宵闇の鴉   作:国語が苦手な猫

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明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


part11

時刻は既に昼頃を過ぎ、皆昼飯を終えた時間

クルーザーの戦闘に立つ段蔵()は口を開いた。

 

「みなさん、そろそろ付きますよ」

 

と、私は目の前に見えてきた島を見てそう言った。

すると奥の方でゆったりしていた飛鳥さん達がその景色を見ようと此方に近づく

その顔を見るととても楽しそうに笑っていた。

 

「わぁ~凄い!」

 

「確か半蔵様の所有物でしたよね?」

 

「はい、それで間違いはありませんよ

ただ、今回は半蔵様直伝ではなく、風魔様が考案した訓練ですので―――」

 

「分かってるって、取り合えず今は楽しませてくれよ」

 

私の話を遮り葛城さんは楽しそうに笑みを浮かべる

それを区切りに皆さんはワイワイと騒ぎ始める

その姿を見て思わずため息を漏らしたくなるが、今の彼女たちは年頃の女子

忍なんて関係ない唯の女の子だ。

 

「(もし、私が忍の道を選ばなかったら私も彼女達みたいに)」

 

血の匂いも知らない其処ら中にいる女の子になれただろうか

そんなIFを考えてしまっていた。

 

「(いいえ、それは違う)」

 

だが、その考えを直ぐに否定する。

今のこの生活が嫌だということではない。

もし忍をしていなければ風魔にも出会えなかった可能性、それだけがその考えを否定するだけに値するものだった。

 

「さてと、私も気を抜けるのは此処まで

山に潜むお猿さんを早く見つけないと」

 

島にある森林、それを私は強く睨んだ。

 

 

 

 

 

「ありゃりゃ、もう気づかれちゃったの?

バレないと思ったのに……」

 

木に登って海を渡るクルーザーを見ながら佐助は呟いた。

彼の言う気づかれたというのは、無論、段蔵の事だろう。

 

「まぁ、少しは手は抜いたよ?

でもそう簡単に見つかるやつなのかね?」

 

「流石、風魔殿の唯一の部下、というべきでしょうか

こんな粗いモノでは簡単に見つかる、と」

 

「そういう事なんだろうねぇ。

あのお嬢ちゃんたち、俺たちの気配の"き"さえ気づいていないし

正直に言えばなんで風魔が気に入っているかわかんないんだけど」

 

面倒くさそうになり、ついに横になる佐助

その隣にいた部下と思われる女性は思わずため息を漏らす。

彼女は真田家に属する忍の一人であり、佐助には勝らないがそれなりに力を持つ忍だ

 

「という事で、後は任せるぜ

俺様はここでゆっくりと見学させて貰うから

あ、あと今だけは敬語、いらないから」

 

佐助がそう言った瞬間、その女性の顔が崩れる。

その表情は呆れが入っており、冷ややかな目で佐助を睨んだ。

 

「はぁ、相変わらずだな、お前は」

 

「まぁ、多少は気楽にしないと何時か潰れるよ?

何時かの風の悪魔のようにな」

 

「っ……」

 

口籠る女忍、佐助の言う彼の姿を知っていた。

というよりもその眼で見ていた。

全てに絶望した様な目、まるで何かに復讐するのではないかと思う程、彼は力を得ようとしていた。

休む事をせず、ずっと修行と戦闘を繰り返した。

まるでロボットの様に……

 

「んまぁ、今となればあの変わり様、久しぶり合ったんだけどビックリしたよ?

