このすば! ─カズマがいた異世界最初の街は王都にある王城です─   作:Sakiru
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戦争

 

 アクアを連れて、巨乳お姉さんのウィズが営んでいるウィズ魔道具で朝の挨拶に行くとそこで俺は衝撃的な事実を知る事になる。

 

 不死王(リッチー)

 

 それはメジャーアンデッドモンスター吸血鬼と並ぶアンデッドの最高峰。

 魔法を極めた大魔法使いが、禁忌の(わざ)を用いて人の身体を捨てさり、ノーライフキングと呼ばれるアンデッドの王になった姿。

 強い未練や憎悪、もしくは恨みで自然にアンデッドになるアンデッドモンスターとは違い、自らの意思で自然の摂理に反し、神の敵対者となった存在。

 その、ラスボスみたいなモンスターが……

 

「『ゴッドブ──』……痛っ、何で邪魔をするのよカズマ! 今回ばかりは私、何も変な事はしてないわよ!?」

 

「ひぃいいいい!!」

 

 ……一人の〈アークプリースト〉、いやこの場合は女神であるアクアに怯えていた。

 そう。

 何と商才が一切無い巨乳お姉さんのウィズは不死王だったのだ。

 俺は今にもウィズに摑みかかりに行きそうなアクアを何とか羽交い締めにして抑え、しゃがみこんで目を閉じているウィズに事情を聞いてみる事に。

 

「えぇと、取り敢えず事情を聞いてもいいか?」

 

「……ありがとうございます、カズマさん」

 

「カズマ、事情何て聞く必要はないわ! 『ターンアンデッ』……──痛っ! だから剣の柄で頭を殴るの止めて!」

 

「だったらウィズを殺そうとするのを止めろ。……悪い、それじゃあ聞かせてくれ」

 

 ウィズはアクアにちらちらと視線を送りながらもぽつぽつと自分の過去を話し始めた。

 話を纏めると。

 ウィズは何でも昔は冒険者で、凄腕の魔法使いだったらしい。

 そしてそれはもう魔王軍を相手に無双していたそうな。

 だがしかし、ある時不死王になる決意をした。

 そして紆余曲折を経て今は、この駆け出しの街アクセルで店を開いていると……。

 

「ウィズ、素直に言ってくれ。お前はこれまで冒険者を殺した事はあるか?」

 

「カズマ、なにバカな事を言ってるの! 不死王よ? 当然あるに……──」

 

「ありませんが……」

 

 さてどうしたものか。

 本人はこう言っているが事実かどうか確認が取れない。

 ……困ったなぁ。…………いや待てよ?

 

「なぁウィズ、もし良かったら冒険者カードを見せてくれないか? 確か殺した奴はモンスターにせよ、人間にせよ冒険者カードに記録される筈だ」

 

「あぁなるほど! 流石カズマさんですね」

 

 そう言ってウィズは胸の谷間から冒険者カードを……──出す筈もなく、普通にエプロンから差し出してくる。

 俺がそれを受け取ろうとした時、横から出された手が取ってしまったせいで空気を掠ってしまった。

 犯人である女神様はそれはもう目を極限にまで近づけて冒険者カードを眺め見ている。

 まぁ、自分の目で確認した方がアクアも納得するだろう。

 ……ところで。

 冒険者が同業の冒険者を殺す事はまずない。

 何故ならそれはすぐに何らかの形で周囲の人間にバレてしまうからだ。

 そして、その殺した犯人は殆どの場合よくて終身刑で普通に死刑が判決されるらしい。

 流石は中世世界。命が軽すぎるなぁ。

 数分後。

 ウィズの経歴は長かったのか時間がかかったがようやく冒険者カードから目を離したアクアはそれはもう悔しそうに。

 

「認めたくないけど、本当に殺してない……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は決めた。

 ウィズの事は内緒にしていよう、と。

 

「アクア、ウィズの事は黙っているぞ。いいな?」

 

「…………」

 

「分かったな?」

 

「…………分かったわよ」

 

 渋々ながら引き下がったアクアは次の瞬間笑顔を浮かべてウィズに近づき。

 

「ごめんねウィズ。友情の証に握手をしましょう?」

 

「えっ? ……あぁはい、構いませんが……」

 

 そう言って両者手を出し、握った瞬間。

 

「痛い痛い痛い痛いッ! どうして、どうして仮にも不死王である私がこんな風に痛くなるんですか!?」

 

「あらどうしたのウィズ? 私は手を握ってるだけよ? ……けど、いい質問をしたわね。私の名前はアクア。水の女神アクアよ!」

 

