偽物の英雄王〜inオバロ〜   作:蒼天伍号

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…。(五体投地

本当にごめんなさい。生きてます。意地汚くも生きております。
これからもチマチマ書いては、三次元の魔物に殺され、また書き始めては殺され…を繰り返すかもしれません!


時系列は前話より前です!


追記:間違えたー!黄金の輝き亭はエ・ランテルだよッ!!


幕間 竜の国と黄金

「竜王国?」

 

 ウルク中央・ジグラット最上階、王の間、または謁見の間とも呼ばれる一室にて俺は配下の報告に疑問の声をあげた。

 

 対して、報告をした相手、俺の一の配下たる側近シドゥリは手に持つ資料の束を見つつ続きを述べる。

 

「はい。王国、帝国に続き調査対象に指定されていた竜王国です……まさか、お忘れですか?」

 

 一瞬にして厳しい目線へと変わったシドゥリが全身が凍るような冷たい声で問いかけてくる。

 俺は内心慌てて、表向き余裕ある態度で返す。

 

「戯け、忘れるはずがあるまい。えーと、アレだろ?カッツェと隣接する国々の一つで、ビーストマンに攻められているとかいう」

 

 確か、合ってたはず。

 いや、もう三十年以上も昔の、しかも前世の記憶なんてあやふやなんで正確に覚えていられるはずもない。

 俺は、以前の隠密からの報告を必死に記憶から引きずり出して答える。

 

 前世なら確実にど忘れしていた、やっぱり半神設定は優秀。

 

「ええ、カッツェ平野……我らが降り立ったこの地は常時霧に包まれ、アンデッドが多数発生する危険地帯として現地の者たちには知られております。

 その平野を中心に、隣接する国家が四つほど存在します。

 一つは王が調査に赴かれているリ・エスティーゼ王国。

 もう一つが別働隊が調査に向かったバハルス帝国。

 

 そして、法国と竜王国。

 

 法国についての調査は現在難航しておりますが、竜王国の情報については今回の報告であらかた終了したと見ております」

 

 そう言って手に持つ紙束を俺へと寄越す。

 早速、内容に目を通してみればーー

 

「……相変わらず、桁外れの諜報力だな」

 

 かの国の保有戦力、単純な兵数から使用魔法、個人の能力についてもあらかた記述されている。

 あと、セラブレイトがロリコンなのは知ってる。

 俺と気が合いそうだと転移前からワクワクしていたのだ。こいつだけは覚えている。もしかしたらロリっ子帝国とかそんな感じの土地を知ってたりするかもしれないし。

 捕まえて吐かせるのも吝かではない。

 

「特記事項にあります『始原の魔法』なるものについては一応、目を通しておかれますよう」

 

 ふむ?

 言われて見てみれば確かに『重要!』と書かれた丸文字の横にデフォルメされた千代女の顔が描かれていた。

 ……いや、待て。これ、誰が書いたんだ?

 

「グッジョブ」

 

「は?」

 

 可愛すぎて思わず声に出てしまったが、無かったことにして改めて記述に目を通す。

 

 なんでも、ユグドラシル由来の現在の魔法とは異なる、この世界に古より根付いていた古き魔法が始原の魔法らしい。うん、ここは知ってる。

 

 そしてかの国の女王は、竜の血を八分の一受け継ぐためにそれを行使できるのだという。だが、その代償として民の命を生贄にしなければならず、ビーストマンの軍勢に有効打を与えるには実に百万ほどの人命を消費しなければならないらしい。

 コスパ悪っ!

 

「そういえば、そんな感じだったな」

 

 これも前世において知っていた情報で今も覚えている。

 というか女王たるドラウディロン・オーリウクルスが幼女形態を取ることのできるロリババアという段階で俺の記憶から抜け落ちる可能性など皆無であったと言わざるを得ない。

 本性がやさぐれた年増な点もグッドだ。

 

「ただ、かの国の命運はすでに風前の灯火。下手をすれば明日にでも滅亡する段階に差し掛かっております」

 

 は!?

