偽物の英雄王〜inオバロ〜   作:蒼天伍号

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ナザリックへの認識がふわっふわし始めたので改めて読み直して「だいたいこんな感じじゃろ?」と改めてフワッフワした認識を得て書き上げた一話。

あと、ナーベ、無駄に虫の知識豊富過ぎない?
おじさんは虫とか興味薄いのであんまり種類に詳しくない。



考察と救済

 アインズ・ウール・ゴウン。

 

 

 その名はかつて、大人気ゲームとしてDMMO-RPG業界に君臨したユグドラシルというゲームタイトルにおいて知らぬ者のいないギルドネームだった。

 名声……というよりは悪名の方が圧倒的だったが、ギルドの方針からすればそれも致し方ないこと。寧ろ、悪としての名が高まるほどにギルドメンバーたちは沸き立った。

 

 というのも、このギルドは『悪』のロールプレイを基本とする変わり種だったからだ。

 PK(プレイヤーキル)はお約束として、そのほか様々なことをしでかしてきた。

 もちろん、規約違反とかそういう不粋な……要は小悪党じみた真似などはしていない。

 

 もっと、偉大な、誰もが畏怖する『悪』であれ、と活動してきた。

 

 

 ギルドホームにして、ユグドラシル屈指の不落要塞として名高いナザリック地下大墳墓は過去、幾度となく侵攻に晒されながら一度として陥落することはなかった。

 ユグドラシル始まって以来の大軍勢とされる、千五百人による討伐隊が編成された際にも、なんとか首の皮一枚で拠点を守り抜いた。

 全十階層のうち、八階層まで侵攻を許したが、その八階層に配置されたナザリック最高戦力によって討伐隊の猛者たちを蹂躙した様は伝説として長く語り継がれている。

 

 他にも、ユグドラシル本来の楽しみ方である冒険だっていくつもこなしてきた。

 ギルドの象徴たるギルド武器を作る時に揉めたりもした。

 仲間同士で喧嘩することだって少なくなかった。

 それでも、結局は仲間。なんだかんだ言いつつ仲良くやってきた。

 

 

 

 

 

 楽しかった。

 

 そう、楽しかったんだ。

 

 たとえ、みんなが居なくなっても、だんだんと、仲間たちが引退していっても。

 それでも、いつかまた帰ってくるって。そう、願っていたんだ。

 

 たとえ、一人になっても。

 ここだけは守り抜くって、そう、決めたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モモンさ……ん。如何されましたか?」

 

 ふと、凛とした綺麗な女性の声が聞こえてきた。

 

「む。いや、問題ない。少し、考え事をしていただけだ」

 

 というよりは物思いに耽っていたというべきか。

 我ながら気を緩めすぎたと思う。軽く寝ていたんじゃないかというほどに。

 アンデッドに睡眠など必要ないというのに。

 

 意識を現実に引き戻し、改めて眼前に広がる光景に意識を向ける。

 ファンタジー系のアニメや漫画でよく見るような街並み、端的に述べるのであれば中世ヨーロッパ風という言葉が驚くほどしっくりくる。

 

 都市エ・ランテル。

 リ・エスティーゼ王国という国の領地にあたる都市であり、帝国、法国と隣接する関係から交易都市としての面も持つ。

 また、王国と現在戦争中である帝国からの侵攻に備えて幾重にも囲むように建ち並ぶ城壁からは城塞都市としての姿もうかがえる。

 私、冒険者モモンが活動する拠点でもある。

 

 

 

 異世界転移。

 ユグドラシルのサービス終了に際して、突如としてナザリックごと俺・モモンガはこの世界に飛ばされた。

 

 転移当初、あまりにも現実離れしたこの現象に、即座に状況が飲み込めず色々と遠回りをしてしまったと思う。

 とはいえ、真っ先にナザリックの現状と守護者の状態を確認した俺は、続いて外界の調査に移った。

 

 

 そこで目にしたのがカルネ村と呼ばれる農村とそれを襲撃する騎士たち。

 まあ、その件で一悶着あったりもしたがおかげで多くの実験を行うことができたし、貴重な情報源も幾つか確保できた。

 ただ、その情報源を簡単な質問だけで失ってしまったのは痛恨の極みであったが。

 

