Fate/Grand Order ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 あらすじにある通り、ジャンヌ・オルタを引いて、新宿衣装を手に入れて再燃した熱で書きました。突貫作業なのでガバガバなのはお察し。

 それでも良ければお進みください。

 文字数は約七千。

 視点は基本三人称で、思考・感情の部分で一人称的な描写という挑戦。

 ではどうぞ。




序章:1 ~放浪~

 

 

 ――――唐突に、ふと、目が覚める。

 

 何に起こされた訳でも無く、ただ生物の在り方として自然と脳が、体が覚醒し、瞼を開く。

 眠りから覚めたばかりの視覚情報として、視界一杯に黒と赤が映し出された。

 黒は、暗雲と影。

 赤は、炎。

 メラメラと、灰色の瓦礫や地面を嘗めるように揺蕩う赤を、ぼうっと見つめる。

 立ち上る黒を、その先の空一杯に広がる暗雲を見て、ぼうっとする。

 耳朶を打つのは乾いた炎の音と微風のみ。

 邪魔する存在は何も無く、ただ只管に周囲に広がる終焉の光景を見続けた。

 

 *

 

 無心に光景をぼうっと眺め始めてどれくらい経っただろうか。

 一分かもしれないし、十分、一時間かもしれない。

 時間を忘れてただ只管眺める最中、眠りから覚めた時と同じようにまた唐突に意識が覚醒した。

 

「――――此処は、一体……?」

 

 最初に浮かんだ疑問は、己が居る場所の事。

 だが、その疑問は二重の意味が込められていた。すなわち、己が居る場所への疑問と、この場所に己が居る経緯への疑問だ。

 意識が覚醒し、疑問を自覚してから、今度は意識して改めて周囲を見渡す。よく見れば猛る炎に包まれたモノは大半が石材によって作られた建物で、凄まじい力か何かで崩壊、倒壊しているものだった。

 視線を下へ向ければ、幾つもの破片や瓦礫で埋もれているものの、辛うじて覚えのある白線を見付ける。

 どうやら自分が眠っていた場所は道路のど真ん中らしかった。

 道路や石材で作られた建築物から、この場所が現代都市である事が何となく分かった。よく目を凝らすと離れたところには道路標識や信号機が屹立しているから間違いない。

 ――――問題は、現代都市に己が居る事だった。

 

「記憶喪失とは違う気がする……」

 

 思考し、出した結論を小さく独白する。

 自分の事について忘れている事があるか、分からない事があるか振り返るが、少なくとも自身の名前や立場、目を覚ます寸前まで何をしていたかについては覚えていた。

 自身の名前は《キリト》。

 かつては織斑一夏と蔑まれ、今は桐ヶ谷和人という名前を義理の家族から戴き、苗字と名前を組み合わせた独自の名前を名乗っていた者。

 独自の名前を名乗る事になったのは、『ゲーム世界に飛び込んだような体験』を可能としたフルダイブ型のMMORPGをプレイしていたから。

 そのゲームは正式サービス開始と同時に何者かの手によってデスゲームと化し、以降、舞台となる鋼鉄の浮遊城にて約一年半もの間をほぼ一人で生き抜いて来た。強大な敵を相手に徒党を組む事はあるが、それでも集団からは疎まれ、人によっては殺意を向けて来る事もある関係性となっていた。

 目覚める前までにある直近の記憶では、自身の大切な義理の姉と戦闘指南をしている二人の女性プレイヤーを助ける為に、死亡する事を覚悟の上で外周部から飛び降りた。二人をしっかり転移で街へ送った後、自分はゲームのシステム上死ぬしかない運命を辿った。

 己にある記憶はそこまで。欠けた、足りないと思う部分は無かった。

 つまりこの場所に居る答えが自分の記憶にあるとは思えない事になる。

 

「誰かが、此処に……?」

 

 次に考えた事がそれだが、それでも疑問がまた発生。

 約一年半もの間生き抜いて来た自身の肉体は絶対的に肉体的な衰えを見せている筈なのだ。現代都市に居る以上リアルの肉体を使っていると考えても良いと、そう思った。

 この肉体がリアルのものか否か気になり、岩に腰を下ろしたキリトは己の体を見下ろす。

 服装は、少なくとも現代の日本だと避けられるであろう、黒一色で統一されたものだった。黒い半袖シャツと長ズボンはともかく、背中に物を背負うように斜めに回されたベルトと前開きの黒コートは確実である。加えて両手は指貫手袋に覆われ、ブーツは黒い革で作られている上に鋲付きという危険仕様。