「えぇえええええええええええええ!? ……つまりアクア様はあの頭がイカレているアクシズ教の……?」

 

「いらっ。……ごめんウィズ、力が入っちゃったわ」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!」

 

 悲鳴を上げるウィズをにやにやとタチの悪い笑みを浮かべているアクアに俺は拳骨をぶつけて。

 

「止めてやれ」

 

「……はーい」

 

 痛そうに頭を抱えている女神と、身体が少し透明になって透けている不死王。

 そんな二人をぼんやりと眺めていると扉に付けられたベルが心地よく鳴った。

 

「カズマ、店に入っていたのですね。アクアもいたのですか。二人とも、おはようございます」

 

 そう言いながら此方に近づいてくるめぐみんに俺は片手を上げて挨拶をしてから、彼女にも事情を言った方がいいのかと迷っていると。

 

「ねぇ聞いて、めぐみん! この女はね、不死王なのよ!」

 

「……はい?」

 

 アクアが正体をバラしてしまった。

 数秒後。

 

「えぇえええええええええええええ!?」

 

 めぐみんの驚き声が店内に響いたのは、語る必要もないだろう。

 

 

 §

 

 

 アクアと途中で別れてダクネスに何て言おうか頭の中で考えていると、こういう時に限ってすぐに目的地に着いてしまう。

 冒険者ギルドに辿り着くとそこには。

 

「やっと来たかカズマ。待ちくたびれたぞ!」

 

 朝からテンションが高いダクネスが俺達を待っていた。

 凄いそわそわしている。

 きっと、自分がパーティーに入れると信じて疑わないのだろう。

 まぁ丁重にお断りするのだが。

 しかしこうも期待されると、こう、罪悪感が湧き上がってくるな……。

 いやいやいや、俺は何も間違った事はしていない。

 俺はこほんと咳払いをして。

 

「あー、ダクネス。パーティーの事なんだけど、悪いが断らせてもらう」

 

 軽い感じで言った方がダメージが少ないと判断して、わざと明るく言ったのだが果たして成果は如何に。

 恐る恐るダクネスを見ると、何と彼女は微笑んでいるではないか。

 

「そうか、分かった。……本当は、分かっていたんだ。私のような守る事しか取り柄がないなんちゃって〈クルセイダー〉が使えない事など。カズマ、分かってはいるのだが……理由を教えて貰えないだろうか」

 

 そう言って自分の欠点を直そうとするのは称賛に値するのだが……だったら早くから直せと突っ込みたい。

 というか、理由の半分はあなたの性癖が原因です。

 しかしそれをありのままに告げるのは可愛そうだから、めぐみんの爆裂魔法の事だけを言って納得してもらおう。

 

「ダクネス。ここにいるめぐみんはな、爆裂魔法を使えるんだ。……いや、爆裂魔法しか使えないんだが。爆裂魔法の威力は正直他の魔法とは桁違いだ。当然、その爆風も大きい。ダクネスみたいな盾役がいた場合、それに巻き込まれて死ぬ可能性が高いんだ」

 

 その言葉を聞いてダクネスは納得してくれたようだ。

 ダクネスは見惚れるような笑顔を浮かべて。

 

「それでは邪魔したな。これからも冒険者ギルドや街で会うだろうが、その時は声を掛けて欲しい」

 

 そう言って席を立ち、ダクネスは冒険者ギルドを出て街に出てしまった。

 ……その背中が寂しそうに見えたのは、何も俺の気のせいではないだろう。

 思わず椅子を蹴飛ばし追いかけようとした時……──

 

「やめてあげてくださいカズマ。相当キツい筈ですから」

 

 ……服の袖を掴んだめぐみんによって阻まれてしまう。

 だがそれでいいのか。

 あのままダクネスを見送って良かったのか。

 そうやって悶々としているとそれを見かねためぐみんが優しい顔になって。

 

「カズマの判断は間違っていません。……その、不謹慎ですが……私は今とても嬉しいです。私がパーティーに残る事を前提に、ダクネスを断ったのですから」

 

「それはそうだろ。だってめぐみんの方が先に仲間になったんだ。いくらダクネスとは知り合いとはいえ、優先するのはお前の方に決まっているだろ」

 

「……ありがとうございます、カズマ」

 

 そうだ。

 俺の判断は間違っていなかったんだ。

 そうやって自分を落ち着けていると突如ノイズのようなものが空気を振動して、

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

 街中に大音量のアナウンスが響く。

 中世世界のこの世界にそんな現代地球の技術は無い筈だから、恐らく魔法を使っているのだろう。もしくは何らかの魔道具か。

 ……それにしても、緊急クエストか。

 

