その男の名は「ヤン・ウェンリー」   作:第2戦闘団

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句読点と誤字、脱字を大幅に改善いたしました。

この調子で書くと不定期かほったらかしてしまうかも知れませんがしない様頑張ります

「こんなのヤン・ウェンリーじゃないは!ヤン・ウェンリーと言う名の別人よ?!」
と言う人は「逆に考えるんだ、二次創作なのだから当たり前なのだと」考えてもらえれば幸いです




異世界にて
第1話 魔術師の誕生(修正済み)


男は不思議だった、大量に出血しているのに自分の体は軽くなるどころか段々と重くなって行き視界もぼやけてきた、頭も回らなくなってきた。

男は今まで自分についてきてくれ、そして散って行った人物たちの顔が浮かんできた。

 

「(これが走馬灯か……私のような人間が見るには、些か豪華すぎるメンツだな)」

 

心の中でぼやく

 

「(艦隊運用の名人「エドウィン・フィッシャー」提督、撃墜王の「オリビエ・ポプラン」中佐、陸戦最強の「ワルター・フォン・シェーンコップ」中将、歴戦の老兵「ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ」提督、個人であげたらきりが無いな)」

 

そう思いながら左足の銃創を眺めた、応急処置で巻いた布は赤く染まり出血は止まっておらず血溜まりを作っていた。

 

その銃創に左手を添える。

 

「(この血も、私が流させてきた幾億の人間の血に比べれば微々たるものだな……)」

 

男は顔を落とし、段々と薄れていく視界の中、最愛の人物の名前を口にした。

 

「ごめん…フレデリカ…どうやら……もう…会えそうに……ないな………」

 

そう言って男は意識を手放した。宇宙歴800年6月1日、享年33歳でこの世を去った男の名は「ヤン・ウェンリー」、

同盟からは「ミラクル・ヤン」と、帝国からは「魔術師ヤン」と言われ、後に多くの人の記憶に残る人物でもあった。

 

 

 

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ヤンは不思議でいた。

何故自分は「過去」の記憶を保持しているのか、ムライ中将の先祖の宗教「仏教」なるものは「輪廻転成」と言う物があると聞いたことがあった。

死んであの世に還った霊魂が、何度もこの世に生まれ変わってくる事を指していたが、まさか前世の記憶まで持ってくるとは思わなかった。

 

ヤンの生まれた家庭は裕福でもなければ貧困でもない、至って普通の家庭に生まれたのである。

名前は名を「ウォルター」、性を「レーヴェン」としてレーヴェン家に生まれた。

父は実業家で稼ぎはそこそこ、母親は元精神・外科を病院で専門としておりアフターケアや怪我の際の処置は徹底的に叩き込まれる事になった。

この事に対しヤンは「幸先はまだいい方だな」と呟いた

そしてヤンが実年齢9歳、精神年齢41歳の頃小学校に置いてある世界地図に違和感を抱いた。

 

名称が違うのである。

 

世界地図を見たときに気づいたのは旧世紀、地球上の約4分の1を占めていたヤンの知っているイギリス帝国こと「大英帝国」ではなく、「ブリタニア連邦」と言う国名になっているのだった。

 

それだけでは無い、スペインは「ヒスパニア」、フランスは「ガリア共和国」、ドイツは「帝政カールスラント」、オーストリアは「オストマルク」、ベルギーとオランダは「ベルギガ」「ネーデルラント」、イタリアに至っては「ヴェネツィア公国」と「ロマーニャ公国」に別れておりロシアは「オラーシャ帝国」とこの時期の主要各国を上げればきりが無い、そして極め付けは一時期地球圏最強と言われたアメリカ合衆国が「リベリオン合衆国」となっていた事や新大陸の地形が物凄く歪であった事でヤンは考えるのをやめた。

ちなみに、ヤンが属している国家はブリタニアである。

 

しかしどの国名も中世から近世にかけて、名付けられていた地名または領主の名前、前世の地球にも存在していた地名などが、この世界の国名にいる事に気付いたが、それ以前に最もおかしな事になっていた。

