ほんともう、あの人は昔から自由すぎるんだよ。
そりゃ、恭弥さんからすれば、22歳のディーノさんとの戦いなんてつまらないかもしれないけどさ。
不自然なことをしないで欲しいもんだ。元々俺はリボーンから警戒されてるんだから、黒曜の1件から。
……言っても聞かないんだろうけどな。
「まあとりあえず山本、お前にはスクアーロのことを話しとかなきゃなんねーかな。あ、家綱はもう帰っていい、というか早く帰って寝るんだぞ。また熱出したって聞いたぜ。
お前は今はツナの家庭教師なんだから、大空戦までにツナの修行を完成させなきゃならねぇ。体調崩すなんて大問題だぜ」
ぐうの音も出ない。
「……わかりました、もう帰ります。じゃあ山本、スクアーロ攻略頑張って」
「あ、はい! お疲れ様っす!」
「ツナはしっかり家綱を送ってけよ。そいつは確かに優秀ではあるが、目を離すとどんな無茶振りすんのかわかんねーからな」
「わ、わかってるよリボーン! ……ほら兄さん、帰ろう」
腕を引かれて歩き出されて、俺は苦笑する。
否定はしないよ、しないけどさぁ……俺、信用なさすぎじゃないか? いや、原因は俺だけど。
ていうかリボーンは、俺の心配をしたいのか警戒をしたいのかどっちなんだよ。わかんねーよもう。
*
____そして翌日。
朝から例の岩山に登って修行を開始したツナと俺だったが、山本のことが心配でなかなか修行に身が入らなかった。
え? 寝たのかって? ちゃんと寝たよ、体調悪くなったら事だろ、ってうちの過保護な弟が言うから。熱はなんとか出さずに済んだ。
今日は朝からバジル君が来てくれていたので、覚悟の炎の修行と、フェイを出しての訓練は一旦やめることになった。
やるのは組み手と、それから零地点突破。ミツ君が会得するであろうファーストエディションはもちろん、『改』も覚えてもらうつもりだ。
まあ、いろんな目もあるから、一応は『俺も一緒に覚えていこうね』的な体でやるつもりだが。
……余命も残り僅かなわけだし、やれることはやっときたいよな。ツナたちのために。
「それにしてもバジル君はどうしてこっちに来たの? あ、いやもちろん来てくれてありがたいんだけど! リボーンにミツについてろって言われなかったの? ほら、ボンゴレのボスはミツだし」
……うーん、確かに。その通りだよな。俺はツナの質問に頷く。
この世界ではミツ君は確かにボス第1候補、わざわざ『補欠』の第2候補であるツナにバジル君を配置する理由がない。
……すると、バジル君は少しだけ不甲斐なさそうに苦笑いを浮かべて頭をかいた。
「拙者ではもう力不足なのです。光貞殿の力量は拙者を遥かに凌ぐものになっていますから」
(なんだって……!?)
たった数日で、バジル君を凌ぐだって?
……到底信じられない。どれだけ天才なんだミツ君は。
俺は目を見開いたまま硬直する。……この世界のツナも相当優秀だが、ミツ君はそれを遥かに越えていく天才だってことか。
「ですから、リボーン殿には綱吉殿のところへ行けと言われました。行って家綱殿を補佐しろと」
「ひぇー……やっぱミツ、めっちゃすげーよ……半端ないって……」
ツナは純粋に驚いて感心しているみたいだったが、俺はそう素直に受け取ることも出来ない。
……しかもリボーンの言い回しも上手い。さすがの話術だ。
リボーンとミツ君にとって、骸を救ける未知の力と、ヴァリアーとの繋がりを持つかもしれない俺は不穏分子だ。
警戒はしておきたいけど、俺は守護者たちにとってもそれなりの存在になっていて、しかも初代直系の超直感持ち。
あからさまに警戒する態度を持てば、守護者達にはリボーン自身への不信感を持たれる可能性がある。
……だけどやっぱり無視はできないんだろう。
骸たちの時はただの『甘ちゃん』で何とか誤魔化せても、初代直系の沢田家の長男が、クーデターまで起こしているヴァリアー側の味方かもしれないなんて、洒落にもならないもんな。
(そこでバジル君の派遣ってわけか……)
『家綱の補佐』という名目で送り込めば、バジル君が制止力となり、俺も何かをすることが出来ないと踏んだんだろう。
……もとから何もする気は無いけど、ミツ君はともかくリボーンにはやっぱり警戒されるよな。何かそこは寂しい気がする。
「まぁ、ツナはツナに出来ることをやろう。もしXANXUSが想像以上に強かったら、困るのは俺たちだからね」
「う、うん! そうだね」
「拙者も同意見です。頑張りましょう!」
……そして、やっぱり気になるのは、ヴァリアーの挙動不審な動向かな。