 それらはキリトがデスゲームで戦う最中に愛用していた装備だった。

 当然だがキリトはリアルでこんな服を持っていないので、必然的に『仮想世界に居る』という結論に行き着く。その結論であれば肉体的に衰えが見られない事にも納得がいった。

 別の仮想世界への移行については、自身の義理の姉や戦闘指南をしていた女性二人が経験していると知っていたため、別段不思議では無かった。かなり現実感の薄い話ではあるが前例があるのだ。前例がある以上鼻から否定するほどキリトは愚かでは無かった。

 そうして自分の中に現状に納得がいく仮説を持ったキリトは、次の思考に移った。

 無論、それは『これからどうするか』である。

 約一年半の間命懸けの戦いを一人で生き抜いて来たキリトは戦闘に関する経験は豊富だ。しかしその幼さと過去の経歴が災いし、常識的な部分の知識に乏しい面があった。

 現状を『自身が今まで居た世界とは違う仮想世界』と捉えているため、ゲーム的な思考で動こうとしたのだ。

 しかしキリトが経験しているゲームは、デスゲームとなったMMORPG、すなわちファンタジー世界の冒険ものしかキリトは知らないのだ。装備を整え街を発ち、道中遭遇する敵を倒し、新たな街に着いたらまた装備を整え……それを繰り返す事しかキリトは知らなかった。

 災害についての知識はある事情からそれなりに持っていたが、流石に街が崩壊していると思しき規模の大災害での対応を知っている筈もなく、表向き冷静でも内心では混乱していた。

 無知である事、未知の状況とそれに対する混乱で、キリトは眉根を寄せた。腕を組んで首を捻る。勿論、これだ、と思う案など浮かぶ筈も無く、時間は無為に過ぎていく。

 

「……一先ず、火の手が少ない場所に行こう」

 

 結果、次善とも言えない行動を取る事にした。炎が酸素を使って燃えていて、煙を吸うと昏倒すると知っていたが故の結論だった。とにもかくにも今は考える時間を持てる安全な場所へ移動しようと判断したのだ。

 キリトはゲーム的な思考と、現実に於ける災害に対する知識を合わせ、どうにか行動を選択した。

 そうと決まれば早速と、キリトは岩から腰を上げる。

 かつては未踏の危険域で未知のモンスター達を相手に一人で蹂躙を繰り返し、様々な情報を入手した経験を持つキリトは、『時は金なり』とばかりに速さを尊んでいた。拙速では無く、巧遅でも無く、巧速をこそ好んでいた。最善の手を得る為に何よりも情報を求めていた。

 結果的にそれで生き残って来たからこそ、キリトは何よりも『情報』を得ようとする。

 だが、『情報』を得るにはまず『生命線』の確保が必須。そうでなければ情報収集もままならなかった為だ。なまじ一人で生きて来たからこそ生命線の確保の重要性を理解していた。

 キリトは火の手があまり回っていない場所を拠点とし、そこから水と食料の確保を考えていた。仮想世界では水分補給と食事、排泄を必要としないが、ヒトとして最低限の衣食住は保とうと心掛けているが故の思考だった。かつては不要と断じていたが、己を案ずる人の言葉を無碍には出来なかったのである。

 岩の上に立ち上がったキリトは、地図や案内板にあたるものは無いかと周囲を見渡した。現在地と全体図を把握出来るだけでも行動が楽になる上に脳内地図も描ける為だった。

 

「……無い」

 

 しかし願いとは裏腹に地図に該当するものは無かった。

 しょんぼりと肩を落とし、嘆息する。

 そうなればあとは地図の発見、拠点や水、食料確保を同時進行するしか無いため、気を取り直してキリトは火の手の薄い場所から移動する事にした。

 

 *

 

「……アレは……」

 

 移動を開始しておよそ十分が経った頃、キリトは倒壊した建物の瓦礫の影に隠れて、およそ三十メートル先の様子を窺っていた。

 視線の先には黒色の人骨が筋肉や脂肪も無く骨だけでガシャガシャと音を立てて歩く光景があった。

 キリトのゲーム的知識の中にその骸骨に該当しそうな名称があった。《スケルトン》と呼ばれる存在で、以前いたゲーム世界では死霊系にカテゴライズされ、個体によって剣や槍、斧、弓矢など様々な武器を持ってプレイヤーを苦しめた存在だ。

