ダンジョンで失った物を拾い集めるのは間違っているだろうか   作:イベリ
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どうも。イベリです。

今回は、VS偽ベル君。言っちゃうと、最初はあっさり終わるよ。最初は、ね?

へスティア出てくるよ!やったね!

そこから、物語は加速して行ってソード・オラトリアとクロスして行く感じになります。

その後は、またオリジナルに入ります…ごめんなさい。

では、どうぞー。



シルバーグレイのグリモワール

────嗚呼 神様…

 

 

男との距離が開いてるうちに、詠唱を始める。

 

「させるか!」

 

詠唱を始めると同時に男はこっちに向かってナイフを投げてくる。

体を回転させ、母衣に空気を入れて膨らまし、ナイフを防ぐ。

 

「そう簡単には当たんねぇか!」

 

そう言って接近してきて、右の回し蹴りを放ってくるが、それを制空圏で弾きながら詠唱を続ける。だが、蹴りがアイツほどでは無いものの、とてつもない重さだ。もちろん大剣での攻撃も速いし重い。明らかステータス上だと格下まぁ、そんな相手に舐められて、攻撃が一発も当たらないとなると、イライラもするだろう。

 

────貴女を守る為に 全てを守る為に

 

「くっ…【平行詠唱】か!」

 

先程から数発攻撃はしているが、どうにも効いていない。これは…確かに、強いな…ならば!

 

────どうか力を貸してください『へスティア様』加護を

 

ここだ!

 

詠唱を終えた瞬間に、縮地を使って偽物の懐に飛び込んだ後に、地面を思い切り蹴って顔面に掌打を撃ち込む【迎面一腿加戳掌(げいめんいったいかたくしょう)】を放つが、首を右に曲げて避けられて、逆に殴られてしまう。

メキメキと音をたてて、骨が折れる音がする。

 

「グッ…っ!!」

 

肋骨が…!っ…だけど!

 

「────ゴッ?!」

 

殴られて、くの字に曲がる勢いを利用して、相手の頭に思い切り頭突きをする。ちょっと油断した…。

偽物はフラフラとよろめいて3歩後退する。よし、準備はもうできてるから─────暫くは遊んだっていいはずだ。あとは、発動させるだけだしね。試運転と行こうじゃないか!

 

────第一位階・神官守護聖火(ファッロバーイ)

 

発動と同時に、淡い金色の炎が僕を優しく包み込み、暖かい炎が篭手と脛当てを"祝福"する。そして、"祝福された聖火"は胴体を包むと、肋骨の骨折を徐々に治していき、暫くすると元通りになっていた。

 

へぇ…こんな効果もあるのか。しっかし…マインド消費激しいな…ごっそり持ってかれたぞ…

 

今わかったが、これは有効範囲の"身につけている物全ての最上位のステータス"を上昇させ、聖火の"穢れを洗い流す"効果がある様だ。…穢れは状態異常の事。"怪我を負っている"ということが1つの状態異常と認識されている様だ。つまり"状態異常を治す"効果を上げるようだ。つまり、防具ならば耐久が上がる。逆に武器ならば、攻撃力は上がるが耐久が下がって壊れやすくなる。と言ったところだろうか?要検討…防具に掛ける分には申し分ないから良いが。だが、これは注意しなければならないこともある。自身のステータスが、普段の耐久以下であること。力を入れ過ぎて俊敏が操れないのではないかということだ。その辺は調節していけばいいのだが。

念の為、篭手には祝福された炎ではなく、いつもの聖火を纏わせる。

 

そんなことを考えながら、相手の方を見ると少し苦い顔をしながらこちらを睨みつけてくる。

 

「くっ!魔法か…!お前、一体何者なんだ?」

 

「僕は本物さ。正真正銘のね?」

 

「…?何言って────ッ!?」

 

祝福のおかげで更に強化された俊敏による縮地と気配遮断を使い、いつもの数倍のスピードで相手の死角に回り、脇腹に双掌打を撃ち込む。

 

「吹っ飛べッ!!」

 

「アヅ!!?」

 

男は、聖火に肌を焦がされながら真横に吹き飛び木箱に突っ込んでいく。だが、これだけでは倒れない。

 

