大空の王の逆行物語   作:サニー★

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前世での武器

「ハハ…あいつ、口悪くなったな……まあ、俺も父さんに似たような口きいてたから、似たのかな」

 

 

自分によく似た息子を思い出して、俺は笑う。

 

リボーンにも『ダメツナ2号』だなんて呼ばれてて、だいたい反抗するときは『1号のくせに』って言ってたっけ。

 

懐かしいなあ。

 

 

「……雲雀クンと骸クンは、すぐに襲撃犯を射殺したよ。

 

あの2人が、誰よりも憎悪を顔に湛えて、わざわざ『拳銃』で殺した」

 

「…うん」

 

「獄寺クンと山本クンは、一番に君に駆け寄った。家宣クンを案じながら、自分たちも泣いてさ」

 

「…そっか」

 

「君の奥さんと娘さんは泣き崩れてたね。笹川クンとクロームちゃんは彼女たちに寄り添ってたかな」

 

「…悪いことをしちゃったな」

 

 

空を見上げながら呟くと、白蘭のため息が横で聞こえた。

 

 

「綱吉クン、反省してないでしょ」

 

「してるよ」

 

「…だとしても、あの時の君に『死んでもいい』っていう気持ちがあったのは確かだ」

 

 

そうかな。そんなつもりはなかったんだけどな。

 

そう言うと、白蘭はまたため息を吐く。お前にため息つかれるの、腹立つんだけど。

 

 

「でも一人だけ、不可解な行動を取った子がいる」

 

「ふーん、誰?」

 

 

遥香(はるか)ちゃんだよ。なんだか真剣に悩んでて、それから君に駆け寄った。

 

それでボクの記憶は途切れてる。次の更新をお待ちください、だね♪」

 

 

雲雀遥香。中学生の時に恭弥さんが引き取った義理の妹で、のちに妻になった子。

 

『沢田綱吉』の一つ年下の後輩で、ちょうど代理戦が終わった後くらいから仲良くなった。

 

ちょっと変態だけど美少女で、ブラコンだけど天才で。

 

いつも何か大切なものを背負っては、一人で抱え込んでったっけ。

 

 

「…この世界には4つのイレギュラーがあるよね。

 

一つ目は『綱吉クン』の兄、沢田家綱。つまり君だ。

 

二つ目は君のかつての奥さんの姉、笹川友香。

 

三つ目は新しいボス候補、田沢光貞。

 

……それから、遥香ちゃんの不存在」

 

 

…それがいったい、何を意味するのか。

 

…君が、この世界に『転生』した意味は何か。

 

 

それをよく考えてみるべきかもね、と白蘭はいつもようにヘラッとした笑顔で、言った。

 

 

「あ、そうそう! それに今日は綱吉クンにプレゼントがあったんだよ♪」

 

「プレゼントぉ?」

 

 

胡散臭いな、という気持ちが顔に出たのか、白蘭が少しだけ膨れた。別に可愛くないぞ。

 

 

「そもそもね、こっちが本題だったんだ。いやぁ大変だったよ? これ手に入れるの。

 

あとこれは、“万一の場合”にって遥香ちゃんが持たせてくれたやつ。

 

いやーすごいよ。遥香ちゃんの“こんな事もあろうかと思って”の精度。ユニちゃんの能力レベルに当たるよね♪」

 

「…これは」

 

 

オレンジ色の鉱石が嵌められた、銀の指輪。黒のグローブ。

 

それから…プラチナで縁取りされたオレンジの(ボックス)

 

 

「大空のリングはランクA。

 

グローブは、ちょっぴり精度が悪いけど、その手の職人に作らせたから多分まぁまぁ使える。

 

それから、遥香ちゃんが持たせてくれた特殊ボンゴレ匣。

 

中にはお馴染み、君の大空不死鳥(フェニックス)が入ってる」

 

 

記憶と力を駆使して、揃えてくれた武器。

 

まさに情報は力だ。まさかこの時代の白蘭が、リングやグローブを手に入れてくるなんて。

 

 

そして、何より…特殊ボンゴレ匣。

 

 

空想上の生物を匣アニマルとして収めたボンゴレの秘密兵器は、開発者の遥香ちゃんがいないこの世界では、作られないものだ。

 

それを白蘭に預けた彼女の頭脳は、やはり非凡。

 

きっと遥香ちゃんは、白蘭がこれを能力を使って『俺』に届けることすら予測していたんだ。

 

 

「…お前に、世界征服なんてされたら今度こそ本当にどうしようもないな」

 

「んー? 今は大丈夫だよ、多分♪」

 

「多分って…」

 

 

俺が呆れた声で呟くと、白蘭は笑った。

 

 

「だってさ、この世界の綱吉クンが行く『未来』はパラレルワールドかもしれないじゃん?

 

少なくともボクは何もしないつもりだけど、戦いには巻き込まれる可能性は高いよね♪」

 

「確かに」

 

 

結局前世では、『未来』で戦った後帰ってきた世界で、白蘭は世界征服なんてしようとしなかったもんな。

 

 

「でも感謝してよ? ボク善良な一般人だから、グローブとリング手に入れるの大変だったんだから」

 

「はは…胡散くさー」

 

 

文句を言う白蘭は放っておき、匣を見下ろす。

 

 

『私を呼ぶのに、(ことば)不要(いらない)

 

 

言葉を語る、大空不死鳥の声が、聞こえた気がした。


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