GATE ダイアモンドドッグス 彼の地にて斯く、潜入せり 作:謎多き殺人鬼
あと、今回はビックボス(ファントム)の初登場です
伊丹の元嫁である理沙の家に転がり込んだ伊丹達はそれぞれ移動の疲れを取る為に休む。
富田はカーテン越しから外を見張り、ピニャとポーゼスは何を見ているのか薄い本を読んでおり、リリーはそれを覗こうとするとミラーに引っ張られて阻止される。
「あれは見るな・・・お前の教育に悪い」
ミラーの言葉にリリーは頭をハテナにしてミラーを見ると溜め息をつく。
「良いか、あれだけは見るな・・・あれを覚えられて趣味になんてされたら堪ったものではない・・・」
ミラーはそう言うとリリーはまだ疑問を持っているも、深くは追及しなかった。
理沙の家に転がり込んでから暫く経ってから伊丹達は見張りを立てつつ眠りについた。
だが、リリーは少しの眠りにつく事もせずただ、毛布にくるまり静かに時間が過ぎるのを待った。
リリーの睡眠は安全地帯と判断した場所でしか取らず、戦場等の危険地帯においてはほとんど睡眠を取らない。
現在の状況は何時、工作員が来るか分からない戦場のような緊張状態の中でリリーは眠る事は出来なかった。
「(何時までたってもこんな物なのね・・・)」
リリーは昔、ボスに拾われてマザーベースで初めてまともに寝れた。
だが、数年も経ってそれでも戦場に戻れば同じ事を繰り返し、長期に渡る任務になると寝付けない夜を連続で迎える事も度々ある。
リリーは眠れない夜の中、静かな空間を黙って過ごす。
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翌朝、陽射しがリリーの顔を照らすとリリーは起き上がり辺りを見る。
部屋には伊丹達が寝ており、起きているのは見張っている栗林だけだ。
「おはようございます栗林さん」
「おはよう。貴方起きるの早いわね」
「えぇ、何時もの事です・・・すみません、本来なら私達も見張りをするべきなのに」
「良いのよ。此方がホストなんだから任せてゆっくり寝てて良いんだから」
栗林の言葉にリリーは本当に申し訳なさそうにしていると、伊丹達も起きたのか次々と起き上がる。
ロゥリィは起きると祈りを捧げ、伊丹達はそれぞれ移動の準備に入る。
「さて、準備も出来た事だし遊びに行きますか!」
伊丹はそう言うと栗林は呆れ顔で伊丹に言う。
「隊長、それ所じゃないですよ・・・ただでさえ、追われてるのに」
「俺のモットーは食う、寝る、遊ぶ、ほんのちょっと人生だ。それに、工作員も人の多い都市部じゃ手を出してはこないだろうしね」
伊丹がそう言うと、理沙を筆頭に思い々に観光してみたいと言う声が挙がった。
リリーは別に日本に来たのが初めてと言う訳でもないので興味はなかったが、ミラーは切り出す。
「俺も少しばかり用がある。すまないが付き合ってくれるか?」
「はい。ケミカルバーガーの支店の事ですね?」
「馬鹿!ただの用事だ・・・伊丹とな」
ミラーは誤魔化す様に言うも全く説得力がないが、伊丹と用事とは何なのかとリリーは疑問に思う。
こうして東京の街を観光する事になり、一度全員で都内に向かってから其々の目的の場所へ行く。
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伊丹、ミラー、リリー、ティファニは目的の場所から少し寄り道してオタクが好みそうな雑誌を伊丹が買って目的の場所である公園に着いた。
「ミラーさん。伊丹さんと此処で何をするのですか?」
「ある人物に会う為に来た・・・と、言えば良いな。言っておくとその人物はお前も会った事がある」
ミラーはそう言った時、向こうから空港でリリーを出迎えた嘉納がいた。
「待たせてすまないな」
「嘉納大臣・・・!?どうして此処に?」
リリーは驚くと、嘉納は高笑いする。
「なぁに、こう見えて俺はそこにいる伊丹とはオタク仲間でな。時間が出来ればこうして会う事もある」
嘉納はそう言うと伊丹は嘉納に近づき手土産を手に挨拶する。
「太郎閣下。お久しぶりです」
「おぉ、いつもすまんな。大臣をしていると時間が中々できなくてな。それと、ミラー副司令もよく来てくれました」
「いえ、今夜の警備体制の確認に来ただけですから」