あの風魔が俺にお願いだぜ?始めは何かとビクビクしたよ

まぁ、という事で俺様が言いたいのは偶には気を抜けっていう事、んじゃあ、任せるぜ。海風(アマカゼ)ちゃん」

 

「ちゃん付けするな……あぁ、了解した」

 

海風と呼ばれた女忍は深く被っていたフードを脱ぎ捨てる

腰まで伸びた、まるで海の様に蒼い髪を束ね

腰に刺してある二刀(・・)の刀を握りしめる。

 

「では、参ります」

 

そういい、海風は木から飛び降りる

佐助は手を振りながらそれを見届けると

 

「っと、海風ちゃんは行ったねぇ

全く、あんな奴の何処が良いんだか……」

 

首を竦め、顔を横に振る。

そんな佐助は両手に握る二つの巨大な手裏剣

それをヨーヨーの様に器用に遊ぶ佐助

 

「こんな近くに優良物件がいるだと言うのに……ハッ」

 

自嘲する佐助、自分が何故こんなにモテないのか

理由は分かっているだろう。

それは風魔の隣にずっといたからこそ分かる事だ。

何時だってアイツは力を得ようとした。

だというのにアイツは非道になり切れず、優しさを捨てきれなかった。

自分とは違う、アイツは誰かを救う為ならば力を振るうだろう。

それが敵であっても……

 

「んじゃまぁ、俺様もやる事を始めるとしようかね」

 

クルリと体を回転させる

クルーザーの真反対、そこに見える一隻の船

小さく、気配も消し少しずつ接近している

普通の忍びならば気づけない程の術だ。

流石だなと佐助は感心する。

だが、それは佐助には通用しない。

 

想定外(イレギュラー)かと思ったが話を聞けばソレは考えられるモノか」

 

視線の先に見覚えのある男が現れる。

それを見た時、佐助はニヤリと顔を歪ませる。

 

「アレでも一応、仲間(ダチ)でもあり家族でもあるんでね

俺様もやる事はやらせて貰うとするよ」

 

小さく頬を緩ませる。

これは俺様のキャラではないなと思いながら佐助は木から飛び降りた。

 

 

 

 

 

「ん~やっとついた!」

 

島へと着いた飛鳥達

彼女たちはまるでバカンスにでも来たかの様に騒ぎ出す

その中、段蔵だけは警戒をし続けていた

船の上で此方を観察するような視線を感じた時から彼女は誰とも話す事は無く

唯、じっとソレが近づいてくるまで待っていた。

 

「(先程から感じるこの気配、数は1ですが、場所が分からない以上、どうしようもない)」

 

目の前に誰かがいるという事は分かる

だが、何処にいるのかが彼女には分からなかった。

訓練不足と嘆く暇は彼女にはない

 

「(どうすれば……)」

 

そう悩んでいた所為なのか、背後に迫る気配に気づく事が出来なかった。

彼女の背後を取った人物、それは葛城だった。

ニヤニヤと笑っていた彼女はそのまま段蔵の背後を取り、そのまま抱き着いた。

 

「きゃっ!」

 

抱き着かれただけでは、段蔵はこんな可愛らしい声は出さないだろう。

何故ならば普通の彼女ならば何の反応も見せず逆に殴り返すだけだからだ(一部を除く)

だが、犯人は葛城だ。ただ抱き着くだけでは終わらないだろう。

そう、彼女はそのまま段蔵の胸を揉みだしたのだ。

 

「な、なにを……!」

 

顔を真っ赤にしながら後ろを向く段蔵

そこにいたのは段蔵の胸を満足そうに揉む葛城だ。

 

「段蔵、折角ここまで来たんだからそんな真剣な顔をすんなよ

取り合えずは楽しもうぜ!」

 

「そ、そんな暇が……っ!」

 

葛城から逃れようと体を捻った時だった。

目の前から放たれる殺意、それに気づいた段蔵は腰にある武器を抜こうとした。

だが、葛城に抱きしめられてしまった為、腰にある刀を抜くことが出来なかった。

その時、目の前から一つ、クナイが飛んでくるのに気づいた。

 

「っ!」

 

こうなれば四の五言っている暇は段蔵にはない

抑えていた力を開放し、抱きしめていた葛城を無理矢理?がす

そのまま投げ飛ばされた葛城は驚いていたが、そんなものは眼中にない

そんな中にも迫りくるクナイ

刀を抜くか、否、間に合わない

同じようにクナイをぶつけるか、否、それも間に合わない

躱すのは簡単だが、それでは追撃があった場合、葛城達を守れるか分からない

 

