ストライクウィッチーズ ~ファイ・トゥ・ピース Fight to Pease~   作:すかいりぃJ2@ハリボテ

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あんなのが相手では、ネウロイもさぞ大変だったことでしょう。
攻撃は当たらないし、振り切ろうにも振り切れない、2対1でもお構いなしですわ。
・・・え、なぜ分かるのかですって?

私たちがそうだったからですわ・・・。


第三話 Kulbit

side オリシナ

 

・・・どうしてこうなった?

 

今いる場所は、基地正面の上空。晴れ。微風。

正面にはバルクホルン大尉とイェーガー大尉、隣にはクロステルマン中尉。

そして、観測係としてリトヴャク中尉とユーティライネン少尉。

手にはオレンジ色の模擬戦用の銃で、中身はペイント弾。

ルールは簡単。2on2で、相手に当てれば撃墜。シールドと固有魔法による攻撃はなし。

それ以外は基本自由だけど、怪我を負わせるようなことは極力避けること。

 

 

 

・・・どうして、こうなった?

 

 

 

 

 

side ミーナ

 

四人が開始位置につくまでの間、私はさっきまで行われていた事情聴取の内容を思い返していた。

出撃前のことを加味し、私たちのことやネウロイについてと、彼女が知る国名と世界情勢について話し合った。

結果、私たちは驚きを隠せなかった。ネウロイやウィッチを知らないどころか、彼女は自らが『散香』という戦闘機であると言い出したから。

初めは誰も信じなかった。けど、さっきの空戦で見せたあの動きは、ウィッチとネウロイの戦闘ではまずありえないものだったし、彼女がユニットと強いつながりがある(シャーリーさんが起動させると突然苦しみだした)ことから、信じざるを得ないと判断した。

 

別の世界から来て、どういうわけかウィッチになった一人の戦闘機。

ネウロイなどおらず、人間同士が殺しあう世界。

その戦争が『ショー』として行われていること。

パイロットを務める者の多くが―――――――

 

「『キルドレ』か・・・。」

 

「美緒・・・。」

 

信号弾を持った美緒がやってくる。考えていたことは同じのようね。

 

「正直、信じられないわ。キルドレのことも、彼女のことも。」

 

「だが、嘘を言っているようにも見えなかった。それに、あいつのユニットが何よりの証拠だ。」

 

そう、彼女の世界ははあまりにも進んでいた。

人によって生み出された少年兵。

戦死しないかぎり不死身の子供。

戦闘経験や細かな癖を引き継いで生まれてくる他人。

永遠に終わらない戦争(ショー)

 

私たちの知る航空機とは全く異なるデザイン。

動力もプロペラも機体の後ろに乗せたプッシャ型。

ただ多く殺すために作られた、様々なフォルムの戦闘機。

大型ネウロイほどもある全翼の爆撃機。

彼女が落としてきた機体の数々。

 

そして最後に、彼女がこんなことを言ってしまった。

 

 

 

 

 

「私に()()()()()()()()()()()()、あの人だけ。」

 

 

 

 

ガタッ

 

『あの人』が誰かを聞く前に、シャーリーさんが興奮した様子で彼女に食いついた。

・・・スピード狂の彼女に火をつけてしまったらしい。

 

「・・・・・はぁ」

 

思い出したらため息が出てきた。

結局スピード勝負ではなく、さっきの戦闘で測りきれなかった実力を見るために模擬戦という形になり、「リベリアンだけではまともに測れるかも怪しい。」と言ってトゥルーデも参加。数を合わせるためにペリーヌさんも参加させ2対2で戦うことになった。

観測はサーニャさんにお願いした(エイラさんは無断でユニットを持ち出した)。

 

で、今に至ると・・・。

 

「まったく・・・。」

 

「はっはっはっはっは! まぁいいじゃないか。 それに、あいつの実力も見ておきたいしな。」

 

「・・・あの子を501に引き込む気?」

 

「ミーナもそのつもりだろう?」

 

ええ、もちろん。

突然現れて困惑しているでしょうけど、戦力は増えるに越したことは無い。

衣食住を保障してあげれば、彼女も断る理由はないはず。

あとは上層部を説得するだけだし、それもいくらでも言い訳はつく。

 

ただ・・・どれだけ言い繕っても彼女を利用することに変わりはない。

 

「・・・始まったな。」

 

見上げれば、白い線が絡み合うように動き続けていた。

でも、なにか・・・。

 

 

 

