真・恋姫†無双~程遠志伝~   作:はちない
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久しぶりに恋姫をPSPでやったら桂花と秋蘭のことがもっと好きになっちゃった(''ω'')


第2章 黄巾討伐編
黄巾討伐編 第一話


 

 

 

 

 今年の夏は特別に暑いらしい、と曹操が言っていた。どうしてそんなことがわかるのか、と程遠志は不思議に思ったが、現に確かに暑い。これじゃやってられないよ、と鄧茂は会うたびに不平を漏らしてきた。

 

「今日が休みの日でよかった!」鄧茂は叫ぶように言った。

 

 程遠志からすれば別に休みの日であろうがなかろうが、熱いものは嫌なのだが、鄧茂は違うらしい。

 艶めかしい姿で横になっている鄧茂と、そこから微妙に目を離している張曼成を尻目に、程遠志は溜息を吐いた。

 

「お前らさ、休みの日になったらぜってえ俺の部屋に来るよな」

「暇なんだもん。程遠志ぐらいしか友達いないし」

「右に同じく」

「それならよ、作る努力をしろよ。張曼成はともかく鄧茂は休日どころか仕事が終わったらすぐに俺のところ来るじゃねえか」

「来ちゃダメ?」

「別にいいけどよ、もっと新たな人間関係を構築したらどうだ、って話だ」

「そういう程遠志はどうなのさ」

 

 それを言われると二の句が継げない。程遠志は目を逸らすしかなかった。

 彼もまた、生まれながらの強面が祟ってまだ誰とも打ち解けられていなかった。ほら、と勝ち誇る鄧茂に、苛立ち紛れに拳骨を落とす。

 

「なにすんのさ!」

「得意げな顔が気に食わなかった。俺の部屋に入り浸りになって友達出来てねえ奴が勝ち誇ってんじゃねえ」

「だからって暴力振るわないでよね」

「昨今の、むやみやたらに暴力は振るわないほうがいいです、って風潮が俺は嫌いなんだよ」

「なにそれ」鄧茂は馬鹿馬鹿しいものを見た、という顔になる。「それに、僕が程遠志のよく行ってるのは、友達が少ないからだけじゃないんだよ」

「じゃあほかに何があるんだよ」

 

 鄧茂はいったい何を言うのだろうか、と程遠志は考える。「程遠志のことが好きだからだよ」と真顔で言う鄧茂の姿を幻視し、どきりとした。

 あり得ない。いやいや鄧茂ならばあり得るやも―――と考えていると、鄧茂は割と深刻そうな顔で言った。

 

「僕が男だってこと、まだ曹操様とか気づいてないみたいなの」

「ああ―――そのことね」

「そう。このままだと、すっごくまずいことになりそうなんだよね」

「それなら早く言えばいいじゃねえか」

「今の時点でも割とまずいことになってる気がするんだよね……」

 

 鄧茂の口ぶりは軽かったが、顔は笑っていなかった。曹操に同性愛の気があることを理解したのは最近で、鄧茂に対してちょっかいを駆けだしたのもまた、最近である。加えて言えば、大の男嫌いの荀彧が程遠志ら三人の中で鄧茂に対してだけ普通に話すようになったのも最近である。

 ここで本来の性別を明かしたらどうなるだろう。考えたくもねえな、と程遠志は零した。

 

「いいじゃねえかよ。好意的に見ようぜ。唯一お前だけが曹操様とか、荀彧様とかと仲良くできてんだからよ」

「その『仲良く』が問題なんじゃないか。それで程遠志のとこに逃げ込んでるんだしさ」

「まあ、そうなんだろうけどよ。深く気にしすぎるのも問題だぜ。明るく前向きに考えていこうや」

「適当な言葉だなぁ……」

 

 苦笑しながらも、鄧茂は本当に悩んでいる様子だった。ふむ、と程遠志は顎に手を当てる。人間関係というか、そういった類のことで鄧茂がここまで神経をすり減らしているのは、初めて見た。

 軽口でもたたいて気を休めてやろう、と程遠志にしては珍しい気を使ったことを考えた。

 

「でもよ、俺は安心したぜ」

「安心?」鄧茂は首をひねった。「なんでさ」

「てっきりお前がこう言うんじゃないか、って思ったんだ―――俺のことが好きだから、部屋に入り浸りになってるんだよ、って」

「ああ、確かに。よく考えたらそれが一番だね」

 

 笑わせてやろう、と程遠志が軽く吐いた言葉に、鄧茂は軽々と頷いた。

 

「冗談だろ?」

「本気だよ、確かめてみる?」

 

 何をだよ、と程遠志が彼らしくもない少し焦った声で言った。

 俺のいないとこでやれよな、と張曼成も少し嫌そうに言った。

 

 

 

 

 