 

「いや、まさかそんなはずは……」

 

 慌てて資料に視線を戻す。

 ……確かに、風前の灯火であった。

 

 主要な砦、防衛の要たる要地はすでに過半数が陥落し、現在の最前線たる砦を抜かれれば王都への最終防衛ラインにぶち当たる。

 そして、兵力、兵糧ともに赤ゲージである。

 

 いや、そんなバカな。

 まだ俺たちが来てから一年も経ってないぞ?

 確か書籍の方でもまだ持ち堪えられる時期だったはず。やばくなったのは、かの国に援軍に向かうはずだった六色聖典の一つ、陽光聖典をナザリックが叩き潰してしまい、シャルティア関連で漆黒聖典にまで甚大な被害を与えた所為じゃなかったか?

 おまけに巫女姫の遠見の魔法がモモンガの探知に引っかかって大爆発して、巻き添えで風花聖典だかが壊滅してーー

 

「あ」

 

「どうされました?」

 

 ……すっっっかり忘れていた。

 

 

 あの痴女ファッション巫女少女を助けた際に、深く考えずに神殿に遠距離爆撃を敢行していたのだ。

 そのせいで原作と同じく風なんちゃらという部隊も吹き飛んでしまったのだろう。

 おまけに、陽光聖典の話はだいぶ初期、つまりナザリックが来て早々に起きた出来事だったと思い出した。

 つまり、原作と同じく竜王国へと派遣する援軍が無くなってしまったのだ。

 

 なんてこった。

 パンナコッタ。

 

 

 

 

「シィィドゥリィィィ!!」

 

「へぁ!? は、はい!?」

 

「即刻、かの国へと救援部隊を派遣する!資料通りならばビーストマンなんぞ片手で捻り潰せる雑魚どもだ!

 ならば、女王が……竜王国が滅びる前に救済せねばならん!!」

 

 ロリババアが危ない(二つの意味で)。

 もはや、形振りなど構っていられるか。それにビーストマン風情に警戒する意味も価値もない。

 ビースト、なんて付いてるから不安になったりもしたがこっちにだってビーストはいる。それも公式チートのモンスターを鹵獲したものが。

 

 そもそも、竜王国についても前々から考えていた計画があるのだ。実行に移す機会を伺っている段階のものが。

 

 ならば、迷う必要など何もない。

 

「だが!生半可な戦力で向かって、貴様たちに万が一があれば俺は自害するしかなくなる!

 

 

 

 故に!!

 

『キャメロット』の全軍を派遣せよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜王都のとある宿屋・一階酒場〜

 

 

「チーム“黄金”?」

 

 紅茶を啜りながら、ラキュースは少し眉を顰めて聞き返した。

 

「なんでも、伝説級のアンデットを討伐した凄腕の新人冒険者(ルーキー)らしい」

 

 彼女の問いに、仲間でありチームの諜報役、その片割れたるティナが答える。

 

「他にも、平野から流れてきた師団クラスのアンデッドたちを殲滅、オーガ・ゴブリンの混成部隊を軍団規模で狩り尽くしたらしい。

 おまけに、そのリーダーは単身でギガント・バジリスクを討伐している」

 

「単身!?一人でやったってか!?」

 

 続けて、もう片割れのティアが語る。

 それに待ったをかけたのは、同じくチームの仲間である筋骨隆々の()()、ガガーランであった。

 四角く大きな顔を驚愕に歪めている。

 

「流石に、尾ひれが付きすぎだな、それは」

 

 それを見ながら、全身をローブで包んだ仮面の少女・イビルアイが溜め息混じりに口を挟む。

 その言葉に、ティナ・ティアを除く全員が同意とばかりに首を振った。

 

 この五名、全員が女性でありながら並みの男ども、特に冒険者など寄せ付けないほどの強さを誇る実力者であった。

 チーム『蒼の薔薇』。

 リ・エスティーゼ王国が二チームしか保有していない最上級冒険者、アダマンタイト級冒険者チーム。その片割れであるからだ。

 そんな凄腕が、最高級とはいえ宿屋の一階に集まっていれば自然と周りの冒険者は萎縮するもの。

 

 遠巻きにも分かるその隙のない佇まいに、皆、緊張の色を隠しきれないでいる。

 

「しかし、情報の精度は高い。元々、別の依頼で動いていた際に偶然遭遇したらしく、その際に同行していた他の冒険者、依頼人双方からの言質も取れている」

 

