このすば! ─カズマがいた異世界最初の街は王都にある王城です─   作:Sakiru
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この素晴らしい友達に祝福を!
異世界転生


 

「佐藤和真さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」

 

 ふと気づいたら俺はその部屋──いや、空間か──に設けられた木製の椅子に座っていて、そんな事を告げられた。

 突然すぎて何が何だが分からない。

 そんな理解し難い事を告げてきた相手は目の前に居た。事務机と椅子があり、その椅子に座っていた女性を見た時俺は思わず──あまりの美しさに目を奪われて呼吸をするのも忘れてしまっていた。

 もし、もし女神というものがこの世界に存在するのなら、きっと彼女のような女性の事をいうに違いない。

 テレビの液晶画面に映る偶像(アイドル)の可愛さとは一線を画す、その美貌。

 一本一本が意思を持っているかのようなそんな幻覚を与えるほどに輝いた、透き通った明るい水色の長い髪。

 年は、幾つくらいだろうか。

 外見上は俺と同じくらいだが、彼女の実年齢を推し量る事など、きっと誰にもできやしない。

 出過ぎず、かといって足りない訳では無いその完璧な躰を包んでいるのは、淡い紫色の俗に言う羽衣(はごろも)だ。

 そんな美少女は瞬きしながらもニコリと俺の方を向いて微笑み、その表情のまま俺の事を見つめてきた。

 それに耐えられなくなった俺は、つい先ほどの出来事──いや、記憶か──を思い出す事にした。

 

 §

 

 普段は高校には行かず家に引き篭もりダラダラと怠けゲーム三昧していた俺はその日、珍しくも早起きして外出する事にした。

 そう、今日という日は俺みたいなゲーマーには貴重な日だったのだ。

 何せ、とある超有名ゲームの発売日である。

 それを買いに行かずにして、ゲーマーと呼べるだろうか、いや呼べやしない。

 兎も角、無事に目的のブツを買えた俺は外界にはもう用がないので自宅へと帰る事にした。

 ゲームを買えた事の喜びで上機嫌だった、そんな時。

 携帯を弄りながら歩いていた──あぁ、これが世間でいう『歩きスマホ』か──一人の女の子。

 その女の子が身にまとっていた制服からして、俺と同じ学校の生徒だろうか。

 その女の子の向かう先は、もちろん学校なのだが、彼女は丁度今さっき俺が通った信号で止まっていた。

 

「うわぁ、運ないなぁ。もしかして、今日の私の運、過去最悪なのかも」

 

 たかが赤信号だろうが! と思わなくもないがそれは個人の見解だろう。

 まぁ愚痴をこぼしながらも彼女は携帯を弄る片手を止めず、何やら操作をしている。

 俺はそんな女の子を──同じ学校の生徒だからか──しばらく眺めていたのだが一分後には青信号へと変わってしまい、彼女は未だ携帯を弄りながらも横断歩道を渡るべく再び歩み始めた。

 だが、その時。

 女の子に猛烈な勢いで迫るとても大きな影。

 きっとそれは、大型トラックだったのだろう。

 俺は頭で考えるより先にその子を突き飛ばし──まるで、アニメや漫画のような創作物のようだ──その次の瞬間には身体を襲うであろう痛みに瞼を閉じた。

 

 そして──────。

 

 §

 

 落ち着きながらも、そっか、俺は死んだのだと認識した。

 

「……一つだけ聞いても?」

 

 俺の言葉に美少女が何かしらという表情を浮かべながらも頷いた。

 

「どうぞ?」

 

「……あの女の子は。…………俺が突き飛ばした女の子は、大丈夫ですか? 生きていますか?」

 

 とても大切な事だった。

 恐らく、俺の人生で最も輝いた瞬間なのだ。

 もしこれであの女の子を助けられなかったのなら、悔しすぎるだろ。

 

「生きていますよ? しかし残念ながら、左足を骨折するという大怪我を負いましたが」

 

 そうか、良かった……。

 俺の死は無駄ではなかったのだ。

 最期に良い事かできて良かっなぁ。

 と、そんな感傷に浸っている俺をおかしく思ったのか、美少女がはてと可愛らしく小首を傾けた。

 

「まぁしかし、あなたがあの場にいなかったらそんな大怪我を負う事はなかったんですけどね」

 

「……。…………はい!?」

 

 ちょっと待て、今何て言ったこの子!?

