天より降りしは財宝の王   作:哥乃
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11.力と代償

正直、ハンコックの船がスリラーバーグの近くで消えた時は真っ先にこいつが浮かんだ。暴君バーソロミュー・くま。二キュ二キュの実の能力者にして、肉球持ちの人間。触れたものを弾き飛ばす能力を持ち、そのネーミングに反して戦闘能力は七武海の名に恥じない。モリアみたいに衰えてもいないようだ。

 

こいつが多分ハンコックの船をどこかに弾き飛ばし、俺とハンコックだけでスリラーバーグを襲撃することになった元凶だ。対峙はある程度覚悟してたが………

 

「旅行するならどこに行きたい?」

「……最後の島って行けるか?」

「遠い。」

 

振り下ろされる肉球に向けて纏った宝蔵衣を翻す。するとくまの肉球は宝蔵衣の中に吸い込まれ、慌てて腕を抜いた。そのほんの直後くらいに宝蔵衣から無数の刃が飛び出す。

 

宝蔵衣はただの布状の倉庫。しかしその中に俺が収納してるのは何も財宝だけではない。倉庫であると同時にこれは武器庫でもあるんだ。そして内包した武器は全て俺の意思で展開し、射出できる。飛び出した刃をそのまま発射すると、無数の剣がくまに向けて襲いかかった。が、見事に肉球に弾かれている。どうなってんだよあの肉球。一応そこそこの業物だぞ?

 

「てか何でお前がここに居るんだ?政府の命令か?」

「各七武海の援護を命じられている。特にモリアとハンコックを援護しろとな。」

「シャボンディに近いからか?……筒抜けだなおい。」

 

剣と一緒に射出した狐月を握り、くまに後ろから斬りかかる。が、くまは俺の縮地と同じくらいの速度で移動してそれを躱した。足の裏にまで肉球あんのか?おまけに遠くで四股踏んで……なんか嫌な予感する。

 

「つっぱり圧力砲。」

「!?……蛇神鞭。頼む。」

 

ハンコックの方に呼びかけると、蛇神鞭が獣形態となって俺の周りに蜷局を撒いた。鋼鉄の身体だから大したダメージにはならないだろうがどうにも防壁にされたことが気に食わないらしい。上からこっちを睨んでた。石になるから睨むな。悪かったって。

 

「ハンコック。ちょっとモリアふん縛っておいてくれ。」

「大丈夫か?何なら妾もそちらに………」

「いや。モリア縛ったら波乗瑠璃使えるから、急ぎで頼む。」

 

あいつ拘束してるせいで波乗瑠璃が使えないんだよ。……ぷにって弾かれそうだけど。それにモリアの拘束が出来たらさっさとずらかれる。だからそれまで時間稼ぎするだけでいい。ハンコックに宝蔵衣から取り出した鎖を渡す。海楼石入りのを渡したいが、ハンコックも能力者だからな。扱えないだろう。

 

蛇神鞭を鞭の姿に戻し、狐月を地面に突き刺す。そして遠距離から蛇神鞭を振るうと、くまの肉球にぷにっと弾かれた。しかし弾いた側から死角を突くように曲がり、背後から熊を叩きのめす。………なんか鋼鉄を叩いた音がしたんだが。何だこいつ。サイボーグか何かか??蛇神鞭が縮んでこちらに戻ってくるが、かなり硬いな。

 

「よし蛇神鞭。開眼しろ。」

「!?……身体が………」

「行くぜ……王蛇陣。」

 

蛇神鞭の先端が赤く光る。その状態で振るうと、目の前一帯が瞬時に石に変わって粉々に砕け散った。くまは回避したようだが、右腕が少し石に変わっている。更に高速で乱打を放つと、離れた箇所までが石に変わって砕け散る。くまにも少し当たったようで中の機械が見えた。………やはりサイボーグ?なんか政府がパシフィスタってのを作ってるとは聞いたが………あいつそうなのか?

