その男の名は「ヤン・ウェンリー」   作:第2戦闘団

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タイトルは浮かばなかった。
来週とかほざいてたくせに1ヶ月後とか…
すいません許してください何でもしますから!


第9話

ラッペーンランタの野戦病院から復帰し、後にする1人の軍人とベレー帽の上に一羽のカラスがいた。

1人の軍人はブリタニア陸軍の軍人であるウォルター・レーヴェン(ヤン・ウェンリー)、ベレー帽に陣取っているカラスは『准将』とウォルターが名付けたカラスである。

 

このカラスは、病室にいるのが退屈すぎるので付近を散策がてらに放浪していたウォルターが拾ったカラスである。

「衛生的に不味いからやめてくれ」と言われたが、元々誰かのペットだったのか首輪が付けてあり、躾や健康状態は良く。検査の結果、いても問題ないとの事になった。

 

カラスと言えばヨーロッパでははるかな昔、神聖なものとして崇められたが人間が戦争という行動に出た事と、怪異(ネウロイ)と人間の戦争によって出来た死体にカラスが群がる事から、不吉の象徴や嘘つき・密告者などの象徴として、そのイメージが定着している。

 

「誰のペットか知らないが、隠されて育ててもらってたのか?」

 

カァァァッ!(勿論です)

 

1人と一羽はそんな会話を頭の上でしながら病院を後にする。簡単な物ではあるが言葉を理解しているらしく、挨拶をすれば返事のように鳴き声をあげる。ウォルターはこのカラスがどの種類に属しているのかはわからないが、此処まで人に慣れている事は前の飼い主には相当可愛がってもらっていたのだろう。首輪には崩れた文字で飼い主の名前が書いてあった。多分だが親にバレて、泣く泣く離したのだろう。などと考えながらシェーンコップに指定された場所に着いた。因みに首輪は外したが、捨てるのもアレなので持っている。

 

「そう言えば、首輪をしてて苦しくないのか?」

 

カァァァッ!(あんまり)

 

気になった事を准将に話すが、准将の返事をウォルターが理解する事は当分ない。それよりか、迎えに来ると言っていたシェーンコップが現れない現状に「早く来ないか」と心の中で願っていた。しかしその願いは届かず、昼から5時間その場で待機していたが来ないと確信したウォルターは無一文の為、近くの空軍・陸軍基地なりに頼み込んで空いている兵舎の個室を貸してもらう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に申し訳ない」

 

カァァァッ!(ありがとう)

 

「いえ、気にしないでください。そこの突き当たりを左に曲がった所です」

 

やっとの思いで腰を降ろせる場所が見つかったのはラッペーンランタの航空基地だった。元は民間の飛行場であったが軍が押収、改装し全74機ものウィッチや航空機を離発着させる航空基地に仕上げた。ウォルターは空いている個室に案内されベットに横になる。

 

「意外と広いもんだね。どうかな准将閣下、不満はないか?」

 

カァァァッ!(大丈夫)

 

ウォルターがそう話すと准将は返事をし、ウォルターはなんとなく不満はない事だと受け取り、そのまま眠りにつく。しかし寝たはいいが数時間後にはまた起きてしまうのである。

 

「……今何時だ?」

 

懐から懐中時計を確認する。時間は午後8時、1時間半しか経っていないがウォルターは5時間位寝た気分である。

 

「准将、起きてるか?」

 

カァァァ…(クソネミ( ˘ω˘ ))

 

ウォルターの問いに対して、弱々しく返事の鳴き声をあげる。

 

「眠いのなら寝てて構わないから、此処にいてくれ。私は、外を歩いて来るよ」

 

カァァ…(スヤァ…( ˘ω˘ ))

 

鳴いた後すぐに寝た准将を確認して部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウォルターが今の現状を一言で表したいのなら「紅茶が飲みたい」である。最近じゃ気休め程度のグリーンティーしか口にしておらず慢性的な紅茶不足になっている。前世でもそうだったが、この現世に置いても紅茶提督(妖怪紅茶くれ)の磨きは一層かかっている。しかし反面、コーヒーにも一定の理解を示したがやはり泥水という評価は変わっていない。

 

このような重紅茶中毒者の場合、少しの間を開けると禁断症状に襲われる事が多々ある。紅茶紳士ならではの症状である。しかし症状にはある程度の免疫がついたウォルターは1ヶ月の間だけなら平常心を保てるが、それをすぎるとロケット推進式陸上爆雷や氷山空母の様な物が次々と浮かんで来るらしい。

