何回も転生した奴がありふれた世界に転生しました。   作:オット
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中学二年生で起こった事、そして独白

一年経ち、夏の日にプールの授業を受けていた。

 

「あー、気持ち良いぜえ・・・。」

 

「さっさと前行ってくれ!」

 

泳ぐのを止めたらすぐに怒鳴られるのは何故だろうか。

 

25メートル泳ぎきりプールサイドに上がる、息を整えながら元の場所へ戻ろうとしていると一人の男子が女子達に近づいていくところだった。

 

「目が見えない、少し嫌な予感がする。」

 

「風魔?」

 

背後にいたハジメに怪訝な目で見られる。

 

「すまねえな、少し暴力的なモンを見せるかも。」

 

少しずつ気付かれないように背後に回ると息が異常に荒いのが分かった、視線の先には桜がいた。

 

「・・・不味い。」

 

走り出すとその男子は俺に気付いたようで桜に飛びかかる。

 

桜はとっさの事で反応出来ていない、びっくりして固まっている。

 

その男子の手が桜の着ている水着を掴み、一気に引き裂いた。

 

クソッ、間に合わなかった、無理矢理で良いから引き剥がすか。

 

桜は水着がビリビリに破れたのを認識して叫び声を上げる。

 

何年も前のことだがトラウマはそう簡単に忘れられないらしく、水着を引き裂いた男子生徒に対し恐怖の眼差しを向けている。

 

男子生徒はその目に嗜虐心をそそられたようで水着越しでもはっきりと分かるくらいにテントを張っていた。

 

「おいテメェ!近付くな!他の奴等もだ!」

 

「チッ。」

 

ちょうど俺と向き合う形になったので背後に回ったハジメが俺と目線を合わせてくる。

 

(近くになんでも良いから棒は落ちてないか?)

 

(一応干す為の物干し竿なら。)

 

(了解、合図といっしょにそれを桜より上に投げろ。)

 

「は、はは桜さんはこれで俺の物だ、俺の決定だ、拒否権はないよ、だって桜さんもそう思ってるはずだから、ね?そうでしょ?」

 

「以前から気になっては居たが、事前に止められなかった俺の責任か、すまない、桜。」

 

「桜さんを呼び捨てにするな!桜さんを呼び捨てにして良いのは俺だけだ!」

 

「ひっ・・・あ、あ、いや・・・。」

 

男子生徒は桜の腕を掴んでいて放さない、桜も水着が破れているのと男子生徒が向けてくる視線に怯えて抵抗も弱々しい。

 

「たすけて・・・たすけて、風魔あああああ!!」

 

「任せろ。」

 

合図を出して走り出すとハジメが物干し竿を投げ槍のような投げ方で男子生徒に向けて投げる。

 

顔スレスレに通った物干し竿に驚いた男子生徒は物干し竿を投げたハジメを見る。

 

物干し竿は俺が掴み、桜に当たらない場所、肩や顔めがけて突きを繰り出した。

 

痛みで桜を離した男子生徒は倒れこむ。

 

「・・・大丈夫か?」

 

「あ・・・。」

 

身体の震えが治まってない、トラウマが深くなった、か。

 

「・・・すまん、誰か桜にタオルを被せて相談室か職員室に連れて行ってくれ、女子に頼む、男子だとトラウマを再発させかねん。」

 

俺がそう言うと桜と仲の良かった数人が桜といっしょにプールから出て行った。

 

「桜さん!お前!良くも桜さんを誑かしたな!」

 

男子生徒は錯乱しているようだ。

 

「・・・憐れだな。」

 

「ふざけるな!お前さえ居なければ!今頃桜さんは俺の事を!」

 

「ふざけるな・・・だと?」

 

泣いて詫びたりするならある程度は減刑位なら申し込んでも良かったが・・・これは駄目だな。

 

「そう言いたいのはこちらの方だ・・・!!」

 

押さえ込んでいた感情が噴き出してしまう。

 

怒りや、後悔、そして何よりも、目の前のこいつを殺したいという殺意が抑えきれなくなってくる。

 

「貴様が桜に何をした?犯罪から守ったか?人殺しすら厭わん輩共から狙われ、攫われかけたことすら幾度もある、その度に助けに入れたと?ふざけるなよ、桜は確かに底無しのお人好しだろうよ、だがそれを護るのは俺の仕事だ、俺の役目だ。貴様程度に成せるものならば俺がこんな事にはなっていない!」

 

俺の感情に色を付けたかのごとく俺の目は赤い、それは恐怖を煽るには充分だった。

 

俺の言葉を聞いた周りは俺の身体に着いた生傷や切り傷を初めて見たとばかりに驚いていた。

 

殺意が膨れ上がる、威圧すら生温い、ショック死すらしそうな程の重圧が発生した。

 

男子生徒は怯えて壁に背が当たるまで後ずさった。

 

俺は物干し竿を両手で持ち、突く体勢になった。

 

