I wanna be the HERO!!   作:Natural Wave

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少し短いですが投稿します。オールマイト視点でお送りします。


第11話 境遇

USJ襲撃についての報告と今後の対策、マスコミへの対応等を教員たちで話し合った後、私は校長(せんせい)に呼び止められた。なんでも見て欲しいものがあるとのことだった。そう言われた私は後に用事があるわけでもなかったので校長を肩に乗せて共に校長室へと向かった。校長室へ入ると、校長はデスクの上に乗ったパソコンを開き私に画面を見せる。再生途中の動画を停止した状態だ。

 

 

「USJの映像だよ」

 

 

さらりと言ってのけた校長に一瞬言葉を失った。

 

 

「え…?USJの監視カメラはジャミングされていたのでは?それに…なぜ先ほどの会議でこれを出さなかったのですか?」

 

 

これがあれば今後の対策の会議もずっと捗った筈だ。

 

 

「ジャミングをしていたヴィランを生徒達が倒したみたいでね、途中からだが監視カメラが復活したのさ。これを君だけに見せたのは今回の(ヴィラン)連合の目的、それは君の殺害だという話だったから。だからまず君に見て欲しかったとも言える。そして君の意見を聞きたいとも思ってね」

 

 

「………成程、わかりました。拝見しましょう」

 

 

一人掛けのソファに腰かけ、パソコンを机の上に置いて再生ボタンをクリックして映像を再生させる。映像は噴水を映していた。相澤君が脳無と戦闘を行っている場面だ。しかしそれは戦闘というよりは圧倒的且つ一方的な暴力であった。音声は微かにだが聞こえる。相澤君が殴打され、地面へと叩きつけられる音。脳無の動きは、私が打ち合った時よりもずっと速く、キレがあった。

 

 

「私が戦った時よりもキレもスピードもある……」

 

 

数度脳無の攻撃を受けた相澤君は地面へと倒れ伏し動けなくなった。膝の上で握った拳に力が入る。映像とはいえ、何も出来ないのが悔しくて仕方がない。

 

 

「画面の端を見てごらん」

 

 

そう言われ、画面の端へと視線を移し目を凝らすとほんの少しだけ映った水辺に見知った顔達があった。

 

 

「緑谷少年!?それに蛙吹少女に峰田少年も…」

 

 

「多分、相澤君の力になろうとしてくれたのだろう。とても危険だと言わざるを得ないけどね…」

 

 

「何でこんな危険な……」

 

 

すると、画面の中央で黒い靄が現れた。ワープの個性を持つヴィランだろう。黒霧と呼ばれていたと資料にあったはずだ。ヴィランは死柄木弔へと近づき、何かを話すと良い報告ではなかったのだろう、死柄木弔は首を掻きむしり始めていた。まるで子供の癇癪のようだ、そう思っていた時、死柄木弔は突然手を止めて走り出して蛙吹少女へと襲い掛かった。

 

 

「――ッ!!」

 

 

ギシ、と座っていた一人掛けのソファが音を立てきしむ。死柄木弔は蛙吹少女へと腕を伸ばし

 

 

そして――

 

 

その腕は何かに弾かれた。一瞬遅れてきた破裂音と、小さな金属音。銃声――そう認識した時にまた端へと視線を動かすと、幾度少年が装備と報告にはなかった刀を構えて立っていた。距離は20~30mは離れているだろうか。何かを話したヴィラン達、そして次に命令を受けたのであろう脳無が動き出そうとした瞬間、幾度少年が銃を脳無に向けて撃つと脳無はビクビクと痙攣したまま動きを止めた。

 

 

「テーザー銃のような弾を装備としていたのだったな…。となると弾を切り替えたという事か…?」

 

 

少し巻き戻し映像を確認してみると、幾度少年は死柄木弔達が話している間に弾倉を交換していた。脳無の体格を見て切り替えたのなら、判断の早さは目を見張るものがある。流れる映像の中、次に幾度少年は脳無へと近づくとそのまま刀を振り下ろした。

 

 

「……迷いもなく()ったな」

 

 

幾度少年は一度だけ脳無を斬り付けた後、反撃を警戒したのか距離を取って離れた。脳無は動けるようになったからか立ち上がると、斬り付けられた肩の肉がベロリと捲れた後ブチりと千切れて地面へと落ちた。しかし脳無は気にする様子もなく姿勢を低くし、銃声と共に消えた。

 

 

「ムッ?」

 

