このすば! ─カズマがいた異世界最初の街は王都にある王城です─   作:Sakiru
<< 前の話 次の話 >>

4 / 43
別れ

 

 俺の名前は佐藤和真。

 アイリスと友達になった俺は現在。

 

「くそおおおお! また負けたあああああ!」

 

 休み時間にやっていたボードゲームを再び彼女と興じていた。

 というか、アイリスが容赦ない。

 昼とは格段に違うその強さを身に染みて感じ、俺は彼女を半眼で見てしまう。

 

「なあアイリス。お前もしかしてだけどさ……昼は手を抜いていたのか?」

 

「……ええっと、それは……その……」

 

 その言葉を聞いて俺は確信した。

 ……どうやら俺は、接待プレイをされていたようだ。

 だがゲーマーの俺が、歳下の女の子に負けて──友人になったとはいえ──黙って見過ごせるわけがない。

 しかも接待プレイなどと、俺は断じて認めない!

 俺の雰囲気が変わった事に目敏く気付きおろおろするアイリスに俺が出来ることは一つ。

 

「アイリス、もう一回だ。もう一回勝負しろ! ……いや、勝負して下さいお願いします!」

 

 頭を下げて情けなくお願いすることだ。

 

「はい、もちろんですカズマ様。何度でもあなたを倒してみせます!」

 

「それじゃあ勝負だ」

 

 駒を初期の位置に並べ直しながら、ある事に気付く。とても重要なことだ。

 

「せっかく友達になったんだから、俺の事は呼び捨てで良いぞ? 別に俺は歳とか気にしないし……」

 

「……申し訳ございません。私も何度か心の中で試したのですが……どうやら癖のようでして、すぐには……」

 

「なら、アイリスのペースで大丈夫だよ」

 

「はい!」

 

 さて、今度は本気で勝ちにいかせて貰うとしよう。

 さっきまではアイリスのゲームの癖を測る為の準備運動……つまり、まだ俺は本気ではない。

 ……決して、最初から本気でいってたわけではない。

 ないったらない。

 アイリスは引っ込み思案な性格の裏に、かなり脳筋的な思考があるようだ。

 上位職である〈ソードマスター〉を何時も使ってるのがいい証拠だ。

 そしてピンチになれば守っていたアークウィザードのスキル『エクスプロージョン』を使い、勝負を無かった事にする。

 それが分かればどうとでもなるはずだ。

 俺は勝利を確信した笑みを浮かべる。

 

「クックッ……。悪いなアイリス。お前の癖がだいたい分かった今、ここからは俺の独壇場だ!」

 

「あっ、カズマ様もそうだったのですね」

 

 ……えっ?

 

「それじゃあ私も本当に心置き無く戦えます!」

 

 …………えっ?

 

「いきますよ、カズマ様!」

 

  …………。

 

  …………俺は絶望を揉み消して、不敵な笑みを浮かべた。

 

「とっとと来いやぁああああ!」

 

 ゲームには圧倒的差をつけられて負けました。

 

 

 

§

 

 

 翌日。

 ゲーマーらしく寝落ちをした俺は、王城内の騒がしさで目を覚ました。

 隣にはアイリスがすやすやと可愛らしい寝息を立てながら熟睡している。癒されるなあ。

 そんなアイリスを見守っていると、

 

「サトウカズマ! アイリス様の所在をご存知ないか!?」

 

 それを邪魔するかのようにバンっと盛大な音をたてながら扉を開けた白スーツとレインさんが部屋に入ってきた。主の許可を取らなくても良いのだろうか?

