このすば! ─カズマがいた異世界最初の街は王都にある王城です─   作:Sakiru
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爆裂娘

 

 俺の名前は佐藤和真。

 異世界転生してからもう少しで三ヶ月と半月が過ぎようとしているが、未だ冒険の『ぼ』の字もしていない駆け出しにもなっていない冒険者だ。

 ──そう。

 俺は現在、金髪美女のお姉さんの助言に従って仲間を集めている最中なのだ。

 そして、そんな俺の元に現れたのは……!

 

「……この唐揚げ定食、安い割にはとても美味しいですね!」

 

 自称〈アークウィザード〉を名乗る小さな女の子だった。

 俺は、貪るように唐揚げを口に運んでいる女の子を憐れみのこもった目で見て。

 

「……なぁ、自称アークウィザードさん」

 

「……? 何ですか? それと私は自称ではなくれっきとした〈アークウィザード〉です。はい、冒険者カードです。偽装出来ないので本物ですよ! あと、私の事はめぐみんと呼んで下さい」

 

「分かったよ。……ところでアークウィザード」

 

「おい、両親が私に付けてくれた名前に文句があるのなら聞こうじゃないか」

 

 そう言って俺を強く睨みつけるのだが……箸を動かす手は止まっていないため、なんにも怖くない。

 このロリっ子属性の女の子の名前はめぐみん。職業は〈アークウィザード〉。

 腹ペコ女の子改めてめぐみんは、なんでもここ最近栄養を摂っていなかったらしく、初対面の俺にこう言ってきたのだ。

 

『……大変お恥ずかしいのですが、ご飯を頂けませんか? 三日何も食べていないので死にそうなのです』

 

 だったら働けよと突っ込みを入れたいところだが、俺と違って子供のめぐみんでは土木工事といったアルバイトが出来ないのだとか。変なところでリアルがあるよな、この世界。

 

「ふぅ、感謝します。危うく死にそうでした。餓死で」

 

「それは良いんだけど。……それは兎も角、お互いに自己紹介をしないか?」

 

「そうですね。それでは──我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし……──

 

「それはもういい」

 

「あっ、そうですか。…… では改めてめぐみんです。職業は〈アークウィザード〉で、紅魔族でもあります」

 

 紅魔族、という単語を聞いた瞬間俺は。

 

「よし、それじゃあまたなめぐみん! また機会があったらパーティー組もうぜ!!」

 

 一直線に帰ろうとした。目指す先は宿谷!

 服の袖を強く握るめぐみんの手を振り払おうとしながら俺は、王城で恩師から聞いた事を思い出した。

 

 

 

§

 

 

 そう、それは珍しく俺が授業を真面目に受けようと決めた日だ。

 その日の俺はその前日、アイリスにゲームで勝ち越しすることが出来たため気分が良かったのだ。

 運が絡むゲームだったら俺はそんじょそこらの人間には負けないらしい。

 俺はそれを確信し、アイリスをぼこぼこにした。それはもうけちょんけちょんにした。

 そのせいで今朝方まで拗ねていたのだが、誠心誠意土下座をしたら許してくれた。

 その時の目がかなりグサッと精神的に来たが、背に腹は変えられない。

 俺の真面目な態度からセクハラはしないと理解したレインさんは安堵の息を吐きながら授業を始めた。

 

「それでは授業を始めます。今日教える事は『紅魔族』という種族に対してです」

 

「……紅魔族、ですか? それって一体……」

 

「紅魔族とは、数々の大魔法使いを輩出してきた種族です。彼らの容姿は黒髪に紅目といった方が多く、珍しいのですぐに分かると思います」

 

「まさにエリートって感じだな」

 

 俺が感嘆の声を出していると、共に授業を受けているアイリスが。

 

「しかし、そんなエリートな紅魔族ですが少々困ったところがあるのです。あと、変なところもあります。その具体的な例としては、彼らの名前でしょうか。例を挙げるとですね、『きみきみ』とか『あさみゃん』とか『しんだがかめら』など、本当に変な名前なのです」

 

「……へ、へえそうなのか。……ま、まあ、人にはそれぞれ価値観があるからな! 別に少し名前がおかしくても紅魔族は強いんだろ? ならちょっとおかしくても大丈夫だと思うんだが」

 

「カズマ様、紅魔族の恐ろしさはここからです。彼らはまず『売られた喧嘩は買う』というスタンスを持っています。それがどんなに些細なことでも。そしてですね、一番困るのが彼らの性質でして、『格好つける』ことを彼らは生き甲斐にしています」

 