木箱から爆発音がしたと思ったら、男が這い出てきた。肩を上下にして息を荒らげ、口からは血が流れ、脇腹はこんがりと焦げている。

 

「ガホッ…この…!クソ、ガキぃ…!!」

 

「ははっ!だいぶ効いてるみたいじゃないか!さっきの勢いはどうしたよ?偽兎さん?」

 

挑発すればするほどこいつはノッてくれる。本当に御しやすい。

 

「舐めるなァァァァ!!!!」

 

ブチッと音がする程激昴させ、額に青筋を浮かべて突っ込んでくる。

その様子を見て、僕の興味は尽きた。

 

あぁ、これならもう終わらせよう。偽物に興味もあったけど、もうどうでもいい。だが、この実力は不穏分子足り得る。ここで排除しよう。

 

下からの大剣のかち上げを、勢いがつく寸前に1歩踏み込んで剣に手を添えて、かち上げの威力に乗って上に飛ぶ。

 

上に飛んだと同時に弓を展開して、逆立ちの状態になり、そのまま偽物に向けて矢を放つ。だが、普通の速度では捉えられないだろう。だから

 

1つの大きな火の大矢を作り出す。それを、番え引き絞り、大きな鏃の部分が無数の火矢に変わる様にイメージする。

 

「なっ!?クソっ!」

 

「燃えろ!」

 

矢を放つと、1本の炎の大矢は砕け、無数の火矢へと変わり、雨の如く降り注ぐ。激しい爆音と煙を上げながら火矢は容赦なく偽物に向かう。

 

この技に名前は無いけど、いつかほかの技にも名前とか付けてもいいんじゃないかな。とか思ったりもしながら着地すると、地面はドロドロに溶けて至る所が焦げていて、土煙が舞っている。

 

「あらら…全く…」

 

土煙が晴れると、片腕から大量の出血をした偽物が未だにたっていた。

 

「しつこいねぇ…」

 

「はぁ…はぁ…てめぇ…!ぶっ殺してやる…!!」

 

「威勢だけはいいなぁ…でも、結構本気で殺すつもりだったのになぁ…ちょっとショック。まぁ、もう終わりにしようか。」

 

片腕で大剣を振りかざし、肉薄してくるがもう遅い。

 

それを回避して、地下の支柱に仕掛けた火矢に流れる魔力を一気に大量に流し込む。

すると…どうなるだろうか?過度の魔力を受けた火矢は魔力暴発(イグニス・ファトゥス)を起こし爆発する。

 

打破它ッ!(ぶっ壊れろッ!)

 

中指を立てて不敵に笑う。すると、地下から轟音が響いてくる。次の瞬間には地面が大きく爆ぜて陥没する。それと同時に、僕はエイナさんの元に向かい逃走の準備を整える。

 

「な、なんだ!何しやがった!」

 

「ハハハッ、爆弾みたいなもんだよ。そら、そこ危ないよ?」

 

「くっ!てめぇ!」

 

相手が立っていた場所が崩壊して地下まで落ちていく。偽物は慌てて距離を取って、更に僕との距離が開く。

 

あの火矢は、ここの施設を壊滅させることが目的。殲滅を急いだのも、変な胸騒ぎがしたためだ。まぁ、結果はしといて良かったと思っている。

 

「そのまま僕の背中に捕まっててください!まだ目は瞑ったままで!」

 

「う、うん!」

 

相手が慌てている隙に、エイナさんを背負って、縛った男達を脇にぶら下げながら、崩壊した地面を避けながら、倉庫の入口まで運ぶ。

 

「よっと!ふぅ…結構ギリギリだった…」

 

「…ッ待ちやがれェェェェェ!!!!」

 

「あっ、忘れてた。」

 

器用に崩落している足場をぴょんぴょんと跳んでこっちに向かってくる。

 

「…情報はこの2人に吐かせればいいから…アイツはいいか…1つ教えといてやるよ偽物。」

 

一言男に向かって呟く。弓を展開させて矢を番え、スキル全開の矢を放ち、顔を撫でて"姿を戻す"。そうすると、今まで隠れていた僕の"紅い牡丹の刺青"が顕になる。

 