 何やら慌てているが、アイリスならここに居るだろうに。

 

「落ち着けよ白スーツ。アイリスならここで寝ているよ。全く、貴族様は朝から煩いですね! もうちょっと配慮をしたらどうですかあああ!?」

 

「……それについては謝ろう。……そうか、アイリス様は貴様の部屋で御休みになっていたのだな。良かったよかった」

 

「ほら、これで用件は済んだか? ……ならとっとと出ていって! すぐに出ていって!」

 

「…………朝から失礼した。それでは私は仕事があるので──って、何故アイリス様が貴様なんぞの部屋に居るのだ!」

 

 朝からギャーギャーと騒ぐ貴族様を呆れて見て俺は嘆息してしまう。これだから横暴貴族は困るのだ。

 

「いや、昨日は夕飯の後からずっと一緒に居たからな」

 

「んな!?」

 

「いやあ、アイリスにまいったと言わせるのに結局今日を跨いじゃってさ、本当にアイリスは強いなあ」

 

 懇切丁寧に昨日──いや、今日か──の事を話してやった。これなら納得してくれるだろう。

 するとクレアは何故か清々しい笑顔を浮かべて腰に吊るしてある鞘から勢いよく剣を抜刀した!

 だが俺は堂々と片手を出すことで奴を黙らせた。

 昨日とは違う俺の態度にクレアは怪訝そうな顔をしながらも剣を納刀する。

 ……本当はかなり怖いのだが。

 

「まあ待てよクレア。これにはだな、富士山よりも高く、日本海溝より深い理由があるんだ。そう、これを聞いたらお前は衝撃のあまり言葉も言え──」

 

「早くしろ」

 

「分かりましたクレア様! だからその剣を下ろして下さい! ……ま、まあ何があったのかと言うとだな、アイリスが昨夜俺の部屋に遊びに来たんだよ。それでそのまま遊んでたら何時の間にか寝ていたんだ」

 

 アイリスがこの部屋に来たのは本当だし、一緒にゲームをした。

 

 だが一つだけ俺は嘘を付いている。

 

 アイリスは途中部屋から出て自室に帰ろうとしたのだが、勝ち星を一つも得られなかった俺はそれが悔しくて引き留めたのだ。

 普段、王族である以前に子どもであるアイリスは夜更かしをせず、規則正しい生活を送っているのだろう。

 だが生憎(あいにく)俺は学生兼引きこもり兼ニートだったので一日起きていることなんてよくあった。よって、言わば『夜耐性』が付いている。

 長期戦に持ち込んで時間を稼ぎウトウトしているところを狙って俺は勝ったのだ。

 ……卑怯だと自分でも少し思うが、これは作戦なのだ。

 心優しいアイリスはきっと許してくれるだろう。

 つまりだが……。彼女がこの部屋で寝ている責任は殆ど俺にある。

 しかしそのことを指摘できるアイリスは只今熟睡中だ。

 バレなければ犯罪ではないのだ。小学校の先生が教えてくれたことを、俺は生徒として遵守する。

 

「……今回だけは、不問にしよう」

 

 クレアは渋々ながらも言及を諦めた。理不尽な暴力が振られると覚悟していただけに拍子抜けだ。

 

「おいおいどうした白スーツ。お前もしかして風邪でも引いているのか? だったら今日は休んだ方が……」

 

「貴様は人を馬鹿にしないと気が済まないのか! ……アイリス様は、このご年齢で自身の立場をよく解っていらっしゃる。我儘を言わないのは、王族であることを意識している証拠だ。だがな、王族としては立派なアイリス様なのだが、一緒に遊ぶ人は居なかったのだ。なにせここは王城だからな、アイリス様と同年代の子どもなど居るはずもない。だがしかし、忌々しいが貴様は誰にも出来なかったことを見事にやってみせた。だからサトウカズマ。これからもアイリス様を短い間だがよろしく頼むぞ。甚だ遺憾だが」

 

 クレアはどうやら、アイリスのことをかなり心配していたようだ。最後の一言は要らなったけれど。

 俺も王城で働いていたら、アイリス王女のことを心配するだろう。

 なんだったら、彼女のことを思って涙を流すかもしれない。いや、それは流石に無いか。

 俺はクレアを安心させるために力強く頷く。

 

「ああ、俺がここに居る間は任せとけ」

 

「そうか、それでは頼むぞ。……私は今から仕事がありますので、失礼致します、アイリス様」

 

 寝ているアイリスに敬礼し、背を向けたその時……。

 

「……クシュン。……カズマ様、クレア、おはようございます」

 