 

「いやですから。……本来なら、あのトラクターはその女の子の前で止まったんですよ。当たり前ですよね、だってトラクターですもん。それに、信号が赤だったんですし、止まるのは普通ですし、女の子が危ないと思ったとしてもそもそもの話速度はそんなにでていないんですから避けるのは容易いですよ? つまり、ですが。あなたは可愛い女の子を救う英雄を気取った結果、余計な事をしたんですよ。…………プークスクスクス!!」

 

 何だろう、話の流れからしてこの美少女がかなり偉い人なのは何となく分かる。

 けど、どうしよう。

 俺は今、この初対面の女をぶん殴りたいと思っている!

 俺が理性で本能を懸命に抑えるなか、おかしな事に気づく。

 ……トラクター、だって!?

 

「すみません、今何て? トラクターって言いました? トラックじゃなくて?」

 

「……? だから言ってるじゃないですか、トラクターだって」

 

「え、じゃあ何? 俺はトラクターに引きずられて耕されながら呆気なく死んだの? 何その俺の人生」

 

「いいえ、違いますよ?」

 

「……。………………は?」

 

「あなたの死因はショック死です……確か。トラックに引かれて死んだと勝手に勘違いして、そのショックであっさりと死にました。私、この仕事結構長くやっているけれど、こんな無様な死に方はハッキリ言うわね、初めてだわ!!」

 

「……」

 

「あなたはトラックに轢かれたと勝手に勘違いして、失禁して病院に搬送されたの。お医者さんや看護師さんはね『何だコイツ、情ねー(笑)』と思いながらもあなたを助けようとしたわ。けど、あなたはそのまま目を覚まさずにそのまま心臓麻痺で……──」

 

「──わ、分かった。分かったからもういい!!」

 

 俺が両手に耳を当てて椅子から転げ落ちながらも聞きたくないアピールしながらも美少女は言った。

 

「丁度今、あなたのご家族──あぁ、弟さんもいらっしゃいますね──が病院に来て、あなたが死んだ事を聞かさせました。最初は、涙を流していましたが、死因をお医者さんから聞いたその瞬間、思わず吹き出したところです」

 

「や、やめろ! やめてくれ! なぁ、嘘だろ!? そんな情けない死に方があってたまるか! そんなのあんまりすぎるだろ!」

 

 しゃがみこんで叫ぶ俺と、そんな俺を見下ろしてクスクスと嘲笑を浮かべている女。

 女は、自分の椅子に座ると──。

 

「……さて、仕事のストレス解消も出来た事だし、名乗りましょう! はじめまして、佐藤和真さん。私の名前はアクア。日本において、若くして死んだ若者を導く女神よ!」

 

 女──アクアが女神である事は間違いがないんだろう。

 だが、今しがたのやり取りを終えた俺にはそんな敬意を表すつもりなど毛頭ない。

 何せ、人の死を馬鹿にしてきたのだ。……いくらその死に方が情けないからって、女神ともあろう人が笑っていいはずがない!

 

「……さて、しょうもない理由で呆気なく死んで今朝まで家に引き籠りご家族に迷惑をかけていた佐藤和真さん。あなたには二つの選択肢があります」

 

「おい、その前にちょっと言い過ぎだろうが! いや、確かに殆どあっているけれども!」

 

「もう、いちいち口を挟まないでちょうだい! コホン。あなたには二つの選択肢があります。一つ目は、このまま天国に行くか。二つ目は、人間として生まれ変わるか。さぁ、質問があるのなら言っていいわよ」

 

 何だろう、この、すごいざっくりなこの説明。

 

「それじゃあ、一つ。天国って本当にあるのか?」

 

「あら、いいところに気がつくじゃないの。天国って言うのはね、あなた達人間が想像しているような、楽園じゃないのよ。まず、死んでいる者が行く場所が天国ね。ここまではいい?」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

「それでね、死んでいるんだから当然何も出来ないのよ。簡単に言うと、三大欲求である、食欲、性欲が満たされないのよね。死んでいるんだからそもそもの話食事をする必要は無いし、食べれないわ。死んでいるんだからえっちぃする事もできない。唯一、睡眠だけは別かしら。天国にはね、本当に何もないのよ。テレビや漫画、娯楽何て一切ない。いるのは、嘗て死んだ先人だけ。天国でやれる事と言えば、さっき言った寝る事と、お日様の日に当たりながらお爺ちゃん達と世間話をする事くらいかしら」

 