 

「紅茶が飲みたい……非現実の様なものばかりが頭の中で浮かんで来る……」

 

雪を払いハンカチでベンチを拭き、座る場所を確保し、座りながら紅茶の不足からくる非現実じみた考えに苦しむウォルターに1人の佐官が呼びかけた。

 

「君、そんな所で何を悩み込んでいるんだ?」

 

ヒューゴ・ダウディング。ブリタニア元空軍大将にして第501統合戦闘団設立の立役者の1人である。現ブリタニア空軍大将のトレヴァー・リー=マロニーとの政争に敗れ、降格し東部戦線に左遷された事を最後に両者は顔を合わせるのは今日が初めてである。現階級は大佐である。

 

「此れは此れはダウディング大将でしたか」

 

「元だがね、今は大佐だ。見覚えがあると思えばウォルター中将か、最後に会ったのはいつ頃だろうか?」

 

ダウディングは元ではあるが、空軍大将なだけあって運用能力は現大将のマロニーにも引けを取らない程であり、度々領空に侵入するネウロイに対し、かねてより計画していたダウディングシステムにより、大部隊の決戦を避け、航空戦力の崩壊を防ぐと共に裏で資源管理や予備兵力の温存、本土防空の付け入る隙を徹底的になくすなど他にも多くの事をやってのけた。ブリテン島が無事なのは彼のお陰と言っても過言ではない。

 

しかしネウロイの地上攻撃や爆撃に対し、都市より軍関連の基地や施設を徹底的に優先させた為に、質・数的に不利な防空戦闘・作戦を強いる一方で、自身の故郷や想い人のいる町の防空を禁じられた傘下の将兵の一時の不満と反発を招いた上、マロニーに付け入る隙を作ってしまい後日失脚させられた。

 

「ウォルター中将、統合戦闘団は問題ないかね?」

 

「ええ、問題はありません。私の精神は甚大な被害を受けていましたが」

 

「何かと迷惑をかけたな。マロニーもアンチウィッチの思想さえなければ、かなり有能な軍人なんだがな」

 

「それは誰しもが思うことでしょう。それと伝えておきたい事が、私の息がかかった者によると最近では極秘で兵器開発をしてるらしいんです」

 

「極秘で兵器開発か……しかし、どんな物なのだ?」

 

「開発中だという事は事実でしょう。実際、空軍に割り当てられる予算の全体で4割が謎の出費をしていました。マロニー大将が空軍の実権を握って1ヶ月もしないうちにです」

 

実際、空軍の予算の4割は謎の出費によって消費されている。概要は備蓄装備の追加調達や機体改修・更新などが記載されているが、どれも記載された回数や量より遥かに少ないのである。普通こんな事が起きているなら軍務省や陸海軍省が関知して文句を言ってきそうだが、それが無いという事は誰かが根回しやら口封じやらで口外させないようにしていないのだろう。

 

「今後の戦いで彼女達が必要なくなる。その事だけ聞けば聞こえが良いんですがいかんせん、あの性格ですのでこの理由に辿り着く理由が、禄でもない事だと思うんですよねぇ…」

 

「私としても、彼女らの力を頼っている現状、彼女ら抜きでネウロイと渡り合える兵器が出来るというなら喜ばしい限りだ。しかし、もし完成しても所有者はあの男(マロニー)だ。何をするかわからん、そこだけは注意してくれ」

 

「身内には是非とも、使って欲しく無いですがねぇ…」

 

この時ばかりはウォルターも知るはずもなかった。なんせ、計画の首謀者であるマロニーでさえも予測しえなかった自体になってしまったからである。その後、ダウディング大佐に紅茶の事で悩んでいた事を告げ、少しではあるが譲ってもらう事を確約してもらった。その後、いくつかの談笑を交えたダウディングとウォルターは自室と仮部屋に戻り就寝し、午前5時まで目を覚ます事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝6時、ウォルターはダウディングからティーパックを貰い受けラッペーンランタ飛行場を後にする。目指す場所はヨウセツノ。そこに新しい勤務先がある。

以前まではそこそこ人がいたが、マンネルヘイム要塞線上で直ぐそこが戦場というので住民は疎開し、今では無人の家屋が立ち並ぶゴーストタウンになった。人が管理している物はラッペーンランタとイマトラ方面に伸びる鉄道路線と電線や電話回線、道路周辺、軍関連施設くらいであり、豪雪の時期になると雪を下ろす人間がいないので潰れる家屋がある。鉄道でヨウセツノに着任したウォルターはシェーンコップと再会した。見慣れない女性と一緒にいるが、ひとまず置いておいてシェーンコップに謝罪を求める。