「【アサシン】は銀髪じゃなくて白髪だ、髪もそんなに短くない。武器も使わないよ。それに、赤い牡丹じゃなくて"紅い牡丹だ"。覚えておくといい、本人を目の前にしてその名は使わないことだ。」

 

そう言ってニヤッと笑う。

偽物は僕の刺青を見て目を見開き驚く。

 

「…そ、その"赤眼"ッ!────ぁ────────お、お前…は…………ガッ…ぁ…化け…物、め……」

 

「っ…」

 

男の言葉が、妙に僕の胸に突き刺さった。それと同時に、矢は男の胸に突き刺さり男は力なく奈落の底に落ちていく。

 

「…再见同样的(さよならだ、御同輩)もう会うこともないさ、偽兎さん。」

 

そう吐き捨てて、急いでその場を離れる。

 

「魔力きつかったなぁ…」

 

これからの課題は魔力かー。と呟いて、ナァーザさん作のマジックポーションを一気飲みして、篭手を外し腰に付けて、ため息を吐くと何かの物音が聞こえた。

 

シュル…シュル…

 

物音を聞いて後ろを振り返ると

 

「…今のは…────植物の蔓?…いや、見間違いか…?」

 

地下に降りていく植物の蔓みたいな物が見えた気がしたが、震えているエイナさんを見てすぐさま帰る事にした。

そこで、男の言葉を思い出す。

 

『化け…物、め…』

 

自然とグッと手を握ってしまう。

 

「…大切な物を守れるなら…化け物でもなんにでもなってやる…」

 

背中のエイナさんと神様の笑う顔を思い浮かべて、すぐに前を向く。

 

あぁ、そうさ…守るためなら僕は"反英雄"にでもなんでもなってやる。

 

 

だって

 

 

 

────僕はもう"英雄"にはなれないんだから。

 

 

 

────────────────────

 

「ふぅ…ただいま帰り…って寝てるに決まって「おかえりー!ベル君!!!」おわっ?!へスティア様?!起きてたんですか?」

 

ベル君の帰宅と同時にベル君に抱きつく。ぬはは…なんだか久々にベル君の温もりを感じた気がするぜ…

 

「ぬふふ!もちろん起きてるに決まってるさ!恋人が帰ってくるまで起きてるのは恋人の勤めだろう?今日もお疲れ様、ベル君!」

 

きゃっ!言っちゃった!

 

「ふふっ、神様がホームで待ってると思うと頑張れます!」

 

そう言うと、ベル君はボクにギュッと抱きつく。

 

キャーーーーーー!ベル君が!ベル君が可愛い!!これはもう婚約必至だ!

 

そんなことを考えていると、扉が3回ノックされる。

 

こんな時間に訪問者…?まさか!な、なんか犯罪者とかじゃないだろうな!?

 

そう思っていると、扉の奥からか細い声で

 

『ベル君…もう入って平気かな…?』

 

「あっ、入ってください。すいません。」

 

そう言われて、入ってきたのは…

 

「エイナさん。」

 

「あれ?アドバイザー君?何しに来たんだい?」

 

アドバイザー君に訪ねようとすると、ベル君に抱きかかえられ、部屋の隅に持っていかれる。

 

「は〜いへスティア様。ちょっとこっち来てくださいね〜。」

 

「なっ!何をするんだベル君!ボクはアドバイザー君に聞こうとしただけで…」

 

「その事なんですが…暫くエイナさんをホームに泊めてくれませんか?」

 

いつものニコニコしたベル君ではなく、真面目な顔をして僕に語りかける。

 

…そんな顔も可愛くてカッコイイと思ったのは内緒だ。

 

訳を聞くと、どうやら今回の仕事で相当なトラウマを抱えてしまったようで、家に送ってベル君が帰ろうとしたところ、本人も無意識のうちにガタガタと震えてしまう程の物らしい。流石にここで帰れとは言えないし、何よりアドバイザー君ならいいか、とも思っていた。

この間のベル君に対する愛の深さを見て、この子とならばベル君を愛し合えるかもしれないとも思っていたのだ。

 

「と、言うわけでだ。しばらく泊まって行きたまえ!アドバイザー君!君なら大歓迎さ!」

 