 

この世界の敵は同じ「人間」、では無く地球外生命体である通称「ネウロイ」がユーラシア大陸やアフリカに存在し、人類の恐怖の種となって存在している事だった。

 

しかしヤンの気に留めることではない、彼は中学高校を標準より少し高く卒業し士官学校を目指した。

勿論軍に入るのでは無くこの世界の戦史、および歴史を学ぶためであるがここは前世のようにいるとはじき出されるので一応平均値を取って、授業も真面目そうに受けたりした。前世の士官学校がどれだけ許容してくれていたかを改めて思ったが「戦史を学ぶ為の必要事項なら仕方ないか」と考えた。

 

卒業後はそのまま家業でも継ごうかと思った。

前と違い学費は両親が出してくれ、軍に進むかここで辞めるかの二択を選ぶ事ができたがそうも行かなかった、ヤンが26歳の時、カールスラントの撤退作戦「ビフレフト作戦」を支援すべくブリタニアから凡そ9個師団がウィルフェムスハーフェンに出撃し、ヤンはこの時予備士官として戦線に投入された。

 

ヤンは悩んだ、前世とは違い人間相手の戦争ではないがその「ネウロイ」を相手に戦っているのは人間だ、同じ弱みを持たない相手にこの時は不安を感じた。

そしてよりにもよって自分は陸で指揮を取らねばならない、ヤンに課せられたのは撤退中のカールスラントの民間人、及び陸軍戦力を後方に逃す為の殿になってくれとの事だった。

民間人に犠牲を出してはいけない、これはヤン自身が持つ決まりでありこの作戦は失敗が効かない一発勝負である。

ヤンは殿を務める代わり、一定の佐官クラスの指揮権とついでに貰った階級を条件に殿部隊の元に向かった。

 

話はそこらから始める。

 

 

ウォルター「全くここに来てまで「エルファシル」と同じような事をするとはなぁ…」

 

ヤン、ここではウォルターと呼ばれており特に特徴や主だった事はない、普通の士官である。

指揮権を佐官クラスし、臨時的に階級を大佐にしている、いやされたのだ。

 

ブリタニア兵「?どうしたんですか大佐?」

 

ウォルター「あぁ、いや独り言さ。ここから生きて帰れるか心配でね」

 

ヤンは考えていた、エルファシルでの出来事は相手は「人間」であった為餌に食いついてくれた、だが今の相手は「人間」では無く「化け物」であり「人間」と同じ思考と考え方を持っているとは思えない。これまでの策が通じないかもしれない事や相手の数的優勢や質的優勢、そして「自己修復機能」も視野に入れるとこの戦いがどれだけ絶望的かが伝わってくる。

 

ブリタニア兵「大佐は頼りにしていますよ。何たってあのモントゴメリー将軍に目をつけられてた人なんですから」

 

ウォルター「買い被りはよせ、そこまで自分は出来ちゃいないさ」

 

ブリタニア兵「ご謙遜を。用兵もそうですけど、戦術的にも戦略的にも物事を見る事が出来るって結構すごい事ですよ?」

 

ウォルター「指揮官だったら出来て当たり前の事さ。それに今私は数万人の兵士を死なせる無謀だが必要な戦いに挑まねばならないからね」

 

ブリタニア兵「必死に抵抗して何とかなる状況じゃないですがねぇ…」

 

ウォルター「ん?あれは……」

 

車外から外を見たが少し遠くの空には黒煙と大型の「ネウロイ」と交戦するウィッチと、カールスラントとブリタニアの空軍機が見えた。

大型の「ネウロイ」は何かを狙らっており、空軍機やウィッチはそれを阻止せんとしているように、ヤンには見えた。

しかし、大型には最低でも小型が数十機存在し、その小型を殲滅すると大型は撤退していくと報告されていた筈、だがあの大型にはその取り巻きがいない、そして撤退せず空軍機とウィッチを相手取っている。

 