「(仕方がない)」

 

こうなれば忍術を使うしかなかった。

段蔵の持つ忍術の属性は風魔と同じ【風】

 

「忍法・旋風」

 

その時、段蔵の前に風が現れた。

比喩ではない、風そのものが段蔵の目の前で吹き始めた

それは一つの塊となり段蔵の目の前に現れる。

その中にクナイが1つ切り裂かれる。

風に入り込み、繰り込むクナイ、だが、その勢いは衰えていく。

その風の塊を抜けた時には地へと堕ちていた。

 

「く、クナイ!?」

 

「もしかして敵か!?」

 

そこでやっと襲撃に気づいた飛鳥達

武器を展開させ、戦闘態勢へと移る

 

「下がりなさい、貴方達では勝てません」

 

「そんな事……!」

 

「そもそも敵の気配に気づいていなかった以上、貴方達は戦力にすらなりません

死にたくなければ大人しく下がっていなさい」

 

これでも段蔵は優しく言ったつもりだった。

正直に言えば飛鳥達は唯のお荷物

例え加勢しても邪魔にしかならなかった。

 

「………」

 

それでも役立たずというのには変わらない

それに直に言われ、何も言えなくなる飛鳥達

その様子を横目で見ながら段蔵は二刀の刀を逆手に握り構える

 

「はっ!」

 

地を蹴り、敵の居場所に向け刀を振りながら突撃する。

先手は既に譲っている。

待ち構えているだろうが、後ろにいては意味はない

ならばと思い段蔵は突撃する事を選んだ。

 

小さい山を越え、草むらの先にいたのは一人の忍だった

黒いローブを着込んでおり、顔はよく見えない

だが、微かに見える体型から女性だと判断した。

 

「……はぁ!」

 

そのまま刀を振るう

段蔵の振るった刀が近づく中、その女忍は腰に手を回す

そして取り出したのは二つの刀だった。

それを両手に握り、段蔵の振るった刀をソレで弾いた。

弾かれた事により体制を崩した段蔵、そのまま整えようとするが、それを見逃すほど女忍は甘くはない。

段蔵の腹に蹴りを入れる

 

「っ!」

 

モロに入ったと思われたが、段蔵は忍術により肉体を一時的に強化

石の様に固くなった腹に一撃が入る。

多少ではあるが、顔を歪ませる段蔵

同じように女忍も痛みの所為で歯を食い縛っていた。

 

前のめりになった段蔵はそのまま地に手をつけ逆立ちする。

そのまま回転するように足蹴り、それを腕で受け止める

勢いに合わせ、刀を受けから振り下ろす

女忍もそれを読んでいたのか、後ろにステップを行い難なく躱す

だが、振り下ろした所から斬撃が飛んでくる。

それに女忍が気づいたのは目の前にやってきた時だった。

合わせて体を横へとずらす。

反応が遅れた所為でその攻撃を受けてしまう。

 

「くっ!」

 

ローブが切り裂かれる

ボロボロとなったローブが身体から離れる

そこから現れたのは1人の女忍

腰まで伸びた蒼髪を束ね、二つの刀を持つ女性、海風だった。




海風(アマカゼ)
風魔やかすが、佐助と共に忍術を習っていた女忍
蒼い髪を腰まで伸ばした美女、風魔の一つ下
二刀の忍者刀を使い戦闘を行う。
幼き頃、強さを求めていた風魔に惹かれ同じような戦闘スタイルを取り出した。
忍としての実力は風魔には届かないが、蛇女5人を適当にあしらう程の実力は持つ
基本的に髪は束ねておりそれを解いた姿をまだ佐助は見たことない


オリキャラですのである程度の設定は乗せておきます
彼女は言わずも飛鳥達の乗り越える壁です。
実力的に言えば段蔵と同レベル、彼女たちは乗り越える事が出来るのか!?


(戦闘描写ってこんなに難しいんだなぁ)



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