偽物の英雄王〜inオバロ〜   作:蒼天伍号

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パ「属性の数なら負けてない(たわわを見つめながら」


戦国くノ一少女未亡人巫女と漆黒聖典元第九席次

「投降……だと?」

 

 女・クレマンティーヌは理解できない、という表情でポツリと呟いた。

 

「そうだ。お館様は貴様のような輩であっても価値を見定める必要があるとおっしゃった。

 ならば、この場にて捕縛するのがよろしかろう」

 

 対して、千代女は「二度も言わせるな」という様子で返答する。

 その顔には、ただただ何の感情もなく、作業を行うような虚無感が漂っていた。

 

 それを認識して、クレマンティーヌは強い憤りを感じた。

 

「お前が、私を、捕まえる? この、英雄の領域に足を踏み入れたクレマンティーヌ様を?

 ……ナマ言ってんじゃねーぞクソガキがぁぁぁ!!」

 

 獣のごとき咆哮を上げたクレマンティーヌからは確かに、それ相応の覇気が発せられ、それに当てられたンフィーレアが意識を手放す。

 

「バレアレさん!」

 

 慌てて傍らのニニャが彼の身体を支えるも、魔法詠唱者(マジックキャスター)である彼女では少々厳しい。

 その様を見てダインが代わりに彼を担ぎ上げた。

 

 一連の動きを横目で観察していた千代女は、一度だけ()()()()()()に目を向けると、すぐに彼らの方へと視線を戻した。

 

「その御仁は部屋の隅にでも寝かせて置くでござる、貴殿らの実力では人一人を抱えてこの女に相対するのは危険でござるゆえ」

 

 その言葉に、しかし、標的たるバレアレ氏から目を離すのは悪手では? と考えた一行だが、すぐに千代女の言う通りにする。

 彼女の言う通り、自分たちの実力では逆にンフィーレアを危険に晒してしまうと思ったがため。

 

「……あぁ? ガキが、なに、無視してんだ、よ!!」

 

 それを見たクレマンティーヌが、痺れを切らして千代女へと突撃する。

 刺突武器スティレット。攻撃パターンが限られる武器ゆえに人気のないこの武器を敢えて選択する彼女は、当然のごとく、それを補うほどの努力と才能を持つ。

 一撃必殺、常人、あるいは並みの冒険者程度では見ることすら叶わぬ高速の刺突。それによって彼女はこれまで無数の冒険者を葬り去ってきた。

 胸当てにぶら下げられたプレートの数々がそれを物語る。

 

 ゆえに、この一撃も千代女の心臓を刺し貫いて終わり。

 そう、彼女は思った。

 

 

「……笑止。我ら忍と相対するにはあまりにも()()()()。これならば怪腕のゴズール殿の方が数倍は速い」

 

 同僚の中でも速さより腕力を取った者を思い浮かべながら千代女は易々と彼女の刺突をクナイで受け止めていた。

 一方、自らが誇る速さを貶されたことにクレマンティーヌはさらなる激情に駆られる。

 

 しかし、それ以上に千代女の高い実力の片鱗を感じ取ったクレマンティーヌは冷静に状況を分析し、即座に後ろへと飛び退る。

 

「ほう……獣ゆえの本能で危険を察したのござるか?」

 

「ちっ!」

 

 余裕にあふれた千代女のセリフに、クレマンティーヌは苛立ちを募らせた。

 

 同時に、この女は自らが全力を出さねば勝てない相手であることも悟っていた。

 

「……え、何? まさか今のが私の最速だと思った?」

 

「バーカ」と呟きつつ、ゆっくりとその身を屈めるクレマンティーヌ。

 その様子に疑問を感じながらも千代女からは緊張の色は見えない。これまでのやりとりで、すでにこの女がどう足掻こうと自らには到底及ばない存在であると分析していたために。

 とはいえ、警戒を緩める気はなく、冷静に出方を伺う。

 

 それを好機とクレマンティーヌは同時に四つの武技を発動させる。

 〈疾風走破〉〈超回避〉〈能力向上〉〈超能力向上〉。

 速さ一点特化型の構成からは撤退の二文字は連想できない。

 確実にこの場で殺す、その覚悟だけが伝わってくる。

 

 かくして、自らの基礎能力を遥かに上回る速さを手に入れたクレマンティーヌは弾丸を思わせる速さで千代女へと一直線に駆け抜けた。

 