ウォルター「この近くに避難民が滞在しているキャンプがあったな」

 

ブリタニア兵「まさか……奴はそこを狙っているのでしょうか?」

 

ウォルター「それに大型には取り巻きが数十機いたはず…すぐそこに向かってくれ。予想が当たっていればその取り巻きがキャンプへ向かっているはずだ」

 

ブリタニア兵「わかりました!(ガチャッ《全車へ!これより最寄りのキャンプへ急行、対空陣地を設ける!敵の狙いはキャンプにいる民間人だ!!至急急行せよ!繰り返す、至急急行せよ!!》」

 

 

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キャンプに急行し、すぐさま対空陣地を構築、ブリタニアの3.7インチ高射砲とカールスラント部隊の88トラック十数量を展開させ、避難民の退避とウィッチや空軍の到着まで持ちこたえる事になった。

現在ヤンことウォルターがいる地点の避難民が最後であり、他は無事たどり着いたか、たどり着く前に襲われ壊滅したか、のどちらかであるが今は考えている暇ではない。

今いる避難民だけは何としても守り抜かねばならないのだ。

避難民と護衛部隊の撤退まで30分持ちこたえねばならない。

 

ウォルター「最初の取り巻き以外に大型3機にその取り巻きが50数機、長い30分になりそうだ……、すまないがスピーカーを繋いでくれ」

 

ウォルターは空襲サイレン用で設置してあったスピーカーを繋ぎ、現時点で展開している部隊に呼びかけた、がこのスピーカーが無線を通じて他の部隊のオープン回線や戦況を知らせるラジオにまで入り込んでいたがこの事は、ヤンことウォルターは知らない。

 

無駄かもしれんがやるか、と内心思いマイクを手にして喋り出した

 

ウォルター「諸君、私はこの混成高射砲旅団の旅団長、ウォルター・レーヴェンだ。我々は避難民の避難が完了するまでここで最低でも30分持ちこたえる必要がある。その上敵は予想を遥かに超える数だ。

諸君の中には昨日まで兵学校にいた者や、今まで撤退戦を行い続けてきた猛者もいるだろう。中には死にたくはないと思っているものもいるだろう、私だって同じさ。我々は「人間」だ、「化け物」ではない。恐怖を感じ、死に対する拒絶感があって当然だ。

だが諸君や私の後ろには、これから国や世界を担っていく幼き英雄達がいる。彼らはまだ「雛鳥」だが成長すれば立派な「大鷲」になって飛び立つだろう。だがその「雛鳥」を蝕まんとする「大蛇」が我々の目の前に迫っている。

我々はその「大蛇」を相手にする事になる。我々「親鳥」が「雛鳥」である彼らを守り抜かねばならない。すまないが諸君らの命を私に貸してもらいたい。付け足すが抜けたいものは上空に発砲してくれ、恥じる事はない」

 

ヤンはこの時少なからずの脱退者が出る事になると予想をした、がそんな事はなく逆に反論を言い出す者が現れ出し、自分の懸念は思ったものと違う形に出た事に驚いたが笑ってごまかした。

 

ウォルター「よし、諸君らの度胸と覚悟はわかった。

各員持ち場につき敵を近づけるな、これは命令だ。

それも諸君らに対する最後の命令かもしれない。各員一層奮励努力し「雛鳥」を防衛せよ!」

 

ウォルターは改めてそばにいる兵士に問いかけた。

 

ウォルター「どうやら我が部隊には優秀な人材が山ほど居るらしいな」

 

ブリタニア兵「カールスラントの連中には頷けますね。それとさっきの演説まがいが効いてるんじゃないですかね?」

 

ウォルター「やめてくれ。それと最後になるかもしれない、名を聞いておこうか?」

 

ジョン「自分はブリタニア陸軍第3高射砲連隊所属、「ジョン・W・アルフレッド」二等兵であります!知り合いからはジョンと呼ばれています!」

 

ブリタニア兵は所属と姓名を名乗った。

 