 飯でも食いに行こうぜ、と程遠志が呟くように言ったときには、もう、既に陽が落ちてしまっていた。

 こんな夜になるまで、彼ら三人は何も食わず、時に馬鹿話をし、時に睡眠を貪り、各自思いのままの行動をしていた。休日とはそうあるべきものだ、という認識は、この三人の等しいものだった。

 

「まだ暑くない? 程遠志」

「流石によ、腹が減りすぎちまった。これ以上は無理だ。そうだろ?」

「まあそうだけど―――僕は暑いほうが嫌だな」

「悪い。俺も限界だ」

「ほら、張曼成もこう言ってら。多数決で二対一だ。いいよな、こういうとき友達が三人だと。二で割り切れねえのがいい」

 

 それなら別に五人でも七人でも同じじゃん、という鄧茂の声を無視して、程遠志は外に出る。張曼成も続けて立ち上がると、鄧茂も渋々それに続いた。

 

「どこに食べに行くのか決めてるの?」

「いや。何にも決めてねえ。歩きながら決めればいいだろ」

「それなら、中でまだ涼みながら決めればよかったじゃないか」

「結局面倒くさくなって何も決められなくなる気がしたんだよ。こういうのはよ、恋愛とかと一緒なんだ。やれるときにはやる。動くときには動く、だ」

「そんな風に恋愛を語る程遠志は、夏侯淵さまに告白して、何か進展があったのかい?」

 

 鄧茂がそう問いかけると、程遠志は一瞬苦い顔になり、すぐに両手を挙げた。

 

「ずりーぞ、最低だ。そんな答えのわかってることを聞いてくるなんて。張曼成、お前もなんか言ってやれよ」

「あの時の程遠志は面白かったからな。どうしようもない」

「ひでえな、お前ら。最低だよ。俺はあれから夏侯淵に会うたびに笑われるし、夏侯惇に会うたびに絡まれるのに」

 

 程遠志はつい先日黒髪の少女―――夏侯惇にひどくやられたことを思い出した。「お前みたいなやつが、秋蘭に釣り合うわけがない。私と勝負しろ!」と、激烈に詰め寄られ、夏侯惇の気性を理解している程遠志は、子供の相手をする様に適当に話を逸らせばいいとわかってはいたものの、その勝負を受けた。

 今思えば阿呆らしいことだったが、ふと、「夏侯惇とは夏侯淵と比べてどれほど強いのだろう?」と程遠志は疑問になったのだ。

 軽く試してみよう、と思ったのが運の尽き。夏侯惇の軽くは軽くで終わらない、ということをそこで学べた。学ばされた。

 

「そう考えると、僕らも割合と曹操様の家臣と話してるんだね」

「とは言っても全く話さないやつもいるだろ。許褚、だっけか。あの小さいガキとか。張曼成、お前も話しかけられたことないだろ」

「ないな。一度たりとも」張曼成は静かに首を振った。

「だって、あれはまた別でしょ。黄巾に対して敵意を持ってるんだから、そりゃまあ僕らを受け入れ難いのは当たり前だよ」

「に、してもだ。無視されるならともかく俺たちがそこにいないみたいに扱ってくるじゃねーか」

「僕には気持ちがわかるけどなあ。そうでもしないと、多分ぶん殴りたくなっちゃうんだよ」

 

 ふうん、と程遠志は適当に返した。自分にはわからない感情だな、とも思った。生まれだとか、育ちだとか。もともとの土壌が違う程遠志とは考え方が正反対と言ってもいいのだろう。

 

「お前ら、何が食いたいとかあるか?」

「なんでもいいよ。お腹に溜まれば」

「がっつり食えればなんでもいい」

「適当だな―――お、ここなんてどうだ」

 

 程遠志が指をさした先は、如何にもな高級志向の料理店があった。店の前にかかっている料理表からも、その強気な値段設定が見て取れる。

 鄧茂と張曼成は、見るからに狼狽えた。夏侯淵に最初に出会った時の飯屋よりも、遥かに値段は高い。

 

「こ、こんなに程遠志ってお金持ってたっけ」

「持ってねえけど、経費で落ちるんじゃねえの」

「落ちるわけないでしょ」

「黄巾のときは、割と誤魔化せたんだけどな。それなら無理か」

 

 ままならねえもんだ、と程遠志が溜息を吐いた。それとほぼ同時に、料理店の扉が開く。

 中から三人の人間が出てきた。あ、と程遠志は固まる。見覚えのある人間、というか、毎日見ている人間だった。

 

「あら、程遠志。偶然ね」

「……ホント、すごい偶然ですね。曹操様」

 

 曹操と、夏侯惇と、夏侯淵。

 程遠志は頭が痛くなる思いだった。嘘だろ、と心の中で嘯く。








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