ストライクウィッチーズ 旭日の翼   作:ティルピッツ
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第5話

1936年 7月7日

 

 

 

 

『はっ…………はっ…………』

 

 

 

 

その日、私は道場から少し離れた舗装されていない道を走っていた。と、その時道路の近くの小丘になった場所に人影を見つけた。

 

 

 

 

『あれは…………竹井さん……?』

 

 

 

私は一旦走るのをやめて、竹井さんらしき人がいた小丘に向かった。その場所に辿り着くと、そこに居たのはやはり竹井さんだった。何事かを考えているのか、私には気付いていない様子だった。

気になったので話しかけてみる事にした。

 

 

 

 

 

『おはようございます、竹井さん…………ですよね?』

『!!』

 

 

 

えっと…………普通に話し掛けたんだけど、竹井さんは一瞬ビクッ!と身体を震わせると、次の瞬間怯えた表情でこちらを向いてガタガタと震えていた。

もしかして、話し掛けなかった方が良かった??

 

 

 

『ええっと…………晴香です。昨日道場でお会いした…………。竹井さん…………ですよね?』

『あっ、あ、は、はい。そうです。竹井醇子です…………。』

『驚かせてしまった様でごめんなさい。そのつもり無かったんですが…………。』

『いえ…………私……初対面の人と話す時は緊張してしまって…………』

 

 

 

 

それにしては凄い驚きようだったけど……まぁ、それはいいとして。

 

 

 

『隣いいですか?』

『はい……どうぞ。』

 

 

 

竹井さんに確認をとってから彼女の隣に座る。

 

 

 

『いつもこの時間には起きてるんですか?』

『はい……いつこの時間に目が覚めるんです…………』

 

 

 

へぇ、結構早起きなんだなぁ…………

因みにまだ午前5時30分だけど。

 

 

 

 

『どうしてこの場所に?』

『………………。』

『あ、話したくないなら話さなくていいですよ。』

『いいえ、隠す程の事じゃありません…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私…………不安なんです。』

『不安?』

『はい…………』

『私でよければ相談に乗りますよ。1人で抱え込むより誰かに話すと少しは楽になります。』

『…………実は…………』

 

 

 

 

 

 

 

竹井さんが話してくれた内容はこうだ。

 

竹井さんは扶桑皇国でも名門の家に扶桑皇国海軍少将の子女として生まれた。特別にウィッチになりたかった訳ではなく、魔法力が発現した事から北郷少佐が師範代の講導館に行く事となり、少佐からは剣道の指南を受けていた。

坂本さんと若本さんは同期で、共に修行する仲である。

そんな中、竹井さんは2人に比べ体格が小さく剣術でも劣る事を気にしていたそうだ。

 

 

2人の試合を見てて思ったけど、あの2人は別格だったから竹井さんがそこまで劣ってるとは思わないけど…………

長い付き合いの友達は優秀なのに自分は違う事を気にしてるのか…………いや、私から見れば竹井さんは十分優秀だと思うけど。

 

 

 

 

 

『私この先上手くやっていけるのか不安で仕方なくて…………。』

 

 

 

竹井さんはそう言うと、落ち込んだ表情で地面を見つめた。

うーん…………励ましになるかは分からないけど、話してみるか…………

 

 

 

 

『竹井さん、私も貴女と同じように思った事はあります。』

『……え?』

『私には戦友と言える奴がいました……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ………………。』

『なんだこんな所にいたのか。探したぞ。』

『なんだお前か、赤松(あかまつ)。』

 

 

 

話し掛けてきたのは、戦闘機パイロットで戦友の赤松(あかまつ)貞明(さだあき)だった。

 

 

 

『なんだお前かじゃねえよ。艦内探しまくったんだぞ。』

『そうかい。んで、なんの用だ?』

『お前なぁ…………まぁいい。お前何か悩みでもあんのか?』

『…………なんだ急に。悩みなんかねえよ。』

『惚けんな。何年一緒だと思ってる。俺は誤魔化されんぞ。』

『…………やれやれ、お前に隠し事は出来んか……』

『俺で良かったら相談に乗るぞ。ほれ、握り飯貰ってきた。食え。』

『ひとつ貰うぞ。』

『おう。』

 

 

 

 

 

 

『んで、おまえの悩みってなんだ?』

『紫電の事だよ。』

『新型の噴進戦闘機のか?』

『ああ、そうだ。』

『紫電がどうした?』

『あの機体は……俺には上手く乗りこなせない。』

『何?』

『癖があり過ぎるんだ。俺が乗るにはまだ早い。』

『なぁに馬鹿な事言ってんだ。そんな事で悩んでたのか?』

『そんな事だと?!お前には分からんだろうがな!才能のない俺にはあの機体は使いこなせねえんだよ!才能のあるお前と違ってな!』

『馬鹿言ってんじゃねぇこのど阿呆!!』

『痛っ!!!何すんだこの野郎!』

『甘ったれんじゃねえよ!才能がないだぁ?そんな事でお前は戦闘機パイロットを辞めんのか?ええ?ふざけんな!お前は今まで努力を重ねて頑張ってきたんだろう?なのに新型機を乗りこなせないのを才能のせいにしやがって…………寝ぼけんのもいい加減にしやがれ!!』

『赤松………………。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『そいつのその言葉のお陰で、私は立ち直る事が出来ました。』

