チノの旅   作:ウボァ(ヽ´ω')
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やっぱり……昨日はダメだったよ……

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注意)今回視点がコロコロ変わります。


第4話

 体中に痛みが走り、俺は意識を覚ました。最初に感じたのは、何故俺が生きているのかという事だ。俺は確かに死ぬはずだった。一瞬ここはあの世なのかとも思ったが、両眼の空洞感と全身の痛み、それが現実である事を主張する。

 ひとまず状況を確認していく。といっても何も見えない漆黒の中だ。手で自分の体と周囲の感触を探るしかない。動かせる手は右腕だけ、その右腕も動かすだけで胴体にまで軋む様な痛みが響く。

……布の上に寝かされ、処置も施されている。敵方に捕まった訳ではないのか?いや、希望的観測過ぎるな

 人は視覚からの情報に頼り過ぎている。それは忍者とて変わらない。情報の八割強を視覚から得ている。それを失った今、他の感覚を研ぎ澄まさなければならない。

 嗅覚で土の匂いを感じた。耳は特に何も聞き取れない。人の声も風の音も拾い取れない。肌も風を感じることは無く、あるのは包帯の布の感触だけだ。

 土の匂いから外かと思えば、風を感じず、人の気配も無い。……情報が少な過ぎる。他には何かないかともう一度右腕を動かす。先程より遠くを触るため、痛みを我慢し腕を伸ばす。

 すると先程感じなかった感触を感じる。それはまるで綺麗な繊維。そしてそれが球体を包んでいる。それを撫でるのが心地良い。

 「……人の頭撫でて楽しいかな?」
 「うぉっ?!痛っ!」

 驚いた。心臓が跳ねた。それに連動して全身に痛みが走る。聞こえてきたのは幼い女の子の声。という事は今まで俺は女の子の髪を撫でていたのか?

 「ふぁ~〜、おはよう。ようやく目覚めたね。気分はどう?」

 女の子は欠伸をすると俺に挨拶した。もしかすると彼女は今まで寝ていて、それを俺は起こしてしまったのか?いや、今はそれよりも……

 「俺を助けてくれたのか?」

 彼女の質問の返答になってないが俺は尋ねるしかなかった。今の状況を早く把握する必要がある。……決して今さっきの行為を流そうとか思ってないぞ。

 「焦らない焦らない。全部説明してあげるから」

 彼女に宥められる。この様子や雰囲気からやはり敵ではないのか。……仮に敵だとしても、今の俺に抗う手段はない。出来る事といったら、舌を噛み切って死ぬ事だけだ。

 「さてっと、まずは自己紹介だね。私はチノ。どこの国にも里にも属していないから安心しなよ。もちろん野盗とかでもないからね」
 「……本当か?」
 「本当だよ。まぁ、証明は難しいけどね。アンタの症状は全身を強く打った事による骨折や脱臼。内臓も衝撃でダメージがあったよ。両眼は言わずもがな。すぐに助けたから間に合ったけど、少し遅れたら手遅れだった」

 全身の痛みがその症状を証明していた。だが、それよりも気になる事がある。

 「……すぐに助けたのか?」
 「うん」
 「俺が落ちるところを見たのか?」
 「うん、それがどうしたの?」

 おかしい。あんな時間にたまたまあの場所にいるのは考えられない。崖上の森ならともかく、崖下の川にいるのは不自然だ。……何かの任務でもない限り。もしくは、俺やイタチを追跡してでもいない限り。

 「……俺の後をつけてきたのか?」
 「つける?どういう事?」
 「そうでもないと、あの場所にいる理由がわからない」

 「あ〜……そういう考えになっちゃうのか」

 少し雰囲気が変わった。やはり何か隠しているのか。いざという時のために、今一度覚悟を固める。一回死んだようなものだ。もう一度くらいわけない。

 「私はね……未来がわかるんだよ」

 予想だにしない答えに、俺の覚悟や警戒心はどっかに行ってしまった。


◆◆◆◆◆◆◆


 「私はね……未来がわかるんだよ」

 私はシスイの問いにそう答えた。何故あそこに私がいるか、そこまで考えが及んでいなかった。まぁ、元々シスイにはある程度の事を伝える予定だったので良いかな。

……それにしても看病で疲れて、そのまま寝ていた私を無理矢理起こすなんて酷い

 「……冗談はよしてくれ」
 「まぁ、信じないだろうね」
 「当たり前だろ」

 むしろ信じられたら怖い。この時のために自分の設定は考えている。自分は違う世界から転生してきたと言うのはさすがに信用されないからね。自分で作った新しい設定もだいぶ無理矢理だけど。