ウォルター「ありがとうジョン、さっきの演説まがいの事は忘れてくれ。私も随分と口が回るようになったらしい」

 

ジョン「それが命令なら致し方ありません、忘れましょう。それより早く行きましょう。報告だともう直ぐ接敵します」

 

 

ヤンことウォルター達はこの時は知らなかった「ウィルフェムスハーフェン、ダンケルクの英雄」「奇蹟のウォルター」とまで言われ、様々な人物にその名を記憶に残すことを、この時はまだ知るよしもなかった。

 

 

 

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激戦だった。

 

高射砲や対空機銃、ましてや拳銃などありとあらゆるもので抵抗した装填手がやられれば代替えが配置につき、射手の場合も同様であった。小型と中型の撃破に成功しなんとか防衛したウォルター達だったが大型が襲来し、対空陣地を猛爆、大型1機を撃退するも残りの大型が攻撃をし続けており被害が増すばかりであった。

そして戦闘が開けてから20分ほどでウィッチ隊と空軍の支援が来たがその時避難民の一団から離れたところに少女がいた、どうやら腰を抜かし足に力が入らないようだった。

そしてその少女に大型のものと見られる破片が飛んでいった、ウォルターは反射的に少女を抱き上げ即席の塹壕に飛び込んだ、その後被害が大きい部隊に対し最初で最後の撤退命令を出し、その部隊に少女を預けた。

預ける前の少女は今にも泣きそうな顔をし、こちらの強く腕を掴むので「心配しないでくれ、死にはしない約束しよう。無事に此処から逃げることができたら又会おう、いいね?」などと発言し、無理やり安心させ預けさせた。

 

それから凡そ40分もの続いた死闘は、ウォルターの巧みな指揮のもと尋常ない数の小型、中型を相手取ったが大型の死に際の一撃で陣地が吹き飛び、ヤンことウォルターや他の旅団員も、そこで意識を失うことにより終わりを告げた。

 

 

 

ウィルフェムスハーフェンの対空陣地跡

 

ウォルターが目を覚ましたのは深夜帯であり、あたりは漆黒の闇に包まれていた。音といえば、風に揺れる木の葉や雑草の擦れる音だけで、後は不気味なくらい静かであった。他の旅団員を探そうにも光源がない事や、あったとしても此処で使うと奴らこと「ネウロイ」が寄ってくるかもしれない、それ以外の生物いるとも考えられる。

 

ウォルター「月明かりがない夜なんて久しぶりかもな、此処最近曇ることなんて珍しいし……」

 

ウォルターは取り敢えず、近くに残骸として残っていた88トラックの荷台で寝ることにした。旅団員の死体があるか無いかはわからないが、死臭がしないという事はまぁ無いと思ってもいいだろう、と考え硬い荷台の床に自分の腕で枕を作り、日の出が出るまで寝ることにした。

 

ヤンことウォルターにとっては、肌寒いこと以外は普段と変わらない昼寝だったが、体が疲労で重くそのまま朝日が上がっても起きはしなかった。

 

 

………さ………たい…………大佐ぁあ!!

 

 

 

ウォルター「うおっ!?」

 

ウォルターは聞き覚えのある声に叩き起こされた、横にはあぐらをかき、呆れた顔をしているジョンがいた。

 

ジョン「よくこんなと所で気持ちよさそうに寝ますぇ…、見習いたいくらいですよ」

 

ウォルター「起こしてくれたことには感謝するが、私以外には人は居なかったのか?」

 

ジョン「此処ら一体探し回りましたけど高射砲や88トラックの残骸くらいですよ」

 

どうやらこっちに来てまで悪運に恵まれてるな、ウォルターはそう思ったが、自分ら以外の人間や死体は存在していない事や何と言っても……

 

ジョン「それより、大佐も同じなんですか?」

 

ウォルター「ん?なんのことだ?」

 

ジョン「自分の腹よ〜く見といた方がいいですよ?」

 

ウォルター「………んな、馬鹿な…」

 

