チノの旅   作:ウボァ(ヽ´ω')
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第7話

 「ハァ……ハァ…………酷い目にあった」
 「ごめんて。……まぁ良いリハビリだと思って、ね?」

 なんとか父を止めることができた。部屋の内装と、病み上がりのシスイの体力を犠牲に。……燃えたり、濡れてないだけマシかな。

 「人工呼吸とはいえ……チノのファーストキスが〜……」

 なんで私より傷ついてるの。ていうか他人に言葉にされると恥ずかしいからやめて。ていうかシスイ相手に息上がってないとか、強すぎでしょ。

 座り込み肩で息をする青年と、うずくまり暗いオーラを発する壮年。……うん、そっとしておこう。部屋片付けようかな。


 多少の時間を掛け、シスイは息を整え、父は心を整え、私は部屋を整えた。父はそのまま部屋を後にする。私たちに言葉を残して。

 「はぁ……まぁ、写輪眼も見えたし、今日のところは許してあげるか。……それにしても血之池とうちはが手を取り合う時が来るとは、わからないもんだね〜」

 まためんどくさい爆弾を落として行った。説明しなきゃいけないじゃん。シスイが話に興味持った感じになってるし。

 「ん?どしたの?」
 「さっきのチノの父さんの言葉って……」
 「……血之池はうちはに追い込まれたんだ。……血継限界の一族にはよくある話だよ」

 その後、簡潔にだが血之池一族の話をした。シスイは話を聞いて申し訳そうな顔をするが、それに対して私が申し訳なくなる。せっかく黙ってたのに父のおかげでこの場の空気は気不味いものとなった。

 「うちはにそんな過去が……」
 「うちはだからこそだよ。栄光はそれまで倒してきた敵の量によって決まる。……うちは一族は強かった。それだけの話さ」

 栄誉や名誉の裏には、それで補いきれない犠牲もある。忍の世界では当たり前の事だ。だが、仮初の平和で栄光を支えた力は、畏怖の対象になってしまった。こう思うとやはり今の世界は血継限界の生きにくい世界だ。

 原作では血継限界を持つ忍が戦争で活躍したり、里の長になっている場面があったが、あんなのほんの一握りだ。現実は人身売買の恰好の獲物にされ、身内からも遠ざけられる。中には親族がおらず、それ故に自身の異能をコントロールする方法がわからずに、やむを得ず死を選ぶ者もいる。

 この屋敷で働く子たちの大半の理由がそんな感じだ。虐待に無理な労働。厄介払いに売られたり、両親を殺され辛くも逃げてきた子。自分の異能で家族を殺してしまった子。この屋敷で飼われる事に感謝するほどの仕打ちを受けた子もいる。……そう考えると私はなんて恵まれているのだろう。

 救ってやりたい。それだけが私の原動力だ。


 


 「じゃあ、二人とも気をつけて。シスイ君、チノを……娘をよろしく頼むよ」
 「はい、必ず」

 あれから数日、私とシスイはそろそろ出発する事にした。というのも、これからは父のお得意先の国や組織に武器を運ぶついでに人脈を広げていく。

 私たちは傍から見ると完全に商人だ。笠を被り、大きな背負い箪笥を持っている。さらに用心の為に特殊な変化の術も使っている。

 血之池一族の秘術の一つ、『血潮変化の術』。血之池一族の特殊なチャクラを血液中に通し、自身や対象の体を変化させる術。自身の体を全て変える『変化の術』と比べてバレにくく、長時間使用してもチャクラ消費が少ないのが特徴だ。ただ体を全てを変えるのではなく、元の体を変化させる術の為、使用直後と解術直後に多少の違和感を感じるのが欠点だ。

 箪笥の中は刀やクナイ、手裏剣などの忍具が入っている。旅をしながら客の元に赴き商品を売買し、各地にある父のアジトで商品を補充し次の場所へ。その際に相手の知りたい事を聞き、それを調べて情報を売りつける。

 重いので口寄せで運んではダメか聞いてみたが、「既に第三者に契約されている武器なんて欲しい?」と一蹴された。おかげでこの大荷物だ。

 「じゃあ、行ってきます」

 父にそう言うと彼は無言で小さく手を振る。その眼がうるうるしている。今生の別れでも無いのに大げさだなぁ。



 霜隠れの里から出て、霜の国の中を西へ歩く。日程は今から二日掛けて湯隠れの里に向かう。今背負っている忍具の多くがそこの忍からの注文だ。

 「湯隠れの里か……平和主義を掲げていたはずだが」

 シスイがそう呟く。湯の国は先の大戦以降、国をあげての平和主義を掲げている。武力を持つことを極端に避ける様に軍縮を進め、豊富な自然と温泉などの観光資源を用いて国を運営している。

