何回も転生した奴がありふれた世界に転生しました。   作:オット
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ハジメの力

天使達だけの集会は終わり、ハジメ達がいつの間にか概念魔法を作ろうとしていたので暫く見学させてもらった。

 

少しずつ俺が補助し、魔力の放射をし始めた辺りで全員が慌てながら出て来た。

 

「・・・。」

 

全員が来てから映し出されたのはハジメのオルクス最下層での出来事だった。

 

熊に食われ、絶望や孤独に苛まれ、今のようになってしまう過程だった。

 

全員が息を飲む、無理も無い、捕食者としての視点は人間にはまず向けられない、もし向けられるとしたらそれは弱者になった時か、人間より格が上の生物がいる世界だ、そしてそれは野生の動物であったり、ドラゴンだったり、同じ人間や異種族だったりする。

 

その様子を見た俺はいつの間にか手に力がこもっていた。

 

桜は泣きそうになっているし、他のハジメの嫁達も似たり寄ったり、だがアッシュやミナは真顔で見つめている。

 

これは誰にでも起こり得る事なのだ、経験の無い事は分からない、ハジメは英雄のような人間であるのだろう、普通の人間では生きようとする気力も湧かないのだから。

 

ひとりぼっちで死ぬのは嫌だ、それは誰でもそう思うだろう。

 

味方を殺し、敵を殺し、守るべき人間も、国も、果てには自分さえ殺し尽くしても満足しない殺人鬼は、その異常性を誰かに受け入れられてから、人を守る怪物へと変化した。

 

誰かを守れと言われた人間は、化け物と相対し、理性を無くした化け物になる事を決意した、自分の一番忌み嫌う化け物になる事をだ。

 

死ぬなんてふざけた事をぬかす奴は許さない、死ぬ事は逃げだ、最期までどんな形であれ戦う事を俺は強制する、それがどんなに辛い事であっても、それが贖罪となりうるのだから。

 

古い友人を思い出す、殺人鬼であった俺を止めようと化け物になり無謀な戦いを挑んできた友人を、そして、たった1人、敵と定めたもの以外いない戦場でその命を散らした親友を。

 

ハジメは地獄から這い上がった人間だ、序列の最下位から最強になった、真の強者だ、だからこそ、誰よりも脆い、極限状態で強者になった者は、少し離れただけでダイヤの様にすぐに割れやすくなる。

 

まるで火山だ、ダイヤを吐き出した火山から離れ、その輝きを増したダイヤは誰かの手によって容易に割れる。

 

「クソみたいな神がこの試練を与えたのなら、もう試練は良いだろう、もうあとは静かに暮らすべきだ。」

 

「・・・風魔。」

 

試練を与える神でも、ここまで厳しいのはヘラクレスなどの神代の英雄くらいのものだ、こんなもの、この時代には過ぎたものだ。

 

タバコを取り出しゆっくりと吸う。

 

「・・・。」

 

ハジメとユエは魔力切れで気絶し、アーティファクトはギリギリで完成した様だ。

 

ハジメ達に魔力を分け与えながら静かにそのアーティファクトを見る。

 

アンティーク調の鍵、ハジメ達の最後の言葉からどこでもドアの様なものなのだろう。

 

・・・よくもまぁこんな物を。

 

ハジメ達が起きてアーティファクトを使用し、カムと熊の姫さんの情事を映し出す珍事こそあったものの概ね問題は無く、普通に使える様だ。

 

俺の魔力では腐る程使えるが、そもそも俺はそんなに移動をしない為問題無い。

 

というか、俺1人ならともかく他が無理だ、魔力に耐えられねぇ。

 

「谷口、少しついて来い、1匹だけ魔物を貸してやる、存分に使え。」

 

「え?ちょっと、待ってよ!」

 

「脳筋、少し借りていく。」

 

「え?俺?まぁ良いけどよ。」

 

脳筋で分かるのかお前・・・成長したな。

 

「コボルト。」

 

「ハッ、何でございましょう。」

 

「こいつの配下を手に入れる手伝いをしろ、虫だろうが獣だろうが構わん、片っ端から従属させろ。」

 

「了解しました。」

 

「ねぇ。」

 

「・・・何だ?」

 

「何で私にこんなに協力してくれるの?普通私だけじゃなくてみんなの世話をするよね?でも、私だけいつも色んなものをもらってる。」

 

目敏いな、気付かなければ良かったものを

 

「うちのバカ共に似てるんだよ、お前。」

 

「うちって、孤児院の?」

 

「お前、本当はもっと性格違うだろ、自分を騙して、騙して、騙し続けた結果、元の性格が分からなくなった。お前、1人は嫌なんだろ?」

 

「えっ・・・。」

 

「うちのバカ共の殆どは戦争で親が死んだり、殺人鬼に殺されそうになった所を助けられた様な奴らばっかりなんだ、だからこそ、トラウマを持っている奴も多い、お前は、甘え方を知らない子供みたいな雰囲気が何回か出てた、それも、誰かと一緒にいるときに限って。」

 

谷口は目を見開いて驚いていた、信じられないといった様子なのだろう。

 

「だからこそお前は他人を見ることに関してはかなり敏感になった、1人でいるのは嫌だが、傷つけられるのはもっと嫌だっていう無意識のうちに敵か味方を判断する様になった、自分に危険が及ばない味方と自分を害するかもしれない敵へと。」

 

谷口は後ずさった。

 

「だから、これはただの親切じゃない、敵からの情けだ谷口。必ず生き残れ、生き残った上であのバカを助け出せ、救うのは俺の役目だ。」

 

谷口の顔を見る、恐怖が入り乱れている様だ、負の感情がないまぜになった顔で俺を見ている。

 

こういう奴は後々面倒なんだが、仕方ない。

 

「いざとなったらハジメを頼れよ小娘、老兵の経験で引っ張ってやるから、死ぬ気でついて来い。」

 

それから数日間俺達は訓練やら戦闘やらを繰り返した。

 

その結果天之川は剣技だけなら俺の同等程度にまで上がった、そういう所は素直に羨ましい。

 

谷口とはまだ話せていない、明らさまに避けるからだ。

 

桜も不安そうな顔をしているが、俺は余り気にしていない、孤児院のガキ共に似ているだけなのだ、そこまで手助けする気もなかったしな。

 

「そろそろ出発しようか。」

 

「だな。」

 

ハジメが迷宮攻略の証を掲げると氷の竜が出現し、背中に乗せた。

 

飛び立って数秒後、遠くに魔力反応を発見した。

 

「全員戦闘準備、奴さん達、集団で固まってる。」

 

そういうと同時に全員が得物を構える。

 

暫くすると魔人族が余裕たっぷりの笑みで俺達を見ていた。




駆け足だけど本当に書くことないんだ、すまない。




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