 「信じる信じないは勝手にしていいよ。……私はたまに予知夢を見ることがあるんだ。理由は私にもわかんないけどね。アンタを助けたのは予知夢を見たからさ。アンタが死ぬ夢をね」
 「予知夢……ハッ、本当に俺の夢を見たとでも?」

 シスイは鼻で笑って信じていない事をアピールしてくる。まぁね、信じないよね。妙木山の大ガマ仙人でもないただの人間だからね。

 「なら、詳しく言ってあげようか。……アンタはうちはシスイ。うちは一族一の手練。うちは一族のクーデターを止めようと自身の万華鏡写輪眼、『別天神(ことあまつかみ)』を仕掛けようとするも、ダンゾウに邪魔され失敗。同時に片眼を奪われる。うちはイタチに残りの眼を託し、イタチに万華鏡写輪眼を開眼させる為、川に身を投げた……でしょ?」

 私の原作知識を聞いたシスイの雰囲気が変わる。先程とは違い多少動揺、そして私を疑っているようだ。

 「……どこまで知っている?」
 「……信じるかい?」
 「いや、今の話は俺を監視していればわかることだ。別に予知夢じゃなくてもな……ただ」
 「ただ?」
 「もし仮に未来を見たと言うなら……この先どうなる?里と……うちはは」

 私は口を噤んだ。言っていいものか。それともわからないと答えるべきなのか。それもあるが、一番はこのあとの惨劇を伝えるのに躊躇いがあるというのが正しい。

 「……聞いてどうするの?」
 「言えないのか?」

 答えなかったら私は信用されないよね。暗に、お前は予知夢なんて見てないって事になるし。ただ、言ったとしてももうシスイに出来ることは無い。今からうちは滅亡までに身体は元には戻らない。

 「私が教えても、もうアンタにはどうしようもないよ。……それでも良いの?」
 「あぁ、覚悟ならとうの昔に出来ている」

 そりゃあそうだよね。親友の父親を幻術に嵌めようとしたり、自ら死を選んだりなんて並の覚悟じゃ出来るもんじゃない。……仕方ないかな。

 「うちは一族は二人を残して滅亡。それが事の結末だよ」
 「………イタチとサスケか?」
 「ご名答。よくわかったね」
 「そうか……あの二人は生きれるのか」

 まるで安堵する様に言葉を漏らす。本当に二人の事を大切に思っているようだ。一族が全滅するというのに、二人が生きているだけで安心している。

 「……信じるの?」
 「もっと詳しくわかるか?」

 むぅ、さっきまで信じようとしてなかったくせに。ていうか私の質問に質問で返すのはそろそろやめてくれないかな。

 「……三代目が和解策を模索しようとするけど、裏でダンゾウがイタチに二つの選択肢を与える」
 「ダンゾウがイタチに?」
 「そう。一族と共にクーデターを起こすか……弟の身を保証する代わりに、一族全滅に協力するか。この二択をね」

 本当に嫌な二択だ。イタチの場合ほとんど一択みたいなもの。原作では多少悩んでいたようだけど。

 「……イタチは……アイツはやるだろうな。サスケの為なら」
 「うん。うちは一族の名誉の為、木ノ葉の為、そして弟の為、イタチは自分の手で一族の歴史に幕を降ろす。汚名と憎しみを背負うことでね……ここまでが、今回見た予知夢の内容」

 しばしの沈黙が隠れ家に漂う。もう、こうなるってわかってたから言いたくなかったのに。

 「そうならない可能性は無いのか?」
 「もちろん無いとは言いきれないよ。私がアンタを助けて未来が変わってしまったかもしれないからね」

 
◆◆◆◆◆◆◆


 この少女の言っている事を全部信じる訳では無いが、ここまで何の根拠も無く言っている様子では無い。根拠があるか、それとも予知夢なのかはわからないが、可能性の一つとしてありえる未来だ。それもかなりの現実味を帯びた。

 特に三代目の裏でダンゾウが動く事。これは自分でも納得出来た。ダンゾウはなりふり構わず自分のやり方で里を守る気だ。アイツは初めからうちはを滅ぼすつもりだった。イタチに脅迫じみた任務を与えてもおかしくない。

