【完結】鈴木さんに惚れました   作:あんころもっちもち
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3.恋愛相談

・・・なんだこの状況は。

 

 

キノコ頭のバーテンダーに差し出された上等な酒に口をつけることすら出来ずに、緊張で縮こまっている俺の隣では、モモンガ様が この世の終わりのようなどんよりとした空気を出して、項垂れていた。

 

「ちょっと、付き合ってくれ」 と、言われて連れてこられた俺には、モモンガ様のこの状態についてまるで身に覚えがない上に、さっきからバーテンダーの『お前モモンガ様に何しやがった?』と言い出しそうな圧力を感じ、本当に生きてる心地がしない。

 

 

いや、本当に、なんなんだよ この状況は!?

 

 

 

「ブレイン君だったな」

 

「は、はい」

 

モモンガ様のいつもより低い声に心臓が鷲掴みにされたようで、思わず返事が裏返ってしまった。

 

 

「お前は、ツアレの事が好きなのか?」

 

「え?」

 

 

予想外の質問に、モモンガ様の方を見れば ギロりとした赤い瞳と視線が合い、俺は慌てて弁明した。

 

 

「好きではありません!!」

 

「は?」

 

「あ、いえ。あの初恋ではありましたが、もう十年も前の話です。俺がツアレを探し続けていたのも、守りきれなかった罪悪感からくるものだったので・・・」

 

「あ、あぁ。そうか。・・・貴族に無理矢理連れ去られたのだったな」

 

 

モモンガ様の底冷えする怒りを感じて、自分の中の罪悪感と重なり、俺はその場で額を地に擦り付ける勢いで土下座した。

 

 

「本当にすみません!!俺が、あの時 ツアレを守れていればー!!」

 

「ま、待て待て。頭を上げてくれ」

 

 

恐る恐る頭を上げると、モモンガ様が、何処か戸惑っているように見えた。

 

 

「ブレインには怒ってないから!とりあえず、椅子に座ってくれないか?」

 

「し、失礼します」

 

 

椅子に座り直した俺を見て、モモンガ様が一息ついたようにしてから、発言した。

 

 

「子どもだったブレインが、必死に守ろうとしてくれたと。ツアレから聞いている。その後も ずっと探してくれていたのだろう?感謝こそすれ怒ってなどいない」

 

 

何処か優しげなモモンガ様の言葉が 虚しく響いた。

『貴族が来た時点で、家の中に引っ込んでいれば良かったんじゃないか』

『ツアレを隠し通せば何とか誤魔化せたんじゃないか』

無力なガキにでも守る方法はいくらでもあったんじゃないかと考えてしまう。

 

 

「それに、俺もツアレを守れなかったからな」

 

「え、それは・・・どういう?」

 

「聞いているだろう?ツアレは転生者なんだ。つまり一度」

 

 

 

 

死んでいる。

 

 

 

 

その言葉に、背筋がゾワっとした。場の空気が凍り付いたような気さえしてくる。その空気を察したのだろう。モモンガ様が苦笑いをしながら話を変えた。

 

 

「すまないな。今日は相談があって 君を呼んだんだ」

 

「・・・相談ですか?」

 

 

正直、モモンガ様とは ほとんど話したことが無い俺に相談を持ちかけるなんて、相談相手を間違えていると思うのだが・・・

 

 

「ツアレは・・・本当に、俺の事が好きなのだろうか」

 

「へ?」

 

 

死の支配者が、モジモジしながら 告白してきた内容に キョトンとしてしまった俺は・・・悪くないと思う。

 

 

「いや、だから だな。ツアレは俺の事が す、好きなのか?」

 

 

いや、本人に聞けよ。

と、出かかった言葉を飲み込んで 俺は何とか取り繕いながら発言した。

 

 

「ガキの頃から、アインズ・ウール・ゴウンの話を楽しそうにしてましたが、その中でもモモンガ様への熱意だけは人一倍でしたよ。強くてカッコよくて優しいオーバーロードなんだって、ずっと言ってました」

 

「そ、そなのか」

 

 

今、振り返ると 俺達はずっと、惚気話を聞かされていた・・・のだろうか。オーバーロード推しが強いとは思っていたが、前世の惚気話をずっと、語って聞かせていたツアレは愛が重いヤツだと思う。

 

 

「恋愛相談なら、セバス様の方が的確なアドバイスをしてくれると思いますよ。警察でも女性への気遣いが良いと評判でしたから」

 

 

発足したばかりの警察は、セバス様とガゼフ・フトロノーフを中心に動き出している。

 

先日、ガゼフと呑んだ時に 奴がポロリと こぼしていた言葉。

「セバス様、若い女性から物凄くモテててな。当然の結果だとは思うが・・・何というか男は若さじゃないんだなと、考えさせられたよ」

と、いうのを思い出しての発言だった。

 

 

「あー、流石 セバス。たっちさんの息子なだけはあるな・・・でも、セバスはダメだ」

 

「へ?」

 

 

中々いい案だと思っていただけに、ここまでハッキリと否定されるとは思っておらず、素っ頓狂な声が口から出てしまった。

 

 

「セバスの創造主である たっち・みーさんは、ツアレの兄さんだからな。流石に身内に恋愛相談と、いうのも・・・」

 

