GATE ダイアモンドドッグス 彼の地にて斯く、潜入せり   作:謎多き殺人鬼

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イタリカ攻防戦

~02:58~

 

太陽が完全に落ち、真夜中の3時近くになる。

リリーは暗視装置を着け、双眼鏡で敵が来ないかを見張っていた。

暗視装置を着けたリリーの視界は暗闇の広がる中でも昼間の様に見えた。

双眼鏡でリリーが辺りを見渡し続ける中、リリーは東から騒ぎ声と明かりが急激に広がるのを感じとり、東を見ると東門付近が燃えている光景を目撃した。

 

「・・・やっぱり」

 

リリーは盗賊が別の門を襲撃した事が当たった事に最悪だと言わんばかりに溜め息をついた。

そこに慌てて走ってやって来た伊丹がやってきた。

 

「ウルフさん!」

 

「分かってる。やっぱり別の門を襲撃したようね・・・伊丹さん。貴方は隊を動かす準備をしてください。私は東門へ向かいます」

 

リリーはそう言うと助走を着ける体勢になると、伊丹は困惑の表情になる。

 

「あの、此処から東門までかなり距離があるんだけど・・・」

 

「問題ない」

 

リリーはそう言い終わると、目を金色に輝かせて走りだし出した。

その速さは軽く自動車並みで伊丹を唖然とさせたまま走り去った。

 

________

_____

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~イタリカ 東門~

 

東門では既に門は破られ、盗賊が入り込んでいた。

 

東門の守備をしていたノーマは盗賊により殺され、東門を制圧した盗賊は次の目的として奥で柵の向こうに陣取る民兵を死体を投げる、蹴る等して挑発して誘い出そうとしていた。

誘いに乗れば民兵は数が多くとも、練度に勝る盗賊には勝てない。

 

ただ死に場所を求める盗賊の醜い挑発に我慢の限界を迎えた一人の青年が飛び出そうした。

 

だが、青年は飛び出す所か逆に奥へ投げられた。

民兵は青年が投げられた場所を見るとそこには既に東門へとたどり着いたリリーがいた。

 

「・・・そこで見てなさい」

 

リリーは青年にそう言うと、柵の外へと歩いて出た。

盗賊はリリーを見ていやらしい目付きで見ており、リリーをどういたぶろうかと考えている。

 

「おいおい、嬢ちゃん。一人で出てきたら駄目だろ?」

 

「それとも俺達に遊ばれたいのか?」

 

盗賊が笑ってリリーに手を出そうとした時、突然盗賊の腕をリリーが握ると素早く捻った。

捻られた盗賊は大きな叫び声を挙げてリリーから手を放せようともがくが全く、放せなかった。

 

「このクソガキが!」

 

盗賊の一人が剣を手にリリーの後ろから斬り掛かるも、リリーは見えていると言わんばかりに捻っていた盗賊を斬り掛かった盗賊に投げつけ、右手で腰からAM D114を取り出して盗賊の頭や胸に発砲する。

 

急所を当てられた盗賊は次々と倒れて行き、次にリリーは左手から近接戦闘用のナイフを取り出してすぐ近くにいる盗賊を斬りつけ止めの発砲をしていく。

 

これはビックボスがかつて使っていた独特のCQCを参考にしたリリー独自のCQCだった。

右手にハンドガン、左手にナイフにして投げ技を殆どしない代わりに武器による戦闘に特化させた物だ。

近づいてくる敵にはナイフを使い怯ませハンドガンで撃ち、中距離ならハンドガンのみで戦闘を行う。

 

盗賊はリリーのCQCに次々と倒れて行く中、AM D114の弾が切れた。

盗賊はリリーからの発砲が止むと好機と見て、攻撃を仕掛ける。

 

「今だ!今までの借りを返してやれ!」

 

盗賊の一人がそう叫ぶと、盗賊達は次々と向かってくる。

そこでリリーはAM D114を真上に放り投げると、素手で盗賊を殴り、蹴り、投げ飛ばす等で対応し、一通り片付くとAM D114をキャッチして素早くリロードして構えた。

 

リリーの勇猛さに盗賊は怯んでいると、そこに真上から何かが降りてきた。

リリーは目を凝らして見てみると、そこにはロゥリィが巨大なハルバードを手に立っていたのだ。

 

「ロゥリィ・・・?どうして此処に?」

 

リリーはそう質問するとロゥリィは楽しそうに笑う。

 

「ふふ、貴方だけ戦いを楽しむなんてズルいわぁ。私も混ざるわよ」

 

「・・・戦いを楽しんでない。寧ろ、今すぐに終わらせたいのよ。こんな下らない戦いを」

 

リリーがそう言うと、盗賊はリリーの下らない戦い発言が非常に不愉快なのか怒りの表情になっている。

 

「貴様・・・戦いが下らないだと?我々はエムロイへの讃歌として殺戮と死を捧げているのだぞ・・・それが下らないだと!!!」

 

「それが下らないのよ。何が殺戮よ・・・何が死よ・・・本当に、下らない」

 