 

side サーニャ

 

オリシナさんの動きが鈍い。

戦闘機動を見たのはさっきの1回だけだけど、それに比べればかなり鈍いように見える。

ウィッチとしての動きは、それでも十分すぎるくらいに上手い。固有魔法を使っているようにも見えないのに、まるで後ろに目があるんじゃないかって思うくらいに危なげなく避ける。

でも、攻撃になるとほとんど何もしない。後ろにつけそうなところでも、積極的に動いていないような気がする。

手を抜いているのか、それとも何か理由があるのか。

 

「あ~、ペリーヌが先に堕ちるかナ。」

 

エイラの言う通り、バルクホルンさんとシャーリーさんがペリーヌさんのほうに向かった。

・・・あれ、なにか揉めてる?

・・・通信?

 

 

「なぁ、固有魔法で攻撃しなけりゃいいんだよな?」

 

 

 

 

side シャーロット

 

「おい、リベリアン。 何のつもりだ。」

 

「そのままの意味だよ。 今からあいつと踊ってくる。」

 

さっきからオリシナの奴、全然仕掛けてこない。

手を抜いている、というより本気を出していない感じだ。いや、出せていないようにも見えた。

なら、いっちょ驚かして本気にさせてやろう!

 

「じゃ、ペリーヌのほうは任せた!」

 

バルクホルンの返答も待たずに反転、固有魔法で加速して一気にオリシナのほうに近づく。

お、驚いてる。あんな顔もするんだな。

そう考えると同時に発砲、それをあいつは紙一重で避けやがった!どんな反射神経だよ!

 

「さぁて、これで目を覚ましてくれたかな。」

 

といっても、次で終わりにするつもりだけど。

再び超加速して後ろから近づく。もうちょい・・・今!

・・・我ながら絶妙のタイミングで引き金を引いて―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつが消えた。

 

 

 

 

side オリシナ

 

例えるなら、炭酸が抜けた常温のサイダーのようだ。

どうにも手ごたえがなく、それ以上続ける気にならない。

極限状態だからこそ全力を発揮できるし、そういった中で常に飛んできた。

実力を測るって意味もあるんだろうけど、私に言わせれば実力なんて出せるわけがない。

適当に流して、終わらせよう。そう思っていたその時、目の前の点が塊になった。

ほとんど条件反射だった。わずかに体を傾け オレンジ色のペンキを避ける

ほぼ同時に、私は大尉とすれ違った。

 

なんだ今のは?

あれが魔法か?

なぜ最初から使わない?

あっちも手を抜いていた?

視線を後ろにやる。少し離れてるけど、今のを使われたらすぐに追いつかれる。

次はない。

 

 

 

 

面白い

 

エンジンを回し 速度を上げる

チャンスは一回 一瞬だけ

あっちも加速体制に入る まだ慌てない

さぁ 来い 来い 来い

来た

体を起こす 腕も広げる

歯を食いしばってGに耐える 1秒もない

真下を弾がはしる すぐに体を戻す

右手が撃ちたがる まだだ もう少し

撃て 命中

再び加速 もう一人を追いかける

 

 

 

 

side エイラ

 

開いた口がふさがらなかった。明らかにさっきまでと動きが違う。

てゆーか何だアレ!?あんな反応、未来予知でもないと無理ダロ!

真正面から加速しての射撃。完全に不意打ちだったのに、最小限の動きで避けやがった。しかもその後の追撃も、タイミングを合わせてやり過ごした上に撃墜までしてしまった。

あの加速を一回見ただけで捉えたのか?それでもあそこまで完璧に合わせられるもんなのカ!?

見ろよ大尉のあの顔。何が起きたかもわかってなさそうダ・・・。

 

「エ、エイラ。判定・・・。」

 

「え・・・あ、シャ、シャーリー機、撃墜!」

 

 

 

 

side バルクホルン

『シャ、シャーリー機、撃墜!』

 

「何!?」

 

シャーリーがやられたのか?にしても早すぎる!

基本的にいい加減で自由気ままな奴だが腕は確かだ。少なくともただ油断して撃墜されるようなヤツではない。

どうする、先にペリーヌを落とすか?それともオリシナのほうに行くか?

相変わらずこっちが後ろをとり続けているが、青の一番は伊達ではなく、決定打には至っていない。

・・・これ以上の消費でヤツと戦うのは厳しいか!