「「えぇ??!!」」

 

 

予想外すぎる発言に、俺とバーテンダーのキノコ頭の声が被った。

 

 

「も、申し訳ございません」

 

 

慌てて頭を下げて謝罪をするバーテンダーをモモンガ様が手で制した。

 

 

「いや、構わん。そういえば話してなかった事だったしな。驚いても仕方ないだろう」

 

「ツアレの前世の兄が、たっち・みー様?」

 

 

たっち・みー様といえは、パンドラズ・アクター様が姿を纏っていた事があったから、すぐに思い浮かんだ。輝かしい全身鎧を着込んだ戦士だった。

 

 

「あぁ。ん??そういえば、誰にも言ってなかった事だったな」

 

 

マジかよ!そんな重要事項を 俺なんかに言っちゃダメだろう?!

 

 

「あ、も、モモンガ様?この事は機密事項ですか?」

 

「ん?いや、忘れてただけだから。気にしないでくれ」

 

「は、はい」

 

 

気にするなとは・・・ムリだろうよ。

 

あの爆弾発言の後も、モモンガ様から恋愛相談をされていた訳だが。正直、無難な答えしか返せなかった。

 

仕方ねぇだろうよ、俺、恋愛相談なんか受けたの初めてだったんだからな。

 

絶対、人選ミスだ!!

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「どうでしたか?ソリュシャン」

 

パタンと静かに閉まったツアレニーニャの自室へと繋がる扉の前。廊下に待機していた私、デミウルゴスと 守護者統括 アルベドはソリュシャンの答えを息を潜めて待った。

 

 

「懐妊しておられましたので、ご命令通り処理致しました。ツアレ様には懐妊していた事は伝えておりません」

 

「そう。ツアレの容態は?」

 

「今は眠っておられます」

 

 

想定していた最悪の結果を早い段階で処理できた事に安堵の息をついた。

数時間前、様子のおかしい ツアレニーニャに声をかけ 誘導しつつ問いただした所、自白した内容に心臓が止まる思いだった。

 

『私は・・・犯されてしまいました。あの時は、舞い上がって告白を受けてしまいましたが、こんな私ではモモンガさんの隣に立つ資格などなかったんです。すみ、ません。わ、わたし、私はッ』

 

気丈に振る舞い、意を決して話し出したツアレニーニャだったが、最後の方は涙をこぼしながら何度も何度も懺悔を口にしていた。

 

ツアレニーニャを宥め、1度身体を調べようと提案し、更に 如何にモモンガ様がツアレニーニャを愛しておられるか説得した。

途中でモモンガ様がこちらへやって来て、心配そうに そっと覗き見ている姿には思わず笑みがこぼれてしまった。うさ耳骸骨だったから・・・ではなく、ツアレニーニャを愛しておられる想いが伝わってきたからだ。

 

 

人間の女性は『貞操観念』が強い。特に上に立つ者ほど、根強く支配している。だが、その考えは異形種で構成されたナザリックにおいては適応されない。

 

そして、間違いなく言えることは モモンガ様はツアレニーニャを そんな事で見捨てる事はないという事だ。至高の御方はツアレニーニャを心から愛しておられる。その初々しい様は見ているこっちまで恥ずかしくなってくるほど微笑ましいものだった。

 

 

「本当に、モモンガ様にはお伝えしなくてよろしいでしょうか?」

 

「時期を見て 伝えます。このことは誰にも漏らさぬ様に」

 

「はっ」

 

 

去っていくソリュシャンの後ろ姿を見送りながら、私は口を開いた。

 

 

「アルベド、モモンガ様に伝えるのですか?」

 

「ええ。・・・でも、今ではないわ」

 

 

今のモモンガ様とツアレニーニャの関係は危うい。まだお互い手探り状態で、ツアレニーニャとて、愛しているからこそ身を引こうとした。

もし、ツアレニーニャに懐妊していた事を伝えれば、モモンガ様からどれ程愛されているのか自覚のない彼女は 姿を消そうとするだろう。

もし、モモンガ様にツアレニーニャが懐妊していた事を伝えれば、今度こそ王都は 文字通り消滅するだろう。消滅した王都をツアレニーニャはどう思うだろうか・・・。

 

 

「随分とお優しいのですね」

 

「モモンガ様の幸せが私の幸せ。それだけよ」

 

 

ツンとした態度を崩さないアルベドは、クルリと背を向け歩き出した所で、こちらを振り返った。

 

 

「あ、そうだわ。デミウルゴス、ツアレを犯した屑共を勢い余って殺すのだけは止めて頂戴。・・・至高の御方の愛する人を穢した愚か者、一発ぶち込まなきゃ気が済まないわ」

 

「ええ、承知しました」

 

 

今度こそ、歩き去っていくアルベドを見送りながら ツアレニーニャを穢した奴らはどうなっていたかと記憶を辿った。

大分壊れてきてしまっているが、まだまだ大丈夫だったと思い出し 私はその場を後にした。

 

 

 

 




44.絶望の淵
『目覚めてから何度も“尋問”を受けてきた。』
と、明確には書いてありませんでしたが、性的拷問も含まれます。

アラクネのツアレが人間時に妊娠した子は人間なのだろうか・・・???
深くは考えてはいけない!






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