「あ、ありがとうございます…神へスティア…申し訳ありません…ギルドの者がこうして1つのファミリアに重心を傾けるのは良くない事なのですが…」

 

「あぁ、気にすることないよ。どうせ君もいずれここに住むことになるんだ。今から自分の家だと思ってくれて構わないよ!」

 

「…なっ!?そ、それはわ、わわ私が、べ、クラ、ベル君とその、こ、こうしゃいをす、すると言う…!ぁぅ…」

 

そう言うと、顔を真っ赤にしてワタワタし始める。

 

…この子本当に可愛いな、なんだかボクも気に入ってしまったかもしれない。ベル君に聞いた感じだと普段はお姉さんぶってるようだがこういう所は初心な様だ。

 

「んふふ〜、可愛いねぇ?ベル君が気に入ってるのも分かるよ。」

 

「はぅぅ〜…」

 

そうして暫くからかった後に、シャワーに入って布団に入る。

 

「さて、ベル君。君を本来なら独り占めしたいところだけど?これからはアドバイザー君とボクと一緒に寝てもらうことにしたぞ!さぁ!寝よう!今寝よう!すぐ寝よう!」

 

「はーい、どうぞ神様。エイナさん。」

 

「えぇ?!い、いきなりベル君に抱きしめられて寝るなんてそ、そのれ、レベルが高いというか、私には早いというか!!」

 

「はい、どーん!」

 

「わわわっ…!」

 

「いらっしゃい、エイナさん。」

 

「べ、べべベル君…あ、あの私!こ、こういうの初めてで!」

 

愚図るエイナ君をベッドに押し倒して、ベル君の右手で抱きしめさせる。見つめる2人、甘い空間ができ上がる。

 

本当に初心だなぁ…だが、2人だけの空間を作るのは面白くない。元々ベル君は僕の物だ!!

 

「で、ボクは反対側に〜…はい、お休みのキスだ、ベル君。」

 

チュッと、ベル君の唇にキスをする。

それにベル君は先ほどよりも抱きしめる力を強めて返事をする。

 

そうして、ボクはベル君にひしっと抱きつくと、ベル君は優しく頭を胸の位置に持って行って抱いてくれる。反対側を見ると安心しきった表情で眠るエイナ君を見て思う。

 

あぁ…なんだ、こう言うのもいいじゃないか。

 

そうして、ボクは夢の世界に落ちていく。

 

────────────────────

 

「ん…ぅぅ…今何時…?」

 

寝ぼけ目を擦りながら手探りで探すと、いつもの位置に時計がない。あれ?あれ?と探すが一向に見つからず、おかしいなぁ…と考えていた。

 

薄明かりの中メガネをかけると、ぼんやりと天井が視界に写る。

 

「知らない天井…?」

 

そうだ、思い出した。昨日は無意識の内に震える私を見てベル君と神へスティアがホームに泊めてくれたんだ。

 

ホッとして、寝返りを打つと神へスティアだけが居て、ベル君が見当たらない。

なんだか、それだけでとてつもない不安が襲ってきて、いてもたってもいられずに、外に出て綺麗な聖堂を抜けて外の扉に手を置くと、外から戦闘音が聞こえる。嫌な想像が頭を過り、勢い良く扉を開ける。

 

「ベル君!!!

 

 

 

 

 

 

…………えっ」

 

 

 

 

「リューさん、トップスピードでずっと押し切るよりも緩急をつけて!虚実を混ぜるんです!0から100まで一気にスピードを引き上げてください!」

 

「っはい、クラネルさん!」

 

木刀を持った汗だく美人エルフさんと、少し汗をかいたベル君が戦っていた。

私は、拍子抜けしてしまった。というか!あのエルフさんは一体誰!?