 何の因果かアイリスが眠りから目を覚ましてしまった。

 今までの俺とクレアの会話はかなり良かったと自分でも思うのだが、もし朝の騒ぎの犯人が俺だと知れたらどうなるだろう? ……嫌な予感しかしない。

 俺はそれを想像した瞬間、身体が震えそうになるが、ここはグッと我慢する。

 アイリス、頼むから変なことは言わないでくれよ……。いやほんと頼むから。

 

「あ、ああ……おはようアイリス」

 

「おはようございます、アイリス様。それでは私は失礼──」

 

「カズマ様、昨日は(ずる)いと思います! 」

 

「ちょっ……ま、待って、待って下さいアイリス様!」

 

「いいえ、待ちませんとも!」

 

 俺達の会話がおかしいと感じたのか、仕事に向かうはずのクレアがどういうことだと遂に聞いてしまう。俺は彼女の目を見ることなく答える。

 

「……な、何でもない。それよりシンフォニア卿、貴殿には仕事があるのではなかったのかな? 駄目だぞ、仕事はちゃんとやらないと。アイリス姫にも悪影響を与えてしまうからな」

 

「貴様には聞いていない! ……それでアイリス様。昨夜は何があったのですか?」

 

「聞いて下さいクレア! カズマ様が部屋に帰ろうとする私を引き留めたのです」

 

 その瞬間、クレアの目が妖しく光った!

 こ、怖すぎだろこいつ……。

 

「ほうほう、それで?」

 

「それでですね、私がうとうとしてた時をカズマ様は狙ってですね、私に勝ったのです! どう思いますか?」

 

「……何か弁明があるのなら聞いてやろう。死刑囚にもそれくらいの権利はあるからな」

 

「……まあまあ落ち着けよ二人とも。特にクレア。……アイリス、それは悪かったが隙を見せたアイリスも悪いんだぞ? それにだな、俺の頼みを無視していればそうならなかったわけで……おあいこだと俺は思うんだ」

 

「ですがそれはカズマ様が、『アイリス、俺達は友達だろう? だったら友達に付き合うのは普通だと思うんだ。だからお願いします! もう一回、もう一回だけ勝負してください!』と仰ったからで……」

 

「サトウカズマ! 貴様あああああああ!」

 

 本気で殺しに掛かるクレアを前に、俺は悲鳴を上げながら城内を逃げ回ることしかできなかった。

 

 

 

 

§

 

 

 

 その後も、俺の王城での生活は楽しく続いた。

 

 

 ──そう、それは晴れ渡っていた青空の下で。

 

「カズマ様、このさっかーというスポーツはとても楽しいです!」

 

「そうか、それなら良かったよ。うんうん、やっぱり子どもは外で元気よく遊ばないとな。見てろ、これが必殺奥義──リフティングだ!」

 

「アイリス様が怪我をしたらどうするつもりだ貴様ああああああ!」

 

 

 ──そう、それは分厚い雲が幾重にも重なり土砂降りの雨が降っている日。

 

「このかっぱという服は大変素晴らしいですね! たとえ今日みたいな土砂降りの日でも外に出て遊ぶことが出来ます!」

 

「そうだろうアイリス。ほら、そこの草むらから聴こえないか? カエルの合唱が……」

 

「はい、大変素晴らしい歌声です!」

 

「アイリス様が風邪を引いたらどうするつもりだ貴様ああああああ!」

 

 

 ──そう、それは数多の星たちが輝いている夜空の下で。

 

「カズマ様、凄くお星様が綺麗です! あれは何座ですか?」

 

「あれは夏の大三角だな。凄いぞ! 何も知らないのに夏の大三角を見つけるなんて!」

 

「ありがとうございます。あの星達がとても綺麗に輝きなさっているものですから……」

 

「おお……! これは綺麗だな。サトウカズマ、良くやったぞ! これならアイリス様にも悪影響を与えない!」

 

「あっ、カズマ様! 今星が動いていたのですが、あれは何ですか!?」

 

「……ま、マジか! アイリス、それは流れ星といって──」

 

 