 能力が大幅に向上した影響から、思考さえ加速したクレマンティーヌは駆ける最中にも冷静に千代女の出方を伺っていた。

 

 手に持つ奇妙な短剣で防ぐか、或いは回避しようとするか。

 いずれにせよ、それら全てを突破して心臓を貫く自信があった。

 

 果たして答えはーー

 

(反応もできない、か)

 

 千代女は動かなかった。

 その様子に、初めて有利に立てたことにクレマンティーヌは心からの喜びを歪な笑みに変えて表出する。

 

「そら、終わり!!」

 

 懐まで飛び込んだ彼女は、嘲笑と共にスティレットを千代女の心臓目掛けて突き出した。

 

 

 

 

 ーー刹那、彼女の視認できない速さで千代女の腕が動き、クナイがスティレットを弾き返した。

 

「っ!!!!」

 

 一瞬、呆気にとられるも、即座に〈流水加速〉を発動させ、さらに速度を上げた肉体でもう一本のスティレットを抜き放ち千代女へと突き出した。

 

「はぁっ!?」

 

 しかし、それすらも容易く弾かれ、代わりに鋭い回し蹴りが彼女の腹部へと突き刺さる。

 

「ぐぶっ!? ごっーー」

 

 ミシミシ、と嫌な音を立てながらくの字に折れ曲がる自らの身体を、クレマンティーヌは信じられなかった。

 

 続けて放たれたもう片脚による蹴りによって、彼女の肉体は部屋の壁へと激突する。

 グシャッと壁が凹みと亀裂を生む中、床に放り出されたクレマンティーヌは、痛む身体に鞭を打ち、無理やりその身を起こす。

 

「がっ、ごぼっ!! て、テメェ!!」

 

 ビチャビチャと口から溢れた鮮血が床に血溜まりを作る中、彼女は吠えた。

 

「……まだ、抵抗するのでござるか? 今ので実力の差ははっきりしたと思うのでござるが」

 

 ーーというか、早く()()()()()()()()()()

 

 心中でそんな焦りを千代女は漏らす。

 これまでの甚振り勿体ぶるかのような行動こそは、全て『ンフィーレアがカジットに攫われるまでの時間稼ぎ』に過ぎないのだから。

 慣れない手加減ゆえに、蹴りだけでクレマンティーヌの内臓を幾つか潰してしまったことからも彼女が「真面目すぎる隠密」であることは明らかであった。

 殺すか生け捕るか。

 その二択しか本来なら出来ないのだ。

 

 

 そんな彼女の本音など知らず、ようやく歴然たる実力差を感じ取ったクレマンティーヌは、先ほど同様に四つの武技を発動させると共に、背後の扉へと一目散に逃げ始めた。

 

「っ、致し方なし!」

 

 ーーここで逃がせば、もう一人も逃げるかもしれない。そうなれば、お館様の計画は破綻してしまう。

 自らの主命に反する相手の動きに、千代女は苦い顔をしながらも、余裕を持ってクレマンティーヌへと肉薄する。

 

「くっ!?」

 

 突然、目の前に現れた千代女に驚愕しながらも戦士としての経験から即座にスティレットを構え、内部に蓄積された〈雷撃(ライトニング)〉の魔法を放つ。

 

 逃げの一手としては上々、しかし相手が悪かった。

 

 放たれた魔法、続けて隙なく放たれた刺突を容易に回避し、千代女はクレマンティーヌの両腕の腱を瞬時に断ち切る。

 

「がぁぁぁ、クソがぁぁぁぁ!!!!」

 

 戦士の命たる腕を両方とも失ったクレマンティーヌが絶叫に近い咆哮を放つ。

 その喧しさに眉を顰めながら千代女は続けて足の腱、筋も断ち切る。

 

 支えを失った身体が床に投げ出されるのを眺めながら、「仕方ないか」と呟いて腰の袋から抜き出した長い縄で、彼女の身体を縛り始める。

 

「もごっ!?」

 

 最後にその口に猿轡を噛ませたところで、ようやく、千代女の待ち望んだ人物が行動を起こした。

 

「っ、〈幻霧(イリュージョンミスト)〉!」

 

 一行の背後の扉からこっそりと現れていたカジットが、これまたコソコソとンフィーレアを引き摺って攫おうとしていたのだ。

 それを当然、千代女は感知しながら見逃した。

 