 それはもう、地獄と言っても差し支えないのではないか。

 少なくとも、現代を生きて平準の生活を送っている俺達若者には耐えられないだろう。

 多分、一週間も経たないうちに発狂する気がする。

 けどなぁ、生まれ変わるのか。

 何も知らなずにだったらいいんだけど、死んでるって自覚しちゃうと中々難しいよなぁ。

 頭を抱えて悩んでいると。

 

「分かる、分かるわよ佐藤和真さん!何せ、今この状況で生まれ変わる何てそんなの耐えられないわよね! そんなあなたにいい話があるんだけど!」

 

 何だろう、すごい胡散臭い。

 きっとこの女神様は商売が向いていないに違いない。

 俺は警戒心剥き出しで居るのだが……アクアはそんな俺に気付かずにこに事上機嫌で笑いながら説明した。

 アクアの話を纏めると。

 曰く、別世界が他の空間にあるらしい。

 曰く、その別世界──もう異世界でいいだろう──には現在魔王が居るだのとか。

 曰く、異世界は魔王軍の進行が結構ヤバイらしく人類滅亡一歩手前らしい。

 曰く、その世界ではモンスターが居たり、ダンジョンがあったり。

 まぁ言うなれば、その世界はファンタジー的な世界との事。

 

「そんな訳でさ、今あっちの世界では沢山の人達が毎日死んでいる訳。でね、死因の殆どがあなたみたいな情けない理由じゃなくて魔王軍関連の死因なのよ。そしたら、記憶がなくなっても向こうで死ぬのならもう生まれ変わりたくない! っていう人達がすごい増えちゃってね、このままじゃ赤ちゃんも生まれない世界になっちゃうかもしれないのよ。私達は話し合いをしたのよ。そしたら他の神様が『だったら他の世界から引っ張れば良いんじゃね?』って言った訳。それで、どの世界でもそういった事が始められたって事!」

 

 大規模な移民計画を聞かされたわけだが、何となくアクアが言おうとしている事を察した。

 

「じゃあ何だ? 俺にその異世界に行けと? えっ、やだよ。そんな危ない世界に行く理由がないじゃん」

 

「まぁまぁ、話を最後まで聞きなさいな。あなたの言う通り、ただ移民するだけじゃ意味がないわ。あっさり死んじゃうだけだもんね。けど、安心して! 異世界に行く時は記憶を失わずに済むのよ! それでね、これが一番重要何だけど、向こうの世界に行くに当たって一つだけ。一つだけ、好きな物を持っていける権利を渡しているのよ! ……そう、それは最強の武器だったり、もしくは道具だったり。もしくは、特異な才能だったり。あなたが望むものを持っていけってわけ! どうどう、中々いい話でしょ!」

 

 成程、確かに聞く限りは悪くない話だ。

 寧ろ、その異世界に行ってみたいとも思えてくる。

 その当たり、俺は普通に子供なのだろう。

 だが、その前に。

 

「すみません、向こうの世界での言葉とかは一体どうなるんですか?」

 

「フッ、そこに抜かりはないわ。私達神様の超ありがたい親切サポートによってあなたの脳に負荷をかけて一瞬で習得できるの。…まぁ運が悪かったら廃人になるんだけどね。──さぁ、あなたが望むものは何ですか?」

 

「おい、今とてつもなく重大な事をさらりと言ったよな?」

 

「何の事かしら? 言ってないわよ」

 

「言ったよな?」

 

「言ってないって! だからあなたは童貞なのよ!」

 

 コイツ、言っちゃいけない事を言いやがった!!

 俺のただならぬ気配を敏感に感じてかアクアは事務机に逃げて引き出しから一冊の分厚い本を出し、俺に渡してくる。

 それを受け取って見てみるとそこには……

 

「はい、これを見て決めなさい。この中からあなたが欲しいものを選ぶのよ」

 

 ……そこには、『エクスカリバー』『全身がゴムになる果実』『ライトセイバー』『ラクダ』『アップル』などと呼ばれるチートがあった。

 …いや、『ラクダ』や『アップル』はおかしいと思うのだが、そこはスルーしよう。

 これだけの品があるのなら目移りするのは仕方がないだろう。

 悩むなぁ。

 目をキラキラさせながらペラペラと本の項を進めていく事数分。

 

「ねー? まだー? 早くして欲しいんですけどー! ぶっちゃけ、アンタみたいなヒキニートには何も期待していないから、早く適当に選んじゃってよ! っていうか、早く決めて! この後も迷える子羊達を導かないといけないの! ノルマがあるんだから、早く決めちゃって!」

 

 外野がうるさい。

 こちとら、新生活の基盤を固めないといけないのだ、そう急かさなくても。

 というか、さっきから何何だ、この女神様は。

 話をすればするほどこの女が本当に女神なのかと疑ってしまう。

 それに、初対面の人間に向かって失礼にもほどがあるだろうが!