 

脳無は幾度少年に襲い掛かることも無く、幾度少年の後方へと突っ込んだ。

 

 

「直前に響いた銃声…当てたのか?」

 

 

映像の中で小さな金属音が響いているのが小さく聞こえた。画面を操作し、映像をスロー再生させる。

 

 

「……」

 

 

映像がスローに再生され、脳無の姿が映し出された。立ち上がったところからだ。脳無が少しずつ身体を沈めていき、跳ぶ――直前、小さな何かが脳無の胸部に食い込んだのが見えた。ガクリ、と体勢が崩れたまま脳無の脚は地を離れていった。通常の再生速度に戻すと幾度少年は驚く様子もなく土煙の方へと歩んでいき、倒れ伏した脳無をまた一度だけ斬り付けて離れた。幾度少年が離れ、また少しして立ち上がった脳無は動かず、ピタリと動きを止めている。死柄木弔は止まった脳無に命令をするでもなく幾度少年と何かを話したようだ。そして少しだけ言葉を交わした後死柄木弔の命令を受けたのであろう脳無がまた姿勢を低くして、跳んだ。左右で何度か土煙が上がる――フェイントだ。しかし、また銃声が聞こえるのと同時に脳無は幾度少年の後方へと突っ込んだ。

 

 

「――マグレではないと。マジかよ幾度少年」

 

 

幾度少年は土煙の方へと歩き、二度脳無を斬り付けた。幾度少年は緑谷少年達に何か指示を出すと、再び立ち上がった脳無へと銃を向ける。

 

 

「一体、彼は……」

 

 

そこから一度だけ黒霧と死柄木弔が相澤君を運ぼうとした緑谷少年達を襲おうとするも、幾度少年がそれを阻止した。相性の悪さを鑑みて二人は幾度少年の相手は脳無にさせるべきと判断したのだろう、距離を離した後は脳無と幾度少年の戦いを静観しているようだった。そこから先の戦いも似た動きの繰り返し。脳無が跳び、幾度少年が迎え撃つ。一度や二度ではなく、それが十、二十、三十と続けば嫌でもこれが異常な事態であると理解する。校長が私にこれを見せようと思ったわけだ。

 

 

「これを見せたかったのですね」

 

 

「確かに、これも見せたかったけど……この先も見て欲しいんだ」

 

 

私がそう言うと、校長は首を横に振った。校長は再度パソコンを見るように私に促す。

 

 

 

再び映像へと目を送ると脳無が動きを止めている所だった。今までとの違いは、幾度少年が装備の要とも言える銃を放り投げた事だ。銃のスライドがホールドオープンの状態で止まっているのを見るに弾が切れたのだろう。最後の弾丸で動けなくなった脳無を斬りつけた幾度少年は、脳無が立ち上がっても距離を離すことも無く刀を振り上げた。拳を振り上げた脳無と幾度少年が交差し、肉片が地面へと落ちるとともに拳によって起こった風が砂埃を巻き上げた。一瞬の静寂の後、また一撃、二撃、と致命打となりうる拳は振るわれていくが、幾度少年にはいずれも命中することはない。映像を見ればよくわかるが、脳無が攻撃をする瞬間、脳無の膝がガクリと落ちたり、腕の動きが一瞬止まったりしている。すべて幾度少年の攻撃によるものだろう。

 

 

「入試の時から、どこか彼は他の生徒たちとは違うと思っていたが…」

 

 

圧巻――というのはこういうのだろうか。確かに、彼は変わった性格の多い1-Aクラスの中でも異彩を放っている人間の一人ではある。しかし……ここまで…。

 

 

「……」

 

 

そこから恐らく一分も持たないうちに周囲の地面が何十という攻防によって斬り飛ばされた脳無の肉片と血で赤く染まっていった。そして、突然二人を豪風が襲った。

 

 

「これは…」

 

 

巻き上がった土煙で画面が埋め尽くされた後、画面端から伸びた氷が土煙の中へと奔るのが見える。

 

 

「轟少年の個性…ということは、先ほどの豪風は爆豪少年の個性によるものか」

 

 

恐らく幾度少年にダメージを与えず、脳無を崩し抑える為の素晴らしい連携――そう考えたのも束の間、土煙の中で黒い靄が姿を現したのが見えた。土煙が晴れた時には、脳無の姿も幾度少年の姿もない。カメラを切り替えれば、落下しつつも爆豪少年へと拳を振りかざす脳無の姿が映っていた。個性を発動する轟少年と、爆豪少年へと手を伸ばす切島少年と緑谷少年、そして横から爆豪少年を突き飛ばした幾度少年。爆豪少年へと向けられた拳は、そのまま幾度少年へと向かい彼の右腕をマッチ棒のように容易く砕いた。