 しかし、慣れない行動からか一番近くのニニャに察知されたカジットは即座に魔法を発動させてこちらの目をくらませてきた。

 

「幻覚を見せる霧か!」

 

 魔法の種類を看破したニニャだが、残念ながらそれを破る術までは持ち合わせていなかった。

 魔法に対して一際知識を持つニニャに不可能なことを他の漆黒の剣メンバーができるはずもなく、霧が晴れる頃には、もうカジットもンフィーレアも姿を消していた。

 

「くそっ! まんまと連れ去られるなんて!」

 

 一番近くにいたニニャが、己の不甲斐なさからやり場のない怒りを床にぶつける。

 

 それを他のメンバーが宥めている中、千代女は縛り上げたクレマンティーヌの上でぼそり、と呟いた。

 

「第一段階はなんとかなった、でごさる」

 

 次いで吐き出された溜め息は、『手加減しながら不自然にならないようにンフィーレアを攫わせた上でクレマンティーヌを捕らえて情報を吐かせる』という鬼畜な任務を言い渡されたがためのものであった。

 

 とはいえ、主人に不満は一切ない。

 寧ろ、「困難な任務をこなしてお館様に褒められたい」という感情の方が強かったのは言うまでもないことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間半前に別れた冒険者と依頼人が悪者に襲われて依頼人が攫われていた件。

 うーむ、微妙なタイトルだな。

 

 そんなことを考えながらモモンは、街で出会ったンフィーレアの祖母リイジー・バレアレを伴って彼女らの自宅にて漆黒の剣と合流していた。

 

 先の言葉の通り、ちょっと離れた隙に今回の依頼人が攫われてしまっており、おまけにその理由が大量のアンデッドを呼ぶため、とトントン拍子でゲームの緊急クエスト並みの事態に陥っていた。

 

 というかアンデッドの軍勢召喚とか、ベタ過ぎる悪行ではなかろうか。

 

 度重なるストレスから、現実逃避が癖になりつつあったモモンはくだらない考えを脳内に展開する。

 

 

「いや、現実を見よう」

 

「モモンさん?」

 

 ようやくマトモに呼べるようになった相棒ナーベに軽く感激し、自然とその頭を撫でる、という奇行に走ったことでその場の面々から奇異の目を向けられたが、それに気付かずモモンは情報を整理する。

 ちなみにナーベは感激のあまり号泣していた。

 

「纏めると、

 バレアレ薬品店に帰ってきたンフィーレアさんと漆黒の剣の皆さんはクレマンティーヌと名乗る戦士と遭遇、その目的がンフィーレアさんと知り戦闘に発展した」

 

「はい。しかし、私たちでは到底敵う相手ではなくーー」

 

「で、そこのチヨメさんが助太刀に現れ、なんとかクレマンティーヌとやらを捕獲。しかし、潜伏していた別の犯人にンフィーレアさんを攫われてしまった、と」

 

 軽く纏めてみるとこんな感じ。

 しかし、チヨメという人物。確かその名前は“あの”冒険者チームの一員のものであったはずだが?

 モモンの疑問というよりも確信に近い思いは、ペテルの発言で証明される。

 

「チヨメさんは道中にもお話したチーム黄金のメンバーです。彼女がいなければ今頃自分たちはーー」

 

 そこから先を語る勇気は無いとばかりにペテルは力無く首を振った。

 

「チーム黄金……」

 

(件の冒険者チーム、まさか情報を整理してすぐに会う羽目になるとは思わなかったが、『噂をすれば』というやつなのかな?)

 

 モモンからの静かながら、確かな警戒を込めた視線に気付きながらもチヨメは亀甲縛りにしたクレマンティーヌの上に跨りながら声をあげた。

 

「拙者はチヨメ。チーム黄金にておy……ギルさ……んと共に冒険者をしているでござる」

 

 チヨメの様子に、どことなく既視感を感じたモモンは、まだ見ぬ黄金のリーダーに対してなぜか強い親近感を覚えた。

 もしかしたら、仲良くなれるかも。そんな思いすら湧き上がってくる。

 

 もっとも、慣れない任務ゆえに発現したミスでありチヨメに責は無い。これは致し方ないミスなのである。by黄金王

 

「そういえば自己紹介がまだでした。

 私はモモン、そしてこちらがナーベ」

 