ウォルターの軍服の左腹部には、大きく円が描かれており、その周りは血で赤黒くなっていた。

そして傷口と見られる部分は綺麗にふさがっていたが、この事にウォルターは興味を示さなかった。

 

ウォルター「……まあいいや、それより私は一刻も着替えたいね、何かあるか?」

 

ジョン「それに関しては避難民が放棄した車などから拝借すればよろしいかと」

 

ウォルター「そうだな、彼らにとってはもう必要の無いものかもしれんからな、有り難く拝借しよう」

 

服装を整えたが、念のため階級章を持っていく事にした。

こうなる前、階級を大佐に引き上げさせた際に部隊表上に大佐として登録させていたからであり、身分証明書の代わりに階級章を持っていく事にしたのである。

 

ウォルター「長い旅になりそうだ、故郷の島はこの海の先というのに」

 

ジョン「仕方ありませんよ、此処に取り残された我々は群れからはぐれた羊も同様だ」

 

ウォルター「先ずはネーデルランド辺りに撤退するか、あそこならまだ友軍が居るかもしれない」

 

ジョン「そうですね、プラスに考えましょう、1日でガリアまで行かせる程脆くは無いはずですしね」

 

そこから数日間歩き続けた、がやはり人一人居ない。町は瓦礫の山となり、田畑は焼け焦げ、手入れがされない為雑草が伸び放題だった。家畜は野生に還ってしまい、この地域にいるはずのない種類の動物がいたりもした。大半は動物園から逃げ出して来たのだろう、ウォルターとジョンはそう思った。

 

そしてネーデルランドに近づくにあたり、焦げ臭く、肉の焼かれた匂いやガソリンの匂い、火薬の匂いまで漂って来た。

そして突破されたであろう塹壕線にて不思議に思った。

 

ウォルター「何故此処の兵士は苦しんで死んでいるんだ?」

 

外傷はなく、かといってどこかを打ったわけでもない、ウォルターとジョンは疑問に思った。

 

ジョン「そうですねぇ、それにネーデルランドに近づくたび「黒い霧」が付近に立ち込めていてその中を通ったことがありましたよね?その霧の中やでも同じ様な死体を拝みましたよ」

 

ウォルター「外傷がないのならこの苦しみ方は窒息死に近いのか?余り内科は詳しくないが…」

 

ジョン「大佐、此処で考えても仕方がありませんよ。今は早くネーデルランドにいるであろう友軍の保護下に入ることに専念しましょう」

 

ウォルター「そうだな、銃声や砲声も聞こえて来たし前線は近いはずだがこの様子だと…」

 

ジョン「とてもせき止められてはいませんね」

 

ウォルターとジョンは辺りを見回した。

放棄された塹壕やトーチカ、カールスラントの重戦車「ティーガー」やブリタニアの歩兵戦車「マチルダ」はその自慢の装甲を、真正面から貫通された後や、砲塔が吹き飛んでいる物がそこら中に転がっている。

 

ウォルター「だが、此処からは歩かないで済みそうだ」

 

ウォルターはそう言いと残っているジープに目を向ける。ジョンは「あぁ!」、というふうに三度首を縦に振り、二人はジープに歩み寄った

 

ウォルター「タイヤがいかれてるがもう一台からかっぱらおう、ジョン手伝ってくれ」

 

ジョン「言われなくとも、始めましょう」

 

ウォルターは士官学校にて、ある程度の機械技能を身につけており、ジープや自動車程度だったらお手のものである。

 

ほんの一時間でとっかえがすみ、燃料も残骸と化した車輌などから拝借し、一行はエンジンを掛け今度はガリア国境を目指した

 

よく1940年5月25日 ガリア共和国

 

ネーデルランド及びベルギガ国境に増設されたマジノ線

 