 何はともあれ、外界・つまりはこの異世界の情報をもっと集めるために現在俺は冒険者モモンとして活動を始めていた。

 並行しての計画は幾つかあるが、ここまで順調に進んでいると見ている。

 ただ、最終的な目標はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今は、銀級冒険者『漆黒の剣』と共に受けた薬師ンフィーレア・バレアレの依頼を終えての帰路。

 二泊三日の旅路の最中には実に様々な発見と出来事があったが、ンフィーレアという少年についてはかなり有益なものを得たと思う。

 次点で、まあ……とある魔獣を従わせることに成功したことか。

 

 いや、今はその話はどうでもいい。

 それよりも、道中で『漆黒の剣』メンバーのニニャと気まずい空気になってしまったことが汚点として残った。

 幸い、ンフィーレアのおかげで少しだけ改善もしたが、やはり自らの癇癪の所為で余計な手間を増やしてしまったのは痛い。

 今後も気をつけてーー

 

「なんなの、あの魔獣は!?」

 

「あのような深い知性を感じさせる獣を従わせるとは……いったい何者なんだ」

 

 ……やめろ。

 

「きゃー、すてきー!」

 

「あんなすごそうな魔獣を従わせてるんだ、どこぞの偉い冒険者様なんじゃろなぁ」

 

 やめてくれ。

 

 

「流石です、アインズ様。下等生物(イモムシ)どもは皆、賞賛の念を向けております。……御身が至高にして偉大であるという事実に今更気付くというのも愚かではありますが、所詮は下等生物(ミジンコ)

 それも致し方ないのかもしれませんね」

 

 トドメとばかりに相棒ナーベ……本名ナーベラル・ガンマが崇拝するかのような純粋な瞳で語ってきた。

 

「……モモン、な?」

 

 モモンガは深い溜息を吐くと共に深く肩を落とした。

 しかし、観衆の目があることを思い出しすぐに、なるだけ凛々しい姿を演出する。

 

 彼がこうまで精神的ストレスを感じているのは、他でもない。彼が今現在騎乗している魔獣の形状が問題であったのだ。

 

 

 

(森の賢王とか言うから、どれだけ知性溢れるかっこいいモンスターなのかと思えば)

 

 巨大ジャンガリアンハムスター。

 モモンガの乗る魔獣はまさにこの言葉がぴったり当てはまる外見をしていた。

 正確には尻尾が蛇であったりと細かい相違点はあるものの大差ない。

 

 つぶらな黒い瞳は愛らしく、ふわふわそうな毛に覆われた肉体は饅頭と呼ぶに相応しい。

 おまけに声まで可愛いとなれば、これはそもそも森の賢王というネーミングに対する侮辱にも近い。有り体に詐欺である。

 

(そんなモンスターの上に全身鎧のおっさんが乗っかってるの図)

 

 自分で言って悲しくなるモモンガ。

 しかしながら、誰一人としてその構図に嘲笑を向けるものはいない。それもまたモモンガが複雑な心境に至る原因でもあるのだが、彼はこれ以上のストレスから逃れるためにそれ以上この件について考えることをやめた。

 そもそも、過去を思い出したり、これまでの道中を振り返ったのだって現実逃避の一種だ。

 

 それからモモンガは、冒険者組合の建物に到着するまでの間、森の賢王ことハムスケのことを完全に認識の外へと置くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、申し訳ないですけど、薬草を運んでもらえますか?」

 

 エ・ランテルの冒険者組合へと到着した一行は、そこからモモンたちと漆黒の剣の二手に分かれた。

 理由は冒険者モモンが屈服させた魔獣、森の賢王ことハムスケの登録を組合で行う必要があったためだ。

 

 戦闘においてはモモンが圧倒的な活躍を見せていたので、せめて薬草などの荷物を運ぶくらいは自分たちがやりたい。と漆黒の剣が申し出たこともありこのような分担になった。

 モモンとしては断る理由も無かったために素直に了承し、先行した漆黒の剣一行がこうして荷物運びの雑務をこなす結果となる。

 

 

 注意深く薬草の束を部屋の中に置き、やがて全ての荷物を運び終えたところでンフィーレアから声がかかる。

 

「お疲れさまです! 果実水が母屋に冷やしてあるはずですから、飲んでいってください」

 

 その言葉に、額に僅かに汗を浮かべたルクルットが嬉しそうに声をあげ、決して重くない薬草の束を運んだことにより同じく息を切らしていた他のメンバーも了承の意を示した。

 

(おばあちゃん、いないのかな?)