「なに……?」

 

 ティナの言葉に、眉唾と高を括っていたイビルアイは、いつもの無機質な声に僅かな動揺を乗せた。

 

「伝説級アンデッドの件も組合幹部からのタレコミ」

 

「マジかよ……」

 

 呆けたように呟くガガーランを他所に、リーダーであるラキュースは苛立ちを隠しきれない声で述べた。

 

「黄金……って名前は気に入らないわね」

 

「やっぱそこなんだ、鬼ボス」

 

 ティアの言葉に返事をすることなく、ラキュースは自らの内に燻る思いをなんとか鎮めようとする。

 

 別に、ラキュースという女性は高慢な人物ではない。

 アインドラという有力な貴族の娘であろうとも、国に二つしかないアダマンタイト級のリーダーであろうとも、そのことを鼻にかけるような性格ではないのだ。

 

 しかし、『黄金』という二つ名は彼女の唯一無二の親友、王女ラナーのものであるがゆえに。ポッと出のルーキーに名前を使われるのは、なんとも言い難い複雑な感情を抱かせるものだった。

 

 第一、なぜ、そんな名前を?

 

「リーダーが金髪で黄金一色の鎧を纏い、おまけに黄金の双剣を使うらしい」

 

「派手過ぎる!……ああ、いや、冒険者としては別に悪いことではないのよね」

 

 冒険者という仕事柄、名前を売るために敢えて目立つ格好をする者もいるという話だ。理に適ってはいるし悪いことではないが。

 

「一度、街中で見かけたけど……金ピカだった」

 

「アレは間違いなく目立つ。むしろ眩しくて目を細めている人もいた」

 

 双子からの報告に、「そうなるわな」という感情を全員が感じたのは無理もない。

 

「おまけに、声がでかい。テンションも高い」

 

「でも、意外に好青年。ガガーランとは話が合いそう」

 

「俺と?……ふーむ、声がデカくて金ピカねぇ」

 

 ティナの言葉に、ガガーランは真剣に考え始める。

 もちろん、食うか食わないかの話だ。

 

「ちなみに顔は良い。王国や近隣諸国でもまず見ないほどの美青年……あと十年は早く出会いたかった」

 

「よし!とりあえず初物かどうかを確かめるところから始める!」

 

 ぼそり、と呟いたティナの言葉は続くガガーランの声に掻き消された。

 ギルの知らないところで彼の貞操が危機を迎えていた。

 

 

「話が逸れている。本当に、その金ピカとやらはギガント・バジリスクを倒せるほどの男なのか?」

 

 しつこくも思えるイビルアイの疑念だが、無理もない。

 

 ギガント・バジリスクというモンスターは蜥蜴か蛇にも似た全長十mのモンスターである。

 バジリスクの名の通り、石化の魔眼を持ち、体液は人間にとっては即死するレベルの猛毒。おまけに表皮はミスリルにも匹敵する硬度を持った最悪の魔物。

 一匹で町を滅ぼせる強力なモンスターなのである。

 

「それを単騎で……」

 

 そこまで言いかけて、ラキュースは思い出したように声をあげた。

 

「待って、それなら同行していた人たちにもそれなりの被害が出たんじゃーー」

 

 石化の魔眼、猛毒の体液、それを十mの巨体で振るわれれば周りにいた人たちにも甚大な被害が及ぶはず。

 

「……いや、戦いは一瞬。その男が振るった双剣で一撃で三枚におろされたらしい」

 

「一撃!?」

 

 双剣ということから正確には二撃だが、大した差ではない。

 ギガント・バジリスクは二撃や三撃など数える手数で倒せる相手ではないのだ。

 事前に入念な準備をして、支援も万全にした状態で時間をかけて仕留めるもの。

 それを、金ピカの男は双剣の一振りで仕留めた。

 

 その事実に、イビルアイも仮面の上からでも分かるほど驚愕の感情を見せた。

 

「いや……ならば、その男が持つ黄金の双剣こそが信じられないほどの業物なのかもしれん」

 

 冷静に考えればそうだ、そうとしか思えない。

 それにしたって、一撃とは……。

 

