このすば! ─カズマがいた異世界最初の街は王都にある王城です─   作:Sakiru
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この素晴らしい仲間達に祝福を! 駆け出しの街
駄女神と女神様


 

 友達になったアイリスと別れ、駆け出し冒険者の街アクセルへとレインさんの魔法、『テレポート』によって送られた俺は現在。

 

 

「あー! やっと見つけたわよこのヒキニート!」

 

 

 どこかで見たことがある女の子に絡まれていた。

 俺は取り敢えず笑顔を作ることにした。笑顔は大事だと王城で学んだからだ。

 

「あの、どちら様ですか? 私の名前は佐藤和真というのですが、あなたとは初対面のはず。きっと他人の空似でしょう。それでは私はこれで」

 

 ……知らない人アピールをしてギルドに向かおうとしていた。

 そう告げ、ギルドへと足を向けた時だ。服の襟を女の子とは思えない程に強く摑まれた。

 ……強くても服の袖だったアイリスを見習わせたい。いや割と切実に。

 引き離そうとしても離れない。ちっ、面倒臭い奴め!

 俺は浅くため息を吐いて。

 

「……それでなんだよ、この駄女神が」

 

「駄女神とはなによ! 私の名前はアクア。水の女神様なんだから、もっと私を崇め奉りなさい、このヒキニートが!」

 

「すみません、あなたはこの自称女神の仲間ですか?」

 

「無視しないでよ!」

 

 きゃいきゃいと騒ぐ駄女神を俺は華麗にスルーして、仲間と思われる人達と話をすることにした。それと引きこもりとニートを掛け合わさないで欲しい。

 そう、したのだが……。

 その瞬間俺は、パーティーリーダーと思われる男を殴りたい衝動に駆られた。堪えることが出来たのは奇跡に等しい。

 仮にだ。

 もし仮に未だに後ろで騒いでいる女と男の後ろにいる女性二人が仲間だと言うのなら、俺は聖なるグーを男の腹に撃ち込むかもしれない。

 そう。

 この男性はイケメンという自分のステータスをフルに使って男の夢であるハーレムを作っているのだから! 別に羨ましくなんか──ごめんなさい嘘です。めちゃくちゃ羨ましいです!

 俺が警戒していると、男はそれに気付いていないのか人柄が良さそうな笑顔を浮かべた。

 

「ええっと、はじめまして。僕の名前は御剣響夜(みつるぎきょうや)。女神様の仲間で、このパーティーのリーダーを務めています」

 

「キョウヤ、アクアは女神じゃないって! 女神と思い込んでいる可哀想な女性よ!!」

 

「そうだよキョウヤ!」

 

「ははは、何を言ってるんだい2人とも」

 

 アクアを女神と確信している様子から、俺はピンときた。

 日本から来た転生者に違いない。

 アニメの主人公みたいななんとも羨ましい名前だが……ギリギリ日本人らしい名前だ。

 きっと親御さんもこいつがイケメンハーレムを作ると予想していたから、見ようによってはイタイと思われる名前を付けたに違いない。

 そして次の証拠に奴が腰に吊るして存在感を放っている剣だ。

 別に俺はそれが名剣だとかどうか知るスキルは持っていないが、王城にいた時、アイリスと共に宝物庫に潜入したことがあり、あのような武器を何度か見た事があるから分かってしまう。

 きっとこのひと振りの剣が、この男が選んだチートなのだろう。

 殴りたい気持ちが先程の二倍になるが、ここはグッと我慢する。

 

「俺の名前は佐藤和真。それじゃあな」

 

 こんな気に食わない奴とは好き好んで話すつもりは毛頭ないので、挨拶も程々に別れようとする。

 ……何故アクアがここに居るのかだとか知りたいと思わなくもないが、まあ知ったところで特に意味はないだろうし、そんな時間があるのならギルドに行った方が百倍マシだろう。

 俺が背を向けた時、またもや襟を掴まれる。仮にも仲間なら、仲間の暴走は止めて欲しい。

 それに俺はいやいやながら振り返り、

 

「なんだよ。俺は今から用事で忙しいんだ。お前に構ってる暇はない」

 

「そんなのどうでもいいわよ! あんたのせいで私はここにいるのよ!? 責任を取りなさいよ!」

 

 そんな聞き捨てならない事ことを大声で喚き散らす。もうやだ、視線が凄いんだけど!