ウォルターとジョンは無事、ベルギガ国境に増設されたマジノ線に到着した。

このマジノ線は当初の想定より速いネウロイの進撃速度の為、ベルギガ及びガリア共和国がカールスラント方面の国境に建設した物の同規模を急遽建設、トーチカを撤去し、代わりに要塞砲と高射砲をこれでもかと増設、さらに要塞内の行き来を速やかに行う為、通路や区画の簡易化が行われおり機能面や防衛力だったらカールスラント方面の物と遜色ない、が此処にはウィッチ隊がおらず代わりに5000機以上の多国籍空軍が存在していた。カールスラントを始めブリタニア、リベリオンなど主要国の殆どの軍機が此処にいる。

 

要塞内へ案内されたウォルターとジョンは、とてつもない歓迎ムードに包まれた。

ウォルターとジョンは不思議に思ったが、この要塞の指揮官ローズ・ド・ゴール将軍自らが執務室に案内し説明をした。

 

当時ウォルターが指揮していた旅団が、ウィルフェムスハーフェンに展開していた軍の最後の陣地であり、戦闘直前に行ったウォルターの問いかけが、オープン回線で他の部隊や民間ラジオにまで入り込んでいたのである。

その上推定数十個師団以上の戦闘力を持つネウロイの大群を、旅団規模で一時間ものその場にて耐え続け、避難民退避の命を見事全うした。が大型が放った一撃により陣地が吹き飛んだのだ、空軍機やウィッチ隊が確認に向かおうにも足の短い欧州機は燃料が持たない事や避難民の一群を無防備にもできないことなどで、安否の確認ができなかったのだ、と説明された。

 

ウォルターは凄まじく気落ちした。自分の演説まがいな行いの事は兎も角、自分に付き従い最後まで戦ってくれた他の旅団員が自分とジョン、そして最初に撤退させた部隊以外に残っていなかった事に。しかし彼らの死は無駄ではない事が、ウォルターにとっては大事であった。

これで避難民が全滅していれば、彼らの行いや死は無駄である事になってしまう。それだけはあってはならない、心の中でそう思っていた。

 

その後、ド・ゴール将軍からネウロイが発する「瘴気」の説明を受けた、その「瘴気」は黒い霧状のものであり、一酸化炭素中毒や気管不全と同様の症状を起こし、死に至らせる事ができる、金属類などを腐食させその一連の効果は人間にしか効果を示さないクソタチの悪いものであるとの事であった

この時ウォルターとジョンは、自分らがその「瘴気」の中を通ったりしてきたと言うのを控えた。言ったら間違いなく、面倒な事になるのは明白であったからだ

さらに奴らの巣の周りにはこの「瘴気」が充満しており、とても歩兵部隊や機甲師団が入れる所ではない。そしてその「瘴気」はネウロイも纏っており余計にタチが悪い、だが巣から離れたネウロイの「瘴気」は大した事はなく、ウィッチか居なくとも地上部隊や航空戦力でタコ殴りにし、撃破に至らしめる事が出来るとの事であった。

 

その後ウォルターとジョンは、生き残った旅団員の所に出向いた。ウォルターとジョンという名を聞いた旅団員の男女は、すぐさま広い通路に飛び出してきた。

いきなりの事でたじろいだウォルターとジョンだが、すぐさま生き残った旅団員に囲まれ胴上げをされた。男性陣は胴上げに参加したり、幾人かは男泣きをしたり。数少ない女性陣は、泣き崩れた女性団員をオロオロしながらあやすウォルターやジョンの姿に、涙目ながらも笑ってその光景を眺めて居た。

ウォルターは自分はここまで慕われてるのが、不思議に感じたので理由を聞いたが「ウォルター大佐だからですよ」と言われ聞くのを諦めた。

 

何故ここまで慕われているかと言うと、撤退する際恋人や家庭のある人間などを優先的に撤退させた。その為当初戦死者550名を除いた5500名のうち、残った者は2000余名で有る。居残り組を選んだ旅団員は親友や恋人を逃すとの事で、ウォルターの制止を振り切って残り、見事に野郎だけの編成になった。が逆に指揮が向上し予想以上の戦闘力を見せたのだ。