 

まぁ何であれ、石に変えて瞬時に打ち砕くこの攻撃は防御不可能。材質なんて問わず射程内の全てを粉々にする奥義だ。無差別なのが欠点だがな。

 

「………ッ!!熊の衝撃!!」

 

おっと、あそこから反撃してくるか。しかしこんなのろい肉球弾一発なら目を瞑ってても避けられるぜ?咄嗟の反撃だから雑になったのは分かるがな。このまま石にして────

 

 

────────────っ!!?

 

 

待て。なんか爆発したぞ。衝撃波?……いや、そんなことより、俺空飛んでるよな……??え、待てこれめちゃくちゃ吹き飛ばされたんじゃねーか……??気のせいか身体も痛いし……ていうか動かんし。不味いな。攻撃の手を緩めたってことはまた衝撃波が来る。或いは────

 

「待ったなしだ。」

「────────!!!」

 

空中に瞬時に熊が現れると、掌底で地面に向けて叩き落とされた。……しかも、ご丁寧に着地した時にまで踏み付けと同時に衝撃波を叩き込まれた。

 

 

………参ったな。一度にダメージを喰らい過ぎた。内臓がいくつか潰れているし、腕も動かなければ視界もぼやける。……どうやら慢心してたのはモリアだけじゃねーな。人のこと言えねーや。俺も波乗瑠璃を手にして調子に乗り過ぎたようだ。これさえあれば何でも思いのままだって。

 

熊が俺の方に向けて掌を向けてくる。このまま俺が壊れるまで衝撃波を叩き込まれて終わり、か。…………身体が思い通りに動かんな。ちらりとハンコックを見るとハンコックがこちらに走って来ていた。走って……………あ。

 

「ジェイル!?大丈夫か!!ジェイル!!!」

「!!………ハンコック、後ろ────」

「キシシシシ!!もう遅ェ!!」

 

モリアがその全身を影の蝙蝠に変えて、俺の目の前に現れた。……どうやら俺がダウンしたことで波乗瑠璃の遠隔起動が切れたらしい。くそ……一気に形成逆転か。モリアが動けない俺の身体をゲシゲシ蹴ってくる。

 

「キシシシシ!!くまめ!!余計なことしやがって!!だがこれが七武海だ小僧!!おめェじゃ勝てねぇよ!!」

「……………勝てない、か。」

「出る杭は打たれる!!分相応って言葉を知りな!!キシシシシ!!」

 

 

…………勝てない、ね。残念ながら本当にこうしてくたばっちまったわけだからな。勝てないって言うのも分かる気はする。が……さて、どうするか。

 

「おのれモリア!!ジェイルから離れぬか!!」

「邪魔だハンコック!!欠片蝙蝠!!」

「圧力砲。」

「ぐっ……………!!?」

 

やめておけハンコック。いくら七武海でも二対一じゃ勝てねーよ。そう、勝てない。…………このままだとな。

 

 

どうする?こいつらに使うか??………よりにもよって七武海に、くまにこれを見せるのは気がひける。俺の秘密に関わるからな。政府に勘付かれると厄介極まり無い。けど、このままだと影抜き取られるか殺されるかするのも間違いない。そうすると波乗瑠璃を始めとした俺の財宝も奪われる。それだけはダメだ。それが最悪の展開だ。俺のものは決して渡さない。それが例え、ただ一枚の金貨でもだ。

 

最良なのは逃げる事なんだろうが……いかんせん生命帰還で回復しきるには時間と体力が必要過ぎる。そういうレベルの重傷だ。

 

 

 

……………やるしかない、か。

 

 

_______________________

 

「くっ……ジェイル、すまぬ………!!」

 

妾は、ジェイルの財宝を過大評価し過ぎていたようだ。あのような道具があれば七武海が一人増えた程度、なんて事はないと思っていた。だからモリアを見張る方に集中し、くまとの戦いには手を貸さなかった。だというのに、隙を突かれてモリアにまで逃げられ………ジェイルになんと詫びればいいのか。

 