 

 面々を母屋へと案内する最中、ンフィーレアはふとそのようなことを考えた。

 彼の祖母は、結構な年齢であるにも関わらず健康そのものでどこも悪いところはなかった。

 ゆえにこれだけ物音を立てて気が付かないはずがない。一声かけにくるのが普通だ。

 

 しかし、祖母リイジーは孫のンフィーレアと同じくポーション作りに熱中すると周りが見えなくなるタチであり、その場合は全く彼らに気付いていない、という可能性もなくはなかった。

 

 それゆえに特に深く考えることはなく、彼は改めて面々を母屋へと案内……しようとして、唐突に目の前の扉が開かれた。

 

「はーい、お帰りなさーい」

 

 そこに立つのは女。整った顔立ち、整った体型、見る人の大半が美女と言うであろう女が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後の祭りだが、やはり『絵画に興味がある』というのは苦しかったか?」

 

 実に一時間半もかけてようやく登録を済ませたモモンは少し疲れた声でそう述べた。

 

 なぜ、時間がかかったのかといえば登録に際してハムスケの写生をお願いしたからだ。いや、別にこちらからお願いしたかったわけじゃない。

 ちゃんと、魔法で瞬時に姿を登録する選択肢もあった。

 しかし、かかる魔法の費用はこちら持ちと言われ、渋々、手書きでお願いすることになったのだ。

 その際にお金をケチったと思われると、『この街で冒険者として名声を得る』という計画にも支障が出ると考え前述の言い訳を宣ったわけだ。

 

 予想以上に時間を食われたのには苦い気持ちが湧くが、どうせならここで『ある件』について考えを整理しておこうと思った。

 

「時にナーベよ、道中において彼らが度々口に出していた『冒険者』。お前はどう思う?」

 

 それは、依頼の道中、同行した漆黒の剣の面々が時折口に出していたとある冒険者チームのことだ。モモンが力を見せるたびに、悪く言えば比較するように話題に上がったいた。

 

「チーム『黄金』とか呼ばれている下等生物(オケラ)のことですね?」

 

 ナーベの発言に「いちいち虫とかの名前考えながら発言するのめんどくさくない?」と一瞬考えたモモンだがすぐにそれを頭の片隅においやる。

 

「そうだ。聞けば、最近、この街に突然現れた者たちだと言う」

 

 時期も、自分たちと近い。

 

「そして、驚くほどの速さで昇格し、今やオリハルコン級にまでなったらしい」

 

 それに見合うほどの強さも当然、待ち合わせているらしい。

 

「……となれば、もしやーー」

 

 モモンの語りに、ようやく何が言いたいのかわかったナーベはピクリと眉を動かして声を出す。

 

「そう、その冒険者チームはプレイヤー(私と同じ)である可能性がある」

 

 突拍子も無い考えかもしれない、しかし、聞けばその者たちも自分たちと同じくらいには世間知らずであり、強さも圧倒的であったという。

 また、四人のメンバーそれぞれがこの辺りではまず見ない出で立ち、顔立ちをしていたことも先の推察を補強する要素となり得る。

 

 ……そして、定かならざる事とはいえ、漆黒の剣の面々が言うには『黄金のリーダーはモモンよりも強い』らしい。

 

下等生物(ゴミムシ)が戯言を……偉大なるアインズ様が魔法を使われれば、黄金とかいう下等生物(下等生物)など一秒と保たないでしょうに」

 

 彼らの発言を思い出したナーベが不機嫌そうにブツブツと呟く。

 

「うん、もういいや、アインズ様で」

 

(それに、ついに下等生物ってモロに言っちゃったし)

 念のために下級の防音魔法効果を持つアイテムを発動させといて正解であった、と考えると共に相棒のポンコツ具合に軽く目眩を覚えながらもモモンはさらに話を進める。

 

「知っての通り、この姿は、剣を振るう様は所詮は真似事にすぎん。とはいえ、私の膂力をもってすればゴブリンやオーガ如きは一撃で事足りる」

 

 レベルで換算してみると三十ほどか、とモモンは今の自分の対外的な強さを推し量る。

 とはいえ、漆黒の剣や他の民衆の話を聞くかぎりはそれでも充分に桁外れな強さらしい。

 すると、少なくともこの地域においては二十から十、下手したら一桁レベルの強さが関の山と見える。

 