「おいめぐみん。緊急クエストって何だ? もしかしてモンスターか何かが街に襲来してくるのか?」

 

 ちょっと、いやかなり不安気な俺とは対称にめぐみんはそれはもう嬉しそうだ。具体的には、目をかつてないほどに紅く輝かせている。

 レインさん曰く、紅魔族が目を紅く輝かせている時は最も気分が高揚している時らしい。

 めぐみんが嬉々とした声で。

 

「多分キャベツの収穫でしょう。そろそろ収穫時なので」

 

「おい、キャベツってあのキャベツか?」

 

「カズマが何を言ってるのかちょっと分かりませんが、キャベツと言ったら一つしかないでしょう?」

 

「野菜の?」

 

「野菜の」

 

「マジか……」

 

 そんなやり取りをしていると、めぐみんが可哀想な人を見る目で俺を見てきた。

 …………。

 

「なぁめぐみん。緊急クエストって言ってるけどさ、俺達は農家の方々の手伝いをさせられるのか?」

 

 めぐみんの視線が可哀想な人を見る目から、赤ん坊を見る目になった時、何時の間にか来ていたのかアクアが申し訳なさそうな声で。

 

「カズマさんはこの世界のキャベツを知ってる?」

 

「あぁ。三ヶ月前にとても美味しいキャベツを食べたばかりだ」

 

「それは品種改良して一年中育てられているキャベツね。私が言いたいのは……」

 

 アクアが説明をしようと口を開いたその時。

 何時もお世話になっている受付のお姉さんが建物内に充分届く大きな声で。

 

「皆さん、突然のお呼び出し、すいません! キャベツです! あの美味しくてシャキシャキした歯応えの……年中栽培とは違う、本物のキャベツの収穫時期がやって参りました! 今年のキャベツはできが良く、一玉一万エリスになりました! できるだけ多くのキャベツを捕まえ、納品してください! 尚、人数が人数、額が額なので報酬金は後日纏めて支払います!」

 

 その言葉を聞いて歓声を上げる冒険者達。

 そして我先にとギルドを出て行く冒険者達の姿は、こう、何と言うか……『狩人』と言えるだろう。

 そして気づいたら建物に残っているのは俺とアクアだけになってしまった。仲間のめぐみんもいない。

 

「それで? 説明を頼む」

 

 アクアもこの世界の常識がおかしい事に気づいているのか──いや、はたから見たら俺達の方がおかしいのか──視線を宙に向けながらポツポツと語り始めた。

 

「この世界のキャベツはね、カズマ。飛ぶのよ。比喩でもものの例えでもなくて、字の如く飛ぶわ。味が濃縮して収穫の時期が近づくと──彼らは自我を持つのよ。そして食べられたくないと思うのよね。街や草原を疾走する彼らは海を越え、谷を超え、そして砂漠すら越えて人知れず未踏の地で静かに息を引き取るのよ……。けど、私達人間はそうなる前に食べちゃいましょう、っていう事でこのお祭りが開かれるのよ。そう。この収穫は遊びじゃないわ。──戦争なのよ

 

 真顔でそんな事を言う女神アクアを見て俺が放った一言は。

 

「なぁ、今日は俺、休んでいいか? というかアクアは仕事しなくて良いのか?」

 

「キャベツは危険だから一般市民は家に避難してるの。……それと、ちゃんと行ってきなさい。お家、買いたいんでしょ?」

 

 アクアはそう言ってから受付のお姉さんの元へ近づき、何やら仲良さそうに歓談する。

 仲良くなったなぁ、と眺めていると2人共俺の視線に気づいたのかこちらを見てシッシッと手でサインしてくる。

 俺はとぼとぼと剣を片手にキャベツの元に行くのであった。

 

 

 §

 

 

 そこは──戦場だった。

 剣、弓、槍、棍、ダガー、そして杖。自らの武器を振り、冒険者達は敵と戦う。

 そこにあるのは、何時ものおちゃらけた雰囲気ではなく、皆が連携していて戦っていた。

 キャベツと。

 

「「うおぉおおおおおおおお!!!!!」」

 

 雄叫びを上げながらキャベツに向かっていく戦士達。

 俺が内心うわぁと軽く引いている中、ただの野菜である筈のキャベツは剣を避け、魔法を避け、しまいには……

 

「「「グハッ!」」」

 

 冒険者達を返り討ちにしていた。

 ……帰りたい。今すぐ帰りたい。

 そんな思いを抱えながらめぐみんを探していると、幸いすぐに見つかった。

 いた場所は、少し見晴らしが良い丘の上。

 目をギラギラと紅くして、下の様子を眺めている(さま)は……ただの爆裂娘だった。

 