リリーがそう言い終わると盗賊は怒りのあまりリリーに向かっていく。

リリーは目を再び金色にすると素早い動きで盗賊をCQCで倒していく。

ロゥリィもハルバードで盗賊を凪ぎ払っている。

 

二人で盗賊を相手に暴れていた時、向こうから車両が走って来ると、自衛官の栗林が銃にナイフを着けた所謂、銃剣にして盗賊に突っ込んできた。

 

「栗林さん。貴方まで」

 

「私だって戦えますよ。自衛隊ですから」

 

栗林はそう言うと向かってくる盗賊を相手に見事な格闘術を見せる。

リリーは戦闘をしながら栗林を見ていると、オセロットからの無線が入る。

 

《あの自衛官、かなりの腕だ。是非、ダイヤモンドドッグスのスタッフに加えたい物だ》

 

「流石に無理でしょ。彼女は自衛隊どころか日本を捨てたりする様な人には見えませんよ」

 

《そうか。あの格闘の技、良いセンスだと思ったんだが・・・》

 

ビックボスに続く人材オタクのオセロットがそう言い終わった時には盗賊の殆どが駆逐されていた。

伊丹達の援護もあって後ろを心配する事もなく戦闘に専念出来た事もあるが、盗賊にはまだ五、六百程の軍勢がいる。

リリーは流石に疲れると思った時、無線が入った。

 

《此方、ピークォド。これより支援攻撃を開始する》

 

「分かったわ。でも、街中で撃たないでよね」

 

《分かってるよ。ウルフ》

 

リリーはそれを聞いて空を見上げると、ダイヤモンドドッグスの武装ヘリが現れた。

 

「おい一丁、音楽を鳴らすか!」

 

「OKだぜ!」

 

ヘリの操縦席に座る二人はそう言ってスイッチを押すと、装備されているスピーカーからワルキューレの騎行が鳴り響いた。

盗賊達が動揺していると、武装ヘリの対地ミサイルが盗賊達に牙を向いた。

激しい爆発で盗賊達が吹き飛ぶと、続いて機体の左右に取り付けられた機銃による掃射が始まり、外にいる盗賊達は逃げ惑ったり抵抗したりするも、逃れられる者はいなかった。

 

「これで外は大丈夫ね」

 

リリーはそう呟いた瞬間、リリーの耳に大量の音が聞こえた。

その音は今、流れているワルキューレの騎行と同じ物でリリーはまさかと考えていた時、案の定、自衛隊の武装ヘリが数機現れた。

 

「ダイアモンドドッグスに遅れを取るなよ!」

 

自衛隊の武装ヘリも攻撃に入った事で盗賊の軍勢は更に速く数を減らしていく。

リリーは聞いてないと言わんばかりに溜め息をつくと、性懲りもなく向かってくる盗賊をCQCで凪ぎ払う。

 

《ウルフ。そろそろ、弾薬が無くなるだろ?受けとれ!》

 

ピークォドがそう言うと、空から段ボールが降ってきた。

そして、そのまま段ボールは城壁にいた盗賊の頭らしき男の頭に当たってしまい、頭はそのまま落ちてロゥリィのハルバードに突き刺さる。

 

《・・・今のは事故だ。そう、事故だ》

 

ピークォドの言い訳にリリーは一言だけ言う。

 

「・・・馬鹿」

 

《そりゃねぇだろ!あれは不可抗力だぞ!》

 

ピークォドの言葉にウルフはまた溜め息を着くと、無線から別の声が聞こえた。

 

《城壁内の敵を掃討する。至急、退避されたし》

 

それは自衛隊からの退避警告で、リリーはそれを聞いてすぐに離れた。

ロゥリィは伊丹に、栗林は冨田に担がれて退避すると掃討が開始された。

 

自衛隊の武装ヘリによる機銃掃射に盗賊は堪らず倒れていき、遂に盗賊は戦意喪失する。

 

《此方、ピークォド。支援攻撃を終了、次の指示があるまで待機する》

 

「此方、ウルフ。了解。お疲れ様」

 

リリーは戦闘がやっと終わったと思いつつ、ファントムシガーに電子の火を着けて一服しようとした時。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

突然の叫び声が響き渡り、リリーはその方向から来る足音に反応し、素手によるCQCで向かってきた相手を投げて取り押さえた。

 

「・・・子供?」

 

リリーが取り押さえたのは子供で、兜や鎧まで着けている事から盗賊の一味と推測した。

 

「貴方・・・戦いは終わってるのよ。無駄な行為は止めなさい」

 

「終わってないぞ!父ちゃんを殺したお前を殺してやるまでは!」

 

「ッ!?」

 

子供が無駄な抵抗をしてきたのはリリーによって殺された盗賊の中に子供の親がいたのだ。

リリーはまだジタバタしている子供を押さえつつ、放心しているとヘリから降りてきた自衛官達がやって来て子供を連れていった。

 

リリーはその姿を見守った後、虚しげに自分の手を見る。

そこには、先ほどまで戦闘をしていたとは思えない程に綺麗な手があったが、今のリリーの目には血だらけの手にしか見えていなかった。

 

「・・・復讐、ね」

 

リリーはそう呟いた後で、今度こそファントムシガーを吸った。


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