そして撤退した3000余名の旅団員は途中引き返したが、大型の放った死に際の強力な一撃により陣地のあった小山が吹き飛ばされた光景を見て、間に合わせられなかった自分達を悔やみながら、ネーデルランド、ベルギガ国境のマジノ線まで撤退してきたのである。

自分達の我儘を優先してくれたウォルターは、「子思いの親」と評されていた。

 

ウォルターが旅団の、生き残った者達と再会して一週間が経過した。ウォルターはパリにある臨時の司令部に赴き正式な任命式の元正式に佐官で有る大佐へに昇格させられた。

ウォルターもここまでスムーズに行く理由は感じ取れていた、戦場での士官数の絶対数が足らないのである。

ウォルターが行なった様な遅滞戦闘はウィルフェムスハーフェン以外でカールスラントの各地で行われたが民間人に被害が出ず、旅団を率いていた士官が戻ってきたなどウォルターが初めてのケースだった。

 

任命式が終わり同年6月3日

事態は急変、カールスラント方面のマジノ線が崩壊しネウロイはベルギガ方面のマジノ線を囲う様に進撃、翌日にはドーバー海峡に到達したとの報告が入った。

予想にない戦線の崩壊にベルギガ方面の守備軍約50万は、一気に敵中に孤立させられてしまったのである。

 

ウォルター「(ドイツ軍に包囲されたイギリス・フランス軍と同じ立場か)成る程、こりゃ相当キツイ戦いをここでもする事になるな」

 

ド・ゴール「今すぐにでも出たいが奴らに蜂の巣にされる…かと言って地下に篭っても「瘴気」にやられるだけだ…」

 

ウォルター「現存戦力でパリ方面に逆侵攻と言うのは?」

 

ド・ゴール「いや、それではダメだ、連中の進軍速度は並みのものではない。こうしている間も前線は更に後方に移動しているだろう」

 

ウォルターはド・ゴールの意見を聞いた後、賭けをやってみる事にした

 

ウォルター「なら将軍、ここに部隊を集結させてください。あそこならここら辺では広い砂浜であり、ブリタニア半島に一番近いです」

 

ド・ゴール「それはそうだが……50万もの将兵をどうブリタニア半島に届けるのだね?」

 

ウォルター「それに関しては将軍のお力添えが必要になります、宜しいですか?」

 

ド・ゴール「いいだろう、発言を許可する、言ってみたまえ」

 

ウォルター「ありがとうございます」

 

 

ウォルターの指示は簡単である。ブリタニアとドーバーに展開する輸送船や客船、艦船、漁船、水上機などを使えるものはなんでも使用し、50万の将兵を一兵でも多くブリタニアに逃すことが目的であった。

それに従い、又もや殿を務めることになったウォルターは自分の旅団には内緒で、新たに三個師団の指揮をとることになった。

殿の指揮を執った理由は「言い出しっぺの法則」、でウォルターになったらしい。

 

なおこの作戦はヤンの世界の旧世紀で行われた「ダイナモ作戦」と同規模の物である、作戦の舞台は「ダンケルク」

 

 

同年1940年 6月5日 決行日

 

 

ダンケルクの周りには簡易ではあるが、塹壕や履帯の切れた戦車などはトーチカにし、防衛陣地を敷いた。

急ごしらえであるが、これが現状出来る限りのものであることは、誰がみてもわかる様なものだった

そしてウォルターの側近として参加したジョンは、二階級を特進ではなく、昇進し上等兵となっている。

 

ジョン「いいんですか?旅団の者に何も言わないで?」

 

ウォルター「言ったら言ったでついて来てしまうだろ?せめて彼らだけでもブリタニアに逃げ延びてほしいよ」

 

ジョンはウォルターの発言に対し「確かに、そうでなくては困りますね」、と返した。

ウォルターとジョンには家庭は存在しない、ウォルターに至っては作る気もないと言っている。前世の自分「ヤン・ウェンリー」はその儀式をしたのち、約束を破る形で来世であるこの世界に来た、つまり死んだのである。

彼女がどうしているかはもう、知り得ることは出来ない。只、哀しませてしまったのは確かだろう。

 

