ストライクウィッチーズ 旭日の翼 〜黒狼の奮戦記〜   作:ティルピッツ
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舞鶴海軍付属小学校
第5話


1936年 7月19日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『舞鶴海軍付属小学校?』

 

 

 

その日、私は章香さんが師範代を務める講道館剣道場の掃除を手伝っていた。私を見つけてくれた2人……江藤中佐と北郷少佐を最初は階級を付けて呼ぶ事が多かった。2人からは『堅苦しい呼び方はしなくていいから名前で呼んで欲しい。』と言われた為、今は敏子さん、章香さんと呼ぶ事の方が多くなった。今でもたまに階級を付けて呼んでしまうが……………。

休憩時間に章香さんが私にした提案……『舞鶴海軍付属小学校に入る気はないか?』

それに対する、私の最初の返答が上記の言葉だ。

 

 

 

 

『扶桑皇国にある複数の魔女(ウィッチ)養成学校の1つだよ。他には横須賀、佐世保にある。』

『はぁ………………それで何故いきなり養成学校に入らないかなどと?』

『魔女(ウィッチ)になるには、まず養成学校で必要な教育を受けないといけないんだ。』

『つまり、魔女(ウィッチ)になる為に必ず必要な事という訳ですか。』

『そう言う事。』

『ですが、いきなり入学する事など可能なんですか?私は10歳です。』

『今の校長は私の知り合いでね。事情を説明して、特別に転入生という形なら入学可能と言われているんだよ。』

 

 

なんと手際のいい事だ………………。

さては章香さん、初めから入学させるつもりだったな。

 

 

 

『なるほど………それで?』

『入学する前に七奈ちゃんの成績が知りたいと言われてね。簡単な試験問題を受け取ってきた。それを学校に提出しないとね。』

『つまり、学力に問題ないか判断するって事ですか。』

『そんな所さ。』

 

 

 

 

章香さんはそう言うと、目の前に数枚の紙を置いた。今話した試験問題の問題用紙と答案用紙だろう。

性別が代わり、年齢が若返ったとはいえ、転生前……前世とでも言うべきだろうか…………………前世の記憶は残っている。航空兵になる為にもう勉強した結果、念願の戦闘機パイロットになれた。その時の努力は今回でも役に立った。

ほとんどの解答欄を記入し、見直しを済ませてから章香さんに問題用紙と答案用紙を渡した。

 

 

 

『うむ……………今日にでも持っていくとしよう。午後からはゆっくりしておくといい。』

『分かりました。』

 

 

 

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1936年 7月25日

 

 

舞鶴海軍付属小学校 校門前

 

 

 

『ここが舞鶴海軍付属小学校だよ。』

『………………………。』

 

 

 

あの時の答案用紙を章香さんはその日のうちに、舞鶴海軍付属小学校に持ち込んだ。採点の結果、入学する為の最低点を余裕で超えており入学しても構わないと学校側から返事を貰った。

何時から通って良いかを聞くと、準備さえ出来るのであれば数日以内でも構わないという事だった。

必要な勉強道具などは章香さんに集めてもらい、2日程で準備は済ませた。服については今から採寸して作っていたのでは時間が掛かるとの理由から今の服装………扶桑陸軍魔女(ウィッチ)の制服でも良い事になった。

 

 

学校側からは事前の連絡で『校門前で待っていて欲しい、案内の者が学校内とクラスを案内する。』という事だった。すると、校舎の方からこちらに向かって歩いてくる人の姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

『お久しぶりです、章香さん。』

『こちらこそ、お久しぶりです。元気そうですね。』

『まだそう歳を食ってませんからな、貴女も元気そうで。』

『私もまだ若いですから。』

『『はっはっはっ!』』

 

 

その男性と章香さんは2人で楽しそうに会話をしていたが、その横で私はその男性を見て驚いていた。何故なら、その人は海軍軍人なら知らぬ者はいない人物……………

 

 

 

 

 

『……お、大石司令長官?!』

 