 名称を何度か変えて立ちはだかった骸骨達は、見た目こそ色や装備の形状違いばかりだったが、そのどれもがプレイヤーにとって脅威となっていた。

 以前キリトが居た世界は『仮想現実』という現実に限りなく似せられた電子世界、更にゲームはVRMMORPG、すなわち多人数を前提とされたものだったので、雑魚を相手にするのも複数を前提にされていた。故に一個体のサイズは基本的に大きく、二メートルから三メートルなどザラに居た。幼いキリトにとってすれば他の者達よりも遥かに巨大に映っていた。

 無論、サイズが大きければ力も強い。筋肉などは無かったがそこはそれ、ゲーム世界なので関係無く、攻撃力や防御力といった数値の勝負での競り合いだった。

 スケルトンは骨なので、打撃系の武器に弱かった。また武器や盾での防御を除けば基本的に攻撃が直撃すると痛快な程に体力を減らすくらい防御力も高くない。

 反面、攻撃力は高く、また人型なのでプレイヤーと同様のシステム的な技を扱えた。搭載された人工知能の質によっては作戦を立て、技術を見せ付ける個体も居たほどだ。

 システムによって動かされるモンスターとは言え、そこまで来ればほぼプレイヤーを相手にしているも同然だったが故に、ゲーム世界でも人型は恐れられていた。

 その恐ろしさは、ソロ故に一度の失敗が死に直結する薄氷の上を常に歩いていたキリトが、誰よりも理解していた。建物の影に隠れて様子を窺っているのもそのためだった。

 

「……どうしよう……」

 

 キリトが暫定的に《スケルトン》と呼ぶ事にした個体は、刃が毀れたボロボロの蛮刀を手に徘徊していた。カトラス、あるいはマチェーテと呼ばれる剣だ。

 武器を持っている時点である程度の知能があると分かるので、キリトは下手に動けなくなってしまった。一体居ればまだ他にも居ると考えた方が身のためだと身を以て知っているからだ。

 そのためキリトは悩んだ。

 周囲に他の敵影は無いのでアレ一体。

 一対一に持ち込めるので、威力偵察や自分のこの世界での戦力の確認を込めて一当てするか、あるいはここは無視して拠点確保を急ぐか。

 

「――――一度、当たってみよう」

 

 数秒悩んだ末に、キリトは戦う事を決断した。

 その決断の根幹には、少なくともデスゲームで使っていた武器は全て扱える事に移動中気付いたから。

 キリトはとある死闘の果てに、ローマ数字で《ⅩⅢ》と書いて『サーティーン』と読む装備登録型の召喚武器をゲーム世界で手にしていた。通常のプレイヤー一人につき一つしか武器を装備出来ない制限を、『武器に武器を登録する』性質を持つ《ⅩⅢ》を使う事で、間接的に『全ての武器を装備し扱っている』状態にする特殊武装である。

 《ⅩⅢ》は装備者の強固なイメージによって出し入れ可能なので、使い手が反応さえ出来ればどんな状況、どんな敵にも対応可能な武装となる。しかも武器を出す場所は手許だけでなく敵の足元や背後にも可能で、仮に投擲した後もその先の軌跡を強くイメージすれば自在に動かせるという破格の性能もあった。

 イメージとして『不可視の武器庫』とキリトは考えている。 

 《ⅩⅢ》を手にしたのは一週間ほど前なので未だ万全に扱えている訳では無いが、キリトの単騎戦力が一気に向上し、数十人で一斉に掛かる必要がある強大な敵を一人で一方的に倒せる戦闘能力を得ていた。

 この壊滅した都市で目を覚ました後、その《ⅩⅢ》の使い心地を多少確かめ、最低限であれば戦闘も可能であると確認していた。

 その確認が今回、キリトに戦闘を行う決断への決定打となっていた。

 剣持ちのスケルトンと戦う決断をしたキリトは、右手に自身が長らく使ってきた愛用の剣を取り出した。鍔の部分は機械のギアを模した形状で、刃の部分は白いが、それ以外は切っ先から柄の先まで漆黒という剣。知り合いの鍛冶師から魔剣とまで称された、エリュシデータと呼ばれる片手直剣である。

 《ⅩⅢ》の仕様と性能を確認した後、今度は自身の武器がどれだけ相手に通用するかの確認も込め、万が一も考え、キリトは己が最も信用する剣を選択した。これで余裕があるのなら他の武器も使い、拮抗ないし圧倒されれば一気に押し切る腹積もりをしていた。