「おーい、めぐみん!」

 

「あぁカズマですか。今年のキャベツはお姉さんが言っていたようにできが良いからか、とても凶暴です。気をつけてくださいね。……実際、何人かが殺られていますから」

 

 真剣に語るめぐみん。

 だが何故だろう。相手がキャベツだからか、俺はそんな真面目になれなかった。

 と、その時。

 

「あぁ、分かっ──グハッ!」

 

「カズマ、大丈夫ですか!? 気をしっかり持って!」

 

 真後ろから突撃してきた一体のキャベツによって後頭部に深刻なダメージを負った俺は、心配そうに見てくれるめぐみんに向かって。

 

「めぐみん。……あそこの、誰もいない場所に爆裂魔法を撃て。キャベツの癖に目があるからな、土煙が良い仕事をする筈だろ。その間に俺は乱獲してくる。当然報酬は山分けだ。あと今日は全力で撃っていいぞ。……キャベツの癖に、人間様に歯向かうとはいい度胸じゃないか!」

 

「流石はカズマです! 全力の爆裂魔法なんて、何週間ぶりでしょうか……!……それでは私は用意しています。『黒より黒き闇より深き漆黒に──』……」

 

 詠唱を始めるめぐみんと別れ、丘を内心ひやひやしながら滑り降りた俺は……ちょっと待てよとある事に気づいた。

 仮に。

 仮にめぐみんが爆裂魔法を撃ったとしよう。

 当然、俺の完璧な作戦が成功すれば莫大な金をゲットできる。だが、もし失敗したら……?

 そう、慢心してはならない。

 生まれるのはクレーターだけ。

 しかもめぐみんには全力で良いと言ってある。あれほど気分が高揚しているのだ、その威力は計り知れない。

 そしてクレーターが大きくなればなるほど、請求される額は増える訳で……。

 ……。

 俺は他の冒険者達全員に聞こえるよう、大きな声を出した。

 

「皆聞いてくれ! 俺が今から作戦を提示したいと思う! 作戦通りにいけば絶対乱獲できる!」

 

「何だ何だ?」

 

「おいカズマ、それ本当だろうな?」

 

「もちろんだ! あそこにいるめぐみんが爆裂魔法を放つ! そしたらその余波で土煙が生まれるから、魔法使いの皆さんは風を巻き起こす魔法を使って憎きキャベツ達の目に砂を当ててくれ。奴らが身動きできない間に捕獲だ! だから、魔法使いの皆さんは詠唱を開始! 他の冒険者達はキャベツ共を一箇所に集めるんだ! 報酬は取った者勝ち! 恨みっこなしだ! ……どうだ!?」

 

 沈黙が場を支配して、数秒後。

 

「「やってやらぁあああああ!」」

 

 ……よし、これでクレーター代も等分してもらおう。

 俺が邪悪な笑みを浮かべる中、俺の指示通りに冒険者が動く。

 魔法使い職は詠唱の準備を。

 俺を含めた剣士はキャベツ共を一箇所に固めるべく声を上げながらじわじわと包囲していった。

 そして一人、めちゃくちゃ活躍している騎士がいた。

 

「あぁ……最高だカズマ! んくっ、これこそ、私が最も望む展開だ! んんっ、キャベツ達の猛攻をこんなにも受ける事ができるとは!」

 

「ちょっとダクネス、煩いからちょっと黙ってて! だからパーティーに入るの断られるんだよ! ……ハァ」

 

「そうは言ってもだなクリス! ……んくっ、コレばっかりは……あぁっ! ……無理なのだ!」

 

「ねぇ、お願いします。お願いだから、黙ってて!」

 

「おい、カズマ。あの姉ちゃん大丈夫かな? お前知り合いだろ? ちょっと行ってこいよ」

 

「断る」

 

 何やら悲鳴の応酬の中に喜悦の声が混じっているが、無視していいだろう。

 何だろう、さっきまでパーティー加入を断った事に対して罪悪感があったが、今の声を聞いたらなくなってしまった。

 そしてとうとう……

 

「カズマ! こっちは準備できました! ……というか、もう少しで身体がボンッてなりそうです!」

 

 何それ、聞いてるだけで恐ろしい。

 辺りを見回すが、殆どのキャベツが集まっているようだ。

 

「よしめぐみん! 撃っていいぞ!野郎共、目を閉じろぉおおおおお!」

 

「それでは行きますよ! 『エクスプロージョン』ッッ!」

 

 直後。

 膨大な光が視界を過ぎ去っていき、その次は大地を鳴らす轟音が響いた。そして次の瞬間、溢れんばかりの砂煙が巻き起こり。

 

