1ミリも申し訳ないという気持ちが沸いてこない
そんな外道な人間が久しぶりに現れましたよっと
調査兵団に復帰してから一月が経った。
何度か拠点設営の任務には出たが、有象無象の巨人が現れるだけで奴等に繋がる事は無かった。
そんな中、クリスタの発案で食事会をする事になる。
クリスタは実は私の事が嫌いらしい。顔を隠してるのに食事会とはどういった考えなのだろう。
嬉しそうに準備をしていたクリスタにこの事を伝えたところ「ぁ...!」と声をあげると固まってしまった。
徐々に眉尻が下がるクリスタを見つけたジャンがキレる問題まで発生した。
ジャンとクリスタを声を出さずに宥めるのには手を焼いた。
何ならそれが原因で参加決定したようなものだ。
「で? あんたはどうしたいの?」
「風邪をひく」
いつもの隠れ家、ヒッチの部屋で作戦会議。
というか、もう決まっているのだが。
「兵長に連絡は?」
それが問題である。
残念ながら兵長には簡単には会いに行けない。
兵団の傍にいてはバレる可能性が上がるからだ。
「そこでヒッチの出番。ヒッチは私の、つまりウィルの親友。なら、ウィルが風邪をひいたことを伝えに行っても違和感はない」
「それ、ようするにパシりでしょ?」
「そうともいう」
ヒッチは呆れたようにため息をつく。
申し訳ないとは思うがこれしか回避手段はない。
「まぁ、仕方ないか。じゃあ伝えてくるから留守番よろしく」
「ありがとう...ごめんね」
背に向けて声をかける。
実際、彼女には苦労しかかけていない。
「何言ってんの?」
「ごめん...」
ヒッチが私の頭をコツンと叩く。
「謝るな、親友なんでしょ?」
結局、ウィルは食事会には来なかった。
クリスタやジャンは交流が多いそうだが、私はほとんど会ったことがない。
目的を果たせず辛気臭いままあっさり終わった食事会では、私のお腹も満たせなかった。
物足りないお腹を擦り、街の食堂を目指す。
少し前なら同期の仲間も誘ったりして狩りや釣りをしていた。
人懐こく、それでいて強くて、勇気があって。
でも彼女はもういない。
あの時、見送るしか出来なかった自分を何度も責めた。
帰ってこないかと何日も待った。
哀しくて、それでもお腹は減るもので。
あの時、初めて泣きながら食事をした。
楽しいはずの食事なのに涙が止まらなくて、味なんて楽しめなかったのを覚えている。
「おじさん、いつもの」
「あいよ!」
彼女と通っていた食堂。
ここではあの時と変わらぬセットを頼む。
パンとスープと少しの肉。
二人でいつもの、と注文して笑いあったものだ。
「いつもの」
「ぉ、珍しい、あいよ!」
私と同じ事をする人がいるとは思わなかった。
ふと顔を上げる。
「ぁ...」
「ぇ...?」
あの日失った仲間が当たり前みたいに立っていた。
うっかりジェミニさん、食事会が長引くと思い食堂で素顔を晒す失態。
無理矢理だって?
こまけぇこたぁいいんだよ!