 

「やぁシェーンコップ、時間はたっぷりあった。謝罪の言葉くらい考えてあるのだろう?」

 

「謝りますから。昨日はずっとこの婦人と手合わせをしてましてな。気分が高騰してしまいまして、時間など忘れてしまいまた。」

 

ウォルターがシェーンコップの言い訳を聞き、そのご婦人とやらを見る。

 

「………あぁ君、所属は?」

 

「ベルツィレ空軍基地所属の陸戦ウィッチだ。階級は少尉、この前はニパとエイラが世話になったな。姉として感謝する。」

 

この時、ウォルターは2つの話を思い出した。1つ、ベルツィレ基地所属の陸戦ウィッチの話。2つ、エイラ飛行曹の姉はとんでもない経歴を持っていると言う話。

 

「…『モロッコの恐怖』に『コッラー川の奇跡』の当事者とは……成る程。シェーンコップと互角にやれる訳だ」

 

アウロラ・E・ユーティライネン。スオムスの陸戦ウィッチであり、陸戦ウィッチの話では必ず彼女の名前が上がる。ヒスパニア戦役からスオムス戦線までに使用した武器は重火器から鈍器までありとあらゆる物を使った。ウォルターが聞いた話では収束手榴弾を片手にスコップでコアを掘抜き、そこに収束手榴弾を放り込んで爆破するなど随分と破天荒な方法だが、お国柄がよく反映されているとウォルターは思っている。しかし、その話で人として見る事が失礼ではないかと思い始める。

 

「…なんか人を化け物の様に見ていないか?」

 

カァァァッ!(怖いわ〜人間怖いわ〜)

 

実際化け物として見られても仕方がないくらいにはアウロラの経歴は桁違いである。生身でネウロイを相手すると言うのだから、その時点で人間ではないだろう。それとかなりの酒豪である。

 

「シェーンコップとやり合っていたのか?」

 

「勿論」

 

「…一日中?」

 

「楽しかったぞ?」

 

ウォルターの中で人類と言う提言が崩れかかった。なんせこの2人は昼夜問わず、ただ己の闘争心に従って無邪気な子供がはしゃぐ様に、山中や旧市街地を駆けずり回り、闘っていたのだ。しかも、それだけ動いて「楽しかった」だの「気分が高騰した」だのと言うのだから、もう人間として見る方が失礼ではないかと思う様になる。

 

「申し訳ないが、そんな人物が何の用かな?、まさかまたシェーンコップとやり合いたいなんて言わないでくれよ?」

 

「それもいいが、大事な妹と妹分から伝言を預かって来ている。会いたいんだとさ、それと空いてる時でいいから私の酒の席に付き合ってくれないか?、最近飲み比べる奴がいなくて退屈なんだ」

 

彼女から酒という単語が出た時、ウォルターは背筋が凍った。「間違いない、酒の席引き摺り込まれたら私では確実に急性中毒でに死ぬ」と。確かに酒は飲むが毎日の様に飲める胃袋も耐性も持ち合わせていない。酒といえばクリスにも注意され、飲まないとその場の勢いで約束してしまったので迂闊に飲むこともできない。

 

「前者は承知したが、後者はそこの連隊長殿にでも頼んでくれ」

 

「そうか。よし!、もう一戦するからこの連隊長借りてくぞ!」

 

「あ、あぁ…」

 

「では中将、また今度」

 

そう言ってアウロラとシェーンコップはウォルターの前から立ち去る。競い合う相手ができた為であるのか、とても満足そうな足取りで外に向かう2名に対して、ウォルターが思った事は

 

「随分と豪快な友人なことで…」

 

カァァァッ!(物騒な友人やな)

 

それから少し経ち、ウォルターが復帰したのは1月9日から大体二週間後で1月も終盤のことである。それからは二週間の間で降った豪雪によって潰れてしまった車輌格納庫の修繕や、それからくる書類との久々の対面式、潰された車輌の補充の為にまた書類と対面するという事を繰り返した。因みにだが、除雪車なんて豪華な物はないので除雪は基地総出の人力作業だ。この事でウォルターは雪が大層嫌いになったとか。

 




仕事と税金は増えてくのに最大HP減っていくんだ。頼む助けてくれ!(届かぬ願い)

本当は飼ってたカラスが寿命を全うしたのでお墓作りをして1人お通夜してました。悲しいなぁ…

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