環境に慣れて力を出し続けることができるようになったオーフィス相手に苦戦を強いられていたのだ。

 

「くっ!」

 

オーフィス相手に、体力勝負など愚の骨頂だと気づく。一気に勝負を決めようと、気を最大限まで高め、オーフィスが突き出す拳に合わせて自らも拳を放つ。

 

「「ッ!」」

 

オーフィスの拳とティアマットの拳がぶつかり合った瞬間、ティアマットは『何か』を感じ取った。オーフィスの拳から直接伝わってきた神の気と龍のオーラを、その身全てに伝わる衝撃を受けたのだ。

 

『共鳴』とでも呼ぶべきだろうか。本来、龍は互いに惹かれ合うもの。ドライグとアルビオンの関係性の如く、運命という鎖で繋がれている。大なり小なり、龍同士はそういうものだ。

 

その龍が互いに力を最大限まで高め、同じ力でぶつかり合えば、何かしら影響が出るのも不思議ではない。

 

まさに今、力のぶつかり合いにより、その現象を引き起こした。次の瞬間、ティアマットは身体中に力が湧き上がり、オーフィスの拳をそのまま押し切った。

 

「ッ!だぁぁっ!!」

 

「うっ……!?」

 

押し切った後は頬に一撃をくらわせ、オーフィスを思いっきりぶっ飛ばした。

 

「はぁ……はぁ……。な、なんか今凄い力が入ったような……」

 

一瞬だが、とんでもないパワーアップをしたティアマット。だが、消耗が激しかったのか肩で息をする状態となる。

 

「うっ、いたたた……あっ、ティアマット……そ、その手……!」

 

「えっ?な、なにこれ!?」

 

立ち上がったオーフィスの指摘で、自分の腕を見てみると、ドラゴンの姿でよく見る鱗のようなものが肌色のまま浮き出ているのが見えた。

 

こんなことは今まで一度もなく、その現象はすぐに終わり、鱗は消える。

 

「き、消えた……」

 

(今のは何なの……?でも間違いなく、鱗が表面に現れてる時、力が漲るような感覚があった。そう、龍化したときみたいに……ただ、気を思いっきり解放しようとしただけで……?)

 

それだけではないだろう。気を解放するなど今まででも出来たことだ。きっかけのタイミングといえば、オーフィスとティアマットの拳がぶつかり合った時。

 

「龍……気…………」

 

「今のはオーラだよ、ティアマット」

 

「オーラ?それが今の現象に関係があるの?」

 

「我達ドラゴンには、体内の気と同じようにそれぞれ特有のオーラがある。たとえば、赤龍帝のドライグのオーラは身体から漏れ出す事で、色々な厄災や女を引き寄せる。ティアマットも、今そのオーラのようなものが鱗から出ているのが見えた」

 

「龍のオーラが私の力を増幅させたってこと?でも、すぐに解除されたのは……?」

 

長く維持出来ないのは、その力をコントロール出来てないことは容易に分かる。なら、どうすればその力を自在に扱えるのか。

 

あたりで舞っている神の気に触れるたびに物凄いプレッシャーを感じたのを思い出したティアマットは考える。この極度の緊張感が押し寄せる空間は、自らの力をコントロールする修行にピッタリだと。

 

であれば、この神の気をものともしないくらいの修行を積めば、自然と龍の力を引き出せることも出来ると踏んだ。

 

「気のコントロール……それをマスターすれば、きっと龍のオーラを自在に扱える……!!」

 

時は現代へと戻る。

 

「フッ……かぁっ!!」

 

ティアマットは気を限界まで上昇させることで、腕と頬に青い鱗のような紋様が浮き出させた。彼女の司る色である蒼にふさわしい綺麗なオーラが身体中から溢れている。

 

「むん……ハァッ!」

 

オーフィスは何色にも染まらない真っ黒な鱗を浮き出させ、黒くも輝きを放つオーラを纏う。

 

「龍の力を限界まで引き出したこれが……龍気(ドラゴンフォース)!!」

 

「師匠……我達、勝つよ……!」

 

「いいぜ。……こいッ!」

 

2人が独自に見出した強敵相手に勝つための秘策……ドラゴンフォース。その力を持ち、ブランに再度挑むのであった。




次回は戦闘シーンのみです。

補足1
潜影蛇手→エドテンの人

補足2
龍気→理屈としては超サイヤ人4や超ブロリーの力と似ているもの

補足3
ドライグ・アルビオン→一応まだ出番はある予定

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