「……? アイリス、それくらい良くないか? 俺だって格好付けられたらそうしたいさ」

 

「それが例え、『強大なモンスターを前に仲間がやられそうな時、格好付けるタイミングを狙って救出するのを遅らせる』……そんな理由でもですか?」

 

「俺は間違っていたよアイリス」

 

「はい! 分かって頂けて嬉しいです! ですからカズマ様も注意してくださいね!」

 

「……あのアイリス様? それは私が説明することなのですが……」

 

 物知りなアイリスを褒めちぎっていると、先生がそんなことを一人愚痴っていた。ごめんなさい。悪気はないんです。

 決めた。

 そんな色んな意味で危ない奴とは仲間になるのはやめよう。

 命が何個あっても足りないからなあ……。

 

 

 

§

 

 

 結局根負けした俺は面接を再開することに。

 

「だってお前ら、厨二病なんだろ?」

 

「ちゅうにびょう……? 何ですかそれは?」

 

「ああそっか。日本の言葉だからな、無理もないか。……いいかめぐみん。厨二病というのはだな、自分に秘められし力があるとかそんなことを本気で思っている奴のことだ。奴らはな、自分のことが一番格好いいと思っているんだよ」

 

「なっ、私をそんな奴と同じにしないで貰いたい! 少なくとも私は仲間をそんな風に扱いませんよ! ……多分」

 

「今多分って言った?」

 

「言ってないです」

 

 何やら不安になるが、まあ一度パーティーを組んでクエストを受けてからこの先を決めるのもいいのかもしれない。

 

「ご馳走様でした。……それで、どうですか?」

 

「実際の戦闘でどれくらい戦えるか。それを見てからだな。ここはひとつ、お試し期間ということで……」

 

「おい、私を消耗品のように扱うのは止めてもらおうか!」

 

 ぎゃいぎゃいと目の前にいるロリっ子が騒がしいが俺はそれを華麗に無視し、受付の元へと向かった。

 金髪巨乳美女のお姉さんは笑顔を浮かべて俺を迎えてくれる。

 

「あっ、やっと仲間が出来たんですね!」

 

 そう言って眩しい笑顔を俺に向けてくれる。

 この女性は様々な事を俺にしてくれた。

 そう、それは。

 冒険者ギルド内でパーティーが中々仲間が集まらないことに対してストレスを抱えていた俺の愚痴を聞いて貰ったり。

 その時、目の保養にその大きい山を拝ませてもらったり。

 逆に、お姉さんの仕事での愚痴を聞いたり。

 曰く、冒険者の目つきはイヤらしいものが多いらしく、営業スマイルを浮かべるのに苦労しているそうな。

 ……まあ俺は賢いのでそんなガン見はしていないのだが。

 そう、俺は男の中の男。紳士なのだ。

 兎も角、得てしてそんな傷の舐め合いをしていたせいか俺はこのお姉さんと仲良くなることが出来たのだ。

 俺は付いてきためぐみんを片手で指し。

 

「はい、ようやくですよ。今からこのめぐみんと簡単なクエストを受けようと思うんですが、何かお手軽なものはありますか?」

 

「……!? め、めぐみんさんとですか!?」

 

 えっ、何その反応。

 

「ふっ、そうですよ受付のお姉さん。紅魔族の私がこの駆け出し冒険者に手を貸すのです!」

 

 そんな舐めたことを言うめぐみん。

 イラッ。……確かに俺は駆け出し冒険者だが。

 これでも王都では優しい冒険者からスキルを教えて貰ったのだ。

 それらを上手く使えば多分、大丈夫だろう。

 ……大丈夫だろう。

 …………別に、お姉さんの目が同情の眼差しをしている事に気づいていないわけではないのだ。

 

「……そうですね、これはどうでしょうか? 『ジャイアントトードを十匹討伐』。これなら成り立て冒険者のカズマさんや問題行動が目立つめぐみんさんでも大丈夫なはずです」

 

 流石はギルド職員。

 レベルに見合ったクエストを提示するのに慣れている。

 俺がその異世界らしさに思わず感動していると、お姉さんが手でこっちに来いと合図を送ってきた。

 

「何ですか? もしかして、デートのお誘いとか? すみません、それはちょっと……」

 

「違います! 真面目な話、あの紅魔族の方といる時は気をつけて下さいね。いつも問題行動を起こして困っているんです」

 

 なるほど。

 先程は聞き流したがどうやらあのアークウィザード兼ロリっ子は問題児のようだ。ですよねー。

 俺はその問題児であるめぐみんを真顔で見て、目を光らせておくことを決心した。面倒事に巻き込まれたくないからな。

 

