ソードアート・オンライン 〜少年よ〜   作:ちゃーもり
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EP.5約束

攻略会議が行われた翌朝。セイジはいつもよりも早くに目を覚ました。元βテスターのフランが付いているとはいえども、ビギナーのセイジにはボス戦は未知数で不安なものだった。故に落ち着かずにはいられない。

 

(時間まで時間があるな………散歩でもして時間潰すか)

 

ただその時を待っていられる程冷静になれないセイジは身支度を済ませ、街中へと出る。

朝だからか昼間のようにプレイヤーが集っているわけでなく、セイジだけがこの世界に取り残されたようにさえ感じれる程に街中は静まり返っていた。もしかして本当に自分だけしかいないんじゃないかと不安に思えたその時。

 

「セイ?」

 

後から透き通る声がセイジの歩みを止めた。

振り返ればそこには始まりの街から共にここまで二人三脚で進んできたレイの姿があった。

 

「レイか…あんまりにも街が静かだから俺だけ取り残されたんじゃないかって思ってた所だったんだ。なんかホットしたよ」

 

「私も早くに目が覚めて落ち着かないから外に出たら、静かすぎてちょっと不安だったんだ。けど、セイが居たから安心した」

 

お互い同じような事を考えてたことがつい面白く、二人は笑顔をこぼす。

 

「せっかくだし少し話でもしない?」

 

「時間まで特にすることもないし、話でもして時間潰そっか」

 

セイジの了承の言葉を合図に二人は広場にあるベンチへと向かい、隣合うように腰を下ろす。

 

「昨日はお姉ちゃんがこの世界にいて本当びっくりしちゃった」

 

レイとリザ。思いもよらぬ再会がつい先日果たされた。

その出来事にレイだけではなくセイジとフランも内心驚きを隠せなかった。

 

「話してなかったけど、実は俺とフランも実の兄弟なんだ」

 

「えぇぇぇ!?確かに………言われてみれば似ても似つかないような………」

 

レイが驚くのも仕方が無い。セイジとフランは実の兄弟とはいえ、セイジは母親に、フランは父親に似ていると言われ続けた為にあまり似ていると言われたことがない。

 

「セイもお兄さんと…なんだか私達似た者同士だね」

 

えへへと微笑みを付け足すレイはどこか嬉しそうにセイジには見えた。

 

「今日……ボスを倒せば少しは希望見えてくるよね…」

 

さっきの笑顔とは一変し、その体は震えていた。

 

「レイ…?」

 

「私ね、怖いんだ」

 

それはレイの心の底から溢れた本音だった。本当は怖くてたまらないはずなのにそれでも、レイはセイジ共にここまでやってきた。レイに無理をさせてたんじゃないかとセイジの心がチクリと痛む。

 

「これまでも怖かった。いつ死んじゃうかもわからないのに、戦わなくちゃ生きていけない。でもね………隣にセイがいてくれたからここまで来れた」

 

もし、セイジが助けに来てくれなかったら一人で始まりの街に閉じこもっていたかもしれない。そんな未来をセイジとの出会いが変えた。だからこそ彼女は明るく振る舞うことが出来た。だがレイもまたセイジとあまり年の変わらない女の子なのだ。レイが戦うことにどれだけ怖い思いをしていたのかセイジは痛いほど思い知っることになった。

 

「無理させてたんだな……ごめん」

 

セイジはレイの瞳を見て深々と頭を下げるが、レイは黙ったまま首を左右に振る。そしてセイジはそっと顔を上げる。

 

「セイジが居たから私も強くなれた。それは本当に感謝してるんだ。けど……いざ、ボス戦の前になると怖さで押しつぶされそうになっちゃった」

 

強がってるのか、レイは笑顔を見せる。しかし、その笑顔が儚く、いとも簡単に崩れてしまいそうでセイジは悲しくなった。そして初めてレイと出会った時の彼女と約束を思い出す。

 

「前に約束しただろ?俺はレイを死なせない。絶対に守ってやる」

 

「セイってよくそんな事言えるよね………言ってて恥ずかしくないの?」

 

「うぐっ」

 

ぷっと吹き出すようにレイは笑い、真剣な瞳をセイジに向ける。

 

「セイが私を守ってくれるなら私もセイを守るよ」

 

その言葉は強い意志を宿し、さっきの儚い彼女とは違い強い瞳を見せる。これがあの時悲しみで潰れてしまいそうだった、涙を浮かべていた少女なのだろうか。触れればいとも簡単に砕け散ってしまいそうだった弱々しい彼女の姿はない。この1ヶ月が彼女をここまで成長させた。そんなレイを見てセイジは心の底から安心した。

 

「そっか………そりゃ頼もしい限りだ。これからもよろしく頼むよ。相棒」

 

「任されました!」

 

どこか嬉しそうに、満面の笑みを見せるレイを見てセイジはある決心をする。

 

(絶対に誰の笑顔も奪わせやしない……絶対に)

 

それはレイの笑顔だけじゃなく誰かの笑顔が消えるのを見たくない。

そんな思いをしたくないからこそセイジはそう固く決めた。

 

「そろそろ時間だね………駆けっこしよっか!」

 

「おいおい………」

 

「よーいドン!」

 

元気のいい声と共に駆け出すレイ。それを追って数秒のタイムラグを経てセイジも駆け出す。

 

「待てっ!」

 

ステータスにSTRとAGIをバランスよく振っているセイジがAGIよりに振っているレイに適うことはなかった。

 

◇◆◇

 

第一層迷宮区最奥。今回のボス攻略戦に参加する全プレイヤーが集っていた。

 

「なんで私達が取り巻き相手なのー!」

 

「仕方ないわ。レイ」

 

セイジ達のパーティーの役目は取り巻きの排除。ボス本体との戦闘は他の隊に任せる形だ。キバオウ曰く、「ガキ共は出しゃばらず隅っこで大人しく雑魚を倒してろ」との事だった。

それが納得いかずブーブー文句を口にするレイをリザが宥める。

 

このボス攻略戦は今後のSAO攻略に大きな影響を与えることになるだろう。ボスを倒せば、SAOはクリアできるという希望。倒せなければ多くのプレイヤー達が絶望に打ちひしがれることだろう。

活気に溢れた者達、緊張か恐怖で肩を震わせるプレイヤー達。

その中キリトとアスナはただ静かにボス戦の幕が上がるその時をただ待っていた。

そして、セイジはフランの横へと歩み寄り立ち止まる。

セイジとフランは横に並び、お互いの腕を伸ばし拳をコツンとぶつける。

 

「死ぬなよ」

 

「その言葉、フランにそのまんま返すよ」

 

そして、プレイヤー全員を見渡して、ディアベルが一言告げる。

 

「皆、俺から言うことはたったひとつだ。…勝とうぜ!」

 

そして、遂にその扉が開かれた。

 

 

 

 

 




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