ISロックマンΩ(仮)   作:赤バンブル
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本編前のプロローグとも言える二話。




過去の悪夢

とある中学校の教室

「・・・・・・・」

一夏は、授業が終わり昼食の時間なのにも関わらず、一人で黙々と作ってきた弁当を食べていた。

「よお!一夏!相変わらず一人飯か?」

そこへ赤髪の少年が親しそうに接して来る。一夏は、箸を置くと少年の方を見る。

「・・・・・何の用だ弾。」

「何の用って・・・・・・冷てえじゃねえか!?お前、一人で黙々と弁当食ってんのすんげえ周りにプレッシャー与えているぞ!?偶には誰かと話しながら食え!!」

「・・・・・・別に話すことがない。そんな奴と一緒に食事をするやつがいるか?」

一夏の質問に弾は思わず頭を押さえる。

「・・・・・・なんてこった・・・・・・これなら鈴がいたときの方がまだマシだ。帰ってきてくんねえかな・・・・・アイツ・・・・・」

弾はそうブツブツ言いながら去っていく。それを見届けると一夏は黙って食事を再開する。































???

千冬は、車に乗せられてあることを思い出していた。

二年前の第二回モンド・グロッソ決勝戦。

その時彼女はIS日本代表とブリュンヒルデという称号を持ってV2・・・・又は防衛戦ともいうべき試合を行っていた。

相手はイタリア代表で実力は五分五分に近かった。

しかし、そこに思わぬトラブルが発生。

謎の巨大ISが会場に襲来。

会場のスタッフ観客などを無関係に殺戮し、一時試合を中断した彼女ら二人の攻撃を物ともせず市街地へと侵攻。多くの住人が犠牲になった。

この事態にドイツ軍も当時の新鋭部隊で応戦したものの巨大ISは逆に軍を壊滅させ、辺りを血の海へと変えた。

しかし、長時間の活動に限界が来たのか巨大ISの動きは鈍り始め、千冬は右腕を代償にその巨大ISの撃退に成功した。その後、逃亡した巨大ISを追跡したもののその行方は分からなくなった。



「・・・・・・・・」

「・・・・・・まだ二年前の出来事を気にしておられるのですか?」

車を運転している運転手の女性に言われて千冬の意識が現実へと引き戻される。

「あまり昔のことを思い出すと古傷に響きますよ。」

「・・・・・どうしても認められなくてな。あの時の現実が。」

千冬が運転手と話しているうちに車は市街地からかなり離れた山の方へと辿り着いた。やがて道が舗装されていない砂利道へと変わり、車は止まった。

「ここからは少し徒歩で移動します。」

「あぁ。」

二人は車から降り、運転手は千冬に目隠しをさせると手を取りながら歩き始める。

しばらくすると山独特の音がなくなり、無機質なコンピュータの入力音が聞こえ始めてきた。

「もう、目隠しを外して結構です。」

目隠しを外すとそこは何かの研究室で目の前にはウサミミのカチューシャに胸元が開いたデザインのエプロンドレスと独特のファッションをした女性がいた。

「やあ、ちーちゃん。傷の方はどう?」

女性は親しい友人に声を掛ける。

「あれからもう二年も経っているんだ。痛みはないさ。」

千冬は、近くのソファーに座りながら女性と顔を合わせる。

彼女は、篠ノ之 束。

ISを開発した研究者であり、千冬とは交流関係もある人物である。

「コーヒーでも飲む?」

「・・・・いや、生憎今は少しでも一夏と長く一緒にいたいのでな。手短にしてほしい。」

「・・・・うん。わかった。じゃあ、こっちに来て。」

束は、後ろの机に向き直るとキーボードを操作し、ある写真を見せる。

「これが今のいっくんの体の構造。心臓も含む体の一部が機械化されていて変化の発端だと思われるコアは心臓部に移植されているんだよ。」

束は写真を指差しながら説明する。

「・・・・お前でも摘出することはできないのか?」

「束さんは飽くまで科学者、一応手術ぐらいはできるけどこんな状態での手術は無理だね。それに二年前に止められたのも奇跡に近いしね。」

束は眉間を指で押さえながら言う。


























2年前 ドイツ郊外

「グウゥゥゥ・・・・・・」

白銀の西洋騎士のような姿をした巨大ISはフラフラと飛行しながら逃げていた。

「ま・・・・・・待て!!逃がさんぞ・・・・・うっ!!」

後方では左腕で右肩を抑えているISを纏った千冬が追いかけていた。

市街地を襲った巨大ISは、千冬ともう一人のIS装着者の決死の攻撃によりどうにか市街地から遠ざけることに成功した。しかし、もう一人の方はこの時の戦闘で左腕を失い、乗機が中破。千冬も右腕を負傷していたが応急処置による止血でどうにか追尾していた。こうまでして追いかけるには理由があった。