 

 

散った血飛沫が緑谷少年の体を赤く濡らす。幾度少年は地面に刀を突き刺し、肩で息をしていた。遠く離れた位置から悠々と歩いてくるヴィランの二人へ向けて途切れ途切れに口を動かした幾度少年は片手で再び刀を構えた。――なんという精神力。

 

 

そして、手足の再生を終えた脳無が立ち上がり…幾度少年へと拳を振り上げた。幾度少年が一歩前に出て刀を水平に構えた所で緑谷少年、轟少年、切島少年が間に割って入った。まだまだ発展途上と言える緑谷少年のOFA(ワン・フォー・オール)では脳無は止められず、脳無を止めるための壁としても薄かった氷も砕かれた。切島少年が刀を構えた幾度少年を背中で押さえ、個性を用いて硬化する…この後は私が助けに入って脳無を殴り飛ばすのが記録されているだけだ。私はパソコンを閉じて校長を見た。気づけば校長は紅茶を淹れ終わったところであった。

 

 

「これを見せたという事は、彼の事を調べられているのでしょう?」

 

 

「いいや、彼の事は既に調べていたよ」

 

 

「……」

 

 

校長は私に紅茶の注がれたカップの乗ったソーサーを差し出し、窓の外を眺めた。

 

 

「幾度継司…愛知県出身。公立中学の出身で成績は三年間を通じ上位三位以内を常に維持。県内模試や全国模試に於いても上位に名を連ねていた。運動面においては目立った成績は無いものの、教師陣からの評判はとても高く、雄英(ウチ)への推薦もあった」

 

 

校長がデスクの中からファイルを取り出して私の前へと置いた。私はカップをソーサーの上に戻し、ファイルを開いて目を通す。――確かに、勉学においては八百万少女や飯田少年のような秀でた成績を残している。

 

 

「両親は既に他界。祖父祖母など親類縁者も居なく……。現在は秀でた成績によって得た給付型の奨学金で生活をしているみたいだね」

 

 

続けて見た家族欄にはご両親の名前はなく、本人の名前のみ書かれている。別の資料には両親が亡くなったそれぞれの事件の詳細が記されていた。父親は診断書などから見ても疑いようのない病死。年齢を考えれば物心つく前に父親とは死別していることになるだろう。しかし…彼の母親、幾度祈(きど いのり)さん。彼女は自宅のキッチンで何者かに襲撃されたと書かれている。警察の現場検証によれば、犯人は突然幾度少年の自宅のキッチンで姿を現し母親を殺害。その後二階の幾度少年の部屋へと向かった後、金品や家を荒らすことも無く姿を消している。当時幾度少年は友人の家に朝早くから勉強会という名目で出かけていたとのことだ。

 

 

「10歳になる前に天涯孤独の身……両親も居らず、よくぞ雄英(ここ)まで辿り着いたものです。下手をしたら――いえ、下手をしなくとも彼は(ヴィラン)へと身をやつしていた可能性のほうが大いにあったというのに……」

 

 

生活苦から犯罪を犯し、そのままヴィランへと堕ちる人間は多くいる。そう考えれば今に至るまでに彼のした努力等私に推し量れるものではないのだろう。

 

 

「しかし彼に居場所が無かった訳ではない。確かに彼には血のつながった人間はもうこの世には存在しない……でも彼を保護し守った存在があった」

 

 

「…施設か何かでしょうか?」

 

 

「『不動衆(ふどうしゅう)』…知っているね?」

 

 

不動衆、そう聞いてファイルのページをめくると確かにその記述がされていた。そうか――彼は不動衆と繋がりを持っていたのか。

 

 

「不動衆……。日本におけるヒーロー組織の中で最高の規模と最多の相棒(サイドキック)雇用数を誇るヒーロー事務所ですね。そして仏寺でもあり、駆け込み寺としての側面も有名です」

 

 

「あぁ、『喧嘩だろうが迷子だろうが殺人だろうが、警察の前にまず不動衆に行け』なんて言われているくらいだ。関西に於ける影響力は君並みだろう」

 

 

