何回も転生した奴がありふれた世界に転生しました。   作:オット
<< 前の話 次の話 >>

88 / 161
自分の闇

目が醒めると目の前に桜の顔があった。

 

「!?」

 

飛び上がりかけたが桜の腕が俺の首に回されているので身動きが出来ない。

 

「おう、起きたか?」

 

「ハジメか?桜起こしてくれ、俺は身動き出来ん。」

 

「まだ何人か起きてないから寝とけ、まだ6時間くらいしか経ってねえよ。」

 

めちゃくちゃ経ってんじゃねえかよ、俺は起きるぞ。

 

「充分だ、起こしてくれ。」

 

「・・・すまんがやったら無意識にビット回されて攻撃されたんだ、諦めろ。」

 

「試した後だったか。」

 

ええ、どうすんのコレ。

 

桜はハジメと話してる間も笑顔で寝ている。さぞ快眠しているのだろう。

 

「何でこんなことになったんだか・・・。」

 

「良いじゃねえか、恋人なんだろ?」

 

「それも含めてだよ、俺はそんなに魅力的なのかねぇ。」

 

「桜の視点から見たら危ないときにいつも助けてくれるからじゃねえの?」

 

それでも、好きになる程とは思えないんだがな、特に、日常茶飯事なら。

 

「女心は分からんな。」

 

「同じく。」

 

ハジメもそう思っているようだ。

 

「あー懐かしいな、昔も妻になった女性から浮気を勧められたわ。」

 

「嘘だろ?」

 

「マジよ、俺も相手もエルフでな、数千年生きてきてやっと結ばれて、さあ後は死ぬまで暮らす場所を見つけようって矢先に知り合いの伯爵令嬢が当主になってな、その時のいざこざで結婚してくれって話になったんだよ。」

 

「色々と突っ込みどころありすぎだろ。」

 

「その時に妻から浮気じゃないよ!重婚だよ!お嫁さんいっぱい出来るんだから躊躇しない!って言われた。」

 

「結婚したのか?」

 

「するわけないだろ、手を回して撤回させたわそんなん。あっちも俺と親しいから感情任せに言っただけだからな、撤回させること自体は楽だった。」

 

ハジメの顔は分からない、俺の視界は桜の顔でいっぱいだ。

 

「ただ妻はめちゃくちゃ不満そうだった。」

 

「何でだ。」

 

「それな。」

 

日本人男性には分からなさすぎる。

 

「ん・・・風魔?」

 

うちのお姫様は夢から覚めたようだ。

 

「起きたか?」

 

「・・・・・・。」

 

「取り敢えず手を離してくれ、嫌な予感がする。」

 

「〜〜〜〜〜〜!!!?」

 

「ボガッ!?」

 

桜は驚いて俺を思いっきり抱きしめた。

 

首が一気に下に引っ張られ、桜の胸に思いっきり押し付けられる。

 

苦しい、呼吸出来ない上に体制に無理がありすぎる、息が・・・。

 

「ななな何で風魔が!?」

 

「・・・!・・・!!」

 

「きっとこれは私の夢!そう!絶対そう!」

 

「・・・・・・!」

 

「でも顔近かった、カッコよか・・・違う!」

 

桜の体を叩く、気付いて、死ぬ、死ぬ!

 

「え?あああ!ごめん!ごめん風魔ぁ!」

 

「ぶはっ、ゲホッゲホッ、危ねえ、死ぬところだった。」

 

そんなことをしていた俺達の周りにはハジメとアッシュがいた。

 

「みんなには言わないほうがいいか?」

 

「当たり前だ・・・ああ・・・生きてるって素晴らしい。」

 

「ごめんなさい、私が悪かったです。」

 

桜はダブルベットくらいの大きさになってるソファに正座しながらそう言った。

 

「別に良いって、ほら、起きたなら飯の支度だ。」

 

「・・・うん。」

 

その後ユエ達や勇者パーティーがリビングに来る頃には朝食は既に作られていてあったかいものが並べられていた。

 

ただ、米が無いのでその分残念さが極まった。

 

ハジメ含む日本組は全員白米が食べたくなっていたがどうしようも無い。

 

「行くか、宝珠は取ってきたし、問題無い。」

 

「ご飯、あったかいご飯・・・。」

 

「丼いっぱいの米・・・。」

 

「言うなよ・・・、言うなよ・・・。」

 

「・・・おい、行くぞ。」

 

「風魔!お前は残念に思わないのかよ!?」

 

「無いものは無いんだから諦めろ戯け共!」

 

『ブー!』

 

こいつら・・・。

 

「次から俺が作った飯無しにすんぞ。」

 

『申し訳ございませんでした。』

 

「それで良い、さっさと行くぞ。」

 

「苦労かけるわね・・・本当に。」

 

「八重樫も我慢してるだろ?エヒトぶち殺したら日本で宴会でもしようや、俺に約束できるのはその位だ。」

 