……イタチ…お前は茨の道を進むのか。全てを背負って

 俺はイタチとサスケ、あの兄弟の為にクーデターなんて馬鹿な真似を止めようとした。例えどんな手を使ってでも。そしてそれであの二人に恨まれたとしてもだ。

 だが、失敗した。その尻拭いがイタチに回ってしまった。おそらくこの少女の言った未来通りなら、イタチは木ノ葉を抜けるだろう。サスケはイタチを憎むだろう。

……もう、あの二人が笑い合う未来は来ないのか

 そう思うと急に自分が情けなくなる。歯を噛み締める。拳を血が滲むほど強く握る。力むと体のあちこちが連動して痛む。でも、どんなに痛みが増そうとも、この憤りは消えてくれない。

 強く握り締める手に、柔らかな感触が乗る。少女の手だ。優しく触れられて、拳の力が抜けていく。

 「……あまり自分を責めるんじゃないよ。今は体を回復させる事だけを考えないとね」

 そう言われると体中から力が抜けていく。どうやらこの体は意識を保つのも難しいようだ。……後はイタチに任せるしかないのか。


◆◆◆◆◆◆◆


 一度目覚めた後、シスイは起きる事は無かった。数日間ひたすら眠り続けている。傷ついた体が治癒に集中しているのだろうか。もしくはこれからの現実から目を逸らしたいだけだろうか。

 そして今日はうちは滅亡の日。日付は調べなくてもわかった。今日はそれはそれは綺麗な満月の夜なのだ。

 私は動きやすく目立たない為に、暗部のような服装だ。ついでに暗部や根が使うような面も装着している。日が沈む頃、うちは一族居住区に近いビルの最上階から、コソコソ様子を窺っている。

……ノリさんがいないのが超怖い

 シスイを匿っている為、隠れ家には私かノリさんの監視がいないといけない。隠れ家が木の葉の忍に見つかるかもしれないし、シスイの容態が悪化するかもしれない。無いとは思うが、シスイが目覚めて出て行ってしまうかもしれない。

 本当はノリさんに突入させて、逆口寄せの流れで安全に潜入したかったが仕方ない。ここは私がビシッと……嫌だー行きたくない。死にたくない。



 その時が来るまでは不穏な程静かだった。大きな満月がうちは最期の舞台を照らす。……隠密ミッションには最悪の夜だ。新月の日に変えてくれないかな。

 今回の目的はシスイの代わりとなる写輪眼。一番良いのはイタチの父親、うちはフガクの万華鏡写輪眼。だがそれはかなり難しい。うちはフガクの家は居住区の中央。それに殺されるのは最後の方だ。そこまでイタチとオビト、さらにはサスケに見つからないようにしなければならない。……うん、無理。

 普通の写輪眼が手に入ったら撤退しようかな。万華鏡写輪眼は運が良ければ程度で。写輪眼も一部の人しか持っていないからね。死体の一つ一つの眼球を確認していく必要がある。


 しばらくするとイタチが暗部服で居住区の入口に現れた。もうすぐ始まってしまう。転生してからの人生で初の修羅場に鼓動が早くなる。誰にも見つからないように、建物の隙間に降り立つ。

 「『土遁・土竜隠れの術』」

 チャクラによって身に触れている地面を細かい砂に変え、地面を進む術。潜入や逃走に便利な術であり、作中ではデイダラや、彼と組んでいた時のトビが使用していた術でもある。感覚的には地面を泳ぐ感じ。チャクラコントロールを乱せば、地面で溺れるという珍な体験をすることが出来る。

 この術を使い、うちは一族の居住区に侵入する。地面の下に隠れ、ただその時を待つ。




 静寂を切り裂くように、女性の悲鳴が上がる。それを皮切りに老若男女様々な悲鳴が地上から聞こえ始めた。しばらくそれを聞きいていると、徐々に悲鳴が遠くなる。

 私は息を潜め、地上に出る。改めて感じる外の空気は、術で潜る前と全く違うものだった。濃厚な血の匂い。そして全身の毛が逆立つような強い殺気。

 初めて近くに感じる死の気配。私は震える手足で最初の死体へと駆け寄った。



最後まで読んでいただきありがとうございます!


※タグにいろいろ追加しました。特に変化はありません。保険ってやつですね。







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