 

 

 

 

 

日本海軍元帥にして、援英派遣艦隊 『旭日艦隊』司令官……大石蔵良元帥その人だったのだから

 

 

 

 

 

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『ん?君は何処かで私に会った事があるのかな?』

『それは無いです。彼女は今日初めて会うんですよ。』

『いや……初めてじゃないです…………』

『え?』

『間違える筈がありません………旭日艦隊司令官大石蔵良元帥。』

『ふむ……………申し訳ないが、私は元帥ではない。海軍大佐だ。それに旭日艦隊という艦隊も知らない。』

『そんな………………』

 

 

彼の言葉に私は愕然としたが、良く考えればそれは当然の事でもあった。この世界は人間 対 人間の戦いでは無く、人間 対 怪異(ネウロイ)の戦いが繰り広げられている世界だ。全く異なる世界なのだから、大石司令長官が居る筈が無いのだ。あくまで同姓同名の人物なだけだろう。

 

 

 

 

『……失礼しました、申し訳ありません。』

『はっはっはっ、そう畏まる必要も無い。楽にしてくれ。』

『…………はい。』

『うむ……付いてきなさい、君の入るクラスまで案内しよう。』

 

 

 

 

 

 

 

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舞鶴海軍付属小学校 2階廊下

 

 

 

 

『疾風七奈君だったかな?君は4年生のクラスに入る事になっている。』

『4年生?1.2.3年生を飛ばしてですか?』

『答案用紙を見てみたが君の成績なら4年生からでも問題は無い。既に手続き等は済ませてある。』

『クラスの人数は何人程でしょうか?』

『9人だ。君を入れると10人だ。』

『たった9人ですか?』

 

 

 

4年生が9人しかいないと言うとは、かなり少ない。仮に全学年9人ずつしかいないとすると、全校で54人しか居ないことになる。

 

 

 

『魔女(ウィッチ)の養成学校と言っても、魔女(ウィッチ)適正のある子が少ない。これから増えては行くと思うが……現状では………………。さて……この教室だ。』

 

 

気が付くと、『4年生』と書かれた板のある教室前に着いていた。

因みに校舎は木造の二階建てで、1階には1.2.3年生の教室と保健室、職員室。2階には4.5.6年生の教室、図書室、校長室がある。

大石校長が少し扉を開け、中の人物を呼ぶ仕草をすると教室から1人の男性が出てきた。恐らく、4年生の担任だろう。

 

 

『大石校長。どうされましたか?』

『昨日話した転入生を連れて来ました。』

『あぁ……その子が…………』

『疾風七奈です……。』

『担任の赤城(あかぎ)美波(みなみ)です。よろしく。』

『よろしくお願いします。』

『では美波先生、あとはお願いします。』

『分かりました。』

『あとは大丈夫かい?私はここまでだけど……』

『大丈夫ですよ、心配いりません。』

『そうかい……じゃあ、頑張ってね。』

 

 

章香さんはそう言うと、大石校長と共にその場をあとにした。

私はと言うと、赤城美波先生に連れられ教室に入った。先程の説明通り、9人しかいない。その為、席の間隔も若干広く取られていた。

 

教室に入ると、私の姿を見た9人が『誰あの子?』などと小声で話していた。

 

 

 

『あー、静かにしろお前達。次に行けんだろ次に。』

 

 

赤城先生がそう言うと、直ぐに静かになった。4年生にしては直ぐに静かになったなぁ…………。

 

 

 

『この子は前々から話していた転入生だ………自己紹介を。』

『疾風七奈です……………えっと…皆さん…よろしくお願いします。』

 

 

自己紹介する様に言われ、出た言葉はそれだけである。本当はもっと言うべき事があるかもしれないのだが、若干緊張していた為かそれ以上は何も言えなかった。

 

 

 

『貴女の席はあそこよ。』

『はい。』

 

 

自分の席の場所を聞くと私はその席に向かった。席に着くと同時に横の席に座るショートヘアの子が話しかけて来た。

 