 

そうすると、ベル君が手刀?と言うのだろうか。それを、下から潜らせるように木刀の柄を打ち上げて、木刀を上に弾き飛ばして、反対の手刀をエルフさんの首筋に添える。

 

「はい、1本。」

 

「くっ…参りました…」

 

その後に、ドサッと地面に倒れる美人エルフさん。

 

「初日でこれだけ戦えるようになったのは予想外です…すごい才能ですね。脱帽しました。」

 

「はぁ…いえ…クラネルさんは…はぁ…まだまだ本気ではない…はぁ…はぁ…その技術にはこちらが脱帽します…レベル差が2つもありながら…クラネルさんは本当に人か疑ってしまう…」

 

「リューさん!それは酷いですよ!?」

 

「ふふっ、冗談です。貴方は反応が面白いから、つい。」

 

「リューさんの冗談は相変わらず分からないなぁ…」

 

そう言ってから、ベル君はエルフさんの手を取って立ち上がらせる。

 

立ち上がった後も、見つめあってずっと手を握っている。心做しか、エルフさんの顔が赤い。それを見て、イライラが募り我慢できなくなって、私はベル君に突進する。

 

「ベル君!!いい加減離しなさい!」

 

「おはようございます、エイナさん。」

 

ベル君は私の突進に気付いていたようで、ヒラリと交わして後ろから抱きついてくる。

 

「ちょっ?!ひ、人前なんだよ!?…で、で?そこのエルフさんは…って、昨日の酒場のウエイトレスさん?確か…リューさん?でしたよね?」

 

「…はい、リュー・リオンです。チュールさん。昨日はどうも。私は、クラネルさんと鍛錬をしていたのです。」

 

美人だからだろうか、危機感が湧く。なんと言うか、ベル君と似た雰囲気を持っているというか…

 

「そうですか…それは、"私の"ベル君がお世話になってます。ご迷惑掛けていませんでしょうか?」

 

神へスティアには勝てないにしても、他の人にはベル君を取られたくない。対抗心が燃える。

 

「……いえ、クラネルさんはとても良くしてくれていますよ。今も技を教わっているくらいです。ですが、女性を家に泊めるのは、シルの伴侶としての意識が足りない気がしますが?クラネルさん。」

 

「ふぁっ!?何の話ですか!!と言うかエイナさんは僕の大切な人です!」

 

…くぅぅ〜…っまたベル君は…!

…あれ?なんだろうか、リューさんの目付きが険しくなった?えっ?ベル君…まさか…

 

「さて、リューさん。今日は終わりです。いつもより早いけど許してください。」

 

「いえ、問題ありません。しかし、今日は何かご予定が?」

 

「えぇ、これからちょっと明日の依頼の準備に、ナァーザさんとミアハ様に会いに行こうかなと。」

 

「え?なにそれ、私聞いてないよ?」

 

「はい、実はギルドから手紙が来まして。クエストです。内容は言えませんけど…あと、エイナさんに1週間の休暇を与えるそうですよ。事件を解決した事の報奨ですかね。」

 

「えぇ?!私にまでご褒美あるの?!」

 

話を聞くと、朝起きるとポストに前金と依頼書が一緒に入っていて、断るわけには行かなかったそうだ。なんだか報酬につられてる気がするのは私だけだろうか…?

 

それにしても…前金まで用意するって…怪しい気がする…

 

私が怪訝そうな顔をすると、ベル君は苦笑しながら私に耳打ちする。

 

「これ以上、貴女を巻き込むべきじゃない…わかってください。貴女とへスティア様を守る為なんです。」

 

「むむむ…そ、そんなこと言ったら!私だって君に危険なことして欲しくないし…!」

 

「僕なら平気です、昨日もほぼ無傷だったでしょう?」

 

確かに、ベル君の強さは…正直異常だし、昨日だって私が居なければあんなに回りくどいやり方をしなくとも直ぐにあの場を殲滅出来たはずだ。

 

だが、強いからと言って心配しないわけじゃない。前科(死にかけた)があるから怖いのだ、彼が居なくなることが。

それを聞いて、俯いているとそれを察したのかベル君が私の頭に手を置いて、頭を撫でてくる。

 

「平気ですよ、神様とエイナさんを悲しませることはしませんから!」

 

そう言って、私に笑って返す。

 

全く…ずるいんだから…

 

────────────────────

 

あのギルドの手紙。確実にこちらを監視しているか…それともこうなることを予測していたか…エイナさんのことを書いていたことから、恐らく前者になるか…

 

ちょっとした考えをまとめて、やる事を決める。

 

さて…薬舗が開くまで暫く時間がある。この本達の情報を少し纏めて、どの本を読めば何を学べるのかを書き出してナァーザさんに教えよう。

 