 愛用の剣を右手に携えたキリトは、改めて他に敵が居ないか周囲を見回した。

 結果、敵影は無かった。

 

「ふ……ッ!」

 

 ならば躊躇う必要は無く、キリトは骸骨剣士が自身に背を向けた瞬間強く地面を踏み締め、地を蹴った。

 瞬間、轟ッ! と風が鳴り、風景が流れ――――一秒も経たぬ内に、キリトは骸骨剣士の背後へと移動していた。

 

「く……ッ?!」

『――――?!』

 

 三十メートルもの距離を一瞬で詰める事になると予想しておらず、酷く不完全ではあるが、速度と勢いに任せた袈裟斬りをキリトは放つ。

 袈裟掛けの強烈な斬撃を受けた骸骨剣士は、その一撃で肩甲骨、鎖骨、肋骨、脊椎、骨盤を纏めて両断され、乾いた音と共に乾いた大地に転がった。

 

「と、とと……ッ!」

 

 斬り付けた勢いを瓦礫に剣を突き立てて抑え込み、数メートル地面を滑って漸く止まる。

 警戒しながら骸骨剣士が居た場所を見れば、地面に崩れ落ちた人骨の数々は青白い粒子へ散っていく途中だった。

 

 ――――やっぱりここは、何らかの仮想世界なのか……

 

 キリトが以前いた世界も、体力をゼロにされた敵は蒼白い欠片へと爆散し、散っていった。演出こそ異なるが青白い粒子へ散っていく様は慣れ親しんだ現象に近似していて、キリトにとってこの場所が仮想世界であるという予測を根拠付ける一つとなった。

 気になる事は装備が引き継げている事だったり明らかに前の世界の時以上の身体能力を得ている事だったが、そもそもどういう世界か分からない以上どうしようも無いので現状は棚上げする事にキリトはしていた。

 一応、これではないか、という推察は立てられていた。

 キリトの義理の姉はデスゲーム化した仮想世界のゲームとは別のゲームをプレイしていたが、原因不明の何かをきっかけにデスゲームの世界へ迷い込んでしまったプレイヤーだった。その義理の姉は、デスゲームの世界と共通するデータ項目に関しては引き継いでいたのである。

 義理の姉は妖精郷を舞台にしたゲームをプレイし、そこで一流のプレイヤーとなっていた。その義理の姉がデスゲームに来た時、レベルは初期レベルでは無くある程度上がっている状態だった。

 自身もその状態なのではないか、とキリトは予想した。

 デスゲームの世界のレベルとステータスが引き継がれた結果、この世界でのステータス判定はデスゲーム世界でのものより大きく影響されているのでは、と。そうであれば特にレベルアップする行為をしていないのに以前より能力が高くなっている事にも説明が付くのである。逆に言えばそれでしか説明出来ないという事なのだが。

 理屈や真実はどうあれ事実として戦闘を可能とする要素となっているので、最終的にキリトは真実究明を横に置き、疑問を棚上げする事を良しとしていた。

 

「倒せはしたけど……過信は、気を付けないと……」

 

 以前よりも身体能力が更に上昇している事実に気が付いたキリトは、それでも気を抜かない事を己に課した。

 キリトは一度デスゲームの世界で死亡した――と思われる――身故に、慢心・過信で痛い目を見ている。しかも大切な人を護れなかった負い目があるせいでその心掛けは半ば責務、義務にまでなっていた。

 身体能力が上がったのならまだ無事な建物の屋上から屋上へ飛び移ったら速いかも、と一瞬考えたが、それを戒める為にも敢えて自分に言い聞かせるように独白していた。骸骨の剣士タイプは確認出来たが、弓矢を扱える者が居ないとも限らない。狙撃されては堪らないと自らに注意を促していた。

 よってキリトは骸骨剣士を倒した後、自分の身体能力がどれほど以前より向上したかを確認、敵影を探りつつ、安全な場所を求めて彷徨い始めた。

 

 ***

 

「――――何だ、あの坊主……」

 

 災禍に見舞われた街の中で起こった戦闘とも言えない光景を偶々目にし、その不可解さに疑問を洩らす。

 何が起きたか詳細は分からないが、とにかく『人が居なくなった』という事実だけを知っている身として生きている人間が居た事ですら驚きなのに、それが自身にとって雑魚とは言え常人では歯が立たない存在を一撃で屠ったのだ、疑問も覚える。