「何をこそこそ話してるんですか? 早く行きますよ?」

 

「いや、何でもないよ!」

 

 

 

§

 

 

 雲ひとつない、鮮やかな青色の空の下。

 こんな天気がいいなら、昼寝に最も適しているだろう、そんなお天道さまの下で。

 アイリスは元気かなあ……と思いながら俺は。

 

「うわあああああああ! 無理、無理無理無理無理! 何なのこいつら、キモすぎる! めぐみん、いやめぐみん様! 魔法はまだですか!?」

 

「ちょっと待ってください! 『黒より黒き闇より深き漆黒に──』」

 

 ──そう。

 俺は今巨大なカエル型モンスター、ジャイアントトードに追い掛けられていた。

 俺の装備といえば、短期アルバイトで得た小金を貯めて買ったショートソード一本のみ。

 防具など当然買えず、ジャージ一着だけだ。

 変な名前でお姉さんの話によれば問題児のめぐみんであるが、その正体は最上職の一つである〈アークウィザード〉だ。

 当然、めぐみんは魔法使いのため魔法を使うにあたって詠唱をしなくてはならない。

 めぐみんが魔法を放つまで俺は彼女に近付かせず囮となる必要があったのだ。

 別に、それ自体は良いのだ。

 前衛が俺だけなのだから、そうなるのは必然だろうし、その作戦を立てたのは俺自身。

 だがここで誤算だったのは……。

 討伐対象モンスターの大きさにある。

 ジャイアントトードを一言で表すならば、キモい。あっ、あとでかい。以上。

 俺は全力で走りながらも彼我の距離を測るため恐る恐る後ろを振り返るとそこには、

 

 ──十五匹程のカエルの群れが俺を食すべく追いかけている姿があった。

 

 そして少しずつ距離が縮まっていく。

 どうやら俺は、あのカエル達より足が遅いらしい。マジかよ。

 だが、俺を舐めてもらっては困る!

 俺は逃走するのをやめて今度は完全に振り返った。

 そして……!

 

「俺を舐めるなよ! 『クリエイト・ウォーター』ッ、そして……『フリーズ』ッ!」

 

『クリエイト・ウォーター』、『フリーズ』とは初級魔法だ。前者の属性が水で後者が氷である。

 俺は辺りに水をまき、その水を凍らせることで足止めさせようとしたのだ。

 そして、一番先頭に居たカエルがその領域に入ろうとした時──ジャイアントトードは天高く飛んだ。いや、跳ねた。

 それは見事に跳ねた。

 あのまま行ったら太陽に届くんじゃないかと思わせるくらいに跳ねた。

 ……えっ。

 ………………ええええええええええ!?

 ズドンッ! と大きな着地音とともに振動が脳に響く。

 俺は清々しい笑顔を浮かべて一言。

 

「いやあ……カッコイイですね! なんていう男らしさ! ……それでは僕はこれで失礼します」

 

 優雅に一礼をしてから俺は、奥の手である『逃走』スキルを使った。

 このスキルを教えてくれたレインさんには本当に感謝してもしたりない。

 あの女性(ひと)は、俺がこうなることを見通していたのだろうか。

 俺が凄まじい逃走劇を繰り広げる中遂に、

 

「カズマ、準備出来ました! 急いでここに来て下さい!」

 

 めぐみんがそんなことを大声で叫んでくる。

 俺もそれに対抗するように「分かった!」と返事をしてめぐみんの元に向かった。

 息を整えながら、めぐみんに遅いと文句を言おうとした時……彼女の周りの空気がおかしい事に気づく。空気がビリビリと震えていた。

 ……これはヤバイやつだとすぐに直感した。

 めぐみんはふっと不敵な笑みを作って、

 

「見ていて下さい。これが人類が行使できる最も威力のある攻撃魔法。これこそが──究極魔法です!」

 

「いけ、めぐみん!」

 

 杖の先に光を灯す。

 赤、青、緑、黄、紫、黒。あらゆる色を詰め込んだその光はぎゅっと一つの塊に圧縮される。

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

 めぐみんがその言葉を放った瞬間、平原に一筋の閃光が走り抜けた!

 杖の先から放たれたその光はジャイアントトードの上空に向かい、吸い込まれるように哀れなカエル達に突き刺さると……!