 

「……おい、それはどういうことだ。別に俺はそんなの全く記憶にないんだが、聞くだけ聞いてやる。ミツルギ、悪いが時間をくれないか?」

 

 こうして俺は貴重な時間を使って駄女神──もとい水の女神であるアクアと話し合いをすることになった。

 

 

 

 

§

 

 

 

 とある高級レストランの中。

 場所を指定したのはこの舐めている女なのだが、それに応えるイケメンもどうかと個人的には思う。これは将来、悪い女に引っ掛からないか心配だ。

 取り巻き二人は現在この場には居ない。

 理由は簡単で、ミツルギが席を外すよう二人に頼んだからだ。

 最初は『私達も居させてよ!』と中々引き下がらなかったが……イケメンだけに許される完璧の笑みを浮かべたら渋々ながらも遊びに行ったのである。彼に対する好感度が下がった。

 高級ワインを一気飲みした後、アクアの独白が始まった。

 

「あの後、ヒキニートが下界に降りた後、私はスナック菓子を食べながら迷える子羊達を導いていたわ。あんたのせいでノルマ達成が難しくなったけど、そこは私。偉大な先輩である私は日々助けている後輩に頼んで手伝って貰いながら、何とか一日を終えたのよ」

 

 ミツルギがアクアに尊敬の目を向けているが、俺は騙されないぞ。

 そもそもの話、スナック菓子を食べながら仕事をするなと声を大にして言いたい。

 というか、こいつは本当に仕事をやったのか?

 ……認めたくないが、俺とこの駄女神は本質は殆ど同じだろう。何だろう、同族の匂いがするのだ。

 だからこそ分かる。

 この自称女神様は、後輩に無理を言って仕事をさせたに違いない。だって俺だったらそうするから。

 俺だけが胡乱気な目線を向ける中、アクアの独白は続く。

 

「それでね、丁度その日は女神様が集まる会議があったのよ。後輩と一緒にそのまま会議に行ったんだけどね。会議と言っても、近況報告のようなもの。いつもなら滞りなく終わって、私はその後テレビを見てだらけているわ。……けど、その日は突如終わりを迎えたの。そう、このヒキニートがチートを持って行かずに転生したからね!」

 

 ビシッと俺を指すアクア。さしずめ俺は、裁定を待つ被告人──そんなわけあるか。

 雰囲気に触発されたのか、ミツルギが正義感溢れる目で俺を睨みつけて……

 

 ──というか、ミツルギの反応がおかしい。

 

 仲間を疑いたくない気持ちは分からなくはないが今までの話を振り返ると、この時点では俺は責められる謂れはないはずだ。

 つまり。

 つまりである。

 

 ……このイケメンはアクアに恋をしているのでは?

 

 ……。

 ……いやいや、落ち着くんだ佐藤和真。

 それは早計に過ぎるだろう。……過ぎるよな?

 

「そう、珍しく会議は真面目に開かれたの。その議題とは『佐藤和真のチートどうする?』よ。異世界転生をするにあたって、その人はチートを持っていかなくてはならない。これは天界のルールなの。……そして、録音してあった私とカズマのやり取りを会議に出席していた女神達がそれを見て、判断しようと思ったわけ。でね、ここからが本題なんだけど! 皆ったら酷いのよ! 私が悪いって皆言うのよ!? どう思う、ミツルギ!?」

 

「アクア様。どうして佐藤和真はチートを選ばなかったのですか?」

 

「時間切れよ、時間切れ! この男はね、適当に選べばいいのに悩みに悩んだのよ。それで、やっと決めたと思ったら選び直すとか言っちゃって……。それで時間切れになったのよ!」

 

 ふむ、確かに俺も悪いとは思わなくもない。

 だがこの駄女神は肝心なことを忘れている。

 

「おいこら、待てよこの駄女神が! そもそもお前が制限時間があります、とか事前に言えば良かっただけじゃないか! そもそもだ、他の女神達がお前を批判するのは多分その制限時間を言うことがルールだからだろ、多分! 違うのか!?」

 

「うっ……。それは、そうだけど……」

 

「ほらみろ図星じゃないか! つまり俺は悪くない!」

 

「なによ! このヒキニートで童貞が! だから友達もネットの中にしか居ないのよ!」

 

 こ、こいつ…………!

