硝煙の世界に見る夢-Girls Frontline-   作:ぶなしめじ
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Ep.3 ドリーミンライフリング

「むむ……そう来たか」

 

 G&K指揮所で私はM4 SOPMOD IIとちょっとしたゲームに興じていた。本来なら彼女はAR小隊のメンバーで、こんな僻地には来ない。

 隊のM4A1が遠くの街へ支援に行って、任務も特に無く指揮所を転々としているらしい。もちろん、意味無くではない。彼女たちは鉄血の人形がどこに現れても即応出来るように転々としている。

 

「ふふーん、合計14! 諦めた方がいいよー?」

 

 ゲームというのは、三つのダイスを振って出た目の大きい方が勝ちという単純なもの。ただ、負ければコーヒーと軽食のおごりが待っている。

 

「むー!」

「どうしたのAUG? 早くダイス振りなよ」

 

 ダメだ、数字が大きすぎて勝ち目がない! 降りようか? いや、ダメもとで振ってしまえ。人形は夢を見ない。でも現実で夢想するくらいなら、許されてもいいはず。

 ていっ、と声を出しつつダイスを放る。からからとテーブルを跳ね回ったダイスが示したのは、二つの1と一つの3。合計にしてSOP IIに到底及ばない、4。

 

「あんまりだー!」

「あはは! 私の勝ちだねー! カフェおごりー!」

 

 こんな勝負受けるんじゃなかった。カフェのあとは訓練があるし、精神的に疲れたあとの訓練で大丈夫だろうか。不安になってくる。

 とにかく、私は私――シュタイアーAUG HBAR-T――をライフルケースに仕舞ってあるのを確認して背負い、寮舎を後にする。さっさと出ていったSOP IIを追うように。

 

「街の方の指揮所は、もう少し綺麗なんだっけ」

 

 私の所属する事になった指揮所は、本当になにもない。施設機能がなければ自炊すら難しかったであろうほどには。

 カフェに入ると、ぎしりと木板の床がきしむ。……重さで抜けないかな? 大丈夫かな。

 

「こっちだよーAUG!」

 

 ぶんぶんと手を振って私を呼ぶSOP II。出来れば忘れてほしかった。しかし、仕方がない。

 彼女の呼び掛けに答えて、席の対面に座る。

 

「このあと訓練なんでしょー? なんだったら、私が見てあげよっかー?」

 

 私が奢ることになるティーセットへ子供のように砂糖をブチ込みながら、SOP IIはそれこそ無垢な子供が玩具を見るような顔で語る。

 正直めちゃくちゃつらい……。話していれば精神年齢的には下のはずなのに、向こうの方が明らかにエリート。

 

 ――でも、そんな“理解できない”モヤモヤはすぐに消え去る事になった。

 

「AUG! 今だよ!」

 

 カフェを奢ったあと、私は訓練場で他の人形との模擬戦闘に入っていた。勿論練習弾だから、こちらも向こうも損傷しない。

 それよりも、SOP IIが話を通したのか一時的に彼女がパートナーとなって私はその戦いやすさに自身で驚いていた。

 向こうが巧みに陽動し、狙撃モデルである“私”の射線へ敵を見事に誘導する。私はその敵へ、ただトリガーを引くだけだった。

 

「……上手い。なんていうか、たまに指揮官が話す猟犬……? みたいな……」

 

 猟犬は狩りの相手を主人の猟銃が撃てるところまで追いたてる事もあるという。大半は威嚇しているところを撃つらしいけど――稀に、あるらしい。

 私の基地の指揮官が、そんな経験をした事があるのだとか。たまに副官として仕事が回ってきた時は、そんな話を聞かせてくれる。

 

「よっし! おっわりー!」

 

 気付けば、訓練は終わり。いつもなら狙撃エリアを降りてアサルトライフルなりに撃ち合いに参加しなきゃ行けなかったのに、今日はHBAR-Tとして――狙撃銃として役に立てた。

 

「ねぇAUG! 私明日までいるんだけどー……良かったら、一緒に寝てもいい?」

 

 考え込んでいたら爆弾発言。いや、特に何があるわけでもないけれど。

 

「私なんかと一緒に寝ても、何にもないよ?」

 