ウォルター「今度こそ生きては帰れないかも知らんな」

 

ジョン「自分としては望むところですよ、階級は特進より昇進に限りますからね」

 

ウォルター「私は階級より紅茶が飲みたいね」

 

ジョン「随分と無欲ですね?」

 

ウォルター「生きてやりたい事があるだけで十分さ」

 

そう言うと各師団が待機している広場に赴いた、師団はブリタニア以外にはガリアとカールスラント、オストマルクから撤退して来た者やリベリオンやヒスパニア、スオムスからの義勇軍、まさにごっちゃ混ぜの三個師団である。

ある者は祈り、ある者は覚悟を決め、ある者は何かを恋しく思っていた、反応はそれぞれであるが、ここにいると言うことは相当肝が据わっているのだろう。好き好んで死ぬ為に残る人間など、何処にもいないのだから。

 

ウォルター「申し訳ないがこの殿を買って出た志願者は君たちか?」

 

リベリオン兵「ハッ!そうであります!」

 

カールスラント兵「此処には据え置きの馬鹿しか残っていませんよ」

 

ブリタニア兵「我々は烏合の衆です、まとめる者が居なければ戦えません!」

 

と主要各国の兵士が、

 

ヒスパニア兵「家族は恋しいですよ、ですが守る者が居なければなりません。彼らには私の家族を守ってもらう為生き延びてもらいます」

 

スオムス兵「死ぬのなら戦場で、現役だったら尚更、せめて誰かの為に戦って死ぬ事を選びました」

 

オストマルク「殿は此処以外でなんどもやってる、今更失うものもない、だからあんたについていくよ」

 

と残りの義勇軍の兵士たちが言う。

 

戦意は十分、武器弾薬も兵員も前回とは違う、限定的ではあるがブリタニア半島から空軍は攻撃機や戦闘機、海軍は空母から艦載機など、更にウィッチの支援を受けれるなど好条件だが、それは作戦が発動されている間のみであり、40余万の兵士たちが脱出に成功したら次は自分たちである、この勝負は一つのミスは全体を崩しかねない。

 

ウォルター「諸君、我々は死ににいくのではない、生き残る為に戦いに行くのだ。我々は全体の五分の一にもみたない数である、だが私は君達に感謝しなければならない、全体の50万もの中からこれだけの志願者が集まるとは思っても居なかったからだ。東洋では「三本の矢の教え」なる物がある、これは一本の矢では簡単に折れてしまうが三本の矢が重なる事で折れなくなると言うものだ。闇雲に戦ってはいけない、我々は一人ではないのだ、諸君らの隣には最初で最後かもしれない戦友がいる。一本の矢でいてはいけない、それでは簡単に折れてしまう、だが協力し合い、一本の矢が三本、いやそれ以上の物になった時我々は初めて奴らと渡り合える。我々は「人間」だ奴らの様な「化け物」じゃない、一人一人が違い、欠点を持っている。それを埋める為に我々はこうして団結し立ち向かわねばならない、楽園への招待状は持ったか?奴らはその招待状を携えて向かって来ている。諸君、我々は来る者は拒まない、だが去る者は決して許さない。我々は殺されに行くのではない、殺されに来る奴らを殺し死なせてやるのが仕事だ。諸君時間だ、始めよう!」

 

ウォルターが演説を終わらせると、師団の皆は大声を上げ賛同の声を露わにした。この時ウォルターは半ばヤケクソで話していたが、それが良かったのか師団の戦意は高まり、その声は浜辺にて待機している将兵達にも聞こえていた。そしてこの演説は時間ギリギリまで居残っていた従軍記者によって、タブロイド紙に出され瞬く間に世界に広がっていった事を、ウォルターは後に死ぬ程後悔することになる。

 

 




出来れば感想ください、コメントください(懇願)

してくれるかわからんけどお気に入り登録してくれた人はありがとうございます

作者のやる気に直結します

個人的にバルクホルンの妹のクリスが一番記憶に残ってる

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