 俺がドタンと机を叩き椅子を蹴り倒すのと、アクアがそれをやるのは同時だった。

 このまま摑み合いにまで発展──

 

「お客様、これ以上騒ぐのでしたらお引き取り願えますか? 他のお客様に迷惑が掛かりますので」

 

 辺りを見回すとそこには……上級階級にいる人達の冷たい目線が待っていた。中には剣を鞘から出している人も。

 俺とアクアは同時に。

 

「「すみません」」

 

 ウェイトレスにお叱りを受けた俺達は再び椅子に座る。これ以上煩くしたら後が怖いから、声量を抑えることに専念した。

 

「……それで、それとお前が下界に居るのとどう繋がりがあるんだ?」

 

「あんた。私を連れていこうとしたでしょ」

 

 俺は正直に肯定する。

 

「うん」

 

「……。……あんたがそんなことを言おうとしたから、私がここに強制的に降ろされたのよ! 最高位の女神様がね『じゃあアクア、あなたが下に行ってきなさい。それでサトウカズマ様のチートの役割をこなしてくるのです。……いやあ本当にカズマさんには感謝してもしたりないわ。……これで邪魔者が消える』って言って……!」

 

 先程のことがあったのにも関わらず喚き散らす駄女神を見て俺は思わず固まってしまう。

 えっ、なにこの展開。

 こいつを俺のチートにする? この、ちょっと話しただけで露呈する程の駄目女を?

 その光景を想像してみよう。

 ……。……きっと俺はこの使えなさそうな駄女神と冒険したら理不尽な目にあうのだろう。

 熟考した結果、俺は晴れやかな笑顔を浮かべて一言言った。

 

「断る」

 

「…………殺す!」

 

 ……そして俺は突如殴りかかってきた駄女神の拳を腹に入れられ意識を失った。仮にも女神がそんな物騒なことは言っちゃいけないと思うんだけどどうだろ。

 

 

 

 

§

 

 

 

「私の部下が本当に申し訳ございません」

 

 

 ふと気付いたら俺はその部屋──いや、空間か──に設けられた木製の椅子に座っていて、そんなことを告げられた。

 突然すぎて何がなんだが分からない。

 そんな理解し難いことを告げてきた相手は目の前にいた。事務机と椅子があり、その椅子に座っていた女性を見た時、俺は思わず驚きの声を上げてしまう。

 そう。

 

 そこにはとてつもなく小さな女の子が居たから。

 ……。

 

「……あの、そんな同情の目で私を見ないでください。悲しくなって泣いてしまいますので……」

 

 どうやら、俺の考えは筒抜けのようだ。

 

「サトウカズマさん、はじめまして。私の名前はジャンヌ。地球で人類史に名を残しているジャンヌ・ダルクとは一切関係がないので、勘違いしないで下さいね」

 

 その女の子、改めジャンヌはそんな自己紹介をしてくる。

 ジャンヌのことを述べるなら簡単だ。

 

 ──銀髪ロリ、以上。

 

 

「……カズマさん、この度は私の部下が本当にすみません。あの子には何度も叱ってはいるのですが……生来(せいらい)のあの性格は中々治らず……」

 

 

 なるほど、どうやらアクアと俺はやはり同じ性質のようだ。

 ……決して、決して認めたくないが。

 

「それでジャンヌ様、どうして俺はここに? あなたが俺を呼んだのですか?」

 

「はい。カズマさんは時間切れ、という形でチートを持っていけませんでした。これはあの子の失態です」

 

「それは分かりましたけど……じゃあもしかして、俺に改めてチートをくれるんですか!? ありがとうございます!」

 

「いえ、それは無理です」

 

 俺は一人勝手に盛り上がるが、そんな夢はすぐに消えた。

 ですよねー。

 

「ここからは私の独白なのですが、聞いて下さい。あの子、アクアはこれまで数々の失態を犯してきました。……そう、それはスナック菓子の食べ過ぎで太りすぎたり。……そう、それは仕事を後輩に無理矢理やらせたり。……そう、それは無断欠勤且つ天界のゲームセンターに行って有り金全部使って借金まみれになったりと……」

 

「……何でそんな奴が女神やってるんですか」

 

「こほん。それでですね、今回の出来事が起こりました。私もとうとう堪忍袋の緒が切れてしまって……その…………」

 

「それで思わずアクアを落としたと」

 

 ……何て(女神)だ。

 いくら俺でもそこまではしない……と思う。

 というか、天界にもゲームセンターはあるのかと突っ込みたい。

 