 私が謙遜すると、SOP IIは私の手を両手で取って上下へぶんぶん振る。何気に痛いやつだ、これ。

 

「むー。M4たちがいないから、さみしいんだよ。わかってよー」

 

 むくれるSOP II。やっぱり彼女、子供っぽい。……いや、今更か。

 

「いいよ。なんでSOP IIが私をそこまで気に入ってくれるか、わからないけど」

「気に入るのに理由なんか無いでしょ?」

 

 ぐうの音もでない正論がSOP IIから放たれた。ぐう、まさか正論が返ってくるとは……。

 とにかく、訓練を終えた他の人形たちへ挨拶しながら私たちはそれぞれの寮舎へ戻る。私はSOP IIを自分の寮舎へ案内して、自身の清掃を終える。

 

「まだ寝るには早いよね? 夕飯もまだだし、なにかしようよー」

「ちょ、ちょっと待って……」

 

 彼女の行動力には本当に驚かされる。なんとか思考を纏めたいところだったが、唐突に部屋のドアがノックされてそれも止められる。

 

『AUG、緊急の話がある。すぐに私の元へ来い』

「は、はい!」

 

 指揮官だった。横でむくれるSOP IIをなんとか宥めて、私は寮舎を出た。

 指揮官と共に歩く、指揮所の廊下。なんだかやけに静かで、不安すらある。

 こつり、こつり。響く靴音が、突然止まった。指揮官が私の腕を引いて止まっていた。

 

「AUG……お前をリセットする」

「……え」

 

 リセット。それは今までの思い出もメモリーも、全部消える。私にとっての死。

 これから、私は指揮官に殺されるとでもいうのか。

 

「……I.O.P.から、お前が必要だと言われた。引き渡すようにと」

「渡すんですか……」

「断れない。渡さないなら、お前のパワーを向こうから切ると脅された」

「でも……!」

 

 私が死ぬなら、私が休止したって同じこと。どっちも了承なんて出来るわけがない。

 

「AUG……お前は今まで“ワンオフ”だった。これからは、その力が全指揮官に必要になる。役に立てるんだ……お前は」

「そんな……でも……」

「頼む。わがままなのは判っている。だが約束する、私はお前が私を忘れようとどんな姿になろうと――迎えにいく」

 

 指揮官はうつむいて、よく見れば泣いていた。うちの指揮官は割りと冷血なタイプだと思われている。けれど、人形に無茶をさせたことはないし、今までI.O.P.へ返却した事すら無い。助けた人形、捨てられた人形、製造した人形――当然の責任だと、この人は大事に指揮所で遊ばせている。

 副官の時期は、私が一番長いだろう。だから分かる。この人は、約束を守ってくれる……。なら、信じて待とう。

 

「わかりました、指揮官。――私を、リセットしてください」

「AUG……すまない、本当にすまない……! 必ず迎えにいく。I.O.P.の発表では、戦果を挙げた指揮官へ優先的に回すようだ。“お前”にまた会えることを祈っている」

 

 私が少なからず量産される。それは、次に指揮官に会う“私”が、この私ではないかもしれないということ。

 でも、指揮官はそんなこともひっくり返しそうな勢いだった。

 

「信じてます。必ず、迎えに来てください」

「ああ」

 

 ファクトリーへ向かう足取りは、不思議と重くはない。この人は私を迎えに来てくれる。

 それに、他の指揮官にも会えるようになる。私が、世界を変えていける。鉄血だらけのこの世界を。

 それなら、私はそれに従おう。死ぬのは怖いけれど、今なら不安はない。“指揮官”が、必ず会いに来てくれると信じているから。

 私は夢見心地になりながら、その目を閉じる。次に広がる世界を私は表現できないけれど、きっといい指揮官たちが待っていてくれる。

 ライフルでも、夢くらいは見たってバチは当たらないよね?




実はEp.2終わりからすぐに書き始めていたのですが、様々な事情が重なり書けずにいたらなんとAUG実装決定!
結果、シナリオを改編したオチになっていますがドリーミンライフリングという意味では間違ってないからいいか((

AUG、絶対に迎えるぞー!

次回もよろしくお願いいたします。
SOP IIは……たぶん知っていたんじゃないですかね。







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