 だからといっても忍がいないわけでもなく、隠れ里も存在する。原作で出ている忍としては暁の飛段がいる。しかし周りの国や里からは忍の練度が低いと評されてもいる。別名、戦を忘れた里と呼ばれている。

 「まぁ、都合があるんでしょ。今の私たちはただの商人。過度な詮索は御法度だよ」
 「わかっている。交渉はお前に任せる」

 お客様は神様だ、などと言うつもりは無いが、揉め事は無い方がいい。これは自分の客ではなく父の客だ。人脈を借りる以上迷惑をかける訳にはいかない。だが、父は裏の大物。もちろんの事、犯罪組織や悪どい人物にも商品を卸している。その中には木ノ葉の里を狙う者のいないとは言いきれない。シスイには耐えて貰わなければならない事もいずれあるだろう。


 二つの宿場町を越えて湯隠れの里にたどり着いた。そのまま里の中央に足を進める。さすが湯の国だ。二つの町でもそうだったが、あちこちに足湯や温泉施設があり、至る所で湯煙が立ち上っている。

 その中には飲泉所と呼ばれる所もあるのが湯の国独特の光景だろう。この国の人々は普段から温泉を飲むのだ。温泉の効能によってはそのまま薬として飲むこともあるらしい。その為の専門職とされる温泉医などもいるらしく、医療に携わる者としては少々興味をそそられる話題だ。


 里の中央の建物に着く。大きく湯と書かれた看板の建物には多くの忍が出入りしていた。その中で一人をずっと見ている男がいる。壮年位の忍者だろうか。約一分ほどのこちらに視線を向けている。

 その者がこちらにに向かってくる。恐らく私たちの依頼人かその使いの者だろう。私たちの大荷物を見て判断したに違いない。

 「失礼、あなた方が御屋城様の使いの方でしょうか?」
 「はい、という事はあなたが依頼された方ですね」

 普段より圧倒的に大人びた声で返事をする。といっても年齢を考えると普段より年相応になっただけだ。

 「すぐに気づけなくて申し訳ない。前回の方と違っていたもので」
 「あぁ、そういう事でしたか。私どもは御屋城様の部下ではないんですよ」
 「どういう事でしょうか?」

 当たり前の質問に私は用意していた台詞を思い出しながら伝える。これからしばらくはこんな感じだ。

 「私どもは御屋城様に御贔屓にさせて貰っている情報で商いをする者です。今回は御屋城様の都合が悪いそうなので、代理として納品に来ました」
 「そうですか、それではこちらに」

 男の案内で建物の中に入り、応接室らしき場所に通される。そこで父から預かったメモ通りに商品を渡していく。その多くはクナイや手裏剣、起爆札や煙玉といった所謂基本的な忍具だ。わざわざ武器商人に買い付けるような物ではないはずだが。

 「わざわざ申し訳ない。この程度の道具くらい、本来自身の里で調達するべき物なのですが……」
 「いえいえ、これも仕事ですから」

 営業スマイルで決まり文句を言う。だが、相手方の憂い表情は治らなかった。これなら理由を聞いても当然の流れになるだろう。

 「何か訳ありの様ですね。良かったらお聞きしても?」
 「……実は、また軍縮が進みまして───」

 聞くと湯隠れの里の上層部が再び軍縮を始めたそうだ。それに伴って、忍具を作る職人やいつも卸している商人が見切りをつけ湯隠れの里から撤退。まぁ、市場が小さくなるので商人の選択に間違いは無い。だが忍側は急な撤退に対応できず、今はクナイや手裏剣は中古品を使い回し、消耗品は節約しているらしい。それで限界が来てどこの国にも組織にも属さない武器商人の父に話が回ってきた様だ。ただ、一つ気になるのが、