 その直後、究極魔法の効果がすぐに表れた。

 俺が分かったことは、強烈な光、轟音──そして、爆裂四散したカエルだけ。

 土煙がやっと晴れるとそこには──二十メートル以上ものクレーターがで作られていた。

 

「……凄い! これが最強の攻撃魔法か! 言うだけはあるな、めぐみん!」

 

 今日はなんて素晴らしい日だろうか。

 めぐみんが放った魔法に打ち震え、彼女を褒め称えるようと彼女の方を向いたと時、そこには、

 

 ……倒れているめぐみんがいた。

 

 俺は慌てて小さな魔法使いを抱え起こし、肩を揺さぶる。

 

「おい、大丈夫かめぐみん!」

 

 俺の声にめぐみんは怠そうに返しながら。

 

「はい、大丈夫ですよ。そう言えば、言うのを忘れてましたね。爆裂魔法は今見た通り絶大な威力を放ちますが、膨大な魔力を有するので大抵の人は倒れます。あっ、命に別状はないのでご安心を」

 

 その言葉を聞いて俺はそうかと納得する。

 あれだけの魔法なのだ、それだけの対価が必要なのだろう。

 これだけの魔法使いなら合格だ。

 これからはこのめぐみんと一緒に冒険しよう。

 俺は安心させるように笑い掛けて。

 

「そうか、なら次は普通の魔法を使ってくれればそれでいいよ。これからもよろしくな」

 

 ──倒れているめぐみんを起こすため手を伸ばした時、

 

「あっ、それは無理ですね。私、爆裂魔法しか習得していないので。それに私は爆裂魔法しか使いません。何故なら、それが爆裂道なのだから……!」

 

 …………。

 

「そうか、じゃあなめぐみん! またいつか会おうぜ!」

 

 俺は手の平を返して別れようとした。

 

「だああああああ! 待って、待って下さいよ! 荷物持ちでもなんでもしますから!」

 

「うるさい、手を離せ! お姉さんが言いたいことがよく分かった! って言うか、仮にも女の子がそんな、『なんでもする』とか言うんじゃない! ああもう、お前確かに問題児だわ! お前あれだろ、他のパーティーでもこうなったんだろ!」

 

「ええそうですよ、悪いですか!?」

 

 おっと、まさか開き直るとは。

 俺がそんな爆裂娘をジト目で見ていると。

 

「ところでカズマ。後ろのカエルを対処しなくて良いのですか?」

 

 めぐみんがそんなことを告げてきた。

 カエル? それならめぐみん自身が斃しただろうに……。

 俺は何を言ってるんだとばかりにアークウィザードを見るがその目は本気だった。

 というか、凄い怯えていた。

 恐る恐る後ろを振り返るとそこには──

 

「何でまた居るんだよおおおおおお!!!」

 

 ……先程より数は少ないが、八匹のジャイアントトードがいた。

 しかも、超至近距離で。

 俺が逃げようとめぐみんに声を掛けようとした時、そこには誰もいなかった。

 

「……カズマ、助けてくだ…………さい……」

 

「めぐみーん!」

 

 カエルの口の中にいた仲間を助けるため、俺はまだ一度も使っていないショートソードを奴の腹に刺した!

 

 

 

§

 

 

 あの後、一歩も動けないめぐみんを囮にしてジャイアントトードをなんとか斃すことが出来た俺は現在。

 粘液まみれの少女をおんぶしながらアクセルの主街区を歩いていた。

 周りの視線がもの凄い痛い。

 

「……カエルの中ってあたたかいのですね。知りたくもないことを知ってしまいました…………」

 

 めぐみんの呟き声を聞きながら歩いていると……

 

「あー! こんのヒキニート! よくもこの前はやってくれたわね!」

 

 どこかで見たことがある女の子が俺を指して大声で叫んでいた。

 だが俺は無視をする。

 俺は、というかめぐみんも五月蝿(うるさ)い奴と関わる時間はないのだ。

 一刻も早く大衆浴場のお湯に浸かり、この粘液を洗い落としたい。

 俺はまだ耐えられるが、めぐみんはまだ女の子なのだ。

 例えちょっと……いやかなりおかしくても女の子なのだ。

 そう。

 これはアクアと関わるのが面倒臭いとかそんなことでは断じてない。

 パーティーのことを思って俺は行動しているのだ。

 

「あの、カズマ? 青髪の綺麗な女性がカズマを指しているのですが、知り合いですか?」

 

「……ああそうだよ。けど今はそんなことより身体を綺麗にしようぜ」

 

「そうですね」

 

 こうして俺とめぐみんはアクア様を無視して大衆浴場に向かったのだ。

 

 

 

§

 

 