(あの化け物は・・・・・あのとき私の名前を呼んだ。あの呼び方をするのは一夏だけだ。もしあれがISなのならばいずれシールドエネルギーが切れて解除されるはず。そのときに・・・・・・)

千冬はそう考えながら巨大ISを追う。

しかし、巨大ISは突然足を止めた。

「?」

千冬も思わず止まるが巨大ISは光を発し始める。

「まさか・・・・・・二次移行を行おうというのか!?」

千冬はまずいと思った。

軍隊でさえ歯が立たなかったあの巨大ISが形態移行すれば取り返しがつかなくなる。巨大ISの体は金色へと変化し始めている。

「止むを得ん!完全に形態移行する前に叩くしかない!!」

千冬は乗機の装備である刀を左手で持つと巨大ISに斬りかかる。千冬のことを察知したのか巨大ISは、腕を飛ばして応戦して来る。

「グオォォォォ!!」

「くそ!反応速度が遅れてきている!!やはり先ほどの戦闘でガタが来たか!!」

千冬は巨大ISの腕に捕まってしまう。その力は強力でおそらく生身であったのであれば即死は免れなかった。しかし、ただでさえ疲弊している乗機にこの力で握り潰されるのは時間の問題だった。

「まずい・・・・・・シールドエネルギーの残量が僅かしかない。このままでは・・・・・・」

「グウウゥゥウウ!!!」

巨大ISは千冬を手元にまで寄せると今すぐに握り潰さんと力を籠め始める。その力はISの絶対防御すら無視しているように感じた。

「ぐう・・・・・・・」

千冬は圧力で体が今にも押しつぶされそうだった。

「グルルルゥゥウ・・・・・」

「い・・・・・一夏・・・・・・・」

千冬は苦しみながらも弟の名を呼ぶ。

「・・・・・・・・」

すると巨大ISの力は一瞬弱まった。千冬は拘束から解かれるとすぐに目の前にまで接近して巨大ISの胸に斬りつける。破壊された胸部装甲の中には赤いヘルメットを被った少年らしきものが拘束されていた。ヘルメットの僅かな隙間から金髪と違いはあるが顔は間違いなく自分の弟だった。

「一夏!待っていろ、すぐにそいつから引き剥がしてやる!」

千冬は、怯んだ巨大ISから少年を引き剥がそうと刀でISの接続部分を切断し始める。巨大ISはもがき苦しむように胸部から千冬を引き剥がそうとするがその前に一夏を強引に引き剥がした。

「グオォォォォォォォ!!!」

巨大ISは、急速に力を失ったかのように地面に倒れ、そのまま動かなくなった。千冬はその様子を見ると解放した一夏を下ろして、通信を入れる。

「織斑です。目標の活動は停止しました。直ぐに回収を・・・・・・・・ダメか。先ほどの戦闘で通信機能がいかれたのかそれとも通信網がズタズタになって繋がらないのか・・・・・・」

千冬がため息をつくと後ろで何かが動いた音が聞こえた。後ろを振り向くと一夏が立ち上がって自分を見ていた。

「一夏!目を覚ましたんだな!!すまなかった!後で事情を・・・・・・!?」

その一瞬の束の間だった。

一夏の手には自分の使用している刀剣型近接武器「雪片」とは違う黄緑色のビームサーベルが握られていてそれが自分の右腕を斬り飛ばしたのだ。

「う、うわあぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」

突然弟に斬りかかられたことと、斬り飛ばされた右腕の痛みに千冬は悲鳴を上げる。

「・・・・・・・・」

それに対して一夏は、無言でサーベルを戻し、銃を構える。

まずいと判断した千冬は、バーニアを全開にして一夏を後方へと吹き飛ばす。一夏は慣れたような手順で着陸する。その顔は何を感じているのか喜んでいるようだった。

「お、お前は・・・・・・一夏ではないのか!?」

千冬は、残されている左腕で「雪片」を握ると一夏と対峙する。

「我は・・・・我はメシアなり!!ハーッハッハッハッハ!!!!」

一夏は目を赤く発光させながらサーベルを再展開して千冬に襲い掛かった。



























現在

「あのときは正直言って私も死ぬかもしれないと思った。あの時の一夏はまるで別人の如く本当に私を殺そうとしていた・・・・・まるで感情のないひたすら殺戮を続けるマシンのようになって。」