「伝説の武器……或いは東の亜人種の国で作られたもの、もしくはドワーフのか」

 

「リーダーの持つ魔剣と似たような出自かもな」

 

 ガガーランの言葉に、ラキュースは自らの愛剣、魔剣キリネイラムをそっと撫でた。

 

「そうね、もし本当の話ならそういう可能性もあるかも」

 

 或いは王国の秘宝に比肩するものか。

 

 彼女らの知らぬことではあるが、事実として終末剣エンキは神器級にカテゴリされる業物である。

 その切れ味、硬度は圧倒的でありながらその真の力は別にある。

 

 

 何はともあれ、あまりにも荒唐無稽、突拍子もない現実離れした話に、結局のところ双子を含めてその話を完全に信じるものはいなかった。

 

「それに関連してなんだけど、組合長からそれとなく例のチームを探って欲しいと言われた」

 

「探る?……いくら組合長の頼みでもそれは」

 

「いや、調査とかじゃなく。その人となりを私たちで見定めてほしい、と」

 

 ティナに続いてのティアの発言に、ラキュースも「まあ、それくらいなら」と了承の意を示す。

 それを節目として、ガガーランが唐突に宣言する。

 

「よし!なら飲み直すか!」

 

「何がよしなのか分からないが……まあ、私も付き合おう」

 

「ええ!?」

 

 唐突な二人の会話に、リーダーたるラキュースは困惑した。

 長話をしていたために、ガガーランの持つジョッキの酒はすでに人肌温度にまで上昇していた。

 側から見ても泡の無くなったその中身はあまり美味しそうには見えない。

 

 しかし、ラキュースとしてはこれから依頼の件で、例のラナー王女と会うことになっているためにお酒はお預けとなる。

 

「……まったく、自分たちが行かないからって」

 

「いやぁ、どうにも王城の堅苦しい空気は苦手でね。余程のことが無けりゃ行きたかないよ」

 

「まあ、私も似たようなものだ……私たちに構わず、友との語らいに興じてくれ」

 

 ガガーラン、イビルアイ。この両名は当初から何かと理由をつけて王城に行くのを渋っていたが、最近は「行きたくない」と馬鹿正直に告げてくるようになった。

 信頼の証、とでも思わなければやっていられない。

 

「まあ、私とティナかティアがいれば問題ないけどね」

 

 その発言通り、ガガーランやイビルアイが行ったところで、政治やその他の話題にはついていけないだろう。

 いや、イビルアイだけはその豊富な知識量から良いアドバイスを貰えるかもしれないが。

 

「行かんぞ?絶対に、行かん」

 

 こうまで言われては仕方ない。元々、彼女は頑固なのだ。

 彼女を初めてチームに招いた時のことを思い出しながらラキュースは「仕方ない」と溜め息を吐きつつ宿屋を後にした。

 

 

 




竜王国跡地にキャメロットⅡが建国されます(嘘





おまけ


【名称】ギルガメッシュ
【異名・二つ名】英雄王、黄金王、コレクター

【役職】ギルドマスター→都市国家ウルク初代国王
【住居】ジグラット内居住区『王の寝室』

属性(アライメント)】中立[カルマ値:0]

【種族レベル】
なし

職業(クラス)レベル】
英雄王:5lv
コレクター:5lv


[種族レベル]+[職業レベル]=100レベル
[種族レベル]取得総計0レベル
[職業レベル]取得総計100レベル


【備考】
ワールドチャンピオン券を手放した代わりに得た英雄王クラスを所持。
また、ナザリックに次ぐワールドアイテム保有数、その他、武器を含むアイテムの保有数が断トツであったためにコレクターというクラスも習得。

それら特殊クラスを得る前からワールドチャンピオンになるくらいの実力を持った戦士として、高い戦闘能力を有する。
また、英雄王クラスの能力でこれまで集めたり作って貯めておいた武器を雨霰の如く射出することが可能。おまけに、壊れても蔵の中で再生する。
ただし、手に持って振るう際は壊れたら永久に元に戻らない。あくまで射出しての使用に限る。だが、装備しなくても発動できる能力は使える。
また、誰かに譲渡した際も同じく。蔵からデータが抹消される。壊れる前に戻すと戻る。


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