「魔法使いのみなさーん! お願いします!」

 

「「『ウインドブレス』ッ!!!!!!」」

 

 その砂嵐を誘導するように風を生成する初級魔法『ウインドブレス』が沢山の魔法使い達から発生した。

 そして聞こえるキャベツ達の悲鳴。

 瞳をキツく閉じている俺達でさえその重みが分かるのだ、何も対処をしていなかった野菜達には地獄だろう。

 そして丘の上からはめぐみんが。

 

「カズマ! 今です! 今なら乱獲できますよ!」

 

「よし、お前ら! 行くぞぉおおお!」

 

「「「おぉおおおおおおおおお!」」」

 

 

 ──この日。

 アクセルでのキャベツの収穫量は、近年稀にみるほどの量だったらしく、街は冒険者達に感謝したそうな。

 俺達はこれが冒険者の醍醐味だと喜ぶ事ができ、財布も厚くなる事が確定したのでその日は宴会を開き、その日は終始皆が皆笑顔だった。

 冒険者ギルドに留まっていたアクアは『宴会』スキルを使い無料で素晴らしい芸をし、俺はというとめぐみんやダクネス、そしてそのダクネスの友人であるクリスと豪華な夕食を取り、今までで最高の夜を過ごした。

 クリスは〈盗賊〉職の冒険者で、迷宮(ダンジョン)に潜っては貧しい子供達に食べ物や生活に必要な物を与えているそうな。

 スキルを教えてくれるとの事で『スティール』や『バインド』、『潜伏』と所持していたスキルポイントを全て使ってしまったが役に立つ時が来るだろう。

 ……『スティール』を試しに使った時、クリスのパンツを盗ってしまったが致し方がない。

 

 その後日。

 冒険者ギルドは静まり返っていた。

 何故なら今日は、キャベツ狩りの報酬金が出る日だったからだ。

 固唾を飲んでギルド役員の言葉を待つ俺達。

 そして一人の黒いスーツを来た新米の男性職員が前に出て。

 

「皆様、長らくお待たせしました! 今年の報酬金ですが、過去最大です! それでは列になって待っていてください! お金は逃げないので、安心してください!」

 

 ざわざわと賑やかになり、仲間と話している冒険者。

 だが……俺とめぐみんはそれをしなかった。

 ……何故なら、めぐみんが作ったクレーター代が幾らか検討もつかないからだ。

 不安からか、めぐみんがぎゅっと服の袖を掴んでくる。

 女の子から純粋にこんな事をされるのは人生初だが、喜べる状態ではなかった……。

 そして、俺達は頷き合い最後尾に並ぶ。

 ある者は歓声を。

 またある者は歓声を。

 そしてまたある者は歓声を。

 というか、皆歓声しか上げていない。

 そしてとうとう……。

 周りの冒険者達が俺達を遠巻きに見守ってくれるなか。

 

「お待たせしました。サトウカズマ様に、めぐみん様のパーティーですね?」

 

「「はい」」

 

「まずは、おめでとうございます! こちらが報酬金の六十万エリスです!!」

 

 一瞬場が歓声に呑まれかけたが片手を上げる事で黙らせる。

 そうだ。油断するな。

 あれだけの大きいクレーターを作ったのだ。

 天引き額はそれこそ百万エリスを超えるかもしれない。

 ごくりと喉を鳴らす中……男性が口を開けて。

 

「ですが、何時ものようにめぐみん様がクレーターをお作りになったので差し引きさせて頂きます。……直径約二十八メートル、深さは約二十五メートルです。その金額が、四十万エリス。……以上、合計金額二十万エリスになります」

 

 クレーターから大穴になるとか……。

 爆裂魔法恐るべし!

 金貨が入った袋を渡してくる男性職員にお礼を言いながら貰い。

 俺はめぐみんと頷きあってから周りの冒険者に向かって叫んだ!

 

「今回の収穫は大成功だ!」

 

「おぉおおおおおおおおおおおおお!」

 

 結局一人当り十万エリスだが、思ったよりも差し引きされなかったので良かったと言えるだろう。

 それに地球にいた時はそんな大金貰った事もなかったのだ。

 

「よしめぐみん! 今日の夕飯は豪華なものにしようぜ!」

 

「はい! 私的には肉が食べたいです!」

 

 俺達は笑いながら冒険者ギルドを出ていく。

 今日はアクアやダクネス、クリスも誘うかと思いながら。

 強いモンスターが闊歩する冬はまだ先だ。

 今回支出された額は少しばかり惜しいが、すぐに巻き返せるだろう。

 

 そんな俺の考えが間違いだったと気づくのは一週間後だった……。








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