「ナーベです、よろしくお願いします(棒)」

 

 驚くほどの棒読みに漆黒の剣は苦笑し、チヨメは特に気にすることもなく。

 そしてモモンはついに頭を抱えた。

 

「……失礼、ナーベは少し世間知らずでして。浮世離れした発言をするかもしれませんがどうか大目に見てやってください」

 

「知ってます、だがそこがいい!」とルクルットがフォローとも言えない発言をすると、続け様に「下等生物(ゾウリムシ)が。苔でも食ってその足らないオツムに少しでも栄養を送ることね」と罵倒する。

 モモンは両手で目を覆い始めた。

 

「(黄金とやらは重要な奴らだから一層注意深くね、ってさっき言ったばっかりでしょーー!?)ハハハ、ナーベ、もうルクルットさんとそんなに仲良くなって」

 

「モモン様!? まさか、このような下等生物(アメンボ)ごときなどーー」

 

「ナーベ」

 

 穏やかでありながら硬い声がモモンのヘルムから響く。

 その声に、ようやく失態を悟ったナーベが青ざめた顔で沈黙した。

 

 さながら執行を待つ死刑者のように、ギロチンの真下に首を突っ込んだ人のように。

 

「……あの、拙者、重要な情報を持ってるのでござるが」

 

 蚊帳の外に置かれたチヨメがおずおずと告げる。

 

 その言葉に、一行は「こんなバカなことしてる場合じゃなかった」と反省する。

 また、モモンはーー

 

(……ござる?)

 

 聞き覚えがあり過ぎる口調になんとも言えない思いを感じているとーー

 

「殿ーー! 拙者にも話を聞かせて欲しいでござるよー!」

 

 建物の外から気の抜けた声が聞こえてきた。

 ハムスケである。

 

 まあ、自分が捕獲したモンスターでありこの世界の住人にとってはすごい魔獣っぽい見た目と覇気を持つらしいのだが、真面目な場面で出てこられるとどうも調子が狂う。

 そして、図らずも「ござる口調」が被っている。

 

「……今のは、モンスターでござるか?」

 

「そうでござる……失礼、ええ、私が捩じ伏せた魔獣でして。まあ、サイズ的に入りきらないので外に待機させていますが」

 

「そうでこざるか」

 

「そうなのでござる」

 

 自然と自分の口から出てしまった言葉に、モモンは今度は言い直さなかった。

 

「モモン、あなた疲れてるのよ」

 今は会うことも叶わないかつてのギルメンの声が聞こえたような気がしたモモンことモモンガであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チヨメがクレマンティーヌを拷問し(大蛇でしばい)て引き出した情報を基に、モモンとナーベは、当初の歴史通りに墓地へと向かう。

 経緯はかなり異なり、敵の戦力も半減してはいるものの、これを解決すれば十分に偉業となるであろうことは確かであった。

 と、ギルガメッシュは千代女の報告を聞きながら思う。

 

 

「ご苦労であった。チヨメよ」

 

「はっ! お館様のご命令であれば。どのようなものであれ確実に遂行致しまする!」

 

 相変わらず高い忠誠心を見せる隠密に、ギルは深い感謝と「何かあげるべきか」という思いを抱いた。

 

 当初より、ウルクの情報収集は隠密一同に頼りっきりであった。

 それは転移直後に真っ先に彼女らを動かしてから以後、あらゆる情報を求めて四方に放ち、これまでずっと情報を集めさせてきた。

 それはつまり、今現在のウルクにおいて、事務のほぼ全てを総括するシドゥリに匹敵する貢献具合であり、働きぶりであるということ。

 

 ここまで完璧にモモンの支援に動けたのも隠密のおかげである、とギルは感じていた。

 実際は、モモンに目をつけられていたりするのだが。

 完璧とは言い難い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜ウルク・冥界第七層『アズライールの霊廟』最深部『???』〜

 

 

「煙酔、震菅、そして“輝く星のハサン”。共に起動(覚醒)に成功しました。以後の諜報任務に加える予定です」

 

「承知した」

 

 薄暗い闇の中、冷たい印象を与える大理石の床の上で二人のハサンは情報交換をしていた。

 しかし、本来なら同格であるはずの二人だが片方のハサン、静謐のみが片膝をつく形で口を開いていた。

 