 そのような地域にあって、モモンを凌ぐ強さの冒険者。

 それも、純粋な戦士職ともなってくると今のモモンでは太刀打ちできない可能性がある。

 

 そうなれば計画は御破算だ。

 

 仮に、その冒険者がプレイヤーではなかったとしても結局、計画を見直す必要がある。

 

 

 

「厄介な奴が出てきたものだ」

 

 計画を一から組み立てるという事態にモモンは軽くイラつきを覚えた。

 同じく新進気鋭のルーキーというのがまた痛い。ベテランであればすでに知られている強さゆえにさして話題になることもないが、ルーキーで強いともなると自分たちが活躍したところで、そのルーキーの方に話題が持っていかれる確率が高い。

 すでに、幾つもの逸話を残している点もさらに痛い。

 ついでに、無いはずの胃も痛い。

 

「とはいえ、実際にこの目で見る。もしくは会ってみないことにはなんとも言えんがな」

 

「それは……危険なのではありませんか?」

 

 確かに危険だ、しかし、伝え聞くだけでは分からないことと言うのは往々にしてある。

 というか、それを無くすため、できるだけ自らの目で確かめるために自分はこうして冒険者としてこの街まで出向いたのだ。

 それを一時の不安で覆すのは、やはり、あまり良くない傾向と言える。

 

「まあ、事前にある程度の情報は調べさせてもらうさ」

 

 情報収集は基本中の基本、それを怠る気はない。

 最終的に、この目できちんと確かめるまでがセットだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー心配しちゃったんだよ? いなくなっちゃったからさ」

 

 目の前の女はペラペラと、まるで親しい友人に語りかけるように気楽に声をかけてくる。

 陽気でフランクな美人、しかしながらどこか、彼女からは得体の知れない『狂気』が滲み出ているとンフィーレアは思った。

 というか、そもそもーー

 

「あの、どなたなんでしょうか?」

 

 彼女を、知らない。

 

「え! お知り合いじゃなかったんですか!?」

 

 あまりにも馴れ馴れしい彼女に、ペテルたちはすっかり彼女がンフィーレアの友人であるとの認識でいた。

 それゆえに、驚きの声をあげる。

 

「ん? えへへへー。私はね、君を攫いに来たんだー。

 アンデッドの大群を召喚(サモン)する魔法、

 〈不死の軍勢(アンデス・アーミー)〉を使ってもらいたいから私たちの道具になってよ。

 お姉さんのおねがい」

 

 ペラペラとまるでなんて事ないように恐ろしいことを宣う彼女から、邪悪な気配を感じ取った漆黒の剣は即座に武器を抜き、戦闘態勢へと移行する。

 それを気にせず、彼女は語り続ける。

 

「第七位階魔法。普通の人じゃ行使は困難だけど、叡者(えいじゃ)額冠(がっかん)を使えばそれも可能ーー」

 

 要するに、ンフィーレアが持つ生まれながらの異能(タレント)、『どんなアイテムも制限を無視して行使可能』という力を目当てにこの女は来たのだ。つまりは彼が狙い。

 それも、良からぬ企てを実行するために。

 

「ンフィーレアさん。下がって! ここから逃げてください」

 

 ペテルはすぐに声を上げる。

 続けて、女が自分たちを確実に殺せるほどの実力者であることを説明し、ンフィーレアを逃がすことが最善であることを告げる。

 

「ニニャ! お前も下がるのである!」

 

「ガキ連れて逃げろや!」

 

「そうです。あなたにはしなくてはならないことがあるはずです」

 

 ダイン、ルクルット、ペテルが大切な仲間へと二回目ともなる覚悟を持った言葉を発する。

 しかし、今回は然程絶望に満ちているわけではない。

 

「……それに、この街には『彼』が居ます。彼の元まで辿り着ければ、あなたたちは安全だ。

 ……私たちは最後まであなたの大切な目的に協力することはできそうにありませんが」

 

「時間くらいは稼いでやる。……今度こそ、頼んだぜ、ニニャ」

 

「みんな……」

 

 降り掛かる不運。あのアンデッドの一件からそう間を置かずして自分たちはまたしても絶望に遭遇した。

 いったい、自分たちが何をしたというのか、あるいは今まで倒してきたモンスターの怨念か?