外に出て扉に宝珠を埋め込む。

 

「あー寒いわ。」

 

扉が開いてその先の道が見え始める。

 

「風魔。」

 

「何だ?ユエ。」

 

「後でコメの作り方、教えて。」

 

「種がねえよ、諦めろ。」

 

「そんな・・・!」

 

「食べられないんですか!?風魔さんなのに!」

 

「おいそれはどういう意味だバグウサギ!」

 

全員が出てくるまで10分ほど、米の味を知らない奴らと駄弁っていた。

 

ーーーーーーーー

気を取り直してだ、行くぞ。

 

「鏡みたいだな。」

 

「予想通り、だな。」

 

暫く進むとふと声が聞こえた。

 

(また失うぞ?)

 

俺は刀を構えて一気に警戒の程度を上げた。

 

「おい、どうした?」

 

「秋月も聞こえたのか!?」

 

天之川がそう言って俺を見ていた。

 

「・・・チッ。」

 

懐からタバコを取り出す。

 

「お、おい!お前にも聞こえたんだろう?」

 

「黙れよ、鬱陶しい。」

 

失う?失わせるものか。

 

「ハジメ、迷宮からの干渉だ、全員が無効化出来ない類のものだ、気を付けろ。」

 

「何か言われたのか?」

 

「また失うぞ、だな。」

 

「失う?それはどういう・・・いや、良い。」

 

「助かる。」

 

「私達もなったわぁ、懐かしいわねぇ。」

 

「あるある。」

 

お前ら2人はふざけないと気が済まないのか?

 

・・・なんか馬鹿らしく思えてきたな。

 

(怪物の癖に)

 

刀を持つ手に力が込められる。

 

「風魔?」

 

「大丈夫だ、気にすることはねえよ、耳に痛いがな。」

 

そう言って桜の頭を撫でる。

 

「気を付けろよ、桜。」

 

「・・・うん。」

 

その後も何回か声が聞こえたが桜が手を握っていてくれたおかげであまり気にせずに済んだ。

 

片手がふさがっていたが魔術中心で対処していたから問題無い。

 

途中で天之川が発狂しかけたりユエに誘惑されたハジメが襲いかけたりと色々あったが無視だ。

 

(忘れそうなのに?)

 

・・・うるさい。

 

休憩場所に着いた、あの空間コテージを出して全員中に入るが声は相変わらず聞こえてくる。

 

(大事な人を守る?目の前で死なせて来たお前が?)

 

黙れよ。

 

(目の前で人を殺したのに?)

 

途中から、前世の声まで入るようになってきた。

 

(本当は殺したいんじゃないのか?)

 

ふざけるな

 

(私に家族なんて居ないよ?)

 

桜がそうだ。

 

(嘘、貴方は知っている。)

 

言うな。

 

(自分は家族を殺してしまう殺人鬼。)

 

「止めろ。」

 

(殺人鬼に、幸せになる事が許されるとでも?)

 

「止めろ!」

 

周りの全員が俺を見て驚いている。

 

(ほら、殺人鬼としての一面が顔を出した。)

 

思わず口を抑える。

 

「風魔!?」

 

胃の中のものが吐き出される。

 

(人間でいるのは楽しいか?)

 

おかしいな、みんなの声が聞こえない。

 

(人に縋り、その人を喰うお前は、化け物だ。)

 

誰かが肩を抑えている、誰だ?

 

(化け物め)

 

呼吸が荒い、誰か、助けてくれ・・・俺を・・・誰か!

 

(他者に救いを求めるか、愚か者)

 

誰か!居ないのか!?誰か!?

 

(だからお前は化け物なのだ、悍ましい殺人鬼め。)

 

止めろ、俺を堕とすな、俺は決めたんだ!みんなを守ると!

 

(守ると誓った奴は何処にいる?お前が守ると誓った者達をお前は忘れただろう!)

 

忘れてない!俺は覚えてる!ハジメや桜を!

 

(ではお前の妻になった者達はどうだ!?言ってみろ!)

 

俺は覚えて・・・憶えて・・・いる・・・筈だ。

 

(覚えていないだろう!?それがお前の気持ちの程度だ!お前は命を代償にしても守ると誓った者すら忘れる!)

 

違う、俺は・・・俺は!

 

(化け物め、愛した者すら忘れる化け物め!人間のふりをして楽になったか?)

 

止めろ・・・やめろおおおおおおおおおおおお!!!

 

(・・・どうしようもない化け物が誰かを幸せにできる筈がないだろう!)

 

「あ・・・ああああああ!!!!」

 

誰かが俺を押さえている、誰かの声が聞こえる。

 

(殺人鬼が、人を守れるとでも思っているのか?)

 

「あ・・・。」

 

俺の意識は暗闇に堕ちた。




闇落ちはしません(キッパリ)







感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。