「カズマさん、アクアに伝言をお願いします。……『あなたが魔王を斃したら、再び天界に戻しましょう』と」

 

「分かりました。けどその前に一つだけいいですか? アクアの奴が自分のことを俺のチートとかほざいているんですが……」

 

「それでしたら大丈夫ですよ。どうやらアクアには既にパーティーを組んでいる仲間がいるようですし、カズマさんが彼女と一緒に行動をしなくても別に構いませんよ。……それにあの子と居たら……その……ね?」

 

 きっとこの女神様は苦労してきたのだろう。

 俺はそんなジャンヌ様に同情していると。

 

「本来なら、あなたはチートを持てないのですが……私個人からのプレゼントを差し上げましょう。……それは、『一回だけ死んでも蘇る』というものです。どうでしょうか?」

 

 ……なんて素晴らしい女神なのだろう。

 あの駄女神に見習わせたい。

 俺が感動のあまり泣いていると、

 

「それでは、私と会うことは二度とないでしょう。カズマさんの冒険を陰ながら応援しています。──それでは!」

 

 ジャンヌは指をパチッと鳴らして、天井に扉を開けた。

 それに強制的に引っ張られる俺は最後に一言。ずっと言いたくて我慢していたことを解放した。

 

「ジャンヌ様! 身長低くても大丈夫ですよ! 需要はありますからあああああ!」

 

 

 

§

 

 

 目を覚ますとそこは、高級レストランの中だった。知らない天井ではなかった。

 

「……良かった。気を失ったのは数秒でしたね、アクア様!」

 

「ふふん、当然よ! なにせ私は最上職の一つである〈アークプリースト〉なんだから、こんなの御茶の子さいさいだわ!」

 

 むくりと身体を起こし、そんなアクアをジト目で見る。

 

「な、何よその目は! ……ちょっ、なんでそんな長いため息を吐くの!?」

 

「いや、何でもないさ。ミツルギ、頑張れよ。俺はお前を──色んな意味で──応援するから」

 

「そ、そうかい? ありがとう和真」

 

 何故かフルネームからカズマと呼び名が変わっているがそこは無視していいだろう。

 俺は──色んな意味で──対照的だと思われる二人を半眼で見据える。嗚呼……そうか。ミツルギはもう……手遅れなのか。

 

「おい自称女神。お前が天界に帰る方法は、魔王を倒すことだってさ。これは女神ジャンヌ様の伝言だからな……確かに伝えたぞ」

 

「はああああ!? そんな簡単に言うけど無理に決まってるじゃない! ……というか待って、今あんた、ジャンヌ様って言った!? 言ったわよね!?」

 

「……アクア様、必ずや僕が魔王を斃しますので安心してください。そしてもし魔王を斃したら僕と……あの、アクア様。聞いていますか?」

 

 俺はそんな彼らの会話を背に聞きながら高級レストランを出た。

 最後まで騒いでいたので結果的に迷惑を掛けてしまったお店の人達を見ながら俺は──

 出る際にウェイトレスを捕まえて一言。

 

「すみませんね、煩くしちゃって。俺の代金は彼らが払いますのでご安心を。それと……代金の二倍の金額をとっても大丈夫ですので」

 

 そのウェイトレスさんは清々しい笑顔を浮かべて俺を見送ってくれた。気が合いそうだ。もし金が貯まったら今度は一人で来よう。

 

 

 

§

 

 

 レストランを出た後俺はギルドに向かった。

 レインさんから『カズマ様、アクセルの冒険者ギルドに着いたらこの手紙を渡してください。これにあなたの事情が書いてあります。きっと職員はあなたを無下にできない筈です』と言われていたからだ。

 なんていい人だろうか。

 その時俺は恥じたものだ。

 何故俺はこんな聖人に何度もセクハラをしたのだろう、と。

 恩師への尊敬の念は絶えない。

 俺は金髪巨乳の年上お姉さんに声を掛けるために長蛇の列に並ぶ。

 

 ──そう、これは必然なのだ。

 

 こういった美人のお姉さんが理由もなしにこんな駆け出しの街に居るはずがない。

 きっとそれなりの理由があったりするはずだ。

 ……別に、柔らかそうな大きいおっぱいに惹かれたわけではないのだ。

 

「はじめまして、ですよね? ようこそ、駆け出し冒険者の街、アクセルの冒険者ギルドへ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