「今すぐ貴様を此処で殺してやろうか、愚か者。」

 

「ヒィ!」

 

その俺を止める奴が居た、ハジメだ。

 

「駄目だ、人殺しになんかなっちゃ駄目だ。」

 

俺はハジメを見てハジメも怒り狂っていることが分かると少し落ち着いた。

 

「・・・すまん。」

 

「どういたしまして。」

 

桜は人殺しを蔑んだりはしないだろうが良い顔はしないだろう、逆に私のせいでと抱え込む奴であることを俺たちは良く知っている。

 

近くの壁に近付いて思いっきり殴る。

 

壁にヒビが入り、拳大の石がいくつか零れ落ち、俺の手には石が刺さって血だらけになっていた。

 

「・・・俺はお前を許さない、ハジメに感謝するんだな。」

 

男子生徒は既に気絶しているようだった。

 

それにイラつき、また舌打ちしてしまう。

 

そしてプールのは隅にある蛇口で手を洗っていると桜を連れてった女子の一人が俺を見つけて近付いてきた。

 

「ゴメン、風魔くん、桜ちゃんが呼んでる、熱にうなされたみたいに風魔くん、風魔くんって、辛いかもしれないけど、保健室に行ってあげて。」

 

「制服は?」

 

「何とか着せた。」

 

「分かった、先生には悪いが休むと言っておいてくれ、もしかしたら一ヶ月くらい休む可能性があるとも。」

 

「・・・分かった。」

 

女子生徒の顔は暗いものだった、何も出来なかった自分を責めるように。

 

「そう暗い顔をするな、桜の事をこれからもよろしく頼む、厄介ごとは俺がやる。」

 

「・・・ゴメンなさい・・・ありがとう。」

 

そう言って女子生徒はどこかへ行ってしまった。

 

・・・保健室に行くか。

 

保健室に着くとハジメも保健室の前に立っていた。

 

「僕は見張りだよ、先生も大事だと思って職員室で色々とやってるから二人っきり、これで良い?」

 

「充分だ。」

 

保健室に入ると1つしかないベットの上に桜が布団を被って震えていた。

 

その様子は痛々しくて見ていられない、だが俺はそれにあえて向き合う事にしている。

 

「桜。」

 

ただ一言、名前を呼んだだけ、それだけで桜は静かに泣き始めた。

 

「ゴメンなさい・・・私、もう、だいじょうぶだって、もう抵抗出来るって、そう思ってたのに、思ってただけだった。あの目を見るだけで・・・身体が竦んで、何も考えられなくなって、ふうま、ふうま、ゴメンなさい、ゴメンなさい。」

 

桜は途中から女子生徒が言っていたような熱に浮かされた様子で、俺の事をひたすら呼んでいた。

 

「俺は無事だ、だから、泣き止め、な?」

 

「ふうま、ふうまぁ・・・!」

 

桜は俺の身体にのしかかって泣いている、俺は抵抗せずに好きなだけ泣かせてやる。

 

「好きなだけ泣け、此処には俺以外誰も居ないから。」

 

桜は2時間近く泣いていた。

 

最後には泣き疲れて俺の身体にのしかかったまま寝てしまったので起こさないようにベットに寝かせた。

 

涙でぐしょぐしょになった制服は上半身だけ脱いで乾かしてもらう事にした。

 

放課後に何人か訪ねに来たが起きることの無かった桜は結局次の日まで目を覚ますことはなかった。

 

俺はその間ずっといた、いつ起きるか分からないからずっと起きる必要があったりしたが些細な問題だろう。

 

「ふうま・・・。」

 

たまに出る寝言も可愛いものだ。

 

今まで俺を愛した女性達は何かしら秘密を持っていた、天使の間でも、過去の転生した時の記憶を話すのは個人の裁量に任せられている、最初の家に押しかけられた時も怯え方が尋常じゃなかった、きっと、前の人生でそれ関連でトラウマになる事があったのだろう。

 

手を握ってやると少し力を入れて握り返してくる。

 

「全く、最初は先輩後輩の関係だったはずなのに、何でこんなに守らなくちゃと思っちゃうかねぇ。」

 

「えへへ、ふうまぁ。」

 

不覚にも可愛いと思ってしまうのはきっと惚れた弱みというやつなのだろう。




割とガチ惚れしてる主人公、どうしても記憶が風化してしまう為こうなるのも仕方ない。

あと桜は実は転生した死因がどちらも襲われてそういう事されて放置で凍死とか廃人エンドしかけてるのでトラウマはかなり根深いです、下手したら男というだけで拒否反応が出るレベルで、それでも主人公やその他大勢と交流が持てているのは展開でカウンセリング的な作用があるのと違うからだというのが大きい理由です。

というか主人公は踏み込んでくるのを待つ派なので自分のトラウマに踏み込んでくる事がなく信頼しているからというのが一番大きいですかね。桜が無事な理由は。







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