とにかく、ジェイルをどうにかして奴らから離そうとサロメを弓に変える。最悪ジェイルが石になっても後で解除すればいい。だから今は────

 

 

虜の矢(スレイブアロー)!!」

「おいおいハンコック、七武海同士で潰し合いか!?無意味だぜ!!」

「うるさい!!ジェイルを離せ!!」

 

モリアが身体を影に変え、くまは瞬間移動で躱す。……ジェイルから離れはしたが、だからといってどうという事でもない。ジェイルは動くことも出来ず、奴らは簡単に殺せる。妾らしくもないが、この恩人は……死なせたくないのだ。出来ることなら、生きて共にここから逃げたい。男相手にこんな事を思うのは、多分最初で最後だろう。

 

 

そんな中ジェイルは少し動いて寝返りを打った。どうにかしてこっちに来ようとしているのだろう。寝返りを打ったせいであの宝蔵衣とかいう衣がジェイルに覆い被さり、転がる事で巻かれている。……モゾモゾしてるが、動けないのか?

 

「キシシシシ!!だらしねぇ!!逃げる事も出来ねぇらしいな!!」

 

 

……………いや。違う。

 

ジェイルは、あの宝蔵衣の中に自ら入ろうとしている。あの中は異空間らしく、ジェイルはそこを倉庫にしていると言っていた。ならばきっと傷が完全に治療される霊薬のようなものも持っているのだろう。あんな蛇神鞭や波乗瑠璃のような伝説クラスの財宝を持つのだから、そんなものがあっても不思議ではない。

 

 

しかしそうするとジェイルは回復後に戦うつもりか?七武海二人を相手に?妾もいるとはいえ、大丈夫だろうか?モリアはさておきくまの実力はまだまだ未知数。ジェイルもくま単独にやられたようなものだ。妾がモリアを相手し、波乗瑠璃が使えれば話は別かもしれないが………

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………。

…………………………………………………。

 

 

 

………というか、ジェイルが出てこない。

いや、宝蔵衣の異空間内で治療中ってこともあり得る。急かしても仕方ないが……まさか異空間の中で死んだとかではあるまいな?

 

「ボア・ハンコック。ジェイルの生命反応が消えた。我々が争うのは無益に思うが………どうする?」

「うるさい!!少し待っとれ!!」

「待つだァ?何を待つんだ?あの小僧は死んで────」

 

 

その言葉を遮って、宝蔵衣が舞い上がった。同時にくまとモリアに向けて無数の黒い刃が襲い掛かる。……どうやらジェイルの治療が終わったらしい。しかもまだ他の財宝を隠し持っていたか。あれがきっとこの状況に適した財宝なのだろうが、どんなものなのか────

 

 

「…………………………え?」

 

 

宝蔵衣の中からジェイルが姿を現す。が、その姿を見て思わず絶句した。何故ならジェイルの両腕はそこに無く、代わりとばかりに先程放たれた刃が収束してジェイルの腕を作ったからだ。

 

更にジェイルは、その全身を無数の白い物体に変えると妾の元に瞬時に移動した。妾の隣にその姿が再度形成されるも、その光景には思わず妾も言葉を失った。

 

「悪いねハンコック。油断した。」

 

ジェイルの周りに舞う白い物体が黒く変色し、その一つをジェイルが握る。すると手にしたそれは扇子のようなものに姿を変えた。……明らかに先程とは異なる気配に、人間の領分を超えた異能の力。さっきまで財宝を通じて奮ってたそれを、今度はジェイル自身が使っている。

 

別に不思議なことではない。あんなものを多数持っているのだ。いくつか現物を持っていても不思議ではない。しかし………

 

「ジェイル。……能力者(・・・)に、波乗瑠璃は扱えないのではなかったか?」

 

 

尋ねると肯定するように、困ったように笑った。……あの最強の武器を、この男が自ら捨てたのが妾にはあまりに意外だった。それほどまでに強力な力を手にしたのか、それとも………

 

 

………まさか、自棄になったのではあるまいな?







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