 無言で手紙を差し出し、お姉さんはそれをふむふむと言いながら読み始めた。

 だが途中で俺の事を変態を見る目で見てきたのはどうしてだろう。

 

「はい分かりました。……サトウカズマ様ですね? 貴族のレイン様からあなた様のことは把握しました。それでは一応、確認させていただきます。カズマさんは、職業〈冒険者〉で間違いありませんか?」

 

「はいそうです」

 

「それでは、スキルの取得方法や、レベルアップなど基本的なことは知っていますか?」

 

「はい大丈夫です」

 

「分かりました! カズマさんが冒険するに当たって、一つだけアドバイスしますと、まずは仲間を作りましょう。この張り紙をあちらの掲示板に貼って、興味を持った人がいたらカズマさんの元へと行くはずです。その後はその人と面接なりして、晴れてパーティー結成となります。パーティーには臨時と永続の二種類があるのですが、それもパーティーを結成する際に決めて下さいね。……それでは、カズマさんに仲間ができることを陰ながら応援しています!」

 

 そんな風に送り出された俺は、貰った張り紙に必要な事を記入していった。長文だと読む気が失せるだろうと配慮し、簡潔に纏める。

 

 《パーティーメンバーを募集しています。メンバーは〈冒険者〉の私、サトウカズマだけですが職業、レベルは問いません。一緒に冒険をしませんか?》

 

 こんなものでいいだろう。

 俺は早速それを貼って、仲間となる人を待つことにした。

 

 

 

§

 

 

 俺の名前は佐藤和真。

 パーティーメンバーを募集した俺は現在。

 

「おら小僧! さっさと働け!!」

 

「分かりやした、親方!」

 

 アルバイト生活をしていた。

 そう。

 募集したのは良いのだが、今日に至るまで誰も俺に声を掛けてくれなかったのだ。

 ……それはきっと、俺の職業のせいだろう。

 なにせ最弱職である〈冒険者〉だ。

 誰もそんなに奴のパーティーになど入りたがらない。

 そのことをすぐに察知した俺はならばと逆にパーティーに入ろうとした。

 だがこれも上記の理由で断られしまい……。

 そんな、路頭に迷っていた俺を土木工事の親方が拾ってくれたのだ。

 賃金こそ少ないが、寝床と食事を取るお金は出してくれるので有難い。

 ……寝食は馬小屋で、食事はギルドの一番安い唐揚げ定食なのだが、そこは我慢しようと思う。

 

 俺の生活は至ってシンプルだ。

 まず、朝早くに起床し準備運動。

 その後は借りている馬小屋を掃除する。

 その次に朝飯を買いに行きつけのパン屋に赴き、一番安い卵サンドを購入。

 食べ歩きながら冒険者ギルドに向かい、ギルド職員に誰かパーティーメンバーになりたがっていた奴はいないのか聞き、いつもの結果に落胆する。

 そして、土木工事のアルバイトを一日中勤務する。

 汗を流すためき大衆浴場に行き、金があったらキンキンに冷えたミルクを飲む。

 最後に冒険者ギルドに行き、夕食の唐揚げ定食を食べながら仲良くなった冒険者と雑談。

 ギルドの閉店時間ギリギリまで、来るかも分からない仲間を待つ。

 俺が夢描いていた異世界生活とは日を跨ぐ事にかけ離れていった──。

 

 そんな日々が何週間目になろうとした時。

 

「すみません、張り紙を見たのですが……」

 

 一人寂しく孤独に過ごした俺にも訪問者が……!

 その声の主を見るとそこには……

 

 ──魔法使いの格好をした小さな女の子が所在なげに立っていた。

 

 どことなく気だるげで、眠そうな赤い瞳。

 そして、肩口まで届くかどうか微妙なところまで伸びた黒髪。

 整った容姿を見て俺が思ったことは……!

 

「ああ……ロリっ子か」

 

「違います!」

 

 いや、そうは言ってもそう見えるのだが。

 年齢は多分、アイリスより少し上あたりか。恐らく、十三歳か、十四くらいの間だろう。

 なんで俺の知り合いはここ最近子供が多いのかな……と思ったその時、そのロリっ子は突然バサッとマントを翻して、

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」

 

 …………。

 

「……冷やかしに来たのなら帰ってくれ」

 

「ち、ちがわい!」

 

 俺の名前は佐藤和真。

 俺が胸踊るような冒険が出来るのは、まだ先かもしれない。

 








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