「しかし何故不動衆との繋がりが…?不動衆の影響及び規模が及ぶのは関西以西でしょう?」

 

 

「そここそ奇跡というしかないね。不動衆の現代表である不動心願(ふどうしんがん)、彼の息子と幾度君は同じ小、中学で学んでいるんだ」

 

 

「まさか!」

 

 

そう言い更にページを捲ると…、確かに幾度少年の卒業アルバムのクラス名簿に彼と共に不動雲願(ふどううんがん)という名前があった。

 

 

「関西において、不動衆のような親がヒーローをしている家庭ならば小中は関西の一貫校に通わせて高校を士傑にするのが最も確実で好ましい道でしょう。なのになぜ中部地方の、しかもあまり発展しているわけでもない小さな町の学校へ…?」

 

 

「そこは僕にも分らない。しかし幾度君は雲願君、そしてもう一人と共に幼少期を過ごした。故に彼は歪まずに育ったのだろうね」

 

 

校長がまた別の資料を机に広げた。

 

 

「……」

 

 

不動雲願…身長は中学卒業時点で188cm、成長期であることも考えると既に190を超えているだろう。確かに、写真と資料を見る限りとても逞しい偉丈夫である事がわかる。優しく整った顔つきと形の良い坊主頭も相まって男女問わず人を惹きつけるクラスの中心人物であったであろうことが想像に難くない。肌色や顔つきから見るにネグロイドの血も入っているだろう。そして、もう一枚の資料を手に取る。見たことも無い…女生徒の資料だ。明るい栗色の巻いた髪と緑色の目…ヨーロッパ方面の血が入っている?…目鼻立ちは高くも顔つきに日本人の要素が含まれているように見える。

 

 

「この子は?」

 

 

「その子が幾度君にとってのもう一人。彼女も幾度君のクラスメイトさ。苗字に心当たりがあるんじゃないかな?」

 

 

目を通すと、どこかで見た名前だ。しかし、どこだったか…。

 

 

可児(かに)…マリア……?確かに…何処かで…」

 

 

「君なら()()()から殆ど時間も経っていないはずだけどね」

 

 

私の脳内で過去への映像が巻き戻されていく。朝、先日の夜…USJ…そして、それを思い出した。

 

 

「聞いて?……んん?……アッ!!―――病院!!」

 

 

「そう。彼女は可児国際大学病院の理事長夫婦の一人娘さ」

 

 

そう言って、校長は一口紅茶を飲んだ。確かに、私が幾度少年を運んだ病院で聞いた名前だったはずだ。

 

 

「いやでもしかし、可児国際大学病院は中部地方の病院でしょう?」

 

 

「関連病院の数と個性医療のレベルは日本トップレベルさ。君が幾度君を運んだあの病院も関連病院だよ」

 

 

不動雲願…そして可児マリア…二人の資料を机の上に於いて校長を見る。

 

 

「校長は、この三人の関係をどう見ているのですか?」

 

 

「……彼がメッセンジャーだと思うかい?確かに、端から見れば不動君はジョック、可児さんはクイーンビーで、彼はメッセンジャーといったところだろうね間違いなく」

 

 

「いえ、そうは言いませんが…」

 

 

しかし、こういうのも何だが立場が違いすぎるとも思ってしまう。出自で人を判断するのは間違いだとわかってはいるが、自分自身アメリカで過ごしていた時間も長かったが故にそういうものが頭によぎってしまう。直さなければいけないな。

 

 

「しかし、本質は違う」

 

 

「……何故わかるんです?」

 

 

「当然さ、不動君はともかく…可児さんは幾度君の鶴の一声で進学先を変えているのだからね」

 

 

進学先を変える?一体どういうことかと首を傾げれば、校長は愉快そうに笑った。

 

 

「君はごく最近雄英の教師になったから知らなかっただろうけどね、不動君と可児さんは二人とも雄英ヒーロー科の特待生として勧誘をしていたんだ。僕が直々にお家にお邪魔してね」

 

 

「校長自ら…?そこまでされたのですか?」

 

 

「もちろん、ウチも学校なんだから優秀な生徒は当然欲しい。ただ全国のヒーローを志す中学生の中でトップクラスに優秀な人間が雄英に来る中、更にその中から頭一つどころではないレベルで突出した人間となるとこれはもう数十年に一人か二人といった数だよ。現在活躍する多くのヒーローはウチに在籍している間に頭角を現すことが殆どだった。だがこの二人は入学以前にその域に達した頭脳と個性を持っていたんだ。だから僕が彼らのお家に出向いたんだ。まぁ、不動君はお家がお寺でもあるから多分ウチは採れないだろうなとは思ってたけど…。まさか可児さんも採られるとは思わなかったよ」