「っで、結局ちーちゃんは追い込まれて半殺しにされかけていたところを誘拐されたと知って私が送り込んでおいた『プロトゴーレム』のおかげでどうにかいっくんを止める事ができた・・・・・・でも、驚かされたのはその後だったよ。いっくんの体を調べて見たら体の中にISコアに酷似したものが埋め込まれていて一部が機械に変えられていた・・・・・それにあの本体と思われていた残骸もよくよく調べて見るとあれは拘束具の様な役割をしていたらしくて・・・・もし、あの時ちーちゃんにとどめを刺そうとしたときに苦しみださなかったら止める事ができたかどうか・・・・・・・」

束は、パソコンを切るとため息をつく。

「束・・・・・」

「何?」

「一夏は・・・・・また、あの化け物になってしまうのか?無差別に人を殺し、目の前にあるものをすべて破壊尽くす殺戮マシンに・・・・・・」

千冬は震えた声で言う。束は少し黙るものの正直に答える。

「・・・・・・・・今の段階では何とも言えないね。現にいっくんには襲った時の記憶はなかったし、コアも活動を停止している。もう動くことはないのか・・・・それとも本体に馴染むための潜伏期間に入ったのか・・・・・」

「頼む・・・・・・・アイツを助けてやってくれ・・・・・・・」

千冬は、頭を下げて言う。

「私には・・・・・・もう、あいつしかいないんだ・・・・・・両親に捨てられてから一緒にいた唯一同じ血を持ったかけがえのない弟なんだ・・・・・・・・あいつがまた・・・・・」

しまいには泣き出してしまった。実の弟が訳の分からない処置を施され、いつ恐るべき怪物へ変貌してしまうのか・・・・・・・彼女にとってはそれが一番恐ろしかった。

「・・・・・・・私も全力でやるつもりだよ。いっくんは私にとっても弟みたいな存在だからね。だから、ちーちゃんは泣かないでできるだけいっくんの傍にいてあげて。」

「・・・・・・あぁ。頼む・・・・・・・頼れるのはお前だけなんだ。」

千冬は、束の肩に手を置きながら言う。

































数時間後 

千冬は車で送られ自宅に戻ってきた。家のドアを開けると一夏が食事を作って待っていた。

「今日は仕事が休みだと聞いていたがどこへ行ってたんだ?」

あまり感情が籠っていないような声で一夏は聞く。

「ちょ、ちょっとな。いい義手がないかどうかちょっと探しに行ってたんだ。見つからなかったけど。」

「・・・・・・義手か。とにかく冷めるから早く食べてくれ。」

「あぁ。」

千冬は上着を置くと椅子に座って食事をとる。

「・・・・・・・なあ、一夏。」

「・・・・・なんだ?」

「お前・・・・・・高校はどこにするんだ?もう、受験間近なんだし願書もできているんだろ?」

「・・・・・・・私立藍越学園を受ける予定だ。あそこなら学費が抑えられるうえに就職率も高いからな。」

「そ、そうか・・・・・・でも、一度しかない学生時代なんだからもっといいところでもいいんだぞ?」

「・・・・・・そうも言っていられないだろ。千冬姉、ドイツ軍での新人育成から帰ってきてから去年まで職に就けなかったんだし、その体だと不自由だろ?いくら代表時代に稼いでいたとは言っても節約しないとすぐになくなるぞ。」

「・・・・・・・そうだな。すまないな、心配かけて。」

二人はそう言いながら食事を再開する。

















この数日後、一夏が謝ってISを起動させて自分が仕事をしているIS学園に通うことになってしまうとはこの時の千冬にわかるはずもなかった。








次回があればおそらく入学後から。

オメガ状態の一夏を止められたのは第二形態にならずに強引に引き剥がしたため。

ちなみに車の運転手はクロエさんです。







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