 その後も俺は王城で、という条件であったが様々なことをアイリスと行った。

 王都に出る秘密の抜け道を探したり、宝物庫に忍び込んで俺だけ怒られたり、授業をサボってお昼寝したり、夜更かししてゲームをしたり……。

 この三ヶ月の出来事を思い返すと、本当にキリがない。それだけ濃厚な日々を過ごしたのだ。

 だがそんな楽しい日々も今日で終わってしまう。

 そう、明日から俺は王城から……いや王都から出て駆け出し冒険者の街アクセルへと旅立つのだ。

 レインさんからこの世界のことを詳しく教えて貰った俺は、本来ならとっくの前にこの地を去らなければならなかったのだが……アイリスと楽しく過ごしていたら『冒険に出る』という目的を忘れていたのだ。

 

「ふっ、そろそろ旅立たねばな……」

 

 王城内での思い出を振り返っていると、

 

「いや、私は貴様が常識を知った時点で早く出て行けと再三言ってきたのだが……もはや何も言うまい」

 

 白スーツがそんなことを諦観した様子で漏らした。

 それを俺は華麗に無視して恩師であるレインさんに向き直る。本当にお世話になったからな。

 

「レインさん、この三ヶ月の間本当にお世話になりました。貴女から教わった事は決して忘れません。……何か困った事があったら言って下さい。矮小(わいしょう)な私ですが必ずやお力になりますので!」

 

「カズマ様、それは解りましたからくれぐれも他の方にご迷惑をかけないようにしてくださいね、後生ですから!」

 

 涙を流しながら手を取り別れを惜しんでいると。

 

「おい貴様。どうして私とレインだとそんなに態度が違うのだ、答えろ」

 

 恐らくこれで会うことはないと思うので、俺は正直に胸の内に隠していたことを曝す。

 

「レインさんの方が圧倒的に人格者だと思うから」

 

 摑みかかってくる貴族様をなんとか引き剥がし、なんとなくアイリスを見ると……そこには悲しそうな表情を浮かべている女の子が居た。

 アイリスは俺の目線に気付いたのだろう。

 すぐに無理やり笑顔を作り、俺を見返してくる。

 俺が気付いたのだ。

 家臣であり、護衛でもある二人が気付かないはずがない。

 

「私達は今から仕事がありますので……」

 

「そうだな……」

 

 部屋を出る瞬間、クレアが『アイリス様を泣かせたら殺す!』と口パクをしていった。

 レインさんは『アイリス様のこと、お願いしますね』だった。やっぱり彼女の方が圧倒的に人格者だな。

 ……なにも俺は、無駄な三ヶ月を送ってきたわけではない。

 俺は最弱職の〈冒険者〉。他の冒険者から蔑まれる職業だ。だが唯一のメリットとして本職には及ばないもののスキルポイントが許す限り全てのスキルを得ることが可能。

 このスキルというのはいわゆる職業の技であり、中には決められた職業でなければ取得出来ないスキルもあるらしい。

 ここ王都では、数多くの手練の冒険者が訪れ滞在している。

 俺は基本アイリスと遊んでいたが、彼女にどうしても外せない用事があったら王都に出てギルドに赴いたり、冒険者と会って話をしたりした。

 最初は〈最弱職〉だと舐められたが、俺の現在の寝床を教えると彼らは優しくなり、そんな優しい彼らは親切にスキルを教えてくれた。

 そう、これは王家の権力を勝手に使った脅迫では断じてない。

 れっきとした取引だ。

 数々のスキルを取っていった俺だが、その中に『読唇術』スキルと言うものがあった。

 これは字の如くそのままの意味で、対象の唇の動きを読む事によりその意味を大まかにだが知ることができる優れもの。

 クレアとレインさんは俺が『読唇術』を取っているのを知っているから口パクで伝言を残していけたのだ。

 俺が『読唇術』スキルの有能性に改めて感嘆していると、服の袖を強く引っ張るアイリスがそこに居る。

 きっとそれは、無意識なのだろう。

 …………それゆえ、とても力が強いのだが。

 

「……明日の朝には、行ってしまうのですね」

 

「……そうだな」

 

 ここで嘘を言っても仕方がないか……。

 俺が肯定するとアイリスは、泣きそうな顔になりながら、

 

「……行かないでください、と私は言うことが出来ません。……とても寂しいですし、悲しいですけど……カズマ様の人生なのですから…………。もう二度とあなたとは会えないのですね……」

 