 

 

お家がお寺、採られるといった言葉から二人の進学先がなんとなく理解できた。

 

 

「採られる……二人は士傑に?」

 

 

「うん。可児さんのお家は代々科を問わずウチの卒業生だから確実に採れると思ったんだけど…結局向こうに採られちゃった。一応可児さんに理由を聞いてみたら一言さ」

 

 

 

 

 

『彼に言われたから』

 

 

 

 

 

「――ってね。僕も最初『彼』はほぼ立場の対等な不動君の事だと思っていた。でも今だからこそ理解できる――いや、今だからこそ理解できたんだ。彼女の言った『彼』は……幾度君の事だってね。これもお見舞いにまだ行けていない君は知らないだろうけど、私が顔を出した時には幾度君は関連病院のスイートルームでVIP待遇を受けていたよ。あれはもう病院というよりホテルだ…それも星が付くようなね。女王蜂(クイーンビー)がわざわざ召使い(メッセンジャー)を優遇しないだろう?そうさせるだけのものが彼にはあるんだ」

 

 

「……成程」

 

 

「僕は、彼には何かがあると考えている。それも、とても大きな何かだ。君にも今回の事を話したのは、彼の何かを共に見極めてほしいからだ。彼は、もしかしたら()()()()()()()()()()のかもしれないから」

 

 

校長と資料、そしてパソコンへと視線を滑らせた後立ち上がる。濁した言葉であったが、校長が何を言いたいのかは十分に理解できた。

 

 

「わかりました。では、私も彼には注目しておきます」

 

 

「うん。お願いするよ」

 

 

「ではこれで…失礼します」

 

 

そう言い、校長室を出て扉を閉め既に日暮れで暗くなった廊下を歩く。

 

 

()()()()()()()とはつまり――」

 

 

おそらくだが私の境遇の事を言っているのだろう。今回の騒動、校長が見せてくれた監視カメラの映像、資料…それらを含めて考えると彼は……。

 

 

()()()()()()()()()()にあるという事か」

 

 

映像を含めてみてみれば、彼が無個性であるというのはとても難しいだろう。ならば個性があるとして、それは何かという話だ。映像から推測できる個性で最も可能性の高いものである予知などであればそもそも隠す必要はないだろう。ならば――隠すべき更なる何かが彼にはある。そう考えるべきなのだ。

 

 

「しかし、本当に一瞬だが空目をしてしまった。あの相手を手玉に取るような動き…そっくりだったな」

 

 

私の脳裏にクイッと眼鏡を上げる彼の顔が浮かび上がった。というかよくよく考えたら幾度少年の淡々と物事を述べる所とかも結構似てる気が…あ、ちょっと昔よく怒られたのを思い出してヘコんできた…。――っと、ダメだダメだ。もうすぐ雄英体育祭もあるんだしっかりしなくては。緑谷少年とのトレーニング、幾度少年の様子、雄英体育祭。見なくてはならないことも、準備しなければいけないことも多くある。ヘコんでいる場合ではない。ただでさえUSJの事で迷惑をかけたのだ。次はしっかりと教師らしく働けるように動かなければ。

 

 

「とはいえやはり……彼は元気にしているだろうか…」

 

 

それでも、浮かぶ懐かしい顔を思い出して呟いた言葉は、日の沈んだ暗い空へと吸い込まれていった。




校長とオールマイトが幾度に何かがある事を察しました。

そして、恥ずかしながら僕の考えた最強のオリキャラ感満載のオリキャラ二人の名前と容姿等がちょっとだけ出てきました。継司の幼馴染で現在は士傑生という設定になります。ついでにお母さんも名前だけ出しました。お父さんは残念ですが出番は無いです。


一応、アメリカのスクールカースト用語を出しましたがちょっと調べただけなので正しく使えているかはわかりません。すいません。


評価・コメント・誤字報告大変有難く思います。コメント等はキチンと読ませてもらっています。


次回は雄英体育祭編が始まります。


筆の進みが非常に遅いですが、これからもよろしくお願いします。


※追記

特待生についてセリフをほんのり手直しさせてもらいました。

コメントで教えて下さった方ありがとうございます。

更に、不動の見た目等を手直ししました。

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