そう思って、纏めていた本に手を伸ばす。

手に取った本は…

 

「…現代魔法?いつの間にこんなの混ざって…あっ」

 

見覚えの無い本を手に取るが、瞬時に思い出すのは酒場の乙女の笑顔。

 

『ベルさん、肩に力が入りすぎてますよ?そんな時は気楽に読書なんていかがですか?』

 

シルさんの笑顔と言葉を思い出してふっ、と笑を零す。

 

折角のシルさんの好意だ。甘えて少しだけ力を抜こう。薬舗が開くまでまだ2時間ほどある。

 

魔法について考える時間が欲しかったから、ちょうど良かった。そう思って、本を開く。

 

「さてと…えっと…ん?何語だ?コイネー?エルフ語か?…いや、全部の言語に近いけど全く違う…?」

 

『欲するなら問え、欲するなら刮目せよ、欲するなら砕け』

 

気づくと、意識を持っていかれた。

 

なんだ…これ…

 

 

 

『虚偽を許さない醜悪な鏡はここに用意した。今ここで君は僕であり僕は君だ。じゃあ、始めよう────』

 

意識を手放したはずなのに、意識がある不思議な感覚を味わう。そこでは、僕の声が響いている。

 

 

────僕にって魔法って何?

 

【未だに理解出来ない未知の力。だけど、道を切り開いてくれる物。】

 

────僕にとって魔法って?

 

【力…かな。膨大な力だけど、代償がある。でも、便利な物…かな?】

 

────僕にとって魔法ってどんなもの?

 

【…強いて言うならば『鏡』。僕自身を写すもの。決して消えることの無い"罪の歴史"】

 

────魔法に何を求める?

 

【大切な人を守ること。あれば便利で、より堅固に守れる。

いや、そんなもんじゃない。大切な物を守る。ただそれだけ。】

 

 

────それだけ?

 

【それだけ。】

 

────英雄になりたいんじゃないの?

 

【それは、過去の幻想。『壊れた幻想』に縋るほど、落ちぶれてない。もし────もし、なりたいと思ってる僕がいるなら、それは僕じゃない。僕にはそんな資格、とうの昔に無くなったから。】

 

────じゃあ、偽物の僕はいらない?

 

【それは────】

 

違う、そんなことが言いたいんじゃない。

 

────今の僕に何かを守れるの?

 

 

【────それは…】

 

 

 

────僕はいらない?

 

 

その質問を聞いて、浮かぶのはある2人の笑顔。1人は愛情が溢れんばかりに。もう1人は手のかかる弟を見る様な、しかしそこには確かに愛がある。

いや、2人だけじゃない。美しい緑髪の世話焼きの姉。銀髪の乙女に、儚く不器用な妖精。僕に正義を教えてくれた美しい神。そして、もう居なくなってしまった赤髪の旧友との思い出。

 

それが崩れるなんて、絶対に嫌だ。

あぁ…そうだ…違うだろ…何がなんでも守るって…誓ったんだから。

 

 

 

【意固地になってたのは僕か…

 

 

いいや…いいや…なんだっていい。

 

 

絶対に…守るんだ。絶対に!

 

 

偽物だろうといい。

 

誰でもいい!くだらない幻想(英雄)に縋ってようと!僕は僕だ!!いくら…反英雄に…戻れないところに堕ちていようと!

 

この思いは…この思いだけはッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

絶対に!同じはずだからッ!!

 

 

だから、力を寄越せ!!】

 

 

 

────それが…僕の答え?

 

 

【うん】

 

 

────どこまでも汚れている君が、それを願うの?

 

【そうだよ。】

 

 

────どうして?

 

 

【だって、あの人達は信じてくれるから。

 

いや

 

 

 

 

 

信じてくれる人がいるから。

 

だから、全部守るよ。】

 

 

 

 

────ワガママだなぁ、僕は。でも

 

 

【ごめん、でも────】

 

 

 

『【それが僕だ。】』

 

 




はい、ベル君強すぎワロタ。

引くレベルで強くないですか?平気?

そして、リューさんといい雰囲気になるベル君に突撃するエイナさんに、やっぱりデレデレのへスティア。

グリモアを読んだベル君が発現させる魔法とは?


では、また次回。


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