『………………。』

『私はまだウィッチとは何なのかよく分かりません。でもね竹井さん。私には貴女が不安になるような事は無いと思います。だって、今まで頑張ってきたんでしょう?その努力が無駄になるなんて事は、絶対ありませんから。』

『……………………。』

『だから、そんなに不安になる必要は無いと私は思います。』

『晴香さん………………。』

 

 

 

 

 

あ……やば、竹井さんには私が転生者だって事話して無いんだった。なのに、無駄に暑苦しく語ってしまった、どうしょう………………

 

 

 

 

 

『……ぷっ…………ふふっ』

 

 

 

竹井さんは突然、くすくすと笑い始めた。

 

 

 

『あ、えっと……竹井さん?』

『……心配掛けてごめんなさい。でも もう大丈夫です。晴香さんの話を聞いたらなんだか吹っ切れちゃいました。』

 

 

 

竹井さんはそう言うと、とびきりいい笑顔を見せた。どうしょう、すごく可愛い…………

ま、まぁ結果的に励ます事になったみたいだし……結果オーライ??

 

 

 

『晴香さん、相談に乗ってくれてありがとう。』

『いえ、こちらこそお役にたてて良かったです。』

 

 

 

お互いそう礼を言っていたその時

 

 

 

バキバキッ!

 

 

 

『『!!』』

 

 

 

 

私達の近くにあった大木が音を立てて倒れてきたのだ。

 

 

 

 

 

『危ないっ!』

『きゃっ!?』

 

 

 

私は咄嗟にその場から離れた。が、竹井さんは足がもつれたのかその場で倒れてしまった。このままで倒れてくる木の下敷きになってしまう。

そう思った時、身体が反射的に動いていた。

 

 

 

 

 

『竹井さん!!』

 

 

 

 

私は竹井さんに上から覆いかぶさる形となり、無意味だと分かりながらも咄嗟に右手で倒れてくる木を防ごうとした。

が、木は変わらず倒れてくる。このまま押しつぶされる…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、いつまで経っても押しつぶされる感じは無い。何故なんだと思っていると竹井さんが私を見つめている事に気付いた…………

 

 

 

 

 

『晴香さん……それ…………もしかして…………!』

『それ?』

 

 

 

竹井さんはそう言うと、私の右手の先を指指した。そのほうを見るとなんと青の薄い壁の様な物があった。それは私の右手から出ていた。

 

 

 

『これは……………』

『シールド!』

 

 

 

 

シールド?それって北郷少佐が言っていたウィッチが身を守る為の魔力防壁?まさか……!

 

 

 

 

 

『私には魔法力が?!』

『晴香さん!』

 

 

 

あぁそうだ。まずはこの状態をどうにかないと…………

右手だけじゃ支えきれないので、両手でシールドを張る。

 

 

 

 

 

 

『ふん……っ!!…………ッ!!』

『頑張って!!晴香さん!!』

『……っ!!う……ご……けぇぇぇ!!!』

 

 

 

 

私は両手にめいいっぱい力を込めた。

 

 

 

 

 

『どぉりゃぁぁぁ!!!!』

 

 

 

 

 

そして、力任せに倒れて来ていた木を反対方向に押し返した。ドシン!という重い音をたてながら木は反対方向に倒れた。

ふぅ…………シールドが無きゃ死んでた…………

 

 

 

 

 

 

『晴香さんっ!!』

『うわっと!!た、竹井さん……?』

『ありがとうっ!晴香さんがいなかったら私今頃……っ!ありがとう!ありがとう!』

 

 

 

竹井さんは泣きじゃくりながら、私に抱き着いてきた。余程怖かったんだろうな………………

魔法力が無ければ、私も竹井さんもあの木の下敷きになってた…………

ん?そう言えばウィッチになるには魔法力と使い魔との契約が条件だって少佐が言ってたな…………もしかして…………

 

 

 

 

 

 

『………………。』

『あれ、どうしたですか?』

『…………耳が生えてる…………あと……尻尾も…………』

 

 

 

 

なんか、こう…………普通は自分に耳が生えたり、尻尾があったりしたら普通びっくりするけど…………江藤中佐と北郷少佐が1回見せてくれたからそこまで驚かないんだよなぁ…………

それにしても私の使い魔って何なんだろう…………

 

 

 

 

 

 

 

『晴香さん。』

『え、あ、は、はい?』

『私の事……さん付けじゃなくて……その……名前で呼んでもらえますか?』

『名前で?』

『はい。私とは同い歳って聞いたから…………』

『なら、私もさん付けじゃなくて名前で呼んでください。』

『えっ』

『同い歳なのに、さん付けで呼ぶのは変でしょ?』

『そうです……じゃなかった。そうだね…………。』

『そう言う訳で、改めて宜しくね、醇ちゃん。』

『じゅ、醇ちゃん……』

『あっ、その北郷少佐がそう呼んでたから…………ダメ……かな?』

『ううん。それでいいよ。』

『良かった……』

『宜しくね、晴香ちゃん。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なぁ…………あの二人あんなに仲良かったか?』

『いや……違う筈……だけど…………』

『昨日の内に何かあったのかもね。』

『先生は何か知ってますか?』

『いやぁ?私にも分からないなぁ。』

『『うーん??』』

 

 

実は、北郷少佐は昨日起こった事は全て知っているのだがあえて2人には話そうとしなかった。

若本と坂本の2人は、何故竹井と晴香があんなに仲良くしているのか不思議がっていた。








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