 ……そんな顔で言われたら、迷っちゃうじゃないか。

 ……アイリスの言う通り、明日別れたらもう王城には二度と訪れる事はないだろう。

 普通に居座っていたが、クレア曰く俺は素性の知れない平民だ。

 ……そもそも、俺は恵まれていたのだ。

 駄女神のミスとはいえ、寝床と美味しい食事を出され、この世界で初めての友達が可愛い女の子なんて、恵まれてるにも程がある。

 だけど。

 仲良くなった女の子を泣かせる程、俺は落ちぶれていない。

 笑顔を作って、『コンビニに行こうか』くらいの調子で明るい声を出しながら言う。

 

「なあアイリス。確認なんだが、魔王軍の幹部はまだ誰一人として斃されていないんだよな?」

 

「……? はい、そうですがそれが何か……?」

 

「ならさ、俺が倒すよ。俺が倒しまくったらアイリスがこう言えばいい。『魔王軍幹部を斃した功績者を招きましょう!』ってな。そうしたらまた会えるさ」

 

「……本気、ですか?」

 

 アイリスがそう言うのも無理はない。

 なにせ、何年経ってるかは知らないが魔王軍幹部は未だ誰一人欠けずに人類へと攻撃しているのだ。

 チートも持っていない俺なんかが討伐に行っても九分九厘死ぬだろう。

 正直、冒険なんてする気は殆ど残っていなかったが、こうなったら話は別だ。

 俺は安心させる様にアイリスに微笑む。

 

「俺を誰だと思っている? この国……ベルゼルグの第一王女であるアイリスの友達だぞ?」

 

 そう言ってやればアイリスは今までの中でも特に輝くような笑顔を浮かべてくれた。

 

「……はい、また会いましょう!」

 

 

 

 

§

 

 

 

 俺の名前は佐藤和真。

 今からレインさんの魔法『テレポート』によってアクセルへと転移する駆け出し冒険者だ。

 

「……本当に良かったのですか? 必要最低限なお金だけ持っていくのは……」

 

「そうだぞサトウカズマ。貴様のことだから『最高級の武器と防具を寄越せ!』くらいは言うものだと覚悟していたのだが」

 

「おい、失礼にも程があるだろ」

 

「そう思われたくなかったら、理由を答えろ」

 

「そんなの決まってるだろ、その方が楽しいからさ。……あと、そんなものを装備していたら他の冒険者からやっかみを受ける気がしたからです」

 

「……貴様という奴は。まあいい、もう貴様とは会わないと思うと、精々する」

 

「それは俺もそうだよ。……レインさん、お願いします」

 

「はい畏まりました。それでは魔法の詠唱を始めますので、少々お待ちを」

 

 レインさんが呪文を言い終えるまで時間が少しあるので俺は出送りに来てくれた人達を眺めた。

 リーシャン、クレアにレインさん。

 そしてアイリス。

 我慢が出来なくなったのだろう。

 彼女は涙をぼろぼろと流した。

 

「約束、守って下さいね。それと、手紙だったら出来ますのでもし良かったら……」

 

「生活が落ち着いたら送るよ。それともちろん、約束は果たすから」

 

「……! ……はいっ 」

 

「アイリス様、そろそろ……」

 

 そう言ってクレアがアイリスを呼び、最初の位置に戻る時、彼女は突然振り向いて………。

 

 

 俺の頬にキスをした。

 

 

「「「……!?」」」

 

 誰もがその光景に釘付けになる中、当の本人であるアイリスは、

 

「それではまた! 私の初めての友達!!」

 

 そう言って太陽の如く暖かい笑顔を浮かべる。

 そして────

 

「そろそろいきますよ! 『テレポート』!!」

 

 俺の視界は真っ白に染まった。

 

 

 

§

 

 

 そして現在。

 アクセルの街に着いた俺は。

 

「あー! やっと見つけたわよこのヒキニート!」

 

「アクア様!? 一体どうなさったんですか!?」

 

 どこかで見た駄女神とイケメン、そして声こそ出していないが突っ立っている女二人に囲まれていた。

 というか、待て。

 何で仮にも女神のお前が居る!?

 

 あれぇー。

 

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。