 身体を綺麗にした俺は現在、店の入り口前でめぐみんを待っていた。

 女の子だから長風呂になってしまうのだろう。

 ……いや、単純に粘液を落とすのに苦労しているかもしれない。

 キンキンに冷えたミルクを飲みながらそんな事を考えていると。

 

「お待たせしました。それでは、クエスト報告に行きましょう」

 

「あぁ、そうだな」

 

 冒険者ギルドに向かっていると、周りの目が厳しいことに否が応でも気づく。

 こう、ネチネチと。

 俺は『読唇術』スキルを使い、嫌な予感がしながらもその会話を聞いてみることにした。

 

「おい、見ろよ。さっき青髪の女の子が言ってたんだけどな、あの男はあの黒髪の女の子を粘液まみれにして、さらにおんぶをしていたんだぜ」

 

「あれが本物のロリコンか……」

 

「あの女の子もきっと脅迫されてるに違いないわ。……私も気をつけないと…………」

 

「サイテー」

 

 あの(あま)、次にあったら殴ってやる……!

 俺がそう内心誓っていると、横で歩いていためぐみんが俺の様子をおかしく感じたのだろう。

 

「あの、どうしました? さっきから顔が怖いですよ?」

 

 半分お前のせいだと声を大にして言いたい。

 俺が内心嵐のごとく荒れていると、めぐみんは不安そうな顔で口を開けたり閉じたりしていたりした。

 きっと、パーティーを継続するかについて話をしたいのだろう。

 答えは決まっている。

 ノーだ。

 仮にめぐみんが普通の魔法も使えたら俺は喜んで彼女を招き入れただろう。

 だが、だがである。

 一日に一度しか魔法を放てない。

 爆裂魔法しか習得していない仲間をパーティーに招き入れて、何のメリットがあるだろうか。

 よし、心苦しいがここはきちんと言おう。

 突然立ち止まる俺。

 そしてめぐみんも立ち止まる。

 めぐみんの顔は絶望に覆われていた。

 きっと彼女も分かっていたのだろう。

 爆裂魔法しか使えないことが、魔法使いとして茨の道であることを。

 そして、分かっていながら自分が大好きな魔法を棄てられなかったのだろう。

 俺達の重苦しい雰囲気を感じとったのか、周りの人間も静かになっていた。

 そして向けられる数多くの視線。

 それは『お前、こんな可愛いお嬢ちゃんを捨てるのか?』と語っていた。

 ……語っていた。

 …………語っていた。

 ………………語っていた。

 

「……めぐみん。パーティーについてだけど」

 

「……はい」

 

 告げられる言葉を予想し杖にすがりつくめぐみんを見ながら、俺は重い口を開いた────。

 

 

 

§

 

 

「それでは、これが報酬になります!」

 

 そう言って金貨──この世界の金貨は日本円とほぼ同じだそうだ。千円だったら千エリス。女神エリスから名前をとって『エリス通貨』というらしい──が入った袋を貰う俺。

 

「あの、これは幾ら入ってますか?」

 

 かなり重い袋を持ちながらそう尋ねるとお姉さんは笑顔を浮かべて。

 

「そうですね、今回は依頼の十五匹を討伐しました。まずは達成報酬として三十万エリス。追加の八匹を買い取りましたので四万エリスです。……ですが、めぐみんさんが爆裂魔法でクレーターを作ってしまったのでお金を取らせて頂きます。その金額が十五万エリス。それを差し引きすると十九万エリスになります。……それにしても、今回の爆裂魔法は凄かったようですね。いつもならこんなに取られないのですが……。まぁ兎も角、カズマさん、クエスト達成おめでとうございます!」

 

 十九万エリスか。

 この世界の冒険者は通常四人から五人でパーティーを組むらしい。もし仮に五人だったら三万八千エリスが一人当たりの取り分になる訳だが。

 うん、どう考えても割に合わない。

 ……いや、爆裂魔法を使わなかったら引かれることは無いはずだから、そうでもないのか……?

 そんな風に考えているとお姉さんが内緒話でもしたいのか、かがみ込んで話し掛けてきた。

 重力に従って下に垂れる大きいおっぱいを不自然にならないよう細心の注意を払いながら拝んでいると。

 

「……あの、本当に良かったんですか?」

 

 何を言ってるのかその一言で察した俺は一言。

 

「はい、多分大丈夫です」

 

「ならいいです」

 

 目には不安が残っているが安心した顔を見せるお姉さんに見送られ、俺は──。

 

 

「おーい、めぐみん! 報酬受け取ってきたぞ!」

 

 

 仲間になった紅魔族の女の子に向かって歩いて行った。

 












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