ミラーはそう言い終わると、嘉納は伊丹からの手土産を受け取った後、ミラーと伊丹を横に置き、リリーとティファニは後ろから周囲を警戒しつつ歩き始める。
「さて・・・今回の件だが、まるで世界から工作員を送り込まれている様だ」
「特地は宝庫とも言える土地だ。資源、土地、汚染の無い環境に加えて文明レベルも此方が圧倒的だ。其処らの小さな武装勢力でも中世レベル文明の国なら簡単に一国を破壊し尽くせる程にな・・・だから、世界は欲しがる」
嘉納の言葉に追従するようにミラーはそう言うと嘉納は苦笑いする。
ミラーの言った事は筋がとおっており、嘉納はただ苦笑いするしかなかった。
「確かに、な・・・その気になれば日本だけで戦争を終わらせる事は多少の無理をすれば出来なくはない。だが、それじぁ日本が今まで守ってきた平和憲法が何だったのかの話になる」
「だが、終わらせるしかない・・・その為の講和工作の筈だろ?」
「まぁな・・・」
ミラーの言った講和工作とは、日本が武力ではなく話し合いによって戦争を終わらせる為の物だ。
講和工作は駐屯地が築かれてから始まり、そこから講和の為の情報収集から始まり、皇女のピニャとのパイプを得た事で講和工作を本格化する予定だ。
「終わらす為の工作か・・・まぁ、戦争が終われば何でも良いがな。さて、伊丹二等陸尉」
「はい!」
「貴官にはこれより、箱根山の旅館に行って貰う。箱根山には選りすぐりの護衛も付ける。頼んだぞ」
「了解しました」
伊丹は了解すると、嘉納は満足そうに微笑むとミラーが前に出る。
「では、箱根での警備体制の確認を」
「あぁ、分かっているさ」
嘉納とミラーは互いに警備の情報を確認し、今夜に備え始める。
その姿を見ている者がいるの知らずに。
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~イラン南部 上空~
イラン南部の上空には、ダイアモンドドッグスのマークが描かれた武装ヘリが飛んでいた。
その中には眼帯をし、額に角の様な破片が剥き出している男が鎮座し、端末を開いて指示を出していた。
その男の元に無線が入り、男は無線を取る。
《スネーク》
「オセロットか。どうした?」
《特地のミッションを受けているリリーいや、ウルフの報告だ。現在、ウルフは日本で国会の参考招致に向かいミラーと合流。その後、色々と歩き回ったみたいだが・・・今日は箱根の旅館に泊まるそうだ》
「そうか」
スネークは素っ気なくそう言うとオセロットは溜め息をつく。
《スネーク。確かに彼女は優秀だ。だが、彼奴は仮にもお前の・・・》
「分かっている。だがな・・・いつまでも心配していたらウルフは俺から離れられなくなる。何時かは離れなければならない時が必ず来る」
スネークはそう言うとオセロットは呆れつつもスネークに言う。
《彼奴はあんたの"血"を受け継いでいる。ビックボスではなく、他ならぬファントムとしてのあんたの 》
「・・・そうだな。だが、彼奴自身がそれを認めない。俺と言うビックボスとしての存在に一番狂信的とも取れる忠誠心によってな」
スネークは溜め息をつき、オセロットはスネークの心中を察する。
スネークもスネークでリリーを心配している。
それがオセロットに伝わるとオセロットは話を戻す。
《ウルフの報告は以上だ。そっちの成果は?》
「カズの予想通りだった。廃棄された施設でメタルギアを見つけた。タイプは分からないが、まるで要塞だ」
《要塞?》
「巨大な所を含め、ありとあらゆる場所に武装を施してある。中にはレールガン、核ミサイルが積める様にもされていた」
《レールガンだけでなく、核までもか・・・!まさかイランでメタルギアが作られていれだけでなく、核武装が出来る様にされているとはな・・・》
オセロットは核搭載可能のメタルギアと聞いて驚きを隠せずにいると、ある事に気がつく。
《肝心の核は?》
「分からん・・・だが、核を搭載する事が出来ると言う事は核は作られている可能性は否定できなくなる」
《・・・そうか。もし、そうならまだまだ長丁場しそうだな。ウルフにはスネークはもう少し長くなるとでも言っておく》
オセロットはそう言うと無線を切り、スネークは暫く考え込む様な素振りをした後、端末に指示を出す。