 「あの〜、私が聞くのもあれですが、情報で商う者にそんな話して良いんですか?」
 「構いませんよ。どうせすぐにバレる事です」

 男は疲れた笑みを浮かべてそう話すと、思い出したようにこちらを見る。

 「ところで、あなた方は情報を取り扱っているんですよね?」
 「えぇ、まだまだこれからのペーペーですけどね」
 「たまに頼りにさせて貰っても構いませんか?」
 「えっ?……それは構いませんが、良いんですか?こんな初対面の私どもで?」
 「御屋城様が御贔屓にされているなら多少信用できます。それにこれから軍縮が更に進むと諜報も難しくなるかもしれない。そう考えるとここで一つ縁を結んでおくのも悪くないと思いましてね」

 父は偉大なり。こう話がポンポン進むとは思わなかった。湯隠れの里の軍縮状況もあってだが、人脈を広げる事ができた。次の所もこうだと良いのだが。


 湯隠れの里から出て、私たちは次の場所にすぐに赴かず進路を変えた。湯の国に来たので個人的に行っておきたい場所があった。私の一族が暮らしていたであろう地獄谷だ。

 「ごめんね。寄り道して」
 「いや……俺も見ておきたい」

 私の一族とシスイの一族。血之池とうちは。その過去がそこにはあるはずだ。もちろんどんな所かは原作で知っている。だが、やはり一度見ておきたかった。

 地獄谷はへんぴな場所にあり、本来は地元の者でなければその場所はわからない。それに地元の人は地獄谷について語るのを拒むらしい。今ではそこは禁忌の土地として伝わってた。だが、私の父はその場所に住んでいた。道は簡単に教えてくれた。本人はもう一度も戻ってないそうだが。


 丸一日かけて地獄谷にたどり着いた。湯の国の各地で見たのとは比較にならないほどの煙が立ち上っている。そして濃厚で噎せ返るほどの臭気。草木の気配はほとんど無く、想像より広かった谷は茶褐色に染まっていた。

 二人とも言葉が出なかった。とてもじゃないけど人の生きていける場所ではないことは明らかだった。こんな所で十数年前まで私の一族は暮らしていたのか。

 「チノ……これ」

 シスイは視線で赤い池の中を示した。その池のそこには人の骸骨が沈んでいる。人の暮らしていた証拠だ。父の言葉を思い出す。

 『あらぬ疑いをかけられ、うちは一族によってこの場所に閉じ込められた。うちは一族に話し合いの場を求めても、彼らは聞く耳は持たなかった。僕たちの血龍眼は、三大瞳術と呼ばれる白眼、写輪眼、輪廻眼と比べられ、バカにされていたからね。うちは一族は血之池を見下してたのさ。
 だからあそこで暮らすしかなかった。臭気に耐え、煮えたぎる湯を飲み、空飛ぶ鳥を撃ち落とし、僅かに生えた草を喰らって生き延びた。争いに疲れた一族は外の世界への渇望すら失い、谷で細々と暮した。
 ……だが、そんな小さなコミュニティでは争いごとが生まれやすい。長年共に肩を寄せ合い生きてきたというのに、小さないざこざが積もり重なり憎しみ合って最後は同士討ち。
 僕だって最初はその流れを止めようと思ったさ。でも、妻が巻き込まれ死んだ時点で、色んなことがどうでもよくなった。気がつけばどうして自分はこんな所に縛られているのか、こんな一族の為に苦しまなくてはならないんだ。……そう思うと勝手に体は動いた。結果、僕は一族を終わらせた。僕とチノを残してね』

 谷の最奥に小さくボロボロの祠がある。そこには雑だが墓があった。誰の物でもない、父が一族の為に作った簡素な墓だ。そこでただ手を合わせた。


 「見に来て良かったのか?」

 帰り際にシスイに言われた。来た意味はあった。ここの赤池は血之池の力を引き出すのに適した、鉄分を多く含む池だ。これを私の口寄せで呼び出せば、戦闘でかなり役に立つはずだ。

 そしてもう一つ。ここは私の決意を固めてくれた。これからの私がする事、辛い事苦しい事はあるだろう。多くを犠牲に目を瞑り、多くを見捨てていくはずだ。でも、ここの事を思い出せば心が揺るぐ事は無い。

 私の一族のような悲劇が起きない世界へ。国や里、人種問わず優しい世界へ。それまではただ忍び耐えよう。どうせ第四次忍界大戦までの我慢だ。この腐りきった世界が緩やかに変化できるように、死力を尽くそう。それが前世の記憶を持って生まれた私の義務だと思うから。



これで原作過去は終わり……だと思う。次はたぶん原作スタートまで飛ばすつもり……まだ予定だけですよ。







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