 

 くだらない考えを即座に捨て去り、ペテルは目の前の女へと警戒を厳にする。

 

「……今度こそ、終わりであるな」

 

「まあ、なかなか楽しかったぜ。お前らとの冒険はよ」

 

「冒険、というほどの冒険が出来たかは疑問だが……まあ、俺も楽しかった。

 すまんがみんな、命をくれ」

 

 告げるペテルの声に悲嘆は無く、他の二人も希望に満ちた顔をしている。

 

「俺はもともとお前に預けてるぜ」

 

「珍しくルクルットと意見が合ったのである」

 

 覚悟を決めた面々は士気も高々に武器を構える。

 相対する女は、身に纏ったローブの中からゆっくりとスティレットを取り出す。

 

「んー、お涙頂戴かとおもったけど……なんか、気にくわない言葉が出た気がするなー」

 

 クルクルと手の中でスティレットを回しながら女は語る。

 

「安全? そもそも、逃げられると思ってる?

 バッカだなぁ……逃がすわけないじゃん」

 

 瞬間、一陣の風のごとき速さで女が突撃してきた。

 

 当然ながらこの場の誰もがその速さに反応できない。

 唯一、ペテルが、真正面から突っ込んでくる女の姿を一瞬だけ視認するに留まる。

 

 あとは、死を待つのみ。

 

 

 

 

 ーーそう思われた圧倒的強者からの初撃は、甲高い音と共に中断させられた。

 

「ッ!!」

 

 初めて驚愕の表情を浮かべた女が、自らの必殺の一撃を無効化した不粋な乱入者の姿を凝視する。

 

 その者は、小さかった。

 漆黒の剣の面々から見ればちょうどニニャと同じか、それにわずかに前後するほどの背丈しかない。

 

「……お館様の命に従い、この場にて貴殿らを助太刀する」

 

 少女の声が響くと共に、その身を包んでいたローブが一気に剥がされる。

 

「っ、あなたは!」

 

 その姿に見覚えがあったペテルは驚き、声をあげた。

 

 それに頷きで返し、少女は身に纏う“忍装束”の帯に差していたクナイを抜き放つ。

 

 かつて、甲賀忍者の筆頭として戦乱を駆け抜け、そして人知れず姿を消した伝説のくノ一。

 実在が疑問視される彼女であるがその伝説は二十一世紀まで脈々と語り継がれ、とある世界では英雄と謳われるまでになった。

 

 その模造品でありながらも、彼女は忠節を尽くす主人のためにその命を果たさんと、今、彼らの前に姿を現した。

 

「……何者だ、テメェ」

 

 自らの思い通りにいかず額に青筋を浮かべた女が、少女へと鋭い目を向ける。その声には先ほどまでの陽気な感情は無く、ただただ殺意だけが満ちていた。

 

 その様子にンフィーレア含めた面々が息を飲む中、少女はまったく気にした風もなく宣言する。

 

「不本意ではござるが、これも主命なれば。

 

 大人しく投降するがよろしい、さすればその命だけは助けよう」

 

 まあ、この場に限った話だが。

 という言葉を彼女・望月千代女は心の内でのみ述べた。

 

 

 

 

 

 

 




守護者のステを載せてみることにした。
正直、あまり細かくは考えてない奴が殆どである。


【名称】望月千代女
【異名・二つ名】戦国くノ一少女未亡人巫女(属性過多)

【役職】冥界第一階層守護、隠密情報局エ・ランテル担当課課長
【住居】お館様の寝室(事案

属性(アライメント)】悪[カルマ値:-150]

【種族レベル】
なし

職業(クラス)レベル】
アサシン:10lv
ニンジャ:5lv
御神子(ミカンコ):5lv


[種族レベル]+[職業レベル]=80レベル
[種族レベル]取得総計0レベル
[職業レベル]取得総計80レベル

【備考】
我らが生足魅惑のパライソちゃん。御御足ぺろぺろしたい。
ニンジャの取得条件を見る限り、このくらいのレベルは必要と判断したまで。結果、忍び軍団が修羅と化した。
ミカン子クラスは単純に巫女の上位互換と思ってもらって構わない。大蛇系はもちろん召喚する。
住居は寝室とあるが、やましいことは一切ない。断じて。

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