不滅の存在になったので死んで英雄になろうとしたら仲間が良いヤツすぎて死ねなくなる話。 作:アサルトゲーマー
誤字報告ありがとうございます
俺は誰かに劣情を抱くことが出来ない。
男の心に女の躰。その上生殖機能が無いときたらある意味当たり前である。アイツかっこいいな、かわいいな、と思うことがあっても性的に抱きたいとはこれっぽっちも思わないのだ。
だからこそ、ゾックに問われた事に俺は悩んでいた。
「お前、好きな男はいないのか?」
ゾックの下世話な事を考えている笑みを見ながら俺は腕を組んで考える。どうも皆が朝からおかしい、心配させすぎたかな…。
これで気になる男居ませんなんて言った日にゃお見合い勃発の可能性まである。そんな訳で俺は地球での思い出を紐解き、一人のキャラを引き出した。
「…います」
ゲームの中に。
「ほぉ!どんな奴だ!」
そして思い切り食いつく下世話なオッサン。俺はゾックに背中を向けて焼けたフライパンを洗いながら答えていく。
「彼は遺跡に眠る資源を掘り出すことを生業としていた少年です。勇敢で強く、人を救ったのも一度や二度ではありませんね」
「そいつとはどんな関係だったんだ?」
「私が彼を操……導いて、彼は私に応えて。一心同体ってやつですね」
「なるほどなるほど。で、どこまでイッたんだ?」
どこまで行った?どういう意味だろう。ストーリーという意味でなら全クリしたけど。
「最後まで行きましたね」
「最後までイッたのか!」
「日に三時間くらいするのも当たり前でしたし、それぐらいは」
「三時間だとぉ…!?」
ゾックが戦慄している。何を質問していたのか曖昧にしたまま答えたせいでヤバい回答になっているようだ…。
「まあ、そこは置いとこう。お前が熱をあげてるそいつとくっつく気はねえのか」
「不可能です」
「ん?」
あ、しまった。適当に流せばいいのに言い切っちゃった。取りあえず凄い遠いとこに居て会える状況じゃ無いって伝えておくか。
「彼は今
「…!」
「会えることはありません」
これでよし!ゲームの彼は最終的に
フライパンが綺麗になったので新しい材料を取り出そうと振り向くとゾックが断頭台に頭のっけてた時みたいな凄い顔してた。
ゾックが役に立たなくなったので結局一人で朝食を作った。メニューは肉、肉、あと木と豆だ。
この世界の人間はマジで肉ばっかしか食べない。まあ植生自体が悪いからな。木に実がつかないのは当たり前、山菜の類いは高確率で毒、肉食に傾くのもやむなしだ。っていうかよく生物滅ばないなこの星。
逆にエルフは肉の類いを好まない。食うのはもっぱら豆か木だ。食木文化はなんでか両方にあるから不思議なもんだ。まあ木を食うと言っても蒸かすと餅みたいになって食えないことはないのだが。でもすっごく青臭い…。食い物に困った時にしか食べたくないのが俺の正直な感想。
重力魔法でもくらってんじゃないかってくらい肩を落としてるゾックを尻目に残る三人で朝食を食べ始める。うーん、塩味!
「なあエスポワール、君は何かやりたいことはないのかい?」
ミサイルにそう言われた。自爆とか答えたら怒られそうだし、それ以外の素直にやりたいことでも言っておくか。
「今はみんなと過ごすのが何よりもやりたいことです」
「エスポワール…」
「おねえちゃん…」
みんなと過ごした大切な時間が長いほど自爆したときのトラウマが大きくなるからね!と心の中でつなげていると潤んだ目で二人に見つめられた。
何だ?今日のみんなは本当に変だ。
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「じゃあ総評だ。エスポワールはここに居ることに喜びを感じているけど、辛いことを思い出してもなんとも思わないくらいに傷ついてる」
「ああそうだ。恋人が死んだって顔じゃなかったぞ」
「やっぱりおねえちゃん、自分の事をどうでもいいって思っているのかな…」
薄暗い部屋の中。二人の人間と一人のエルフが密談をしていた。内容はもちろん、死にたがりなエスポワールの事だ。
「だれかとくっつけちまえばいいと思ったんだがな、見事にやぶ蛇だったぜ」
「俺たちはエスポワールの過去を知らなさすぎた。彼女は話したがらないから聴かなかったけど、そうは行かなくなってきたな」
話したがらなかったのではなく話すような事が無かっただけである。
「おねえちゃんの心の闇、絶対に曝いてやるんだから!」
「勿論だ!」
「おうとも!」
そう闘志を燃やす三人。だがエスポワールの闇の深さは残機1の一般生物の手には余るぞ!
それいけ愛の三銃士!負けるな愛の三銃士!いつの日か三人の愛がエスポワールの心に届く日を信じて──!