 

『東雲(しののめ)心(ここ)だよ、今日からよろしくねー。』

『こちらこそ、よろしくね。』

『うん!』

 

 

 

彼女はそう言うと、満面の笑みを浮かべた。それを見て私も笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

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休み時間になると、私の席には東雲さんを含む5人の少女が集まっていた。

 

 

『まずは皆んな自己紹介!』

 

 

 

彼女がそう言うと、1人ずつ順番に自己紹介を始めた。

 

 

 

 

『小桜(こざくら)沙都希(さつき)です。よろしくね。』

『赤松(あかまつ)志乃(しの)よ。よろしくね!』

『白雪(しらゆき)登美子(とみこ)です。よろしくお願いします。』

『た、竹井(たけい)醇子(じゅんこ)です……よ、よろしくね………』

『こちらこそ、皆んなよろしくね。』

 

 

私がそう言うと、最後に自己紹介をしてくれた子…竹井さんだけは顔を赤くして逸らしてしまった。何か変な事でも言ってしまったか?

 

 

『気にしないで、醇ちゃんは恥ずかしがり屋だから。』

『あっ成程。』

 

 

 

なるほど、そういう事なのか。確かに初対面の人と面と向かって話すのは恥ずかしいだろう。にしても、さっきから全然顔を合わせてくれないんだけども……………

 

 

 

『(なんか少し不安要素が出来てしまったかなぁ…………)』

『ん?どうかしたの?』

『う、ううん。なんでもないよ。』

 

 

 

 

 

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同じ頃

 

 

 

舞鶴 扶桑軍需開発製造工場

 

 

 

 

 

『作業の進歩状況は?』

『はっ、全体の約半数の復元は完了致しました。』

『ほう、半数か……………。』

『状態があまり良くないものですから。』

『いや、半数でも完了したのは上々とするべきだろう。』

 

 

 

私 椎名華織の姿は、舞鶴軍需開発製造工場にあった。ここは、扶桑陸軍・海軍両方の開発・設計を行う場所だ。表向きは陸軍は陸軍、海軍は海軍専用の工廠・開発所があるが、まずここで新兵器や装備の設計・開発を行いその試験データ等を陸海軍工廠・開発所に提供。あとは、それぞれが自分たちの要求に会う物を設計し製造するのだ。

 

 

『しかし驚きです。これほどの機体は初めてです。』

『ふむ……その上、噴式戦闘機だからな。』

『我が扶桑やカールスラントですら実戦投入に至っていないというのに………。』

『中尉、コイツは一体なんなんです?』

『すまない、最高機密故詳しい事は言えんのだ。』

『そうですか………………』

 

 

いくら信頼している彼らでもコイツの事を無闇矢鱈に話す訳には行かない。今は扶桑国内でさえコイツの存在を知られてはならないのだ。他国に知られるのは以ての外だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ところで、機体をもう一度飛べる様には出来るか?』

『それは難しいですね……………。』

『やはりか?』

『我々も何度も試みているのですが、損傷…特に動力部の破損が激しくもう一度飛べる様にするのは我々の技術はほぼ不可能です。』

 

 

 

我が扶桑の技術なら可能かもしれないと期待をしていたのだが……………。予想済みの事とはいえ、少し残念だ。

しかし、機体は無理でも機関砲の復元は十分可能だ。既に試作型の制作に入っている。

 

 

 

 

 

『そうか………………。とりあえず私は軍令部で人と会うがあるのでな。あとは頼む。』

『は。了解致しました。』

 

 

 

そこに置いてある一機の大型の戦闘機は、私と数名の部下、そして軍の上層部のごく限られた者のみが存在を知っていた。

 

 

 

『7式噴式戦闘機疾風改………か………………お前は私達に何をもたらしてくれるのだ?』

 

 

私はその場にいた部下達に聞こえない位の小さな声で、目の前に鎮座する機体に語りかけた。そして、直ぐにその場をあとにした。





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