 

「アレを倒せるって事は、あの坊主は魔術師、なのか……?」

 

 少年が倒した骸骨という化生を初め、およそ人外に該当する存在は特定の力を持った存在にしかどうこうする事が出来ない。その特定の力を持った存在は《魔術師》と俗に呼ばれている。

 呼び方は正直どうでも良い話で、『特定の力』の方が重要となる。

 その『特定の力』とは、『魔力』と呼ばれるもの。基本肉眼では視れない力の源だ。

 骸骨は魔力によって構成されていたモノ。物質的なモノを一つとして含んでいないが故に、魔力を扱えない/知らない常人にはどうする事も出来ない。撃退するのに魔力が必要なのに常人に出来るのは物理的手段だけなのだからそれも当然の事。

 だから己が目にした光景と事実を考えれば、あの少年は魔力を使っていたという事になる。実際少年の体の中にはかなりの量の魔力があった。

 だが、不可解な点がある。

 

「何か魔術を使ったようには見えなかったが……」

 

 魔術にも色々と種類があるが、己が使う北欧のルーン魔術の他には、物質に魔力を通して構成する物質同士の結合を強める、あるいは肉体に施して身体能力を底上げする強化の魔術などもある。

 炎や風などを使わず物理的手段に頼ったのであれば、一番考えられる事は少年が手にしていた剣に強化の魔術が施されていたか、あるいは剣そのものが魔力を絶つものだったかの二つに一つ。

 だが、《森の賢者》としての己ですら、何か魔術を行使したと思しき様子は見られなかった。剣にもだ。

 かと言って、あの剣に魔力を絶つ力があったとも見えなかった。

 幾ら体内に膨大な魔力を内包していると言えど、それを体外へ放出しなければ、攻撃は純粋な物理攻撃でしかなくなる。それでは骸骨を倒せない。

 魔力や魔術を使った訳では無いのに骸骨を倒せた。

 その矛盾が不可解な点なのだ。

 

「こりゃどういう事だ……?」

 

 全知という訳では無いし、《森の賢者》として戦う事も数は少ないが、それでも経験自体は豊富な身だ。不可解に過ぎる矛盾を見てしまっては経験が多いからこそ疑問も募るというもの。

 猫の手も借りたい状況ではあるが、この矛盾が己に躊躇いを持たせていた。

 

「――――チッ。槍を使ってる身ならむしろ望んで突っ込んでいただろうによ。儘ならねぇモンだ、まったく」

 

 ただ強いヤツと戦いたくて参加したというのにとんでもない事になったものだと、現状を打破出来ない己の状態に忸怩たるものを覚えながら、火の手の薄い場所へ向けて進む少年を見送った。

 

 





 はい、如何だったでしょうか。

 実は文体の挑戦も含めて投稿したのだ……書き方の改善点があればドシドシ送って下されば嬉しいです。

 内容は……うん、お察しなので。

 そもそも第一部をクリアしないといけないというね……!



 ちなみに、本作のキリトについて。

 拙作《孤高の剣士》本編のSAOでは、HPが全損してもリアルでは死んでいない設定になっています。

 それから《孤高の剣士》の内容で、義姉(リーファ)と弟子(シノン)が外周部から落とされ、助ける為に己が身を犠牲にする文中にて語られている通りの話があります。

 本編では落下中に強制転移で《ホロウ・エリア》へ転移しますが、本作のキリトはそこから分岐した存在。何らかの理由/ご都合主義で、SAOの装備/能力を持ったまま並行世界へと流れた存在、という感じ。

 なので転生でも、憑依でもありませんが、念のために《転生》タグを付けています。

 また、文中で『別の仮想世界?』と考えているのは、落下中に拙作本編リーファが経験したような、別ゲームへの転移現象が起きたのかと考えているからです。

 ――――ほらね? もうご都合主義満載でしょう?(白目)

 熱が高じて書いた本作とそんな私に期待を掛けてはいけませんよ(迫真) 偉大な先人達とは違うのだから(戒め)



 そして、時間が出来て、且つ熱が再燃した時に書く感じなので、次の投稿が何時かは分かりません。拙作《孤高の剣士》を優先してますし、これから忙しくなりますし。熱がある今は多分ちょっと速いでしょうけど。

 なら浮気すんなよ、っていう指摘はやめて……分かってるから……(´;ω;`)

 感想の他、批評・批判・評価等、待ってます。

 では、次話にてお会いしましょう。


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