 決めた。

 俺は清々しい笑顔を浮かべてアクアを見る。

 

「やっと決まったの? それじゃあ、言ってみて。登録するから。あっ、後、すぐにその魔法陣の中央に移動してね。……それでは、あなたが望むものは何ですか?」

 

「俺が望むものはあん(アク)──」

 

 ──()、言いかけて慌てて口を噤む。

 落ち着け、落ち着くんだ佐藤和真。

 もし仮にこの女神を連れていくとしよう。

 だが、だがである。

 この女を連れて行って俺は後悔しないと言いきれるか?

 何だろう、すごい嫌な予感がする。

 具体的には、アクアが凄い俺の足を引っ張る気がするのだ。

 ところで。

 話は変わるのだが、俺には一つだけ自慢できる事がある。

 それとは、運の良さだ。

 生きていたあいだ、ジャンケンで負けた事は一度もないし、数多のゲームでも俺は超高レベルの素材やら武具何かを所持していた。

 しかし、コイツを連れていったら俺の運気が下がる気がする。

 よし、止めよう。

 ここに来てからの腹いせのつもりでこの女神様を連れていく予定だったが止めだ。

 俺の名前は佐藤和真。

 如何なる時も冷静に物事を判断する男だ。

 途中で言葉を区切った俺を不思議に思ったのか、アクアが。

 

「ねぇ、急にどうしたのよ? もしかしてアンタ、やっぱり選び直すつもりじゃないんでしょうね!!」

 

「あぁ、そうさせてもらう」

 

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!! 早く決めないと時間が……!!」

 

 時間?

 時間がどうかしたのだろうか。

 俺の表情を読み取ったアクアがアワアワと慌てながらこんな事を告げてくる。

 

「さっき、あなたの後に沢山の人がいるって言ったわよね?」

 

「……? あぁ、俺がここから消えてもすぐに別の人が来るんだろう?」

 

「そう、そうなのよ。でね、問題は死者が多すぎて、時間が決められているのよ」

 

 何それ、聞いてない。

 もしかして、だが。

 

「なぁ、アクア様。もしかしてその時間ってもうあんまり残されていない感じ?」

 

「そうなのよっ! だから早く決めて!! もし制限時間内に持っていくものを決めれなかったら……──」

 

「──決めれなかったら、どうなるんだ?」

 

「……あなたは何も無しに、異世界に行く事になるわ」

 

「んな!? お、お前それを先に言えよ!!」

 

「だって仕方がないでしょ! 普通の人だったらそんなの五分もあれば決まるもの! 少し前にここに訪れた何とかカツラギだってね、適当な魔剣を選んですぐに異世界に行ったわ! つまり、ヘタレなアンタが悪いのよ! 私は悪くないわ!!」

 

「何だとこら!!」

 

 そんな風に俺達がギャーギャーと騒いでいると、どこからか天使が舞い降りた。

 いや、天使だろう女性が急に現れた、の方が適切な表現だろう。

 そしてその天使は一言、申し訳なさそうな顔で言った。

 

「すみませんが、時間オーバーです。…アクア様、あと一分でこの方を追い出……──こほん。異世界に旅立たせてください」

 

 女神や天使にはこういった人種しか居ないのか。

 

「じゃ、じゃあ佐藤和真さん。もしあなたが魔王を倒した暁には何でも願いを叶える権利を差し上げましょう。それでは異世界に行ってらっしゃい!…最初のスタート地点定められなかったけどそこは許してちょうだい!」

 

「いや、ちょっと待て! いきなりの急展開にも程があるだろうがあぁああああああああ!」

 

 ──こうして、アクアと天使によって見送られながら俺は明るい虹色の光に包まれた……!

 

 §

 

 そして、現在。

 異世界に来た俺は。

 

「動くな! 貴様何者だ!! どうやってこの王城に入った!」

 

 八方を多くの騎士に囲まれて只今絶賛命の危機に瀕している。

 あれぇー?

 

 








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