「……しかし、いい加減、止めぬか? 我らは共に王によって作られし同胞。加えて『原典』でも同格の存在であったと記憶する。

 ならば、お主だけがこうして下手に出る必要はあるまい?」

 

「いえ。私は…………こうして、偉大なる山の翁ハサン・サッバーハ様と共に戦えるだけで、望外の幸せです」

 

 男、呪腕のハサンが諭すも、静謐は憮然とした態度でそれを拒み続ける。

 その様に呪腕は「うぅむ……」と唸り声をあげた。

 

 彼としては、彼女・静謐も同じ山の翁として認めているからこそ変に下手に出られるのはむず痒いというか、気まずいというか。

 

「王は何故(なにゆえ)、このような設定(記録)をお与えになったのか……」

 

 平伏してないだけまだマシ、とは同僚の百貌の言葉だったか。と呪腕は、いつぞやの定例会議にて溜め息と共にそう漏らした苦労性のことを思い出す。

 

 

 その後、二、三時間ほど説得してようやく、同じ目線で話してくれるようになったことを、今度は呪腕が百貌へと聞かせることになるであろうことは、本人が一番悟っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人がほんわかした空気を作り出す通路の更に先。この階層における最終防衛ラインにして、現在のウルク最強の一角が鎮座する場所。

 

 即ち、真なる『アズライールの霊廟』。

 

 死を司る天使の霊廟として作られた場所は深い暗闇に覆われていた。

 

 人間はもとより、動物さえ息を殺し、命を落とし。草木すら生命を止めるほどの重苦しい、重圧と表現すべき存在で満ち満ちた場所。

 

 

 闇に光る青い相貌が、静かにその時を待ち続けていた。

 

 

 

 

 

『偽りの身体に魂を窶し、“偽りを超えんとしたかつての友ら”すら顧みず。ただ、虚構のみを追い求める』

 

 

『あまつさえ、偽物で自らを囲い、命すら模造品として貶めるか』

 

 

 ーー古びた黒い大剣が床に突き立てられる。

 

 

『愚かなり。まこと、愚かなり』

 

 

『しかして、我すらも偽りに過ぎぬ存在。この情動、信念、技の冴えであっても、虚構より再現されしものなり。

 そも、その有様は“英霊なるモノ”とも同義か』

 

 

 死告の剣士は未だ決断を下さない。

 己が何者か、果たしてその信念は正しきものであるのか。

 

 自らを理解するからこそ、この剣士は未だ審判を下さずにいる。

 

 

 

『晩鐘は未だ鳴らず。契約者の志は未だ揺るがず』

 

『ならば、今はただ、時を待つのみ』

 

 

 

 これまでと変わらず、彼はこの場を守護し続ける。

 オリジナルがどうであったかは知らぬが、彼はこの偽りの霊廟を自らの住処たるに相応しいと認めていた。

 模造品であろうと、ここがかの霊廟たりうるのであれば、自らはそこを守り、いずれ来たる審判に備えよう。

 

 

 

 

 

 

 ーー世界の情勢やら、転移やらとは一切の関係を持たず関心を持たず。彼は自らの意思でのみ世界に干渉する。

 

 

 

 この思考さえ契約者の与えたものであるのか。

 そのようなことを日がな一日考えながら、原初のハサンの一日は今日も平和なままに過ぎていくのであった。

 

 

 

 

 




幸せな世界に旅立ちたい今日この頃。

具体的にはロリっ子大帝国に永住したい。


追記:おまけを付け忘れていたでござる。



【名称】山の翁
【異名・二つ名】キングハサン、幽谷の支配者、冠位の暗殺者

【役職】冥界第七層『アズライールの霊廟』守護統括、始まりにして終わりの山の翁、etc
【住居】不明

属性(アライメント)】[カルマ値:???]

【種族レベル】
死を運ぶ者(ブリング・オブ・デッド):5lv


職業(クラス)レベル】
ソードマン:15lv
マスターアサシン:5lv
『グランドアサシン』:5lv


[種族レベル]+[職業レベル]=100レベル
[種族レベル]取得総計10レベル
[職業レベル]取得総計90レベル


【備考】
特殊条件による限定種族二つ。
即死無効、即死無効貫通を所持。
通常攻撃に即死付与、スキルにより確率上昇、装備によってさらに確率上昇……と即死させることしか考えていない。
『首を出せ』

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