すぐに反転、オリシナのほうへ向かう。戦場で正体不明なものほど怖いものはない。

はっきり見えた。・・・なんだ、さっきとはずいぶんと雰囲気が違うような・・・。

瞬間、あっちから先に撃ってきた。反射的に回避するがそのまま後ろにつかれる。

上昇、下降、加減速や旋回を繰り返すが全く離せない。とんでもない機動性能だ。後ろを向けばヤツの大きく見開いた目が常に私をとらえている。

くそっ、どうする?何か手は・・・ん?

そういえば、あいつは自分が元戦闘機だと言っていたな。はっきり言って信じていないし信じるつもりもないが、仮にそうだとするとどうだ?常にうつぶせのような姿勢をとり、正面方向にしか攻撃しない。戦闘機であった頃の癖が抜けていないのだとしたら?

・・・被弾のリスクは高まるが、これならばあるいは。

思い立つと同時に急上昇。あっちが追ってくることも確認する・・・・・今だ!

 

「喰らえ!!」

 

そのまま減速、ホバリングしながら真下に向かって撃ちまくる。当たればそれでよし、当たらなくても後ろをとれる。

よし!避けられたが減速できない!このままやり過ごして後ろに・・・・・!?

 

 

 

 

side オリシナ

 

ウィッチならば360度どこへでも撃てる ホバリングも可能だ

僕には難しいかもしれない 戦闘機が空中で止まることなどできない

だから あっちが急上昇を始めた時から こっちも準備に入る

チーム間で無線は使えるのだが 今の今まで切っていた

このまま堕とせるかもしれないけど 保険を掛ける

 

「・・・・・っと!聞いていますの!?援護しますわよ!」

 

通信を開けたとたん怒鳴り声 ちょっとうるさい

 

「聞いてる。合わせて。」

 

「・・・は?」

 

彼女の位置は・・・あそこか なら 僕はこっち

 

「喰らえ!!」

 

真下に撃ってきた これも予測済み

身体をひねって避ける 同時に身体を反らして仰向けに

トリガーを引く

 

「! くっ!」

 

避けた でも大丈夫。

 

「チェックメイトですわ!」

 

そっちには中尉がいるから。

 

 

 

 

side ミーナ

 

「単刀直入に言うわ。一緒に戦ってちょうだい。」

 

模擬戦の結果はオリシナさん・ペリーヌさんのチームが勝利した。ただ、そこから読み取れる情報は驚愕すべきものだった。

オリシナさん自身の証言から固有魔法は使っておらず、あれだけの軌道を動体視力と反射神経だけで行ったこと。

シャーリーさんの加速については、表情や目の動きを見ればおおよそのタイミングはつかめる、あとは加速のスピードだがこれは一度見た、とのこと。

最後の一連の流れも、ペリーヌさんが大体どこにいるのかは把握していたらしい。

そして何より、私たちとは場数が違いすぎる。

一人のウィッチをエースと呼ばれるまで育て上げることの大変さを考えれば、彼女を引き入れるためには大半のことはするつもりでいる。信用していない子もいるでしょうけど、彼女を引き入れれば隊員の生存率はグッと高まる。

 

「いいですよ。行く当てもないので。」

 

なんていろいろ考えていたら、あっさりと了承されてしまった。

え?本当にいいの?

 

「はっはっは!そうかそうか。よし、これからよろしく頼む。」

 

いやいや、美緒ももうちょっと考えてあげて!

 

「お前の話を信じるわけではないが、まぁ、お前の腕は信じてやってもいい。」

 

「素直じゃないねぇ、トゥルーデ。ま、こっちもよろしく!」

 

「そうと決まりゃ、今度おまえのユニットを見してくれ!」

 

「私も気になる~!見せて見せて!」

 

「まったくこの二人は・・・。まぁ改めて、よろしくお願いしますわ。」

 

「・・・おまえ、ホントは未来予知できるんじゃないカ?」

 

「エイラ、そんなこと言ってはダメよ。・・・・あ、よろしくお願いします。」

 

あれ?これ私がおかしいの?なにか間違えてるかしら?

 

「皆さん、よろしくお願いします。」

 

あぁ、勝手に話が進んでいく。

・・・でも、入ってくれることには変わりないわね。

 

「ようこそ、第501統合戦闘航空団 『ストライクウィッチーズ』へ。あなたを歓迎するわ。」




本当は模擬戦と入隊までで2つに分けようと思っていましたが、勢いで繋げてしまいました。

質問、指摘、コメントをお待ちしております。

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